夏の終わり
恵の幼馴染のお名前は?
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「…テレビで見た以上の人出ね」
芙蓉は渋谷駅近くのバス停、通路シェルターの屋根の上から人の流れを見ていた。
人の流れ、と言っても、彼女が見つめる先では改造人間が人間を襲い、そこからどうにか逃れようとする人間が混乱を引き起こし、駅前は無秩序が支配する混沌の坩堝と言えた。芙蓉のいる位置から少し離れた歩道橋の上では狗巻が拡声器を手に、彼もまた芙蓉と同じように人の流れを見ている。この場にいる人間全てを救う事は出来ないが、少しでも可能性があるのなら救い出したいー芙蓉は狗巻の方を見た。アイコンタクトをして頷き合い、芙蓉は獲物を狙う肉食獣の様に姿勢を屈める。片膝を立ててトンファーを両手に構え、いつでも飛び降りられるように準備をする。キィン、と拡声器のハウリングが聞こえたのを合図に芙蓉は飛び降りた。
「止 ま れ」
狗巻の呪言が飛ぶー芙蓉は止まった群衆の間を縫うように駆け抜け、改造人間のみをトンファーで叩き飛ばす。呪言の効果範囲よりもやや狭い範囲内で改造人間と人間を分断し、改造人間を術式で閉じ込める。
「逃 げ ろ」
もう一度狗巻の呪言が飛ぶと、人間たちは皆一様に建物の中へ駆け込んで行く。改造人間たちは芙蓉の術式で外界と分断されており、狗巻の言葉は届かない。
ざわざわと止まっていた群衆が動き始めるのを感じ、芙蓉は再び通路シェルターの上に飛び乗って術式を解く。
「捻 れ ろ」
狗巻の言葉に従い、見えない力で改造人間の身体が絞り上げられる。芙蓉は顔を背け、狗巻の様子を伺う。少し咳き込んだ彼は喉薬を服用していた。
この一連の動きを何度繰り返しただろうか。
どれだけの人を助けられただろうか。
芙蓉は通りに視線を向ける。個が見えず、未だ1つの塊のようにしか見えない群衆に小さく息を吐いた。
いつまでこの動きを繰り返せば良いのだろうという諦念の思いと、まだまだ人を助けなければいけないという責任感のような思いのジレンマーこの場から離れたとしても、この界隈は同じような惨状であるだろうしー芙蓉は頭を振った。余計な事を考えている暇はない。
と、辺りの空気が動いた気配を感じた。思わず芙蓉は狗巻を振り返った。彼も同じように芙蓉を見ていて、芙蓉は状況を確認する為狗巻の下へ向かった。
「先輩、今のって、」
「しゃけ…、ツナ、いくら」
2人が感じたのは帳が上がる気配だった。どの辺りでどの帳が解除されたのか等の詳細はわからないが、少しずつ状況が動いているらしい事、そして間接的ながらも高専サイドの面々の活躍を知る事となり、芙蓉は消沈しかけていた自身の思いが再燃するのを自覚した。そして気合いを入れるように自身の両頬をぱちんと叩けば、狗巻は少し驚いた様に目を瞬かせるも、すぐに目を細めて笑ったようだった。
「…後悔はしないように、やれるだけやります」
狗巻は頷き、親指を立てて見せた。
「ツナマヨ、すじこ、こんぶ」
「そうですね…、もう少し駅の方に近付いて、効果範囲を広くすれば効率的かもしれません。…改造人間は駅の方から流れてきてるみたいですし」
芙蓉は群衆を見て呟くように応えた。人間を救い出してはいるものの、圧倒的に部が悪いー2人対多数、群衆も改造人間の方が多くなってきているのを目の当たりにしての事だった。
「少し様子を見てきます」
「高菜!」
「大丈夫です、」
芙蓉は術式で足場を作る。地上から約3メートルの高さに立ってみせる。
「ぐるっと見て、すぐ戻ってきますから」
心配そうな顔の狗巻に構わず、芙蓉は空を駆けて駅前の上空を巡回する。状況はあまり変わらないようにも見えた。とりあえず狗巻のいる場所まで戻ろうと引き返す。
「明太子!」
狗巻の言葉に、芙蓉は頭上を通る高架橋を見上げた。
「その語彙は!狗巻先輩!… 高峰も‼︎」
「しゃけ!」
「虎杖くん!」
状況を伝えずとも自身を理解してくれている様子の2人に、虎杖は滲みそうになる涙を呑み込み、地上へ向けて飛び降りる。一瞬だけ、虎杖と芙蓉の視線がぶつかる。虎杖の目から、彼が何か重要な命を背負っているのを感じ取った芙蓉。互いに頷き合った。
「頼んます!」
「しゃけしゃけ」
狗巻の拡声器がハウリングを起こし、呪言が響く。
「動 く な」
迷いの無い虎杖に触発された様に、芙蓉は狗巻に合わせ、その付近の人造人間を一掃する。
今の自分に出来る事を、やれるだけやらなくては。
振り返る事なく地下への階段へ消えて行った虎杖の背中を守れるのは、自分と狗巻しかいないのだと自身に言い聞かせ、芙蓉は術式を行使し、懸命に腕を振るった。
芙蓉は渋谷駅近くのバス停、通路シェルターの屋根の上から人の流れを見ていた。
人の流れ、と言っても、彼女が見つめる先では改造人間が人間を襲い、そこからどうにか逃れようとする人間が混乱を引き起こし、駅前は無秩序が支配する混沌の坩堝と言えた。芙蓉のいる位置から少し離れた歩道橋の上では狗巻が拡声器を手に、彼もまた芙蓉と同じように人の流れを見ている。この場にいる人間全てを救う事は出来ないが、少しでも可能性があるのなら救い出したいー芙蓉は狗巻の方を見た。アイコンタクトをして頷き合い、芙蓉は獲物を狙う肉食獣の様に姿勢を屈める。片膝を立ててトンファーを両手に構え、いつでも飛び降りられるように準備をする。キィン、と拡声器のハウリングが聞こえたのを合図に芙蓉は飛び降りた。
「止 ま れ」
狗巻の呪言が飛ぶー芙蓉は止まった群衆の間を縫うように駆け抜け、改造人間のみをトンファーで叩き飛ばす。呪言の効果範囲よりもやや狭い範囲内で改造人間と人間を分断し、改造人間を術式で閉じ込める。
「逃 げ ろ」
もう一度狗巻の呪言が飛ぶと、人間たちは皆一様に建物の中へ駆け込んで行く。改造人間たちは芙蓉の術式で外界と分断されており、狗巻の言葉は届かない。
ざわざわと止まっていた群衆が動き始めるのを感じ、芙蓉は再び通路シェルターの上に飛び乗って術式を解く。
「捻 れ ろ」
狗巻の言葉に従い、見えない力で改造人間の身体が絞り上げられる。芙蓉は顔を背け、狗巻の様子を伺う。少し咳き込んだ彼は喉薬を服用していた。
この一連の動きを何度繰り返しただろうか。
どれだけの人を助けられただろうか。
芙蓉は通りに視線を向ける。個が見えず、未だ1つの塊のようにしか見えない群衆に小さく息を吐いた。
いつまでこの動きを繰り返せば良いのだろうという諦念の思いと、まだまだ人を助けなければいけないという責任感のような思いのジレンマーこの場から離れたとしても、この界隈は同じような惨状であるだろうしー芙蓉は頭を振った。余計な事を考えている暇はない。
と、辺りの空気が動いた気配を感じた。思わず芙蓉は狗巻を振り返った。彼も同じように芙蓉を見ていて、芙蓉は状況を確認する為狗巻の下へ向かった。
「先輩、今のって、」
「しゃけ…、ツナ、いくら」
2人が感じたのは帳が上がる気配だった。どの辺りでどの帳が解除されたのか等の詳細はわからないが、少しずつ状況が動いているらしい事、そして間接的ながらも高専サイドの面々の活躍を知る事となり、芙蓉は消沈しかけていた自身の思いが再燃するのを自覚した。そして気合いを入れるように自身の両頬をぱちんと叩けば、狗巻は少し驚いた様に目を瞬かせるも、すぐに目を細めて笑ったようだった。
「…後悔はしないように、やれるだけやります」
狗巻は頷き、親指を立てて見せた。
「ツナマヨ、すじこ、こんぶ」
「そうですね…、もう少し駅の方に近付いて、効果範囲を広くすれば効率的かもしれません。…改造人間は駅の方から流れてきてるみたいですし」
芙蓉は群衆を見て呟くように応えた。人間を救い出してはいるものの、圧倒的に部が悪いー2人対多数、群衆も改造人間の方が多くなってきているのを目の当たりにしての事だった。
「少し様子を見てきます」
「高菜!」
「大丈夫です、」
芙蓉は術式で足場を作る。地上から約3メートルの高さに立ってみせる。
「ぐるっと見て、すぐ戻ってきますから」
心配そうな顔の狗巻に構わず、芙蓉は空を駆けて駅前の上空を巡回する。状況はあまり変わらないようにも見えた。とりあえず狗巻のいる場所まで戻ろうと引き返す。
「明太子!」
狗巻の言葉に、芙蓉は頭上を通る高架橋を見上げた。
「その語彙は!狗巻先輩!… 高峰も‼︎」
「しゃけ!」
「虎杖くん!」
状況を伝えずとも自身を理解してくれている様子の2人に、虎杖は滲みそうになる涙を呑み込み、地上へ向けて飛び降りる。一瞬だけ、虎杖と芙蓉の視線がぶつかる。虎杖の目から、彼が何か重要な命を背負っているのを感じ取った芙蓉。互いに頷き合った。
「頼んます!」
「しゃけしゃけ」
狗巻の拡声器がハウリングを起こし、呪言が響く。
「動 く な」
迷いの無い虎杖に触発された様に、芙蓉は狗巻に合わせ、その付近の人造人間を一掃する。
今の自分に出来る事を、やれるだけやらなくては。
振り返る事なく地下への階段へ消えて行った虎杖の背中を守れるのは、自分と狗巻しかいないのだと自身に言い聞かせ、芙蓉は術式を行使し、懸命に腕を振るった。