出会い
恵の幼馴染のお名前は?
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伏黒と芙蓉を連れて、五条は屋敷の中心に位置する、地下へ伸びる階段の前へやって来た。
「…ここ、降りるの?」
恐怖心からか、灯りが少ないせいか、芙蓉の顔が少しだけ青白く見える。伏黒はこの階段を降りた事があるようで、顔色ひとつ変える事なく、先に進む五条の後を追って歩みを進めていく。それに遅れまいと、どうにか芙蓉もその後に続く。階段を降り切ると、暗い通路の突き当たりに部屋があるのが見えた。
「や、待って恵、」
か細い芙蓉の怯えた声に伏黒が振り返る。
「ちょっと暗いけど大丈夫だよ」
五条の方はさして気にする様子もなく、軽い調子で声をかけるも足は止めない。五条の言葉に合わせて伏黒が一歩足を踏み出す、と。
「っや…だ、いや…、やだっ、やだ、待って待って恵、行かないで!」
悲鳴にも近い訴えと共に、背中に何かがぶつかるような衝撃を覚えたー伏黒がゆっくり振り返ると、目に涙を浮かべた芙蓉が背中にしがみついていた。拒否を示すようにゆるゆると首を振っている。
「恵。僕は先に行ってるから、芙蓉が落ち着いたらゆっくりおいで」
芙蓉が取り乱したのはこの通路の暗さと雰囲気に恐怖を覚えたからだろうと思い、伏黒に芙蓉を託して突き当たりの部屋に入って行った。五条の言葉に頷いた伏黒は芙蓉の背を支えながら、先程降りたばかりの階段をゆっくり昇る。
階段から少し離れたところで伏黒は芙蓉の様子を伺う。芙蓉の顔は涙でぐしゃぐしゃになっていた。
「…大丈夫か?」
伏黒の言葉に何度か頷いてはいるが、幼い子供のようにしゃくりをあげながら、手の甲でゴシゴシと涙を拭っているせいで目の周りが赤くなっている。
「…とりあえず座るか」
伏黒はこれまでに何度か芙蓉が泣くのを見た事はあるが、ここまで大泣きしているのを見るのは初めてだった。ぐすぐすと嗚咽を上げる芙蓉が少しでも落ち着くようにと、伏黒は彼女の背を優しくさする。
「…小さい頃、あの部屋を覗いたことがあるの」
どれくらい経ったか、目はまだ赤いままではあるが、だいぶ落ち着きを取り戻した芙蓉が小さくポツリと言った。聞き漏らさないよう、伏黒は耳をそばだてる。
「確か幼稚園の頃かな。1人で退屈で、こんなに広いお屋敷だからって、あちこち探検してて。…しばらく思い出さなかったんだけど…、この階段を降りて、突き当たりの部屋を覗いてみたのを思い出して」
「…怖い想いしたんだな」
あの部屋の用途を知っている伏黒が気の毒そうに言えば、芙蓉は黙って頷いた。脳裏にはあの時見た巨大な目が浮かぶー思わず自身の肩をかき抱いていた。
「…どうする?今日は行くのをやめるか?」
芙蓉の背をさすっていた手は子供をあやすようにトントンと軽く叩いている。
どうしようー芙蓉は答えられなかった。このままではいけないのはわかっているし、だが恐怖心にはまだ勝てる気がしないー芙蓉は唇を噛んだ。そんな彼女の葛藤を見抜いたように、伏黒はひとつ大きく息を吐く。
「…俺が守ってやる。…それなら、いいだろ」
他人に対して干渉しない、深入りしない伏黒から、そんな言葉が出るなんてー芙蓉は顔を上げ、隣に座る伏黒を見る。と、彼はそっぽを向いた。心なしか、耳が少し赤くなっているように見える。
「…俺には呪いを祓える術式がある。今までずっと術式を使いこなせるように鍛錬してきた。…その辺にいる呪いには負けない」
言葉少なではあるがとても頼もしく、逞しくなった伏黒の思いやりに感極まったようで、芙蓉は堪えきれずにまた涙をこぼす。
「な、んで泣くんだよ」
「ごめん、違うの。…私、ずっと恵に置いていかれてる気がしてた。恵は悟くんのところでずっとがんばってるのに、私は何もしてない、何もできてなくて、恵が、違うところに行っちゃうような気がして」
芙蓉なりに、ずっと不安を抱えていたという事かーそう理解した伏黒は立ち上がった。
「…行くぞ。あの人、待ってるからな」
お互いの気持ちが見えて、変にモヤモヤしたような気持ちも晴れてきた。芙蓉も立ち上がり、覚悟を決めて地下のあの部屋へ行く事にした。
伏黒が先んじて階段を降りる。芙蓉も後に続く。地階に降り立つ。部屋に近づくにつれ、芙蓉は自身の身体がまた少し震えてきたのを感じた。気持ちを強く決めたはずなのに、やはり恐怖心はすぐに消え去るわけではなかったー縋るように伏黒のシャツの裾を少しだけ掴んだ。引っ張られる格好となった伏黒は足を止め、裾を掴んでいる芙蓉の腕を捕まえると、そのまま自身の手と芙蓉の手を繋ぎ合わせた。
しっかりと支えてくれる少し大きな手、自身の歩調に合わせてくれる伏黒。そんなに彼に対して、絶対的な信頼を持って応えていこうー芙蓉が少し手に力を籠めると、大きな手は優しく握り返してくれた。
「…ここ、降りるの?」
恐怖心からか、灯りが少ないせいか、芙蓉の顔が少しだけ青白く見える。伏黒はこの階段を降りた事があるようで、顔色ひとつ変える事なく、先に進む五条の後を追って歩みを進めていく。それに遅れまいと、どうにか芙蓉もその後に続く。階段を降り切ると、暗い通路の突き当たりに部屋があるのが見えた。
「や、待って恵、」
か細い芙蓉の怯えた声に伏黒が振り返る。
「ちょっと暗いけど大丈夫だよ」
五条の方はさして気にする様子もなく、軽い調子で声をかけるも足は止めない。五条の言葉に合わせて伏黒が一歩足を踏み出す、と。
「っや…だ、いや…、やだっ、やだ、待って待って恵、行かないで!」
悲鳴にも近い訴えと共に、背中に何かがぶつかるような衝撃を覚えたー伏黒がゆっくり振り返ると、目に涙を浮かべた芙蓉が背中にしがみついていた。拒否を示すようにゆるゆると首を振っている。
「恵。僕は先に行ってるから、芙蓉が落ち着いたらゆっくりおいで」
芙蓉が取り乱したのはこの通路の暗さと雰囲気に恐怖を覚えたからだろうと思い、伏黒に芙蓉を託して突き当たりの部屋に入って行った。五条の言葉に頷いた伏黒は芙蓉の背を支えながら、先程降りたばかりの階段をゆっくり昇る。
階段から少し離れたところで伏黒は芙蓉の様子を伺う。芙蓉の顔は涙でぐしゃぐしゃになっていた。
「…大丈夫か?」
伏黒の言葉に何度か頷いてはいるが、幼い子供のようにしゃくりをあげながら、手の甲でゴシゴシと涙を拭っているせいで目の周りが赤くなっている。
「…とりあえず座るか」
伏黒はこれまでに何度か芙蓉が泣くのを見た事はあるが、ここまで大泣きしているのを見るのは初めてだった。ぐすぐすと嗚咽を上げる芙蓉が少しでも落ち着くようにと、伏黒は彼女の背を優しくさする。
「…小さい頃、あの部屋を覗いたことがあるの」
どれくらい経ったか、目はまだ赤いままではあるが、だいぶ落ち着きを取り戻した芙蓉が小さくポツリと言った。聞き漏らさないよう、伏黒は耳をそばだてる。
「確か幼稚園の頃かな。1人で退屈で、こんなに広いお屋敷だからって、あちこち探検してて。…しばらく思い出さなかったんだけど…、この階段を降りて、突き当たりの部屋を覗いてみたのを思い出して」
「…怖い想いしたんだな」
あの部屋の用途を知っている伏黒が気の毒そうに言えば、芙蓉は黙って頷いた。脳裏にはあの時見た巨大な目が浮かぶー思わず自身の肩をかき抱いていた。
「…どうする?今日は行くのをやめるか?」
芙蓉の背をさすっていた手は子供をあやすようにトントンと軽く叩いている。
どうしようー芙蓉は答えられなかった。このままではいけないのはわかっているし、だが恐怖心にはまだ勝てる気がしないー芙蓉は唇を噛んだ。そんな彼女の葛藤を見抜いたように、伏黒はひとつ大きく息を吐く。
「…俺が守ってやる。…それなら、いいだろ」
他人に対して干渉しない、深入りしない伏黒から、そんな言葉が出るなんてー芙蓉は顔を上げ、隣に座る伏黒を見る。と、彼はそっぽを向いた。心なしか、耳が少し赤くなっているように見える。
「…俺には呪いを祓える術式がある。今までずっと術式を使いこなせるように鍛錬してきた。…その辺にいる呪いには負けない」
言葉少なではあるがとても頼もしく、逞しくなった伏黒の思いやりに感極まったようで、芙蓉は堪えきれずにまた涙をこぼす。
「な、んで泣くんだよ」
「ごめん、違うの。…私、ずっと恵に置いていかれてる気がしてた。恵は悟くんのところでずっとがんばってるのに、私は何もしてない、何もできてなくて、恵が、違うところに行っちゃうような気がして」
芙蓉なりに、ずっと不安を抱えていたという事かーそう理解した伏黒は立ち上がった。
「…行くぞ。あの人、待ってるからな」
お互いの気持ちが見えて、変にモヤモヤしたような気持ちも晴れてきた。芙蓉も立ち上がり、覚悟を決めて地下のあの部屋へ行く事にした。
伏黒が先んじて階段を降りる。芙蓉も後に続く。地階に降り立つ。部屋に近づくにつれ、芙蓉は自身の身体がまた少し震えてきたのを感じた。気持ちを強く決めたはずなのに、やはり恐怖心はすぐに消え去るわけではなかったー縋るように伏黒のシャツの裾を少しだけ掴んだ。引っ張られる格好となった伏黒は足を止め、裾を掴んでいる芙蓉の腕を捕まえると、そのまま自身の手と芙蓉の手を繋ぎ合わせた。
しっかりと支えてくれる少し大きな手、自身の歩調に合わせてくれる伏黒。そんなに彼に対して、絶対的な信頼を持って応えていこうー芙蓉が少し手に力を籠めると、大きな手は優しく握り返してくれた。