出会い
恵の幼馴染のお名前は?
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「よかったぁ来てくれて。…来なかったらどーしようかと心配したよ」
伏黒と芙蓉が地下の奥まった部屋へ足を踏み入れると、待ってたよ、と五条が薄く笑った。軽く戯けたような声色とは裏腹に、部屋の空気は重い。初めてこの部屋に入った芙蓉は何とも言えない不快感、身体の重さと軽い頭痛を覚えた。
地下の部屋はとても広く、地上階がすっぽり収まってしまいそうな広さだった。天井も高く、部屋というより広間という方がしっくりくる。
「さて、恵。今日は特別メニューだ。そんなに強いのもいないから、自由にやっていいよ」
「…今日は1日休みなんですが」
「まぁまぁ、そうカタイ事言わないでさ。ちょっとだけ芙蓉に祓除がどんな感じか見せてあげてよ」
「…さっき、芙蓉に教えるのは呪力の扱い方って言ってましたよね?」
「カタイなぁ恵は。ちょっとくらい良いじゃん、減るもんじゃなし」
呪力は減りますけど、と言い返そうとして辞めた。ああ言えばこう言う、もうめんどくさいー伏黒は部屋の中央へ進み出た。入り口付近で戸惑っている芙蓉に、五条は自身の近くにいるように言いつけ、彼女が近くにやって来た事を確認すると伏黒に声をかけた。
「恵、少しずつ僕の術式の効果範囲を小さくしていくよ。準備はいいかい?」
「…いつでもどうぞ」
可愛げがないなぁ、などと五条がぼやくと、部屋の隅の辺りからザワザワと不明瞭な声が聞こえてくるー大小様々な呪いが姿を現した。徐々に数が増えていく呪いに芙蓉は身体を強張らせる。
「今、僕と芙蓉の周りにはバリアみたいなのが張ってあるから、連中は僕たちには近寄れない。怖がらなくても大丈夫だよ」
五条の言う通り、呪霊はある一定の距離以上は近づけないようだった。
伏黒はひとつ深呼吸をして掌印を結ぶ。その掌印の影が床に落ちると、そこから白と黒の大きな犬が2匹、唸り声をあげながら実体を持って現れた。
「あれが恵の術式、十種影法術だよ」
伏黒が召喚した2匹の犬は牙を剥きながら近付いてくる呪いに飛びかかった。その犬を操りながら、伏黒は次々と襲いかかってくる呪いを祓っていく。
「鵺」
再び伏黒が掌印を結ぶ。先程と同じように床に落ちた影から、今度は巨大な鳥が火花を散らしながら姿を見せる。その刹那、鳥は高く飛翔すると伏黒の上から現れた呪いに雷を落とし呪いを祓う。
芙蓉は伏黒が呪いを祓うのをただ呆然と見ているだけしか出来なかった。
「いいかい芙蓉、自身の魂に刻まれている術式を駆使して呪いを祓うのが呪術師だ。恵はまだ呪術師の卵なんだけど…、将来有望な術師だね」
初めて見る祓除の様子。伏黒の術式、自身の体術でも呪いを祓う伏黒。全てが芙蓉の想像を超えていた。
「恵ぃ、そろそろ終わりにしようか」
五条が手招きすると、伏黒は五条と芙蓉の元へさっと走って来る。いつの間にか2匹の犬と大きな鳥は姿を消していた。
「じゃ、今度は僕の術式ね」
何処となく楽しそうな五条。彼が部屋の中心に向けて手を翳すと、小さな青い球体が現れる。
「蒼」
青い球体の色味が少し変わったようなーと芙蓉が思ったのも束の間、辺りにいた呪いが全てー存在も声もその球体に吸い込まれていく。
静寂。
「…はーい、おしまい。じゃ、ここで長話もなんだから、部屋に戻って復習といこうか」
ここでも五条は1人先に歩き出す。そこで芙蓉は部屋に入った時に感じた不快感や頭痛がなくなっている事に気付く。
「呪いが、いなくなった…?」
空気も清浄されているような気もする。耳が痛くなる程の静寂に、声がよく響いた。芙蓉が戸惑いながら伏黒を振り返ると頷いてみせる。
「さっき見た通り、全部あの人が祓ったんだ」
「…恵、もしかして悟くんて、すごい人なの?」
「そーよぉ、僕、最強だからぁ〜」
「…」
もう部屋を出て行ったと思っていた五条の声が飛んできたことに芙蓉は肩を揺らして驚いた。
「とりあえず早く戻るぞ。また呪いが湧いてくるかもしれないからな」
「湧く…?ここって何なの?」
出入り口に向かいながら、改めて広間を見渡す。壁には無数の亀裂が走っている。床も天井も傷だらけだが、崩壊を思わせるような状況ではない。かなり頑丈に作ってあるだろうことが見て取れる。
「ここは鍛錬場、らしい。…対呪霊のな。俺も詳しく聞いたわけじゃないから想像の話になるが、恐らく強い呪物を置いて呪いを寄せてるんだろう」
「…じゃあ、やっぱり前に私が見たのって、」
「あぁ、呪いだったんだろうな」
幼い頃に見たあの巨大な目と、呪いを祓う伏黒の姿を思い出す。もしも自分に術式があったとしてーそんな事が頭を擡げる。2人は階段を昇り、先程の部屋を目指す。外はもう夜が顔を出していた。
「ま、余計な事考えてねぇで、あの人が言ってた通り、早めに呪力の扱い方を覚えた方がいい。今のままじゃ、呪霊が寄ってくるだろうからな。…芙蓉に必要なのは戦う事じゃない。その辺勘違いすんなよ」
その言葉に、芙蓉は身の引き締まる思いがした。
伏黒と芙蓉が地下の奥まった部屋へ足を踏み入れると、待ってたよ、と五条が薄く笑った。軽く戯けたような声色とは裏腹に、部屋の空気は重い。初めてこの部屋に入った芙蓉は何とも言えない不快感、身体の重さと軽い頭痛を覚えた。
地下の部屋はとても広く、地上階がすっぽり収まってしまいそうな広さだった。天井も高く、部屋というより広間という方がしっくりくる。
「さて、恵。今日は特別メニューだ。そんなに強いのもいないから、自由にやっていいよ」
「…今日は1日休みなんですが」
「まぁまぁ、そうカタイ事言わないでさ。ちょっとだけ芙蓉に祓除がどんな感じか見せてあげてよ」
「…さっき、芙蓉に教えるのは呪力の扱い方って言ってましたよね?」
「カタイなぁ恵は。ちょっとくらい良いじゃん、減るもんじゃなし」
呪力は減りますけど、と言い返そうとして辞めた。ああ言えばこう言う、もうめんどくさいー伏黒は部屋の中央へ進み出た。入り口付近で戸惑っている芙蓉に、五条は自身の近くにいるように言いつけ、彼女が近くにやって来た事を確認すると伏黒に声をかけた。
「恵、少しずつ僕の術式の効果範囲を小さくしていくよ。準備はいいかい?」
「…いつでもどうぞ」
可愛げがないなぁ、などと五条がぼやくと、部屋の隅の辺りからザワザワと不明瞭な声が聞こえてくるー大小様々な呪いが姿を現した。徐々に数が増えていく呪いに芙蓉は身体を強張らせる。
「今、僕と芙蓉の周りにはバリアみたいなのが張ってあるから、連中は僕たちには近寄れない。怖がらなくても大丈夫だよ」
五条の言う通り、呪霊はある一定の距離以上は近づけないようだった。
伏黒はひとつ深呼吸をして掌印を結ぶ。その掌印の影が床に落ちると、そこから白と黒の大きな犬が2匹、唸り声をあげながら実体を持って現れた。
「あれが恵の術式、十種影法術だよ」
伏黒が召喚した2匹の犬は牙を剥きながら近付いてくる呪いに飛びかかった。その犬を操りながら、伏黒は次々と襲いかかってくる呪いを祓っていく。
「鵺」
再び伏黒が掌印を結ぶ。先程と同じように床に落ちた影から、今度は巨大な鳥が火花を散らしながら姿を見せる。その刹那、鳥は高く飛翔すると伏黒の上から現れた呪いに雷を落とし呪いを祓う。
芙蓉は伏黒が呪いを祓うのをただ呆然と見ているだけしか出来なかった。
「いいかい芙蓉、自身の魂に刻まれている術式を駆使して呪いを祓うのが呪術師だ。恵はまだ呪術師の卵なんだけど…、将来有望な術師だね」
初めて見る祓除の様子。伏黒の術式、自身の体術でも呪いを祓う伏黒。全てが芙蓉の想像を超えていた。
「恵ぃ、そろそろ終わりにしようか」
五条が手招きすると、伏黒は五条と芙蓉の元へさっと走って来る。いつの間にか2匹の犬と大きな鳥は姿を消していた。
「じゃ、今度は僕の術式ね」
何処となく楽しそうな五条。彼が部屋の中心に向けて手を翳すと、小さな青い球体が現れる。
「蒼」
青い球体の色味が少し変わったようなーと芙蓉が思ったのも束の間、辺りにいた呪いが全てー存在も声もその球体に吸い込まれていく。
静寂。
「…はーい、おしまい。じゃ、ここで長話もなんだから、部屋に戻って復習といこうか」
ここでも五条は1人先に歩き出す。そこで芙蓉は部屋に入った時に感じた不快感や頭痛がなくなっている事に気付く。
「呪いが、いなくなった…?」
空気も清浄されているような気もする。耳が痛くなる程の静寂に、声がよく響いた。芙蓉が戸惑いながら伏黒を振り返ると頷いてみせる。
「さっき見た通り、全部あの人が祓ったんだ」
「…恵、もしかして悟くんて、すごい人なの?」
「そーよぉ、僕、最強だからぁ〜」
「…」
もう部屋を出て行ったと思っていた五条の声が飛んできたことに芙蓉は肩を揺らして驚いた。
「とりあえず早く戻るぞ。また呪いが湧いてくるかもしれないからな」
「湧く…?ここって何なの?」
出入り口に向かいながら、改めて広間を見渡す。壁には無数の亀裂が走っている。床も天井も傷だらけだが、崩壊を思わせるような状況ではない。かなり頑丈に作ってあるだろうことが見て取れる。
「ここは鍛錬場、らしい。…対呪霊のな。俺も詳しく聞いたわけじゃないから想像の話になるが、恐らく強い呪物を置いて呪いを寄せてるんだろう」
「…じゃあ、やっぱり前に私が見たのって、」
「あぁ、呪いだったんだろうな」
幼い頃に見たあの巨大な目と、呪いを祓う伏黒の姿を思い出す。もしも自分に術式があったとしてーそんな事が頭を擡げる。2人は階段を昇り、先程の部屋を目指す。外はもう夜が顔を出していた。
「ま、余計な事考えてねぇで、あの人が言ってた通り、早めに呪力の扱い方を覚えた方がいい。今のままじゃ、呪霊が寄ってくるだろうからな。…芙蓉に必要なのは戦う事じゃない。その辺勘違いすんなよ」
その言葉に、芙蓉は身の引き締まる思いがした。