夏の終わり
恵の幼馴染のお名前は?
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秤の運転する車は大きなトラブルもなく、無事に高専へと辿り着いた。2時間程のドライブはなかなかにスリリングなものだった様で、芙蓉は車酔いもあって幾分青ざめた顔で伏黒の手を借りて車を降りた。
「大丈夫か?」
「…うん、…なんとか…」
伏黒が時間を確認すると世の中が動き出すには早過ぎる頃合いだった。秤と綺羅羅、虎杖、パンダはそれぞれ宛てがわれた部屋へ向かっている。伏黒は芙蓉を部屋まで送る、と並んで歩き出した。
「…少し寝て休め。動き出すまで時間はある」
芙蓉の部屋に入ると伏黒は彼女をベッドに座らせ、冷蔵庫からお茶を出して手渡す。芙蓉がお茶を飲み、ひと息ついたのを見て口を開いた。
「…でも…、…ちゃんと、連れてってくれる?」
自分が眠っている間に伏黒たちが出立してしまうのではないかと、芙蓉が不安気に呟く。
「当たり前だ、約束したろ」
伏黒は思わず笑った。死滅回游への参加をするのはこの日の正午、と秤たちと決めた。その前に伏黒と芙蓉は津美紀の面会に行く予定を立てていた。
「病院には新田さんが連絡してくれて、10時から面会の約束をつけてくれた。9時頃に出れば十分間に合う」
逆を返せばそれまでは自由時間という事、伏黒が自身もこれから寝る旨を告げれば芙蓉は漸く納得して頷いた。
「とにかくしっかり休めよ」
そう芙蓉に笑いかけ、伏黒はベッドに腰掛けたままの芙蓉に口付けると部屋を出た。
久しぶりの、津美紀との再会。何とも表現し難い思いを抱え、伏黒は部屋に入るとすぐにベッドに横になった。
11月12日、10時頃。
伏黒と芙蓉は津美紀の入院している病院に来ていた。
面会と言っても、津美紀が目を覚ました段階で伏黒の現状を伊地知と新田を通して津美紀に伝えられており、また死滅回游の事、今後の動きに関して伏黒たちが説明する必要は無く、本当に顔を合わせる程度の予定だ。伏黒と芙蓉がロビーの長椅子に座って待っていると、補助監督の新田が津美紀の座る車椅子を押して来た。
「恵、芙蓉、」
「おう」
「津美紀ちゃん…!」
再会を喜ぶ傍ら、津美紀は戸惑った顔をした。
「何年ぶり…?…私はあんまり時間経ってる感じしないんだけど…」
「1年と7ヵ月…大体」
「そっかー、そりゃ歩くのも難しいわけだ」
困った様に笑う津美紀をよそに、伏黒は表情も変えずに口を開く。
「…死滅回游のこと、聞いたか?」
「…うん、五条さんの事も。昔から2人が何か大変な仕事をしてるのは分かってたけど…」
「…何も心配いらない。俺と俺の仲間がなんとか出来る。…なんなら津美紀はもうちょい寝とけ」
「!」
「ちょっと恵…」
ぞんざいな言い方を嗜める様に芙蓉が言うも、津美紀は意に介していないらしかった。
「ふふ…、相変わらず減らず口」
笑う津美紀を見て、伏黒は立ち上がった。芙蓉も続いて立ち上がり、津美紀に手を振った。
「それじゃまたね、津美紀ちゃん」
「新田さん、ありがとうございます」
伏黒と芙蓉は病院を出た。2人はここで別れ、伏黒は都心方面へ、芙蓉は高専方面へ向かう予定だ。
「おっ、いたいた!伏黒、高峰!」
「虎杖」
「あれ?現地で待ち合わせじゃなかったの?」
「いや、やっぱ俺もちょっと気になってさ。…津美紀の姉ちゃん、大丈夫だった?つーか面会もう良いの?終わらせるの早くね?」
そんな虎杖の気遣いに、伏黒は不器用ながらコイツは本当に出来た奴だと内心感嘆した。
「あぁ。…長話する様な事もないしな」
「ドライだなぁ」
伏黒はスマホで時間を確認した。そろそろ出発しないと予定の時間に間に合わなくなりそうだった。
「じゃあ芙蓉、高専まで気を付けてな」
「うん、ありがと。…恵も虎杖くんも…気を付けてね」
「あぁ。…行くぞ虎杖」
「えっ、マジ?もう良いの⁉︎」
歩き出す伏黒を慌てて虎杖が追いかける。
「…こう、なんつーか…、話とかしねぇの?」
「もう十分話し合ってある。芙蓉は大丈夫だ」
「え⁉︎マジ⁉︎いつの間に⁉︎」
芙蓉は何事か話しながら歩いて行く2人の背中をその場で見送っていた。2人の姿が見えなくなると、芙蓉も漸く駅に向けて歩き出した。どれくらい歩いたか、駅の方へ向かっていた芙蓉の足は何かに思い悩む様に速度を落とし、立ち止まった。僅かな時間の後、その足は違う方向へ向け、再びしっかりと歩き始めた。
芙蓉が向かったのは乗る予定とは別の路線の駅前だった。駅前のメイン通りに近付くにつれ、芙蓉は変わらない風景に懐かしさを感じると同時にため息を吐いた。都心程の混乱はないものの、明らかに外を歩いている人の数が少ない。ここまで来る途中にすれ違った人の数は両手に余る程度、その代わりに低級の呪霊がうようよしている。先の渋谷の件もあってか、普段無害なはずの低級呪霊も好戦的になっていた。そりゃ誰も外に出たがらないよね、と思いながら芙蓉は歩き続ける。
駅前のメイン通りに出ると、辺りは不気味なくらいに静かだった。平日でも賑わっている筈の歩道は閑散とし、広い道路には車も通っていない。誰も見る事のない信号機だけがいつも通りの務めを果たしている。
ある一角で芙蓉は足を止めた。
視線の先には比較的新しいビルが建っている。
ほんの半年前の出来事ー高専に入るきっかけとなった、芙蓉が友人と呪霊に襲われた場所だった。
文字通り自身の命を救ってくれた、そして術師として生き抜く為のアドバイスをくれた七海は、もういない。
自身を“こちら側”へ手引きし、自身の持つ術式を開花させてくれた五条は、封印されてしまった。
高専の同期として共に歩いてきた釘崎は倒れ、虎杖と伏黒の2人とは当面別の道を進む事となった。
芙蓉は独り、息を吐いた。
「大丈夫か?」
「…うん、…なんとか…」
伏黒が時間を確認すると世の中が動き出すには早過ぎる頃合いだった。秤と綺羅羅、虎杖、パンダはそれぞれ宛てがわれた部屋へ向かっている。伏黒は芙蓉を部屋まで送る、と並んで歩き出した。
「…少し寝て休め。動き出すまで時間はある」
芙蓉の部屋に入ると伏黒は彼女をベッドに座らせ、冷蔵庫からお茶を出して手渡す。芙蓉がお茶を飲み、ひと息ついたのを見て口を開いた。
「…でも…、…ちゃんと、連れてってくれる?」
自分が眠っている間に伏黒たちが出立してしまうのではないかと、芙蓉が不安気に呟く。
「当たり前だ、約束したろ」
伏黒は思わず笑った。死滅回游への参加をするのはこの日の正午、と秤たちと決めた。その前に伏黒と芙蓉は津美紀の面会に行く予定を立てていた。
「病院には新田さんが連絡してくれて、10時から面会の約束をつけてくれた。9時頃に出れば十分間に合う」
逆を返せばそれまでは自由時間という事、伏黒が自身もこれから寝る旨を告げれば芙蓉は漸く納得して頷いた。
「とにかくしっかり休めよ」
そう芙蓉に笑いかけ、伏黒はベッドに腰掛けたままの芙蓉に口付けると部屋を出た。
久しぶりの、津美紀との再会。何とも表現し難い思いを抱え、伏黒は部屋に入るとすぐにベッドに横になった。
11月12日、10時頃。
伏黒と芙蓉は津美紀の入院している病院に来ていた。
面会と言っても、津美紀が目を覚ました段階で伏黒の現状を伊地知と新田を通して津美紀に伝えられており、また死滅回游の事、今後の動きに関して伏黒たちが説明する必要は無く、本当に顔を合わせる程度の予定だ。伏黒と芙蓉がロビーの長椅子に座って待っていると、補助監督の新田が津美紀の座る車椅子を押して来た。
「恵、芙蓉、」
「おう」
「津美紀ちゃん…!」
再会を喜ぶ傍ら、津美紀は戸惑った顔をした。
「何年ぶり…?…私はあんまり時間経ってる感じしないんだけど…」
「1年と7ヵ月…大体」
「そっかー、そりゃ歩くのも難しいわけだ」
困った様に笑う津美紀をよそに、伏黒は表情も変えずに口を開く。
「…死滅回游のこと、聞いたか?」
「…うん、五条さんの事も。昔から2人が何か大変な仕事をしてるのは分かってたけど…」
「…何も心配いらない。俺と俺の仲間がなんとか出来る。…なんなら津美紀はもうちょい寝とけ」
「!」
「ちょっと恵…」
ぞんざいな言い方を嗜める様に芙蓉が言うも、津美紀は意に介していないらしかった。
「ふふ…、相変わらず減らず口」
笑う津美紀を見て、伏黒は立ち上がった。芙蓉も続いて立ち上がり、津美紀に手を振った。
「それじゃまたね、津美紀ちゃん」
「新田さん、ありがとうございます」
伏黒と芙蓉は病院を出た。2人はここで別れ、伏黒は都心方面へ、芙蓉は高専方面へ向かう予定だ。
「おっ、いたいた!伏黒、高峰!」
「虎杖」
「あれ?現地で待ち合わせじゃなかったの?」
「いや、やっぱ俺もちょっと気になってさ。…津美紀の姉ちゃん、大丈夫だった?つーか面会もう良いの?終わらせるの早くね?」
そんな虎杖の気遣いに、伏黒は不器用ながらコイツは本当に出来た奴だと内心感嘆した。
「あぁ。…長話する様な事もないしな」
「ドライだなぁ」
伏黒はスマホで時間を確認した。そろそろ出発しないと予定の時間に間に合わなくなりそうだった。
「じゃあ芙蓉、高専まで気を付けてな」
「うん、ありがと。…恵も虎杖くんも…気を付けてね」
「あぁ。…行くぞ虎杖」
「えっ、マジ?もう良いの⁉︎」
歩き出す伏黒を慌てて虎杖が追いかける。
「…こう、なんつーか…、話とかしねぇの?」
「もう十分話し合ってある。芙蓉は大丈夫だ」
「え⁉︎マジ⁉︎いつの間に⁉︎」
芙蓉は何事か話しながら歩いて行く2人の背中をその場で見送っていた。2人の姿が見えなくなると、芙蓉も漸く駅に向けて歩き出した。どれくらい歩いたか、駅の方へ向かっていた芙蓉の足は何かに思い悩む様に速度を落とし、立ち止まった。僅かな時間の後、その足は違う方向へ向け、再びしっかりと歩き始めた。
芙蓉が向かったのは乗る予定とは別の路線の駅前だった。駅前のメイン通りに近付くにつれ、芙蓉は変わらない風景に懐かしさを感じると同時にため息を吐いた。都心程の混乱はないものの、明らかに外を歩いている人の数が少ない。ここまで来る途中にすれ違った人の数は両手に余る程度、その代わりに低級の呪霊がうようよしている。先の渋谷の件もあってか、普段無害なはずの低級呪霊も好戦的になっていた。そりゃ誰も外に出たがらないよね、と思いながら芙蓉は歩き続ける。
駅前のメイン通りに出ると、辺りは不気味なくらいに静かだった。平日でも賑わっている筈の歩道は閑散とし、広い道路には車も通っていない。誰も見る事のない信号機だけがいつも通りの務めを果たしている。
ある一角で芙蓉は足を止めた。
視線の先には比較的新しいビルが建っている。
ほんの半年前の出来事ー高専に入るきっかけとなった、芙蓉が友人と呪霊に襲われた場所だった。
文字通り自身の命を救ってくれた、そして術師として生き抜く為のアドバイスをくれた七海は、もういない。
自身を“こちら側”へ手引きし、自身の持つ術式を開花させてくれた五条は、封印されてしまった。
高専の同期として共に歩いてきた釘崎は倒れ、虎杖と伏黒の2人とは当面別の道を進む事となった。
芙蓉は独り、息を吐いた。