不倶戴天
恵の幼馴染のお名前は?
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翌日、芙蓉は目を覚ますといつも通りに医務室へ向かい、家入と共にケアが必要な者の状態を確認する。前日から特に大きな変化もなく、芙蓉はここ数日の日課となっている来栖の食事を手に彼女の部屋を訪れた。食事を持参した旨を告げてドアを開ける。
「…!…もう大丈夫なんですか?」
部屋に入った時に感じた天使の呪力。何処となく室内の空気が清浄している様に感じられる。
「皆の献身的な支援のお陰だ、感謝する」
「来栖さんもしっかり食べて体力つけてくださいね」
芙蓉は食事のセッティングをすると、家入を呼んでくると言い置いて部屋を出た。天使が回復した事と五条の解放はほぼイコール、自然と芙蓉の足取りが速まる。
家入に状況を伝えると、その後は水が流れていく様に物事が動き出したー天使の術式で獄門疆を解く。五条の精神状態を考慮し、高専の修練場へ移動する事となった。
様々な可能性や状況を考慮して、家入と学生らは補助監督の運転する数台の車に分乗して現場へ向かう。芙蓉は虎杖が乗る車に乗り込んだ。
「虎杖くん、脹相さんは?」
「ん、受肉体にとって天使の術式に近付くのは良くないらしいんだわ。だから行かないって」
「…そう、」
「なんか用あった?」
芙蓉は何から話そうか、どう話そうかを暫し考えーややあってからゆっくりと口を開いた。
「…受肉体の話。…津美紀ちゃんの事」
虎杖は沈黙を守る事で芙蓉に先を促した。
「受肉体は、器となる肉体の自我を沈めて肉体の主導権を握るって、天使から聞いたの。術師と非術師の力の差で、受肉する側が優位になるだろうって事も。…そうなると…、津美紀ちゃんは…もう、戻れないのかなって」
虎杖は黙ったまま俯いた。何を言っても芙蓉の願いに応えられそうになかった。
「っごめんね、…どうしても…、信じられないっていうか…、…そうだ」
芙蓉が自身を振り返る気配に、虎杖は顔を上げた。
「あの式神…なんて言ったっけ?」
「あぁ、コガネ?」
『あいよ!』
宙に現れた髑髏が場違いに元気な声で返事をする。
「…津美紀ちゃん…伏黒津美紀は今、何処にいるの?」
『仙台結界で活動が停止しています』
「…は?どゆこと?」
突然の機械的な声に思わず虎杖は声を上げ、芙蓉は膝の上の拳を握り、身を固くした。
『…死亡が確認されています』
「……」
信じたくなかった現実、覚悟していた現実。
虎杖は眉間に皺を寄せて芙蓉を振り返る。
「…大丈夫…、…むしろ、勝手に身体を使われてる方が嫌だったから…、津美紀ちゃん…、やっとこれで、…休めるんだよ、ね…」
虎杖は無意識に拳を握っていた。呪いは何処まで行っても呪い、人を悲しませるだけの存在。芙蓉にかける言葉を探す虎杖だが、芙蓉は儚げに笑った。
「…もうすぐ悟くんが戻ってくるんだもんね…、泣いてばかりじゃダメだよね」
涙を滲ませたまま笑う芙蓉に虎杖は奥歯を噛み締めた。
「…虎杖くん」
落ち着いた芙蓉の声。
「私…、恵が戻ってくるまで、…泣かないから」
虎杖は視線を下げ、脚の間で組んだ手を見つめたまま何かを考えている様に見えー顔を上げて口を開いた。
「…伏黒から…、高峰には言うんじゃねぇって、言われた事なんだけどさ」
芙蓉が虎杖に顔を向けるも、彼はじっと前を見たまま言葉を続ける。
「…死滅回游に参加する前…、高峰と別れた後の話なんだけど。…伏黒…、自分に何かあったら、高峰の事頼むって言ってきてさ」
芙蓉は虎杖から目が離せないでいた。
「…“アイツは自分の事よりも他人を優先する様なところがあって…、辛い事があっても周りに心配をかけない様に、それを他人に見せない様に、気持ちを抑え込むところがある。…アイツが無理しない様に、アイツの気持ちが壊れない様にフォローしてやってくれ”…って」
そこまで言って、虎杖は一旦言葉を切った。芙蓉が涙を堪えている様な気配に、彼は前を見続けていた。
「“少しずつ、ゆっくりでも良いから立ち直って、自分の足で歩いていけるようになって欲しいんだ”って」
湿り気を帯びた溜め息に続き、恵の、バカ、と言う弱々しい芙蓉の声が虎杖の耳に届く。
「あ、あと…、“お前から手ェ出すんじゃねぇぞ、それだけは絶対許さねぇからな”…ってさ」
「…何、それ…、もぅ…」
涙を流しながらも芙蓉が吹き出して笑うのを見て、虎杖は内心安堵した。
「…正直なところ、俺が高峰の役に立てるかはわからんけど…、なんかあったら何でも話してよ。…当然伏黒の代わりにはなれねぇけど、話聞くだけしか出来んけどさ、話せば少し楽になるかもじゃん?…結局のところ、自分のワガママになるんだけどさ…、俺は、自分の手が届く範囲の人の事は絶対に助けたい。伏黒も高峰も大事な仲間、困ってたら助けたい」
本当に、なんて頼りになる仲間だろうー芙蓉は制服の袖で涙を乱暴に拭った。
「ありがとう虎杖くん」
「ホラ、前に伏黒の事は死んでも助けるって言ったじゃん?…俺、こー見えて約束は守るタイプだからさ」
「ふふ、今の話は聞かなかった事にしておくね」
「…?…あーっ!」
突然の虎杖の大声に、ハンドルを握る補助監督は驚きの声を上げた。すんません、と慌てて謝罪をする虎杖に自然と笑みが溢れ、芙蓉は再び小さく笑い出す。
現実と状況は変わらないが、芙蓉は少しだけ気持ちが軽くなった様に感じていた。虎杖の言葉と彼を信じる事で、どうにか自身を奮い立たせる事ができる様になったようなー少なくとも虎杖を信じる事で、何も出来ない自分に役割を与えられたというか。
ー悟くんも戻って来る、きっと恵も大丈夫。
2人を乗せた車は修練場へ到着した。
「…!…もう大丈夫なんですか?」
部屋に入った時に感じた天使の呪力。何処となく室内の空気が清浄している様に感じられる。
「皆の献身的な支援のお陰だ、感謝する」
「来栖さんもしっかり食べて体力つけてくださいね」
芙蓉は食事のセッティングをすると、家入を呼んでくると言い置いて部屋を出た。天使が回復した事と五条の解放はほぼイコール、自然と芙蓉の足取りが速まる。
家入に状況を伝えると、その後は水が流れていく様に物事が動き出したー天使の術式で獄門疆を解く。五条の精神状態を考慮し、高専の修練場へ移動する事となった。
様々な可能性や状況を考慮して、家入と学生らは補助監督の運転する数台の車に分乗して現場へ向かう。芙蓉は虎杖が乗る車に乗り込んだ。
「虎杖くん、脹相さんは?」
「ん、受肉体にとって天使の術式に近付くのは良くないらしいんだわ。だから行かないって」
「…そう、」
「なんか用あった?」
芙蓉は何から話そうか、どう話そうかを暫し考えーややあってからゆっくりと口を開いた。
「…受肉体の話。…津美紀ちゃんの事」
虎杖は沈黙を守る事で芙蓉に先を促した。
「受肉体は、器となる肉体の自我を沈めて肉体の主導権を握るって、天使から聞いたの。術師と非術師の力の差で、受肉する側が優位になるだろうって事も。…そうなると…、津美紀ちゃんは…もう、戻れないのかなって」
虎杖は黙ったまま俯いた。何を言っても芙蓉の願いに応えられそうになかった。
「っごめんね、…どうしても…、信じられないっていうか…、…そうだ」
芙蓉が自身を振り返る気配に、虎杖は顔を上げた。
「あの式神…なんて言ったっけ?」
「あぁ、コガネ?」
『あいよ!』
宙に現れた髑髏が場違いに元気な声で返事をする。
「…津美紀ちゃん…伏黒津美紀は今、何処にいるの?」
『仙台結界で活動が停止しています』
「…は?どゆこと?」
突然の機械的な声に思わず虎杖は声を上げ、芙蓉は膝の上の拳を握り、身を固くした。
『…死亡が確認されています』
「……」
信じたくなかった現実、覚悟していた現実。
虎杖は眉間に皺を寄せて芙蓉を振り返る。
「…大丈夫…、…むしろ、勝手に身体を使われてる方が嫌だったから…、津美紀ちゃん…、やっとこれで、…休めるんだよ、ね…」
虎杖は無意識に拳を握っていた。呪いは何処まで行っても呪い、人を悲しませるだけの存在。芙蓉にかける言葉を探す虎杖だが、芙蓉は儚げに笑った。
「…もうすぐ悟くんが戻ってくるんだもんね…、泣いてばかりじゃダメだよね」
涙を滲ませたまま笑う芙蓉に虎杖は奥歯を噛み締めた。
「…虎杖くん」
落ち着いた芙蓉の声。
「私…、恵が戻ってくるまで、…泣かないから」
虎杖は視線を下げ、脚の間で組んだ手を見つめたまま何かを考えている様に見えー顔を上げて口を開いた。
「…伏黒から…、高峰には言うんじゃねぇって、言われた事なんだけどさ」
芙蓉が虎杖に顔を向けるも、彼はじっと前を見たまま言葉を続ける。
「…死滅回游に参加する前…、高峰と別れた後の話なんだけど。…伏黒…、自分に何かあったら、高峰の事頼むって言ってきてさ」
芙蓉は虎杖から目が離せないでいた。
「…“アイツは自分の事よりも他人を優先する様なところがあって…、辛い事があっても周りに心配をかけない様に、それを他人に見せない様に、気持ちを抑え込むところがある。…アイツが無理しない様に、アイツの気持ちが壊れない様にフォローしてやってくれ”…って」
そこまで言って、虎杖は一旦言葉を切った。芙蓉が涙を堪えている様な気配に、彼は前を見続けていた。
「“少しずつ、ゆっくりでも良いから立ち直って、自分の足で歩いていけるようになって欲しいんだ”って」
湿り気を帯びた溜め息に続き、恵の、バカ、と言う弱々しい芙蓉の声が虎杖の耳に届く。
「あ、あと…、“お前から手ェ出すんじゃねぇぞ、それだけは絶対許さねぇからな”…ってさ」
「…何、それ…、もぅ…」
涙を流しながらも芙蓉が吹き出して笑うのを見て、虎杖は内心安堵した。
「…正直なところ、俺が高峰の役に立てるかはわからんけど…、なんかあったら何でも話してよ。…当然伏黒の代わりにはなれねぇけど、話聞くだけしか出来んけどさ、話せば少し楽になるかもじゃん?…結局のところ、自分のワガママになるんだけどさ…、俺は、自分の手が届く範囲の人の事は絶対に助けたい。伏黒も高峰も大事な仲間、困ってたら助けたい」
本当に、なんて頼りになる仲間だろうー芙蓉は制服の袖で涙を乱暴に拭った。
「ありがとう虎杖くん」
「ホラ、前に伏黒の事は死んでも助けるって言ったじゃん?…俺、こー見えて約束は守るタイプだからさ」
「ふふ、今の話は聞かなかった事にしておくね」
「…?…あーっ!」
突然の虎杖の大声に、ハンドルを握る補助監督は驚きの声を上げた。すんません、と慌てて謝罪をする虎杖に自然と笑みが溢れ、芙蓉は再び小さく笑い出す。
現実と状況は変わらないが、芙蓉は少しだけ気持ちが軽くなった様に感じていた。虎杖の言葉と彼を信じる事で、どうにか自身を奮い立たせる事ができる様になったようなー少なくとも虎杖を信じる事で、何も出来ない自分に役割を与えられたというか。
ー悟くんも戻って来る、きっと恵も大丈夫。
2人を乗せた車は修練場へ到着した。