夏の終わり
恵の幼馴染のお名前は?
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「ねぇ恵、」
「ん?」
実技鍛錬の休憩時間に、汗を拭きながら芙蓉が声をかける。近くでは虎杖が芝生にどっかりと胡座をかいて座り、真希と狗巻は釘崎とパンダの鍛錬を眺めていた。
「恵はさ、任務の時、怖いとか思ったりしない?」
何の話かと思えば、とスポーツドリンクを飲んでいた伏黒は今更な事を聞いてくる芙蓉に首を傾げた。
「…怖い?」
「例えば…、ほら、祓除対象の呪霊がどんな能力持ってるか、とか…」
「…そーいうのは任務の概要に記載されてるだろ?」
伏黒の言う事に間違いはない。なんて言えばいいかな、と芙蓉は言葉を詰まらせる。
「逆に聞くが、何に対する恐怖心なんだ?」
芙蓉の言葉を引き出そうと伏黒が問いかけるも、芙蓉は難しい顔のまま唸っている。
「うーん…、未知への恐怖?」
「なんだそれ」
話が聞こえたのだろう、真希が笑った。
「…真希さんは怖くないんですか?」
「そんな事思ってたら呪霊なんか祓えねぇだろ」
「しゃけしゃけ」
真希の言う通りだと頷く狗巻。2人の意見に何も言えず、芙蓉は困った顔をした。パンダと取っ組み合っていた釘崎が畜生、という罵声と共に放り出され、それに気付いた虎杖があっと声を上げると同時に駆け出した。
「芙蓉は、」
伏黒の言葉に芙蓉は顔を上げる。じっと芙蓉を見つめている伏黒の表情は幾分柔らかくなっていた。
「何の為に実技鍛錬してるんだ?」
「何の為って…、そりゃあ…強くなる為に、」
「…それだけか?」
「オイ恵、」
真希が伏黒の言葉を遮った。伏黒が真希に視線を移すと、芙蓉も真希を見、狗巻を見た。2人の表情も柔らかくなっている。
「そこまで教えちまうのかよ?…少し甘やかし過ぎじゃねぇのか?」
揶揄う様な真希の言葉。それに対し、ここで潰れても困るんで、と真剣な顔で応える。遠くで釘崎が何かしら悪態をついているのが聞こえた。
「少なくとも俺は、恐怖心が一番の敵だと思ってる」
「ビビったら負けってワケだ」
「すじこ」
自信に満ちた笑顔で言う真希、親指を立てる狗巻。
「呪霊を怖いと思うよりも、強くなれば良い話だ」
その言葉に芙蓉は伏黒を見上げた。
「自分の力を信じろ」
辺りに呪霊が集まる気配がする。芙蓉は妙に冷静な頭で呪霊を数えた。1、2、3、少し離れてもう1体。
1人で戦うのは初めてかもしれない。思えば、いつも誰かが一緒に居てくれたなー芙蓉はトンファーを構えた。
自信があるわけじゃない。かと言って怖いと思うわけでもない。ただ、これくらい大丈夫ーそんな思いが芙蓉の中で膨らんでいく。交流会で遭遇した特級よりも、渋谷で感じたあの呪力よりも、目の前の呪霊はとてもちっぽけに感じられた。自分の力を信じるー大丈夫。
一番近くの呪霊が飛び掛かってきた。それを合図とした様に、後の3体も芙蓉目掛けて襲い掛かる。
最初に飛び掛かってきた呪霊の頭上に分厚い壁を作って落とす。こちらに向かってくる呪霊を阻むように、数本の柱を立てて動きを遅らせる。芙蓉は呪霊を踏み潰した分厚い壁を足掛かりにして大きく飛んだ。この呪霊同士が連携する事は無さそう、一番離れた場所にいる呪霊目掛けてトンファーを振り下ろす。地面に着地するとすぐ芙蓉は地を滑る様に駆け、柱に自由を奪われ藻搔いている2体を祓おうとするも、1体がそこから抜け出した。
まだ藻搔いている呪霊は後回しに、抜け出た呪霊が叫び声をあげながら芙蓉に向かってくる。芙蓉が壁を作るも、それを打ち破って来た。
「…残念、織り込み済み」
大小様々の割れた破片が呪霊に突き刺さる。最後の1体が逃げ出そうとしているのが見え、芙蓉はそれを呪力の箱に閉じ込めた。
「破っ」
断末魔の悲鳴と共に、箱は平面となって消えた。少し乱れた息を整えようと芙蓉は大きく深呼吸をした。
初めて1人で呪霊を祓った。とても不思議な感覚というか、自分の行動が正しかったのか、どう表現したら良いかーと、以前伏黒と2人で任務に出た時に、自分の動きが正しかっただろうかと尋ねた事を思い出した。
“少なくとも任務に関しての正解は、生きて帰る事だと思う。同じ呪霊に会う事はもう無いし、自分が無事ならそれ以上の事はないし、それで十分じゃないか”
芙蓉はトンファーを収めると、新しいビルを一瞥して駅に向かって歩き出した。立ち止まる事も振り返る事も出来るが、それは今じゃない。
駅の構内に入ると駅員をはじめ、鉄道を利用する人の姿も見えて、芙蓉は思わず近くにあったベンチに座った。安心したのだろう、手が震えていた。
静かに深呼吸をして立ち上がり、自販機で飲み物を買った。冷たい水が少し冷静さを与えてくれた。
芙蓉はスマホを取り出して時間を確認したー11:57。間もなく伏黒達が死滅回游への参加を宣言する時間だ。と、手の中のスマホが着信を告げ始め、驚いた芙蓉はスマホを取り落としそうになりながらもディスプレイを確認する。綺羅羅だった。
「はい、もしもし」
『あ、芙蓉ちゃん?今大丈夫?』
「綺羅羅さん…、何かありました?」
『んーん、ちゃんと電話繋がるかの確認と、何時頃帰って来るのかなって。…あ、もう駅なんだ?』
芙蓉の後ろでは電車の到着を告げるアナウンスが響いている。ホームに人は少ない。
「はい、これから電車に乗るところなんです。…だいたい1時間くらいで帰れると思います」
『了解、気を付けてね』
なんて事はない会話ではあったが、芙蓉の気持ちを落ち着かせるには十分だった。到着した電車に乗り込んでスマホを見る。12:01。
どうか、無事にーそう願わずにはいられなかった。
「ん?」
実技鍛錬の休憩時間に、汗を拭きながら芙蓉が声をかける。近くでは虎杖が芝生にどっかりと胡座をかいて座り、真希と狗巻は釘崎とパンダの鍛錬を眺めていた。
「恵はさ、任務の時、怖いとか思ったりしない?」
何の話かと思えば、とスポーツドリンクを飲んでいた伏黒は今更な事を聞いてくる芙蓉に首を傾げた。
「…怖い?」
「例えば…、ほら、祓除対象の呪霊がどんな能力持ってるか、とか…」
「…そーいうのは任務の概要に記載されてるだろ?」
伏黒の言う事に間違いはない。なんて言えばいいかな、と芙蓉は言葉を詰まらせる。
「逆に聞くが、何に対する恐怖心なんだ?」
芙蓉の言葉を引き出そうと伏黒が問いかけるも、芙蓉は難しい顔のまま唸っている。
「うーん…、未知への恐怖?」
「なんだそれ」
話が聞こえたのだろう、真希が笑った。
「…真希さんは怖くないんですか?」
「そんな事思ってたら呪霊なんか祓えねぇだろ」
「しゃけしゃけ」
真希の言う通りだと頷く狗巻。2人の意見に何も言えず、芙蓉は困った顔をした。パンダと取っ組み合っていた釘崎が畜生、という罵声と共に放り出され、それに気付いた虎杖があっと声を上げると同時に駆け出した。
「芙蓉は、」
伏黒の言葉に芙蓉は顔を上げる。じっと芙蓉を見つめている伏黒の表情は幾分柔らかくなっていた。
「何の為に実技鍛錬してるんだ?」
「何の為って…、そりゃあ…強くなる為に、」
「…それだけか?」
「オイ恵、」
真希が伏黒の言葉を遮った。伏黒が真希に視線を移すと、芙蓉も真希を見、狗巻を見た。2人の表情も柔らかくなっている。
「そこまで教えちまうのかよ?…少し甘やかし過ぎじゃねぇのか?」
揶揄う様な真希の言葉。それに対し、ここで潰れても困るんで、と真剣な顔で応える。遠くで釘崎が何かしら悪態をついているのが聞こえた。
「少なくとも俺は、恐怖心が一番の敵だと思ってる」
「ビビったら負けってワケだ」
「すじこ」
自信に満ちた笑顔で言う真希、親指を立てる狗巻。
「呪霊を怖いと思うよりも、強くなれば良い話だ」
その言葉に芙蓉は伏黒を見上げた。
「自分の力を信じろ」
辺りに呪霊が集まる気配がする。芙蓉は妙に冷静な頭で呪霊を数えた。1、2、3、少し離れてもう1体。
1人で戦うのは初めてかもしれない。思えば、いつも誰かが一緒に居てくれたなー芙蓉はトンファーを構えた。
自信があるわけじゃない。かと言って怖いと思うわけでもない。ただ、これくらい大丈夫ーそんな思いが芙蓉の中で膨らんでいく。交流会で遭遇した特級よりも、渋谷で感じたあの呪力よりも、目の前の呪霊はとてもちっぽけに感じられた。自分の力を信じるー大丈夫。
一番近くの呪霊が飛び掛かってきた。それを合図とした様に、後の3体も芙蓉目掛けて襲い掛かる。
最初に飛び掛かってきた呪霊の頭上に分厚い壁を作って落とす。こちらに向かってくる呪霊を阻むように、数本の柱を立てて動きを遅らせる。芙蓉は呪霊を踏み潰した分厚い壁を足掛かりにして大きく飛んだ。この呪霊同士が連携する事は無さそう、一番離れた場所にいる呪霊目掛けてトンファーを振り下ろす。地面に着地するとすぐ芙蓉は地を滑る様に駆け、柱に自由を奪われ藻搔いている2体を祓おうとするも、1体がそこから抜け出した。
まだ藻搔いている呪霊は後回しに、抜け出た呪霊が叫び声をあげながら芙蓉に向かってくる。芙蓉が壁を作るも、それを打ち破って来た。
「…残念、織り込み済み」
大小様々の割れた破片が呪霊に突き刺さる。最後の1体が逃げ出そうとしているのが見え、芙蓉はそれを呪力の箱に閉じ込めた。
「破っ」
断末魔の悲鳴と共に、箱は平面となって消えた。少し乱れた息を整えようと芙蓉は大きく深呼吸をした。
初めて1人で呪霊を祓った。とても不思議な感覚というか、自分の行動が正しかったのか、どう表現したら良いかーと、以前伏黒と2人で任務に出た時に、自分の動きが正しかっただろうかと尋ねた事を思い出した。
“少なくとも任務に関しての正解は、生きて帰る事だと思う。同じ呪霊に会う事はもう無いし、自分が無事ならそれ以上の事はないし、それで十分じゃないか”
芙蓉はトンファーを収めると、新しいビルを一瞥して駅に向かって歩き出した。立ち止まる事も振り返る事も出来るが、それは今じゃない。
駅の構内に入ると駅員をはじめ、鉄道を利用する人の姿も見えて、芙蓉は思わず近くにあったベンチに座った。安心したのだろう、手が震えていた。
静かに深呼吸をして立ち上がり、自販機で飲み物を買った。冷たい水が少し冷静さを与えてくれた。
芙蓉はスマホを取り出して時間を確認したー11:57。間もなく伏黒達が死滅回游への参加を宣言する時間だ。と、手の中のスマホが着信を告げ始め、驚いた芙蓉はスマホを取り落としそうになりながらもディスプレイを確認する。綺羅羅だった。
「はい、もしもし」
『あ、芙蓉ちゃん?今大丈夫?』
「綺羅羅さん…、何かありました?」
『んーん、ちゃんと電話繋がるかの確認と、何時頃帰って来るのかなって。…あ、もう駅なんだ?』
芙蓉の後ろでは電車の到着を告げるアナウンスが響いている。ホームに人は少ない。
「はい、これから電車に乗るところなんです。…だいたい1時間くらいで帰れると思います」
『了解、気を付けてね』
なんて事はない会話ではあったが、芙蓉の気持ちを落ち着かせるには十分だった。到着した電車に乗り込んでスマホを見る。12:01。
どうか、無事にーそう願わずにはいられなかった。