不倶戴天
恵の幼馴染のお名前は?
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綺羅羅と話をした後、芙蓉は一度部屋に戻り、先程のバッグからスマホの充電器を引っ張り出し、やや大きめのバッグを取り出した。そこにスマホの充電器、伏黒がプレゼントしてくれた物や釘崎と一緒に買ったコスメ、虎杖が任務の土産だと寄越した珍妙な置物等を入れた。他人が見たら首を傾げるだろう物ばかりだが、自身にとっては大切な物。誰かに見せるものでもない、とにかく絶対に無くしたくないものを持っていこうーその想いだけで持ち物をまとめた。
高専からの移動が落ち着いたのは午後の遅い時間になってからだった。芙蓉は自分の荷物の他、家入から請け負っている書類のファイリングの内、手を付けたものだけは持参していた。宛てがわれた部屋で簡単に持ち物の整頓を済ませると芙蓉は部屋を出た。
だいぶ情緒は落ち着いてきているが、やはり何もしないでいるのは上手くいかない様で、芙蓉は家入の部屋の近くの一室を訪れた。
静かにドアを開ければ窓際に置かれたベッドが目に入り、そのすぐ側に医療機器がずらりと並ぶ。その機器から伸びたケーブルはベッドに横たわる釘崎の両腕に繋がり、何某かの状態をモニターしている。
「…野薔薇」
身体の傷は家入が術式で処置したのだろう、以前巻かれていた包帯は全て無くなっており、代わりに左眼に大きめの眼帯が当てられていた。
「…びっくりしたよね、急に高専出るとかさ…」
芙蓉は釘崎の手に手を添えた。化粧品を使い、しっかりと手入れをしていた釘崎の肌は少しだけカサついていた。顔を覗くと唇も少しカサついている事に気付き、芙蓉は持っていたリップクリームを優しく塗り付けた。
「………」
津美紀はどうしただろうかと、芙蓉の頭を過ぎる。寝たきりだった津美紀と釘崎が重なる。
「…今度はハンドクリーム、持ってくるね」
芙蓉は呟く様に言うと部屋を出た。
それから芙蓉は家入の手伝いをしたり、狗巻や綺羅羅と共に夕食をとったり、部屋に戻って来たのは21時を回った頃だった。ベッドに腰掛け、ふっと息を吐く。今日朝から何かと忙しかったな、早く寝ようと、芙蓉は寝る準備に取り掛かった。
諸々の事を済ませてベッドに横になったが、全く眠れそうになかった。胸騒ぎというか嫌な予感というかー日下部の話が頭から離れない。
一体どういう状況なのか、何が起きるのか。考えても仕方ないのにー最近そんな事ばかりだなと芙蓉はスマホで時間を見る。23:41の表示に続いて壁紙にしてある伏黒の顔が目に入った。スマホの画面を落として枕元に置くと、芙蓉はネックレスをそっと握り締めた。
どれくらい時間が経ったのだろうか、そしていつの間に眠ってしまったのだろう。芙蓉は枕元でけたたましい音を立てているスマホの着信音で目を覚ました。何が起きたのか理解が追いつかない頭のまま、芙蓉は液晶の眩しさに目を細めながら応答ボタンをタップした。
「…、もしもし」
『こんな時間に悪いな高峰、緊急事態だ』
電話の相手は日下部だった。
「え…、はい?」
『準備できたら家入のところに来てくれ、頼むぞ』
一方的に電話が切れた。改めて時間を確認すると午前3時半。芙蓉は背中に冷たいものが走る様な感覚に身震いした。何か、酷く良くない事が起きたのではないかと思いながら制服に着替えると急いで部屋を出た。
日下部から指示された家入のところー医務室へ向かい、ドアを開けると鼻についた臭いに思わず顔を顰めた。
生臭い鉄の臭い。室内には家入と日下部、綺羅羅、そしてベッドに寝かされた脹相がいた。
「な、にが、」
脹相は九十九と共に天元のところに居たはずーそんな芙蓉の考えを読んだ様に、日下部が口を開いた。
「薨星宮に、…羂索が、」
「そん、な…」
それきり芙蓉は何も言えなかった。ただ脹相が傷だらけでベッドに横たわっているという事は、良くない状況に傾いているのだろうー九十九は、天元が持っていた獄門疆・裏門は、これからどうなってしまうのだろうと、芙蓉は自分の頭の中を変に冷めた感覚で知覚していた。
羂索の手に天元が陥ちたという事は、羂索が目論んでいるという“人間と天元の同化”のベースが整いつつあるという事ー死滅回游は、津美紀は、五条は。自分の力ではどうしようもなく、何も出来ない現実に芙蓉はただ拳を握り締め、唇を噛んだ。
「お取り込みの所失礼するよ」
その言葉と共に姿を見せたのは冥冥だった。予想外の事に一同は驚き、日下部が声を上げた。
「っ、おまっ…」
「悪いね、私もそうそう死ぬワケにはいかないからね、あの時は最善の手を打たせてもらったよ」
「もう大丈夫なんですか?」
気遣わしげに家入が声をかけると冥冥は頷いた。
「あぁ、問題ない。…それより、かなり厄介な状況になっているそうじゃないか」
そう言いながら冥冥の真っ赤な唇は弧を描いている。学長の夜蛾、五条が不在となった今、高専関係者として学生達の取り纏めをする事になった日下部は彼女の言葉に大きく息を吐いた。
「結界の規模が日本全土な上に、動ける奴も連絡手段も限られてる。時間がいくらあっても足りねぇくれぇだ」
「動ける奴と連絡手段ね…。その事なんだけど、私の方で出来る限りの手は打っておいた」
「…は?」
「ふふ…、リスク分散と先行投資さ」
「…?」
「心配せずともじきにわかるさ。…それより日下部、禪院家の話は聞いたかい?天与呪縛の彼女…、大きく化けたそうじゃないか」
冥冥の言葉に芙蓉は真希の顔を思い浮かべ、何があったんですか、と疑問を口にしていた。
「おや、まだ聞いていなかったのかい?」
「高峰」
嗜める様な日下部の言葉に芙蓉は口を噤んだ。
「良いじゃないか、遅かれ早かれ知る事になるだろうからね。…大切な彼が当主の家の事なんだから」
「っ別に、恵の事では…、」
「潰滅したよ」
「!」
「…禪院の呪いを彼女が一身に引き受けたんだ。全てを壊し、断ち切った代わりに彼女は一切の呪いを持たない身体になった。…おかえり、憂憂」
「ただいま戻りました、姉様」
嬉しそうな少年の声に一同が振り返ると、冥冥の弟の憂憂と共に真希が姿を見せた。
高専からの移動が落ち着いたのは午後の遅い時間になってからだった。芙蓉は自分の荷物の他、家入から請け負っている書類のファイリングの内、手を付けたものだけは持参していた。宛てがわれた部屋で簡単に持ち物の整頓を済ませると芙蓉は部屋を出た。
だいぶ情緒は落ち着いてきているが、やはり何もしないでいるのは上手くいかない様で、芙蓉は家入の部屋の近くの一室を訪れた。
静かにドアを開ければ窓際に置かれたベッドが目に入り、そのすぐ側に医療機器がずらりと並ぶ。その機器から伸びたケーブルはベッドに横たわる釘崎の両腕に繋がり、何某かの状態をモニターしている。
「…野薔薇」
身体の傷は家入が術式で処置したのだろう、以前巻かれていた包帯は全て無くなっており、代わりに左眼に大きめの眼帯が当てられていた。
「…びっくりしたよね、急に高専出るとかさ…」
芙蓉は釘崎の手に手を添えた。化粧品を使い、しっかりと手入れをしていた釘崎の肌は少しだけカサついていた。顔を覗くと唇も少しカサついている事に気付き、芙蓉は持っていたリップクリームを優しく塗り付けた。
「………」
津美紀はどうしただろうかと、芙蓉の頭を過ぎる。寝たきりだった津美紀と釘崎が重なる。
「…今度はハンドクリーム、持ってくるね」
芙蓉は呟く様に言うと部屋を出た。
それから芙蓉は家入の手伝いをしたり、狗巻や綺羅羅と共に夕食をとったり、部屋に戻って来たのは21時を回った頃だった。ベッドに腰掛け、ふっと息を吐く。今日朝から何かと忙しかったな、早く寝ようと、芙蓉は寝る準備に取り掛かった。
諸々の事を済ませてベッドに横になったが、全く眠れそうになかった。胸騒ぎというか嫌な予感というかー日下部の話が頭から離れない。
一体どういう状況なのか、何が起きるのか。考えても仕方ないのにー最近そんな事ばかりだなと芙蓉はスマホで時間を見る。23:41の表示に続いて壁紙にしてある伏黒の顔が目に入った。スマホの画面を落として枕元に置くと、芙蓉はネックレスをそっと握り締めた。
どれくらい時間が経ったのだろうか、そしていつの間に眠ってしまったのだろう。芙蓉は枕元でけたたましい音を立てているスマホの着信音で目を覚ました。何が起きたのか理解が追いつかない頭のまま、芙蓉は液晶の眩しさに目を細めながら応答ボタンをタップした。
「…、もしもし」
『こんな時間に悪いな高峰、緊急事態だ』
電話の相手は日下部だった。
「え…、はい?」
『準備できたら家入のところに来てくれ、頼むぞ』
一方的に電話が切れた。改めて時間を確認すると午前3時半。芙蓉は背中に冷たいものが走る様な感覚に身震いした。何か、酷く良くない事が起きたのではないかと思いながら制服に着替えると急いで部屋を出た。
日下部から指示された家入のところー医務室へ向かい、ドアを開けると鼻についた臭いに思わず顔を顰めた。
生臭い鉄の臭い。室内には家入と日下部、綺羅羅、そしてベッドに寝かされた脹相がいた。
「な、にが、」
脹相は九十九と共に天元のところに居たはずーそんな芙蓉の考えを読んだ様に、日下部が口を開いた。
「薨星宮に、…羂索が、」
「そん、な…」
それきり芙蓉は何も言えなかった。ただ脹相が傷だらけでベッドに横たわっているという事は、良くない状況に傾いているのだろうー九十九は、天元が持っていた獄門疆・裏門は、これからどうなってしまうのだろうと、芙蓉は自分の頭の中を変に冷めた感覚で知覚していた。
羂索の手に天元が陥ちたという事は、羂索が目論んでいるという“人間と天元の同化”のベースが整いつつあるという事ー死滅回游は、津美紀は、五条は。自分の力ではどうしようもなく、何も出来ない現実に芙蓉はただ拳を握り締め、唇を噛んだ。
「お取り込みの所失礼するよ」
その言葉と共に姿を見せたのは冥冥だった。予想外の事に一同は驚き、日下部が声を上げた。
「っ、おまっ…」
「悪いね、私もそうそう死ぬワケにはいかないからね、あの時は最善の手を打たせてもらったよ」
「もう大丈夫なんですか?」
気遣わしげに家入が声をかけると冥冥は頷いた。
「あぁ、問題ない。…それより、かなり厄介な状況になっているそうじゃないか」
そう言いながら冥冥の真っ赤な唇は弧を描いている。学長の夜蛾、五条が不在となった今、高専関係者として学生達の取り纏めをする事になった日下部は彼女の言葉に大きく息を吐いた。
「結界の規模が日本全土な上に、動ける奴も連絡手段も限られてる。時間がいくらあっても足りねぇくれぇだ」
「動ける奴と連絡手段ね…。その事なんだけど、私の方で出来る限りの手は打っておいた」
「…は?」
「ふふ…、リスク分散と先行投資さ」
「…?」
「心配せずともじきにわかるさ。…それより日下部、禪院家の話は聞いたかい?天与呪縛の彼女…、大きく化けたそうじゃないか」
冥冥の言葉に芙蓉は真希の顔を思い浮かべ、何があったんですか、と疑問を口にしていた。
「おや、まだ聞いていなかったのかい?」
「高峰」
嗜める様な日下部の言葉に芙蓉は口を噤んだ。
「良いじゃないか、遅かれ早かれ知る事になるだろうからね。…大切な彼が当主の家の事なんだから」
「っ別に、恵の事では…、」
「潰滅したよ」
「!」
「…禪院の呪いを彼女が一身に引き受けたんだ。全てを壊し、断ち切った代わりに彼女は一切の呪いを持たない身体になった。…おかえり、憂憂」
「ただいま戻りました、姉様」
嬉しそうな少年の声に一同が振り返ると、冥冥の弟の憂憂と共に真希が姿を見せた。