不倶戴天
恵の幼馴染のお名前は?
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「…いい加減落ち着いて座れ」
家入の言葉に、芙蓉は彼女を振り返った。
真希たちを見送ってから、芙蓉はスマホを握り締めたまま拠点内をあちこち歩き回っていた。何も出来ないからこそ落ち着かないー時刻は16時を過ぎていた。落ち着かないながらも、芙蓉は辿り着いた医務室の手近な椅子へ漸く腰を下ろした。
「…硝子さんは、平気だったんですか?」
コーヒーを淹れようと準備していた家入は芙蓉の問い掛けに、何が、と手を止めずに言った。
「その…、学生の頃から待つ側だったんですよね?悟くんとは、学生の頃の同期で、」
室内にふわりとコーヒーの匂いが広がる。コーヒーを好んで飲む伏黒と過ごした時間が芙蓉の中で思い出され、胸の奥がじわりと少し痛んだ。
「…そうだな」
マグカップ2つを手にした家入は芙蓉を振り返り、1つを芙蓉に手渡した。
「ミルクも砂糖もないが」
家入は自分のデスクに座るとコーヒーをひと口飲んだ。
「…私の術式は反転術式で他者の傷を癒す事。前線には立てない、専ら後方支援の術式。そんな私がアイツらを心配したって気にかけたって、アイツらの事は理解出来ないだろうし、況してや特級術師、その辺の術師とは比較にならない連中だ。…そういうのもあって、そう簡単にくたばるとは思わないし、割り切った感覚でいたな」
「……」
「高峰は私と違う。お前は自分でも前線に立って、戦う事の怖さも知ってる。だからこそ心配なんだろ」
芙蓉はカップのコーヒーを見つめた。漆黒の液体は手の動きに合わせてゆらゆら揺れている。ゆっくりと熱いコーヒーを口にすれば、苦い味が口いっぱいに広がった。
「…けど、それが普通なんじゃないか」
「え?」
「私が在籍してた期がおかしいんだ。同期に特級2人はまず有り得ない」
家入の言葉に芙蓉は彼女を振り返り、首を傾げた。
「特級2人って…、硝子さんと悟くんの他にもう1人いたんですか…⁉︎」
「…なんだ、知らなかったのか」
家入は煙草を咥え、ライターの火を翳した。コーヒーとはまた違う、独特の匂いが広がる。
「…夏油、って言ってな。五条といつもつるんでた」
五条とつるんでいた、という事は仲が良いという事ーこの状況、夏油に助けてもらうのは出来ないのかと芙蓉が尋ねると、家入は困った様に笑った。
「生憎、夏油は去年死んだよ」
想像もしなかった言葉に芙蓉は言葉を失った。
「…ま、上手くいく事ばかりじゃないって事だ」
と、デスクの上に置かれていた家入のスマホが着信を告げ始めた。億劫そうにスマホの画面を見た家入の表情が変わり、素早くスマホを手に取った。
「高峰、悪いが手を借りるぞ」
「え、…?」
「処置室にベッドがあるな、あそこに無影灯を運ぶ。それが出来たら麻酔と酸素、手術器具を準備する。あとはガーゼをありったけ準備してくれ。急ぐぞ」
状況もわからないまま、芙蓉は家入に従って立ち上がった。芙蓉はざわめきだした気持ちを押さえながら指示された物の準備を始めた。
慌ただしく準備を整えたところでバタバタと医務室へと人が出入りし始めた。真希と津美紀を乗せて行った新田、津美紀の身代わりになると言っていた伊地知。そして酷く血に汚れ、意識を失った女性を抱えた真希が姿を見せ、芙蓉は息を飲んだ。
「こっちに!高峰!」
家入の声に芙蓉は慌てて家入の下へ走り、真希が抱える女性をベッドへと寝かせる事に手を貸した。その女性は片腕が欠損している様に見えー芙蓉は家入が処置の準備をしている間に彼女のボロボロになった服を取り除き、手術用ドレープを準備した。
「…終わったら声をかける、外で待ってな」
家入の言葉に従い、芙蓉と真希は部屋を出る。
「真希さんケガは、」
「…私より悠仁を見てやれ」
それだけ言うと、真希は芙蓉に背を向けて行ってしまった。状況が掴めないながらも、芙蓉は伏黒の姿がない事が酷く気掛かりだった。虎杖と共にいるのだろうかと、芙蓉は拠点内のラウンジへと走った。
「虎杖くん!」
息を切らせて声を掛けると、床に座り込んでいた虎杖が血に汚れた顔で、覇気のない目で芙蓉を見上げた。
「高峰…」
「虎杖くん、ケガは」
「ごめん…」
呻く様な、絞り出された声に芙蓉は動きを止めた。
「…これ、」
虎杖が何かを渡す様に差し出してきた手。芙蓉は身体を屈めて視線の高さを合わせ、震え始めた手でそれを受け取るー見覚えのあるネックレス。芙蓉は虎杖を見た。
「…宿儺が、…、…伏黒に、受肉した」
正に頭を殴られた様な衝撃ー芙蓉は血の気が引く様な、全身の力が抜ける感覚に思わず座り込んだ。
「…それ…伏黒がつけてたって事は、…アイツが大事にしてる、もんなのかなって思って…、…チェーンは、…切れちまったけど…」
虎杖の言葉を聞きながら芙蓉は静かに涙を流し始めた。そんな彼女の様子に、虎杖は歯を食いしばった。
「…ごめん…、俺の、せいで」
虎杖の言葉に芙蓉は泣きながらも首を振った。
「虎杖、くんは、悪くない、…悪いのは、宿儺だよ」
「…っなん、で…、なんで伏黒も…高峰も!…“お前のせいじゃない”、“お前は悪くない”って…!なんで…、なんでそんな事言えんだよ⁉︎」
「…虎杖くんは、そんな人じゃないって、…わかってるから。…悪いのは、呪いだから、」
そこまで言って、芙蓉は深呼吸をした。
「…恵とは、…ちゃんと話、した、から、…覚悟、してた、つもり…っ、…っでも、ごめ…、今は、」
自分の意思で感情が抑えられないー堰を切ったように流れ始めた涙に芙蓉は押し流された。
家入の言葉に、芙蓉は彼女を振り返った。
真希たちを見送ってから、芙蓉はスマホを握り締めたまま拠点内をあちこち歩き回っていた。何も出来ないからこそ落ち着かないー時刻は16時を過ぎていた。落ち着かないながらも、芙蓉は辿り着いた医務室の手近な椅子へ漸く腰を下ろした。
「…硝子さんは、平気だったんですか?」
コーヒーを淹れようと準備していた家入は芙蓉の問い掛けに、何が、と手を止めずに言った。
「その…、学生の頃から待つ側だったんですよね?悟くんとは、学生の頃の同期で、」
室内にふわりとコーヒーの匂いが広がる。コーヒーを好んで飲む伏黒と過ごした時間が芙蓉の中で思い出され、胸の奥がじわりと少し痛んだ。
「…そうだな」
マグカップ2つを手にした家入は芙蓉を振り返り、1つを芙蓉に手渡した。
「ミルクも砂糖もないが」
家入は自分のデスクに座るとコーヒーをひと口飲んだ。
「…私の術式は反転術式で他者の傷を癒す事。前線には立てない、専ら後方支援の術式。そんな私がアイツらを心配したって気にかけたって、アイツらの事は理解出来ないだろうし、況してや特級術師、その辺の術師とは比較にならない連中だ。…そういうのもあって、そう簡単にくたばるとは思わないし、割り切った感覚でいたな」
「……」
「高峰は私と違う。お前は自分でも前線に立って、戦う事の怖さも知ってる。だからこそ心配なんだろ」
芙蓉はカップのコーヒーを見つめた。漆黒の液体は手の動きに合わせてゆらゆら揺れている。ゆっくりと熱いコーヒーを口にすれば、苦い味が口いっぱいに広がった。
「…けど、それが普通なんじゃないか」
「え?」
「私が在籍してた期がおかしいんだ。同期に特級2人はまず有り得ない」
家入の言葉に芙蓉は彼女を振り返り、首を傾げた。
「特級2人って…、硝子さんと悟くんの他にもう1人いたんですか…⁉︎」
「…なんだ、知らなかったのか」
家入は煙草を咥え、ライターの火を翳した。コーヒーとはまた違う、独特の匂いが広がる。
「…夏油、って言ってな。五条といつもつるんでた」
五条とつるんでいた、という事は仲が良いという事ーこの状況、夏油に助けてもらうのは出来ないのかと芙蓉が尋ねると、家入は困った様に笑った。
「生憎、夏油は去年死んだよ」
想像もしなかった言葉に芙蓉は言葉を失った。
「…ま、上手くいく事ばかりじゃないって事だ」
と、デスクの上に置かれていた家入のスマホが着信を告げ始めた。億劫そうにスマホの画面を見た家入の表情が変わり、素早くスマホを手に取った。
「高峰、悪いが手を借りるぞ」
「え、…?」
「処置室にベッドがあるな、あそこに無影灯を運ぶ。それが出来たら麻酔と酸素、手術器具を準備する。あとはガーゼをありったけ準備してくれ。急ぐぞ」
状況もわからないまま、芙蓉は家入に従って立ち上がった。芙蓉はざわめきだした気持ちを押さえながら指示された物の準備を始めた。
慌ただしく準備を整えたところでバタバタと医務室へと人が出入りし始めた。真希と津美紀を乗せて行った新田、津美紀の身代わりになると言っていた伊地知。そして酷く血に汚れ、意識を失った女性を抱えた真希が姿を見せ、芙蓉は息を飲んだ。
「こっちに!高峰!」
家入の声に芙蓉は慌てて家入の下へ走り、真希が抱える女性をベッドへと寝かせる事に手を貸した。その女性は片腕が欠損している様に見えー芙蓉は家入が処置の準備をしている間に彼女のボロボロになった服を取り除き、手術用ドレープを準備した。
「…終わったら声をかける、外で待ってな」
家入の言葉に従い、芙蓉と真希は部屋を出る。
「真希さんケガは、」
「…私より悠仁を見てやれ」
それだけ言うと、真希は芙蓉に背を向けて行ってしまった。状況が掴めないながらも、芙蓉は伏黒の姿がない事が酷く気掛かりだった。虎杖と共にいるのだろうかと、芙蓉は拠点内のラウンジへと走った。
「虎杖くん!」
息を切らせて声を掛けると、床に座り込んでいた虎杖が血に汚れた顔で、覇気のない目で芙蓉を見上げた。
「高峰…」
「虎杖くん、ケガは」
「ごめん…」
呻く様な、絞り出された声に芙蓉は動きを止めた。
「…これ、」
虎杖が何かを渡す様に差し出してきた手。芙蓉は身体を屈めて視線の高さを合わせ、震え始めた手でそれを受け取るー見覚えのあるネックレス。芙蓉は虎杖を見た。
「…宿儺が、…、…伏黒に、受肉した」
正に頭を殴られた様な衝撃ー芙蓉は血の気が引く様な、全身の力が抜ける感覚に思わず座り込んだ。
「…それ…伏黒がつけてたって事は、…アイツが大事にしてる、もんなのかなって思って…、…チェーンは、…切れちまったけど…」
虎杖の言葉を聞きながら芙蓉は静かに涙を流し始めた。そんな彼女の様子に、虎杖は歯を食いしばった。
「…ごめん…、俺の、せいで」
虎杖の言葉に芙蓉は泣きながらも首を振った。
「虎杖、くんは、悪くない、…悪いのは、宿儺だよ」
「…っなん、で…、なんで伏黒も…高峰も!…“お前のせいじゃない”、“お前は悪くない”って…!なんで…、なんでそんな事言えんだよ⁉︎」
「…虎杖くんは、そんな人じゃないって、…わかってるから。…悪いのは、呪いだから、」
そこまで言って、芙蓉は深呼吸をした。
「…恵とは、…ちゃんと話、した、から、…覚悟、してた、つもり…っ、…っでも、ごめ…、今は、」
自分の意思で感情が抑えられないー堰を切ったように流れ始めた涙に芙蓉は押し流された。