夏の終わり
恵の幼馴染のお名前は?
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真っ暗なビルの階段を登っていく。自分たち以外に音を立てる存在は居ないはずだが、何かがいる気配がする。恐らく、というか呪霊でほぼ間違いないのだが、屋上から感じられる強力な呪力に怯えているのだろう、それらが出て来る気配はない。ただ見られている様な感じで不気味ではあるが、出て来ないのならわざわざ祓う必要もなく、むしろ好都合と言えた。
屋上への薄っぺらいスチール製のドアの向こう、質の異なる2つの呪力が感じられる。1つは慣れた呪力、もう1つは初めて接する呪力。伏黒の背中を黙って追っていた芙蓉は、突然立ち止まった背中に顔からぶつかった。
「痛っ…」
「悪い」
と、突然大声が聞こえた。何を話しているのかまでは聞き取れないが、今の声は虎杖の声で間違いはなかった。芙蓉は驚きながらも彼が無事だった事を安堵した。それと同時にドアの向こうに2人がいる事を確信出来、伏黒は芙蓉を一度振り返ると静かにドアを開けた。
「虎杖」
伏黒を認めた虎杖の顔は戸惑い、今にも泣き出しそうな程に困惑していた。
「…伏黒…、高峰…、」
「何してんだ。さっさと高専に戻るぞ」
芙蓉は虎杖の様子を見て思わず俯いた。何か声をかけるにも、何と声をかけて良いかもわからない。下手な慰めなど出来るわけもないし、彼に同情するなんて事も出来ない。虎杖の顔からは見た事もないくらいの悲痛さと、自責の念と、罪悪感が満ち溢れていた。しかし伏黒は虎杖の想いに触れる事なく淡々と言葉を続ける。
「今、高専の結界は緩んでる。直接顔を見られない限りオマエが戻っても問題ねぇ。一度先輩らと合流して」
「やめろ」
酷く落ち着いた虎杖の言葉が伏黒を遮る。
「当たり前のように受け入れるな。なかった事にするんじゃねぇ」
芙蓉は思わず自身の身体を掻き抱いた。血塗れになりながらも、逃げろと自身に声をかけてきた狗巻の姿がフラッシュバックした。あの時、あの領域に居た一般人たちがどうなったかは言うまでも無い。
乙骨は虎杖の心情を慮りながら、黙って2人のやり取りを見ていた。身に余る程に強大な、自身ではコントロール出来ない力を背負った経験がある乙骨は虎杖の抱える闇がどれ程深いものかを思った。
「俺は人を殺した‼︎俺のせいで大勢死んだんだぞ‼︎」
「虎杖くん…」
何か声をかけたい、そう芙蓉が思っても、彼女の口から出たのは虎杖の名前だけだった。
「俺達のせいだ」
きっぱりとした伏黒の強い言葉に、その場の時が止まった様に芙蓉には感じられた。
「オマエ独りで勝手に諦めるな」
伏黒は大きく息を吐いた。
「俺たちは正義の味方じゃない。…呪術師だ。俺達を本当の意味で裁ける人間はいない。だからこそ、俺達は存在意義を示し続けなきゃいけない。もう俺達に自分の事を考えてる暇はねぇんだ。ただひたすらに人を助けるんだ。…これはそもそもオマエの行動原理だったハズだ」
伏黒の言葉を聞きながら、芙蓉は虎杖の様子を見ていた。伏黒の言葉を理解しながらも、未だ迷っている様子が窺える。ここで口を挟んで良いものかと悩みながらも、意を決して芙蓉は口を開く。
「虎杖くん、お願い。力を貸して」
「まずは俺達を助けろ、虎杖」
その言葉に、虎杖は驚いた様に目を見開いて芙蓉を見、伏黒を見る。
「…加茂憲倫が仕組んだ、呪術を与えられた者達の殺し合い…“死滅回游”」
芙蓉は唇を噛んだ。津美紀の笑顔が脳裏に浮かぶ。
「“死滅回游”に津美紀も巻き込まれてる。…頼む虎杖。オマエの力が必要だ」
虎杖は何かを考える様に、暫く黙っていた。俯いていた顔を上げるー先程まで虎杖の表情を曇らせていた迷いが消え、目の前を確りと見つめていた。
「乙骨先輩。…宿儺が伏黒で何か企んでる。渋谷でアイツに肉体を取られたのは、…多分、一度に指を10本も食わされたからだ。…今、俺の中に指は15本、残り5本全部一度に食わされても、肉体は乗っ取られないと思う。
…それでも」
虎杖は乙骨を真っ直ぐに見据えた。
「もし次…、俺が宿儺と変わったら…、迷わず殺してくれ。先輩なら、出来ると思う」
「…分かった。死力を尽くすよ」
虎杖の強い決意に応えるように、乙骨は力強く頷いた。
「伏黒。…俺は何をすればいい」
再び立ち上がった虎杖。言葉通り命懸けで事に立ち向かう虎杖に気押されながらも、芙蓉は小さく息を吐いた。
今後の方針を伏黒は2人に説明をするー獄門疆の封印の解き方、加茂憲倫の出方について、そして死滅回游という未曾有の呪術テロを収拾させるには、呪術界の要とも言われる天元様と接触するのが必須である事。渋谷で出会った九十九の意見も取り入れての事であり、何かと障害が多い事が見込まれるが、他に手は無さそうだった。
「……」
方針がある程度まとまったところで、不意に虎杖が口を噤んだ。思い詰める様な表情に、芙蓉は首を傾げる。
「虎杖くん…?」
「ごめん。高峰、伏黒…、やっぱ今聞くわ」
「え?」
「…釘崎は、どうなった…?」
予想していなかった虎杖の言葉に、2人は何も言えなかった。釘崎の状況は聞いていたが、結局のところ詳しい事はわからないし、それをどう説明して良いか、言葉に出来なかった。その様子を見た虎杖は自身に言い聞かせるように頷くと、強い決意をもって拳を握り締めた。
屋上への薄っぺらいスチール製のドアの向こう、質の異なる2つの呪力が感じられる。1つは慣れた呪力、もう1つは初めて接する呪力。伏黒の背中を黙って追っていた芙蓉は、突然立ち止まった背中に顔からぶつかった。
「痛っ…」
「悪い」
と、突然大声が聞こえた。何を話しているのかまでは聞き取れないが、今の声は虎杖の声で間違いはなかった。芙蓉は驚きながらも彼が無事だった事を安堵した。それと同時にドアの向こうに2人がいる事を確信出来、伏黒は芙蓉を一度振り返ると静かにドアを開けた。
「虎杖」
伏黒を認めた虎杖の顔は戸惑い、今にも泣き出しそうな程に困惑していた。
「…伏黒…、高峰…、」
「何してんだ。さっさと高専に戻るぞ」
芙蓉は虎杖の様子を見て思わず俯いた。何か声をかけるにも、何と声をかけて良いかもわからない。下手な慰めなど出来るわけもないし、彼に同情するなんて事も出来ない。虎杖の顔からは見た事もないくらいの悲痛さと、自責の念と、罪悪感が満ち溢れていた。しかし伏黒は虎杖の想いに触れる事なく淡々と言葉を続ける。
「今、高専の結界は緩んでる。直接顔を見られない限りオマエが戻っても問題ねぇ。一度先輩らと合流して」
「やめろ」
酷く落ち着いた虎杖の言葉が伏黒を遮る。
「当たり前のように受け入れるな。なかった事にするんじゃねぇ」
芙蓉は思わず自身の身体を掻き抱いた。血塗れになりながらも、逃げろと自身に声をかけてきた狗巻の姿がフラッシュバックした。あの時、あの領域に居た一般人たちがどうなったかは言うまでも無い。
乙骨は虎杖の心情を慮りながら、黙って2人のやり取りを見ていた。身に余る程に強大な、自身ではコントロール出来ない力を背負った経験がある乙骨は虎杖の抱える闇がどれ程深いものかを思った。
「俺は人を殺した‼︎俺のせいで大勢死んだんだぞ‼︎」
「虎杖くん…」
何か声をかけたい、そう芙蓉が思っても、彼女の口から出たのは虎杖の名前だけだった。
「俺達のせいだ」
きっぱりとした伏黒の強い言葉に、その場の時が止まった様に芙蓉には感じられた。
「オマエ独りで勝手に諦めるな」
伏黒は大きく息を吐いた。
「俺たちは正義の味方じゃない。…呪術師だ。俺達を本当の意味で裁ける人間はいない。だからこそ、俺達は存在意義を示し続けなきゃいけない。もう俺達に自分の事を考えてる暇はねぇんだ。ただひたすらに人を助けるんだ。…これはそもそもオマエの行動原理だったハズだ」
伏黒の言葉を聞きながら、芙蓉は虎杖の様子を見ていた。伏黒の言葉を理解しながらも、未だ迷っている様子が窺える。ここで口を挟んで良いものかと悩みながらも、意を決して芙蓉は口を開く。
「虎杖くん、お願い。力を貸して」
「まずは俺達を助けろ、虎杖」
その言葉に、虎杖は驚いた様に目を見開いて芙蓉を見、伏黒を見る。
「…加茂憲倫が仕組んだ、呪術を与えられた者達の殺し合い…“死滅回游”」
芙蓉は唇を噛んだ。津美紀の笑顔が脳裏に浮かぶ。
「“死滅回游”に津美紀も巻き込まれてる。…頼む虎杖。オマエの力が必要だ」
虎杖は何かを考える様に、暫く黙っていた。俯いていた顔を上げるー先程まで虎杖の表情を曇らせていた迷いが消え、目の前を確りと見つめていた。
「乙骨先輩。…宿儺が伏黒で何か企んでる。渋谷でアイツに肉体を取られたのは、…多分、一度に指を10本も食わされたからだ。…今、俺の中に指は15本、残り5本全部一度に食わされても、肉体は乗っ取られないと思う。
…それでも」
虎杖は乙骨を真っ直ぐに見据えた。
「もし次…、俺が宿儺と変わったら…、迷わず殺してくれ。先輩なら、出来ると思う」
「…分かった。死力を尽くすよ」
虎杖の強い決意に応えるように、乙骨は力強く頷いた。
「伏黒。…俺は何をすればいい」
再び立ち上がった虎杖。言葉通り命懸けで事に立ち向かう虎杖に気押されながらも、芙蓉は小さく息を吐いた。
今後の方針を伏黒は2人に説明をするー獄門疆の封印の解き方、加茂憲倫の出方について、そして死滅回游という未曾有の呪術テロを収拾させるには、呪術界の要とも言われる天元様と接触するのが必須である事。渋谷で出会った九十九の意見も取り入れての事であり、何かと障害が多い事が見込まれるが、他に手は無さそうだった。
「……」
方針がある程度まとまったところで、不意に虎杖が口を噤んだ。思い詰める様な表情に、芙蓉は首を傾げる。
「虎杖くん…?」
「ごめん。高峰、伏黒…、やっぱ今聞くわ」
「え?」
「…釘崎は、どうなった…?」
予想していなかった虎杖の言葉に、2人は何も言えなかった。釘崎の状況は聞いていたが、結局のところ詳しい事はわからないし、それをどう説明して良いか、言葉に出来なかった。その様子を見た虎杖は自身に言い聞かせるように頷くと、強い決意をもって拳を握り締めた。