不倶戴天
恵の幼馴染のお名前は?
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「いいよ、その件は僕が預かる」
「ですが…」
「僕を誰だと思ってんの?」
芙蓉と別れ、場所を移動した五条と伊地知。そこである案件についての話し合いが持たれ、五条が押し切る形で決着したらしかった。
「…こんな事は想像もしなかったけど…、有り得ない話じゃないからね、残念だけど」
「……」
「お前が気にしたって何にもならないし、誰のせいでもない。世の中どーにもなんない事だってあるんだから。補助監督何年やってんの?」
「……」
気落ちした様に背を丸めて小さくなった伊地知の背を労う様に五条が強めに叩く。痛いです、と伊地知が顔を顰めるのを見て五条は口元を緩めた。
「伊地知のクセに、1人で何でも背負い込んでんじゃねぇっつぅの」
真希と憂憂は夜明け前に拠点を出立し、日が暮れる頃合いに津美紀と共に戻ってきた。医務室で待っていた家入と芙蓉は真希と憂憂を労い、退出しようとする2人に、今にも泣き出しそうな顔の芙蓉を連れて行く様に伝えた。戸惑いを見せる芙蓉に構わず、真希は芙蓉の手を引いて部屋を出た。
「…なんで、」
「硝子さんの気遣いだろ。…少し気を落ち着けな」
近しい人の死というのは、本人が思う以上にメンタルに影響を与える。渋谷での出来事、伏黒の不在ー芙蓉を気遣うのは当然の事と言えた。
2人と共にラウンジに移動すれば、虎杖と脹相と鉢合わせた。真希と憂憂、そして芙蓉を認めると、虎杖はあっと声を上げた。
「…津美紀の姉ちゃんは、」
「今、硝子さんのところ」
「そっか…、見つかって良かった。もう、会った?」
芙蓉は小さく首を振り、まだ、と呟いた。
「…高峰、俺も一緒に行って良い?」
予想しなかった言葉に芙蓉は虎杖を見上げ、小さく頷いた。そのやり取りを見ていた真希は、悟んとこに報告に行ってくる、と憂憂と共に行ってしまった。
「……」
残された芙蓉と虎杖、脹相は近くのベンチに座るも誰も口を開こうとせず、黙ったままだった。何を言っても、何の意味も役にも立たない事は互いに理解していた。
と、芙蓉のスマホが着信を告げる。家入からで、医務室に来るようにとの事だった。通話を終えた芙蓉はスマホを握りしめ、真っ黒になった画面を見つめていた。
「…んじゃ、行こっか」
芙蓉の背を押す様に虎杖は立ち上がって言った。彼の言う通り、ここに居ても何もならないし、津美紀の遺体回収を願ったのは自分自身ー芙蓉は立ち上がった。
「…俺はここに居る。2人で行ってくるといい」
虎杖の視線を受けた脹相は動こうとする様子も、何か言う様子もない。彼なりの気遣いだろうと汲んだ虎杖は芙蓉と並んで医務室へ歩き出した。
勇気を振り絞って芙蓉が医務室に足を踏み入れると、家入と共に五条が2人を出迎えた。
「…悟くん」
「真希は上手くやってくれたみたいだね」
そう言うと、五条はスマホを取り出して誰かに電話をかけ始めた。用件だけを伝えてすぐに通話を切ると、硝子、と声を掛けた。
「…まだあちこちに傷があるが、これからエンバーミングをするつもりだ」
ベッドの上、寝袋の様な物ー納体袋から津美紀が顔を出していた。家入が丁重に汚れを落として化粧を施したのだろう、眠っているだけの様に見えた。
「…津美紀ちゃん…」
名を呼ばずにいられなかったー芙蓉は彼女の頬に手を伸ばした。指先が触れると、温度のない肌に驚いた手が反射的に頬から離れる。否応無く津美紀の命が尽きてしまった事を理解せざるを得なかった。
「…眠ってる、顔は…、見飽きた、よ」
芙蓉の目から涙が、口からは嗚咽が次々とこぼれ落ちていく。その涙を拭う事、震える肩を慰める事ー虎杖は自身にそんな資格はないと拳を握り締めた。全ては自分が宿儺を抑える事が出来なかったからだと苛んでいた。
そんな空気を破る様に、ドアを叩く音が響いた。
「…来たかな」
五条の呟きとほぼ同時にドアが開き、姿を見せたのは芙蓉には見覚えのない人物。
「…アンタ…、渋谷で、東堂と一緒にいた、」
「京都校の新田です」
「早速だけど君の術式、彼女に使ってやってよ」
軽い口調ながら拒否する事は出来そうにない五条の言葉に、新田はベッドへ近寄りー声を上げた。
「いやいやいや!この方は…もう…、」
「それは承知の上だ。…だが、彼女と会わせてやりたい奴がいる。それまでで良い、力を貸してくれないか」
「新田、さん…、お願い、します…!」
「俺からも頼む!力を貸してくれ!」
五条だけでなく、家入、芙蓉、虎杖からも助力を請われ、新田は酷く困惑した顔を見せる。が、ややあって、新田は大きく息を吐いた。
「…わかりました。…亡くなった方に術式を使うのは初めてなので、上手くいくかわかりませんけど、」
落ち着いた静かな声で承諾を口にした。新田は印を結ぶと、津美紀へと術式を施した。
「…あんま期待せんといてくださいよ」
「っありがと、ござい、ます…」
泣きながら何度も頭を下げる芙蓉に恐縮しながら、新田は失礼します、と部屋を出て行った。
「…少し落ち着いたら、高峰にも手を借りて支度を整えようと思ってる。いけるか?」
「…はい。…よろしく、お願い、します」
まだ涙は止まりそうもないが、いつまでも泣いているわけにはいかないと、芙蓉は顔を上げた。
「芙蓉」
五条を見上げる。先程まで穏やかな顔をしていたはずが幾分険しさを感じ、芙蓉は不穏な気配を覚えた。
「…はい、?」
「…このタイミングで言うのも申し訳ないんだけど…、大事な話。いいかい」
五条の蒼い目が一度伏せられ、芙蓉を見つめる。
「千浪ちゃん…、君のお母さんの事なんだけどー」
心臓を掴まれた様な感覚に芙蓉は思わず息を止めた。
「ですが…」
「僕を誰だと思ってんの?」
芙蓉と別れ、場所を移動した五条と伊地知。そこである案件についての話し合いが持たれ、五条が押し切る形で決着したらしかった。
「…こんな事は想像もしなかったけど…、有り得ない話じゃないからね、残念だけど」
「……」
「お前が気にしたって何にもならないし、誰のせいでもない。世の中どーにもなんない事だってあるんだから。補助監督何年やってんの?」
「……」
気落ちした様に背を丸めて小さくなった伊地知の背を労う様に五条が強めに叩く。痛いです、と伊地知が顔を顰めるのを見て五条は口元を緩めた。
「伊地知のクセに、1人で何でも背負い込んでんじゃねぇっつぅの」
真希と憂憂は夜明け前に拠点を出立し、日が暮れる頃合いに津美紀と共に戻ってきた。医務室で待っていた家入と芙蓉は真希と憂憂を労い、退出しようとする2人に、今にも泣き出しそうな顔の芙蓉を連れて行く様に伝えた。戸惑いを見せる芙蓉に構わず、真希は芙蓉の手を引いて部屋を出た。
「…なんで、」
「硝子さんの気遣いだろ。…少し気を落ち着けな」
近しい人の死というのは、本人が思う以上にメンタルに影響を与える。渋谷での出来事、伏黒の不在ー芙蓉を気遣うのは当然の事と言えた。
2人と共にラウンジに移動すれば、虎杖と脹相と鉢合わせた。真希と憂憂、そして芙蓉を認めると、虎杖はあっと声を上げた。
「…津美紀の姉ちゃんは、」
「今、硝子さんのところ」
「そっか…、見つかって良かった。もう、会った?」
芙蓉は小さく首を振り、まだ、と呟いた。
「…高峰、俺も一緒に行って良い?」
予想しなかった言葉に芙蓉は虎杖を見上げ、小さく頷いた。そのやり取りを見ていた真希は、悟んとこに報告に行ってくる、と憂憂と共に行ってしまった。
「……」
残された芙蓉と虎杖、脹相は近くのベンチに座るも誰も口を開こうとせず、黙ったままだった。何を言っても、何の意味も役にも立たない事は互いに理解していた。
と、芙蓉のスマホが着信を告げる。家入からで、医務室に来るようにとの事だった。通話を終えた芙蓉はスマホを握りしめ、真っ黒になった画面を見つめていた。
「…んじゃ、行こっか」
芙蓉の背を押す様に虎杖は立ち上がって言った。彼の言う通り、ここに居ても何もならないし、津美紀の遺体回収を願ったのは自分自身ー芙蓉は立ち上がった。
「…俺はここに居る。2人で行ってくるといい」
虎杖の視線を受けた脹相は動こうとする様子も、何か言う様子もない。彼なりの気遣いだろうと汲んだ虎杖は芙蓉と並んで医務室へ歩き出した。
勇気を振り絞って芙蓉が医務室に足を踏み入れると、家入と共に五条が2人を出迎えた。
「…悟くん」
「真希は上手くやってくれたみたいだね」
そう言うと、五条はスマホを取り出して誰かに電話をかけ始めた。用件だけを伝えてすぐに通話を切ると、硝子、と声を掛けた。
「…まだあちこちに傷があるが、これからエンバーミングをするつもりだ」
ベッドの上、寝袋の様な物ー納体袋から津美紀が顔を出していた。家入が丁重に汚れを落として化粧を施したのだろう、眠っているだけの様に見えた。
「…津美紀ちゃん…」
名を呼ばずにいられなかったー芙蓉は彼女の頬に手を伸ばした。指先が触れると、温度のない肌に驚いた手が反射的に頬から離れる。否応無く津美紀の命が尽きてしまった事を理解せざるを得なかった。
「…眠ってる、顔は…、見飽きた、よ」
芙蓉の目から涙が、口からは嗚咽が次々とこぼれ落ちていく。その涙を拭う事、震える肩を慰める事ー虎杖は自身にそんな資格はないと拳を握り締めた。全ては自分が宿儺を抑える事が出来なかったからだと苛んでいた。
そんな空気を破る様に、ドアを叩く音が響いた。
「…来たかな」
五条の呟きとほぼ同時にドアが開き、姿を見せたのは芙蓉には見覚えのない人物。
「…アンタ…、渋谷で、東堂と一緒にいた、」
「京都校の新田です」
「早速だけど君の術式、彼女に使ってやってよ」
軽い口調ながら拒否する事は出来そうにない五条の言葉に、新田はベッドへ近寄りー声を上げた。
「いやいやいや!この方は…もう…、」
「それは承知の上だ。…だが、彼女と会わせてやりたい奴がいる。それまでで良い、力を貸してくれないか」
「新田、さん…、お願い、します…!」
「俺からも頼む!力を貸してくれ!」
五条だけでなく、家入、芙蓉、虎杖からも助力を請われ、新田は酷く困惑した顔を見せる。が、ややあって、新田は大きく息を吐いた。
「…わかりました。…亡くなった方に術式を使うのは初めてなので、上手くいくかわかりませんけど、」
落ち着いた静かな声で承諾を口にした。新田は印を結ぶと、津美紀へと術式を施した。
「…あんま期待せんといてくださいよ」
「っありがと、ござい、ます…」
泣きながら何度も頭を下げる芙蓉に恐縮しながら、新田は失礼します、と部屋を出て行った。
「…少し落ち着いたら、高峰にも手を借りて支度を整えようと思ってる。いけるか?」
「…はい。…よろしく、お願い、します」
まだ涙は止まりそうもないが、いつまでも泣いているわけにはいかないと、芙蓉は顔を上げた。
「芙蓉」
五条を見上げる。先程まで穏やかな顔をしていたはずが幾分険しさを感じ、芙蓉は不穏な気配を覚えた。
「…はい、?」
「…このタイミングで言うのも申し訳ないんだけど…、大事な話。いいかい」
五条の蒼い目が一度伏せられ、芙蓉を見つめる。
「千浪ちゃん…、君のお母さんの事なんだけどー」
心臓を掴まれた様な感覚に芙蓉は思わず息を止めた。