不倶戴天
恵の幼馴染のお名前は?
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「…ごめんね、虎杖くん」
「俺は…、何も」
泣き腫らした目元や鼻が赤いまま、芙蓉は漸く落ち着きを取り戻して顔を上げた。
「……」
芙蓉の顔を見て、虎杖は拳を握った。
「…宿儺は伏黒の術式を使ってた。術式ってのは魂に刻まれてるって、五条先生から教わった。だから伏黒は生きてる。…伏黒はぜってぇ、死んでも助けるから」
虎杖の言葉に引っ込んだばかりの涙がまた溢れ出しそうになり、芙蓉は何度も頷いた。
「ありがとう…」
そんな芙蓉の様子に、一応安堵した虎杖。
「虎杖くん」
「ん?」
「津美紀ちゃん…、恵の、お姉さんは、」
虎杖は言葉に詰まった。伏黒は宿儺にとらわれ、その姉の津美紀は受肉体だったーどう伝えるべきか。
「私は大丈夫だから…、何が起きてるのか知りたい」
今までとは違う、覚悟を決めた様な芙蓉の目に、虎杖は確りと向き合った。
「…津美紀の姉ちゃんは…、受肉体、だったんだ」
虎杖の言葉に芙蓉は歯噛みしたー新田からの動画で感じた違和感は気のせいではなかったという事、そして自分や伏黒を欺いていた呪いに対しての怒りを覚えたと同時に、本当の津美紀に会う事は叶わなかったのだという悲しみを覚えた。
「…そっ、か」
感情の見えない声音に虎杖は何も言えなかった。
「…とりあえず…先輩達と情報の共有をしないといけないね。…虎杖くん、本当にありがとう。私も、…がんばるから…、絶対、負けない」
虎杖達が戻ってきたのをきっかけとした様に、秤やパンダ、乙骨、京都校の加茂といった面々が続々と拠点に戻ってきた。その中には初めて見る顔も数名居てー芙蓉は虎杖に改めて礼を言い、少し落ち着きたいと思い、一度その場を離れる事にした。
芙蓉は当てもなく拠点内を歩いていた。
これからどうなるのだろう。
伏黒は。津美紀は。
ふと、伏黒の身体に受肉した宿儺は伏黒の術式を使っていた、という虎杖の話を思い出して芙蓉は足を止めた。受肉が起きた時、その肉体の中では一体何が起こっているのだろうーそんな疑問が頭に浮かんできた。通路の壁に寄りかかる。知識として言葉の意味は理解しているが、そうなった人間がどうなっているのかは想像する他知り得ない。そうなった人間は存在するのだろうかーと思った時、ポケットのスマホから着信音が鳴った。
『家入だ。悪い、来れるか』
「はい、すぐ行きます」
真希が運んできた女性を思い出した。恐らく処置が終わって、片付けか術式の応援か。芙蓉は気持ちを振り払う様に医務室へと走り出した。
医務室の隣、先程無影灯を運び込んだ処置室のドアを叩き、高峰です、と声を掛ければ入室を促す家入の声が聞こえた。ドアを開ければ予想通り処置が終わったところらしかった。麻酔が効いているのだろうか、女性は静かに眠っている。
「身体の洗浄を手伝ってくれ。その後着替えを」
「はい」
芙蓉は家入が使っているものと同じマスクをつけ、何度か経験のある作業の準備を始めた。
「助かったよ高峰。もう大丈夫だろう」
「じゃ、片付け行ってきますね」
芙蓉は家入が使った器具や廃棄する物をまとめて部屋を出た。廃棄物の一時保管庫で廃棄する物を分別し、器具の洗浄消毒の為に通路側のシンクで前洗いをする。
「あ、高峰さん」
声に振り返れば高専では珍しい白が視界に入る。
「乙骨先輩…」
もう状況を把握しているのだろうかー彼は目を赤くした芙蓉の顔を見ると酷く心配そうな顔をした後、真剣な表情で芙蓉を見つめた。
「…。いろいろあって気持ちを落ち着かせるのも大変だけど、まずは1つずつ、確実にクリア出来る事からやっていこう。…大丈夫、1人じゃないから」
芙蓉は黙って頷くしか出来なかった。
「ところで、」
「…はい、」
「“天使”は家入さんのところかな?」
「…“天使”?…え、じゃああの人が…?」
真希が運んできた女性が、五条を解放するキーパーソンである天使だったとはー芙蓉は乙骨に頷いた。
「さっき処置が終わったところです」
「状況は?」
「…右腕を欠損しています。運ばれた時は意識がありませんでしたが…」
「ありがとう。確認したい事がいくつかあって。高峰さんももし良かったら、」
少し考えた後、芙蓉は首を振った。
「もう少し、…気持ちを整理させてください」
「っあ〜っ!そうだよね、ごめんね気が利かなくて」
慌てた様子の乙骨に少しだけ気持ちが解れた思いだったー伏黒は死んでも助ける、1人じゃないー芙蓉は乙骨に礼を述べ、天使の下へ向かう彼を見送った。
もしあの女性が本当に天使だとしたら、五条が獄門疆から解放される日が近いという事だろう。
すべての器具を洗い終え、芙蓉は水を止めた。ステンレスのトレイに器具を乗せ、医務室へ移動する。紫外線消毒を施す為、器具同士が重ならない様に並べ消毒機へ押し込んだ。スイッチを入れると青白い光が点灯した。
近くの椅子に座り、青白い光をぼんやりと見つめる。
様々な思いが頭の中をぐるぐると回っている。
ぐるぐると回るだけで、芙蓉の頭の中は思いを上手く処理出来ずに真っ白なままだった。
伏黒。死滅回游。津美紀。宿儺。五条。
ー何があっても、生き抜くの。
ー俺が死んでも、芙蓉は生きてくれ。
もしも、明日死ぬなら。
芙蓉はひと粒だけ溢れた涙を拭うと、虎杖から受け取った伏黒のネックレスをポケットから取り出した。
「……」
芙蓉は徐に自身のネックレスを外して手に取った。伏黒のネックレスから切れたチェーンを外し、自身のチェーンに伏黒のトップを通す。翳して見ると、サイズ違いの同じデザインのものが共に揺れた。芙蓉は再びネックレスを自身の首につける。感じられた重みと共に、伏黒との約束の重みを確りと噛み締めた。
「俺は…、何も」
泣き腫らした目元や鼻が赤いまま、芙蓉は漸く落ち着きを取り戻して顔を上げた。
「……」
芙蓉の顔を見て、虎杖は拳を握った。
「…宿儺は伏黒の術式を使ってた。術式ってのは魂に刻まれてるって、五条先生から教わった。だから伏黒は生きてる。…伏黒はぜってぇ、死んでも助けるから」
虎杖の言葉に引っ込んだばかりの涙がまた溢れ出しそうになり、芙蓉は何度も頷いた。
「ありがとう…」
そんな芙蓉の様子に、一応安堵した虎杖。
「虎杖くん」
「ん?」
「津美紀ちゃん…、恵の、お姉さんは、」
虎杖は言葉に詰まった。伏黒は宿儺にとらわれ、その姉の津美紀は受肉体だったーどう伝えるべきか。
「私は大丈夫だから…、何が起きてるのか知りたい」
今までとは違う、覚悟を決めた様な芙蓉の目に、虎杖は確りと向き合った。
「…津美紀の姉ちゃんは…、受肉体、だったんだ」
虎杖の言葉に芙蓉は歯噛みしたー新田からの動画で感じた違和感は気のせいではなかったという事、そして自分や伏黒を欺いていた呪いに対しての怒りを覚えたと同時に、本当の津美紀に会う事は叶わなかったのだという悲しみを覚えた。
「…そっ、か」
感情の見えない声音に虎杖は何も言えなかった。
「…とりあえず…先輩達と情報の共有をしないといけないね。…虎杖くん、本当にありがとう。私も、…がんばるから…、絶対、負けない」
虎杖達が戻ってきたのをきっかけとした様に、秤やパンダ、乙骨、京都校の加茂といった面々が続々と拠点に戻ってきた。その中には初めて見る顔も数名居てー芙蓉は虎杖に改めて礼を言い、少し落ち着きたいと思い、一度その場を離れる事にした。
芙蓉は当てもなく拠点内を歩いていた。
これからどうなるのだろう。
伏黒は。津美紀は。
ふと、伏黒の身体に受肉した宿儺は伏黒の術式を使っていた、という虎杖の話を思い出して芙蓉は足を止めた。受肉が起きた時、その肉体の中では一体何が起こっているのだろうーそんな疑問が頭に浮かんできた。通路の壁に寄りかかる。知識として言葉の意味は理解しているが、そうなった人間がどうなっているのかは想像する他知り得ない。そうなった人間は存在するのだろうかーと思った時、ポケットのスマホから着信音が鳴った。
『家入だ。悪い、来れるか』
「はい、すぐ行きます」
真希が運んできた女性を思い出した。恐らく処置が終わって、片付けか術式の応援か。芙蓉は気持ちを振り払う様に医務室へと走り出した。
医務室の隣、先程無影灯を運び込んだ処置室のドアを叩き、高峰です、と声を掛ければ入室を促す家入の声が聞こえた。ドアを開ければ予想通り処置が終わったところらしかった。麻酔が効いているのだろうか、女性は静かに眠っている。
「身体の洗浄を手伝ってくれ。その後着替えを」
「はい」
芙蓉は家入が使っているものと同じマスクをつけ、何度か経験のある作業の準備を始めた。
「助かったよ高峰。もう大丈夫だろう」
「じゃ、片付け行ってきますね」
芙蓉は家入が使った器具や廃棄する物をまとめて部屋を出た。廃棄物の一時保管庫で廃棄する物を分別し、器具の洗浄消毒の為に通路側のシンクで前洗いをする。
「あ、高峰さん」
声に振り返れば高専では珍しい白が視界に入る。
「乙骨先輩…」
もう状況を把握しているのだろうかー彼は目を赤くした芙蓉の顔を見ると酷く心配そうな顔をした後、真剣な表情で芙蓉を見つめた。
「…。いろいろあって気持ちを落ち着かせるのも大変だけど、まずは1つずつ、確実にクリア出来る事からやっていこう。…大丈夫、1人じゃないから」
芙蓉は黙って頷くしか出来なかった。
「ところで、」
「…はい、」
「“天使”は家入さんのところかな?」
「…“天使”?…え、じゃああの人が…?」
真希が運んできた女性が、五条を解放するキーパーソンである天使だったとはー芙蓉は乙骨に頷いた。
「さっき処置が終わったところです」
「状況は?」
「…右腕を欠損しています。運ばれた時は意識がありませんでしたが…」
「ありがとう。確認したい事がいくつかあって。高峰さんももし良かったら、」
少し考えた後、芙蓉は首を振った。
「もう少し、…気持ちを整理させてください」
「っあ〜っ!そうだよね、ごめんね気が利かなくて」
慌てた様子の乙骨に少しだけ気持ちが解れた思いだったー伏黒は死んでも助ける、1人じゃないー芙蓉は乙骨に礼を述べ、天使の下へ向かう彼を見送った。
もしあの女性が本当に天使だとしたら、五条が獄門疆から解放される日が近いという事だろう。
すべての器具を洗い終え、芙蓉は水を止めた。ステンレスのトレイに器具を乗せ、医務室へ移動する。紫外線消毒を施す為、器具同士が重ならない様に並べ消毒機へ押し込んだ。スイッチを入れると青白い光が点灯した。
近くの椅子に座り、青白い光をぼんやりと見つめる。
様々な思いが頭の中をぐるぐると回っている。
ぐるぐると回るだけで、芙蓉の頭の中は思いを上手く処理出来ずに真っ白なままだった。
伏黒。死滅回游。津美紀。宿儺。五条。
ー何があっても、生き抜くの。
ー俺が死んでも、芙蓉は生きてくれ。
もしも、明日死ぬなら。
芙蓉はひと粒だけ溢れた涙を拭うと、虎杖から受け取った伏黒のネックレスをポケットから取り出した。
「……」
芙蓉は徐に自身のネックレスを外して手に取った。伏黒のネックレスから切れたチェーンを外し、自身のチェーンに伏黒のトップを通す。翳して見ると、サイズ違いの同じデザインのものが共に揺れた。芙蓉は再びネックレスを自身の首につける。感じられた重みと共に、伏黒との約束の重みを確りと噛み締めた。