夏の終わり
恵の幼馴染のお名前は?
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「恵…、どうしたの?まだ交代の時間じゃないよ?」
芙蓉は眠っている虎杖を気遣い、小さな声で言った。
伏黒は芙蓉の言葉に構わず彼女の隣に並ぶと、かつては街だった瓦礫の山を見下ろした。
「…東京とは思えないな」
「…。別世界…だよね。…映画、みたい」
冬の匂いが感じられる風が吹き抜け、芙蓉は寝る前に伏黒が掛けてくれた彼の上着の前をかき合わせた。
「…相変わらず寒がりだな」
芙蓉の身体を包み込むように、伏黒は彼女を後ろから抱き締めた。突然の事に芙蓉は驚き、身を固くした。
「っ恵、…虎杖くん、いるのに、」
「アイツはちょっとやそっとじゃ起きねぇよ」
伏黒の言葉通り虎杖からは鼾が聞こえてくる。彼が芙蓉の事を信頼し、安心している証拠だろう。
「…ところで体調は大丈夫か?」
「…うん…、…硝子さんがくれた薬もあるからかな…、とりあえずは、なんとか」
「そうか…」
伏黒は芙蓉の首元に顔を埋めた。
「…恵?」
「…芙蓉は死滅回游には参加しないでくれ」
何を言われているのかを理解するのに時間がかかったー芙蓉は呆然と伏黒を振り返り、首を傾げた。
「…え…?」
「これ以上、芙蓉に無理をさせたくない」
「…無理、なんて、」
「死滅回游は呪霊を祓うのとは訳が違う。…正真正銘の、命懸けの殺し合いなんだ。…術師同士の」
芙蓉は自身の身体を包んでいる伏黒の腕を思わず握り締めた。伏黒の口からそんな恐ろしい言葉が出るなんて想像もしていなかった。
「…現状、津美紀がそんなイカれた事に巻き込まれてるのがほぼ確定してる。…せめて、芙蓉には…、そんな事に首を突っ込んで欲しくないんだ。…俺のエゴだってわかってる、けど芙蓉には手を汚して欲しくない」
珍しく捲し立てるように話す伏黒を再び振り返ろうとするも、伏黒の力強い腕は芙蓉を確りと抱き締めていて、彼の顔を見る事は許されなかった。
「…ホントの事、言うとね」
ややあって、芙蓉は小さな声で呟いた。
「…すごく、怖いの。今の状況がすごく…、どうしたらいいのか…、考えても、…何も、考えられなくて」
伏黒の腕を握る芙蓉の手が震えていた。
「…全然、覚悟なんて、出来なくて…、」
「いいんだ。…考えなくていい。芙蓉の事は俺が守る。今でさえ辛いだろうに、無理をさせて…すまない」
芙蓉はゆるゆると首を振った。自身の不甲斐なさと、伏黒への申し訳なさと感謝、変わってしまった現実への嘆きー溢れ出した涙は止まりそうも無かった。
「…ごめんね、まだ交代の時間じゃないのに」
「構わない。…どの道あまり眠れそうにないからな」
2人は並んで座り、焚き火を眺めていた。
「なぁ」
「ねぇ」
同じタイミングで口を開き、言葉が重なる。思いもしなかった事に2人は顔を見合わせ、笑った。
「恵からどうぞ」
「あぁ…、…今後の事についてなんだが」
「秤先輩と会ってからの事だよね、私も今話そうと思ってたの。…気が合うね」
「…当たり前だ」
顔を見合わせ、2人はまた笑った。
「津美紀ちゃんに会いに行こうと思ってるの」
芙蓉の言葉に、伏黒の口からため息が出た。
「…そこまで同じかよ」
「え、ホント?」
「死滅回游に巻き込まれてる以上、参加を宣言しないと津美紀は与えられた術式を剥奪される」
「…剥奪って…、硝子さんが言ってた、」
「そうだ。だからそれまでに俺たちはポイントを集めないといけないし、その辺りの事を津美紀に知らせておいても良いだろうと思ってる。…ただでさえ時間の経過に混乱もあるだろう。少しは津美紀にも状況を理解して考える時間も必要だろうからな」
津美紀が倒れて1年以上が過ぎているのだという事を改めて思い知る。芙蓉の脳裏に津美紀の笑顔が浮かぶ。
「…うん、」
冷たい風が目の前で燃える火を揺らす。芙蓉は自身の身体をかき抱いた。寒気を覚えるのは冷気のせいか、それとも先程伏黒の口から出た恐ろしい言葉のせいか。芙蓉はぼんやりと焚き火を見つめる。
黙りこくった芙蓉に、伏黒は一度空を仰いだ。街の灯りがない空はプラネタリウムで見る様に、星の瞬きがとても綺麗によく見えた。子供の頃に寒い中、津美紀に連れ出されて天体観測をした事を思い出した。
「…死ぬつもりはない。ただ、死ぬ気で挑まなきゃ本当に死ぬかもしれない」
「…うん、」
「…約束は覚えてる。…破るつもりもない」
「…うん、」
芙蓉は手近にあった木材を焚き火に投げ込んだ。木材に残っていた水分がパチパチと弾ける音が響く。
「…恵も虎杖くんも強いから、大丈夫って思ってる、…けど、どうしても…、不安っていうか…」
「…もし俺が死んでも芙蓉は生きろよ」
芙蓉は自分の耳を疑った。
今、何てー?
隣に座る伏黒の顔を恐る恐る見上げた。
「…遅かれ早かれ人間は死ぬもんだろ。生きてりゃいい事だってあるだろうし」
伏黒は芙蓉の頬に手を添え、滲みだした涙を拭った。
「もしそうなったら、俺の分も生きてくれよな」
「…っ縁起でもない事っ、言わないでよ…っ」
「言ったろ、死ぬつもりはねぇって」
「じゃあなんで…っ!」
「…それくらいの思いなんだ。もし俺が悔いを残して死んで、芙蓉に取り憑いたら迷惑だろ?」
「…恵に、そんな冗談、似合わない、よ」
伏黒は芙蓉に向き合うと、彼女を強く抱き寄せた。
「…絶対、なんて事は存在しない。…けど、」
「…待ってる。絶対。…恵の事、信じてるから、」
「…ありがとう」
伏黒は繊細で美しいガラス細工を愛でる様に芙蓉の頰に触れ、真っ直ぐに自身を見つめる芙蓉の視線を受け止める。互いの想いを誓い合うように2人は唇を重ねた。
芙蓉は眠っている虎杖を気遣い、小さな声で言った。
伏黒は芙蓉の言葉に構わず彼女の隣に並ぶと、かつては街だった瓦礫の山を見下ろした。
「…東京とは思えないな」
「…。別世界…だよね。…映画、みたい」
冬の匂いが感じられる風が吹き抜け、芙蓉は寝る前に伏黒が掛けてくれた彼の上着の前をかき合わせた。
「…相変わらず寒がりだな」
芙蓉の身体を包み込むように、伏黒は彼女を後ろから抱き締めた。突然の事に芙蓉は驚き、身を固くした。
「っ恵、…虎杖くん、いるのに、」
「アイツはちょっとやそっとじゃ起きねぇよ」
伏黒の言葉通り虎杖からは鼾が聞こえてくる。彼が芙蓉の事を信頼し、安心している証拠だろう。
「…ところで体調は大丈夫か?」
「…うん…、…硝子さんがくれた薬もあるからかな…、とりあえずは、なんとか」
「そうか…」
伏黒は芙蓉の首元に顔を埋めた。
「…恵?」
「…芙蓉は死滅回游には参加しないでくれ」
何を言われているのかを理解するのに時間がかかったー芙蓉は呆然と伏黒を振り返り、首を傾げた。
「…え…?」
「これ以上、芙蓉に無理をさせたくない」
「…無理、なんて、」
「死滅回游は呪霊を祓うのとは訳が違う。…正真正銘の、命懸けの殺し合いなんだ。…術師同士の」
芙蓉は自身の身体を包んでいる伏黒の腕を思わず握り締めた。伏黒の口からそんな恐ろしい言葉が出るなんて想像もしていなかった。
「…現状、津美紀がそんなイカれた事に巻き込まれてるのがほぼ確定してる。…せめて、芙蓉には…、そんな事に首を突っ込んで欲しくないんだ。…俺のエゴだってわかってる、けど芙蓉には手を汚して欲しくない」
珍しく捲し立てるように話す伏黒を再び振り返ろうとするも、伏黒の力強い腕は芙蓉を確りと抱き締めていて、彼の顔を見る事は許されなかった。
「…ホントの事、言うとね」
ややあって、芙蓉は小さな声で呟いた。
「…すごく、怖いの。今の状況がすごく…、どうしたらいいのか…、考えても、…何も、考えられなくて」
伏黒の腕を握る芙蓉の手が震えていた。
「…全然、覚悟なんて、出来なくて…、」
「いいんだ。…考えなくていい。芙蓉の事は俺が守る。今でさえ辛いだろうに、無理をさせて…すまない」
芙蓉はゆるゆると首を振った。自身の不甲斐なさと、伏黒への申し訳なさと感謝、変わってしまった現実への嘆きー溢れ出した涙は止まりそうも無かった。
「…ごめんね、まだ交代の時間じゃないのに」
「構わない。…どの道あまり眠れそうにないからな」
2人は並んで座り、焚き火を眺めていた。
「なぁ」
「ねぇ」
同じタイミングで口を開き、言葉が重なる。思いもしなかった事に2人は顔を見合わせ、笑った。
「恵からどうぞ」
「あぁ…、…今後の事についてなんだが」
「秤先輩と会ってからの事だよね、私も今話そうと思ってたの。…気が合うね」
「…当たり前だ」
顔を見合わせ、2人はまた笑った。
「津美紀ちゃんに会いに行こうと思ってるの」
芙蓉の言葉に、伏黒の口からため息が出た。
「…そこまで同じかよ」
「え、ホント?」
「死滅回游に巻き込まれてる以上、参加を宣言しないと津美紀は与えられた術式を剥奪される」
「…剥奪って…、硝子さんが言ってた、」
「そうだ。だからそれまでに俺たちはポイントを集めないといけないし、その辺りの事を津美紀に知らせておいても良いだろうと思ってる。…ただでさえ時間の経過に混乱もあるだろう。少しは津美紀にも状況を理解して考える時間も必要だろうからな」
津美紀が倒れて1年以上が過ぎているのだという事を改めて思い知る。芙蓉の脳裏に津美紀の笑顔が浮かぶ。
「…うん、」
冷たい風が目の前で燃える火を揺らす。芙蓉は自身の身体をかき抱いた。寒気を覚えるのは冷気のせいか、それとも先程伏黒の口から出た恐ろしい言葉のせいか。芙蓉はぼんやりと焚き火を見つめる。
黙りこくった芙蓉に、伏黒は一度空を仰いだ。街の灯りがない空はプラネタリウムで見る様に、星の瞬きがとても綺麗によく見えた。子供の頃に寒い中、津美紀に連れ出されて天体観測をした事を思い出した。
「…死ぬつもりはない。ただ、死ぬ気で挑まなきゃ本当に死ぬかもしれない」
「…うん、」
「…約束は覚えてる。…破るつもりもない」
「…うん、」
芙蓉は手近にあった木材を焚き火に投げ込んだ。木材に残っていた水分がパチパチと弾ける音が響く。
「…恵も虎杖くんも強いから、大丈夫って思ってる、…けど、どうしても…、不安っていうか…」
「…もし俺が死んでも芙蓉は生きろよ」
芙蓉は自分の耳を疑った。
今、何てー?
隣に座る伏黒の顔を恐る恐る見上げた。
「…遅かれ早かれ人間は死ぬもんだろ。生きてりゃいい事だってあるだろうし」
伏黒は芙蓉の頬に手を添え、滲みだした涙を拭った。
「もしそうなったら、俺の分も生きてくれよな」
「…っ縁起でもない事っ、言わないでよ…っ」
「言ったろ、死ぬつもりはねぇって」
「じゃあなんで…っ!」
「…それくらいの思いなんだ。もし俺が悔いを残して死んで、芙蓉に取り憑いたら迷惑だろ?」
「…恵に、そんな冗談、似合わない、よ」
伏黒は芙蓉に向き合うと、彼女を強く抱き寄せた。
「…絶対、なんて事は存在しない。…けど、」
「…待ってる。絶対。…恵の事、信じてるから、」
「…ありがとう」
伏黒は繊細で美しいガラス細工を愛でる様に芙蓉の頰に触れ、真っ直ぐに自身を見つめる芙蓉の視線を受け止める。互いの想いを誓い合うように2人は唇を重ねた。