出会い
恵の幼馴染のお名前は?
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昼食を終えた伏黒と芙蓉は、伏黒に宛てがわれている部屋の近く、敷地が見渡せる廊下に座り、外の景色を眺めながら話し込んでいた。
日常の出来事、宿題について、津美紀の様子などと他愛のない話だが、伏黒にとってはとても良い気分転換になり、久しぶりにリラックスできたようだった。
千浪が五条家にやって来たのは15時を過ぎた頃だった。夏の太陽は幾分傾いてきたが、まだまだ熱気を振り撒いている。
「あれっ、お母さん?」
伏黒と共に、おやつとして提供されたスイカに齧り付いていた芙蓉は大きな目を更に見開き、え、なんで、と驚いた様子を見せた。
「こんにちは」
驚く芙蓉をよそに、伏黒は持っていたスイカを置いて礼儀正しく挨拶をした。どうかしたんですか、と伏黒は千浪が手荷物にしては大き過ぎるボストンバッグを持っている事に気が付いたようだ。
「悟くんから連絡が来て、荷物を届けに来たの」
「…それって私のバッグじゃない?」
どういう事、と芙蓉が首を傾げるも、状況は見えてこない。押し黙る3人の脳裏に五条の顔が浮かぶ。千浪について行った方が良さそうだと、伏黒と芙蓉は顔を見合わせた。
「恵と芙蓉も一緒だったんだね、ちょうど良かった」
千浪が通された部屋で伏黒と芙蓉も一緒に待っていると、五条は現れるなり上機嫌で口を開いた。
「芙蓉も今日から恵と一緒に合宿ね」
「「はぁ⁉︎」」
「うーん、息ピッタリだねぇ」
五条の発言に驚いて声を上げる伏黒と芙蓉、呆れたようにため息をつく千浪。
「…悟くん、ビックリさせたい気持ちはわかるけど、こういうのはちゃんと話をしないと」
五条より少し年長の千浪は諌めるような言葉をかけるも、それが五条に対してさほど効果がないと理解しているようだった。
「一応必要そうなものは入れてきたけど、もし何か足りないものがあったら連絡しなさいね」
千浪は芙蓉にそれだけ言うと、さっさと部屋を出て行ってしまった。
「…さて、さっきも言った通りだけど。芙蓉も今日から合宿ね。…今後の事も考えて、芙蓉もやらなくちゃいけない事があるからね」
部屋を出た千浪は迷う事なく廊下を足早に進み玄関に出る。見送りに出て来た使用人に頭を下げ、待機している車に乗り込んだ。
「随分早いですね?もう良いんですか?」
ハンドルを握っている男は五条家の人間で、五条から千浪の送迎を命ぜられていた。だいぶ長く五条家に仕えていて、千浪の事も良く知っている。
「えぇ、荷物を届けに来ただけですから」
ゆっくりと動き出す景色を眺めながら、千浪は五条の話を思い出していた。
ーもしもし、千浪ちゃん?急な話で悪いんだけど、芙蓉が反転使ってさ。今のままだとちょっと心配だから、少しこっちで預かってもいいかな?ー
その言葉を聞いて、千浪は手にしていた携帯を取り落としそうになった。芙蓉は“持っている側”だという事は前々から五条より聞かされていたが、ついに発現してしまったのか、というのが本音だった。自分も夫も呪術師の家の人間、無理な望みとはわかっているが、出来る事なら芙蓉にはこのまま術式が使えないまま、非術師として生活していって欲しいと思っていたーそんなのは自分のエゴだという気持ちも抱えながら。
「大丈夫ですか?少し顔色が良くないようですが」
運転席からの声で千浪は我に返った。いつの間にか車は路肩に寄せて停まっている。前を向けば、ルームミラー越しに運転手と目が合った。
「…大丈夫です、ご心配をおかけしてすみません。お気遣いありがとうございます」
千浪がにこりと微笑んで見せれば、運転手は安心したような表情で再び車を走らせる。
あの人がいたら、なんて言うかしらー千浪は夫・和真を思い浮かべた。和真はとても優しい男だった。家同士が決めた結婚だったが和真は千浪を快く迎え入れ、彼女を尊重しとても大事にした。芙蓉が生まれた時には泣いて喜び、時間を見つけてはよく芙蓉の面倒を見、とても良い夫であり父親であった。
ー呪術師の家系から逃れられない自分たちが言えた事じゃないが、芙蓉には自分の進む道は自分で決めて欲しいな。もしも、芙蓉が呪術師になるとしても、それは自分の意志で決めて欲しいー
和真が口癖のように言っていた言葉。千浪は小さく息を吐いた。和馬が行方不明になって7年になる。きっともう、戻って来ないだろう事は覚悟している。それと同時に、芙蓉を何処に出しても恥ずかしくない人間に育てると決めた。
和真の望み通り、芙蓉の人生は芙蓉に決めさせようー千浪はしっかりと前を見据えた。
日常の出来事、宿題について、津美紀の様子などと他愛のない話だが、伏黒にとってはとても良い気分転換になり、久しぶりにリラックスできたようだった。
千浪が五条家にやって来たのは15時を過ぎた頃だった。夏の太陽は幾分傾いてきたが、まだまだ熱気を振り撒いている。
「あれっ、お母さん?」
伏黒と共に、おやつとして提供されたスイカに齧り付いていた芙蓉は大きな目を更に見開き、え、なんで、と驚いた様子を見せた。
「こんにちは」
驚く芙蓉をよそに、伏黒は持っていたスイカを置いて礼儀正しく挨拶をした。どうかしたんですか、と伏黒は千浪が手荷物にしては大き過ぎるボストンバッグを持っている事に気が付いたようだ。
「悟くんから連絡が来て、荷物を届けに来たの」
「…それって私のバッグじゃない?」
どういう事、と芙蓉が首を傾げるも、状況は見えてこない。押し黙る3人の脳裏に五条の顔が浮かぶ。千浪について行った方が良さそうだと、伏黒と芙蓉は顔を見合わせた。
「恵と芙蓉も一緒だったんだね、ちょうど良かった」
千浪が通された部屋で伏黒と芙蓉も一緒に待っていると、五条は現れるなり上機嫌で口を開いた。
「芙蓉も今日から恵と一緒に合宿ね」
「「はぁ⁉︎」」
「うーん、息ピッタリだねぇ」
五条の発言に驚いて声を上げる伏黒と芙蓉、呆れたようにため息をつく千浪。
「…悟くん、ビックリさせたい気持ちはわかるけど、こういうのはちゃんと話をしないと」
五条より少し年長の千浪は諌めるような言葉をかけるも、それが五条に対してさほど効果がないと理解しているようだった。
「一応必要そうなものは入れてきたけど、もし何か足りないものがあったら連絡しなさいね」
千浪は芙蓉にそれだけ言うと、さっさと部屋を出て行ってしまった。
「…さて、さっきも言った通りだけど。芙蓉も今日から合宿ね。…今後の事も考えて、芙蓉もやらなくちゃいけない事があるからね」
部屋を出た千浪は迷う事なく廊下を足早に進み玄関に出る。見送りに出て来た使用人に頭を下げ、待機している車に乗り込んだ。
「随分早いですね?もう良いんですか?」
ハンドルを握っている男は五条家の人間で、五条から千浪の送迎を命ぜられていた。だいぶ長く五条家に仕えていて、千浪の事も良く知っている。
「えぇ、荷物を届けに来ただけですから」
ゆっくりと動き出す景色を眺めながら、千浪は五条の話を思い出していた。
ーもしもし、千浪ちゃん?急な話で悪いんだけど、芙蓉が反転使ってさ。今のままだとちょっと心配だから、少しこっちで預かってもいいかな?ー
その言葉を聞いて、千浪は手にしていた携帯を取り落としそうになった。芙蓉は“持っている側”だという事は前々から五条より聞かされていたが、ついに発現してしまったのか、というのが本音だった。自分も夫も呪術師の家の人間、無理な望みとはわかっているが、出来る事なら芙蓉にはこのまま術式が使えないまま、非術師として生活していって欲しいと思っていたーそんなのは自分のエゴだという気持ちも抱えながら。
「大丈夫ですか?少し顔色が良くないようですが」
運転席からの声で千浪は我に返った。いつの間にか車は路肩に寄せて停まっている。前を向けば、ルームミラー越しに運転手と目が合った。
「…大丈夫です、ご心配をおかけしてすみません。お気遣いありがとうございます」
千浪がにこりと微笑んで見せれば、運転手は安心したような表情で再び車を走らせる。
あの人がいたら、なんて言うかしらー千浪は夫・和真を思い浮かべた。和真はとても優しい男だった。家同士が決めた結婚だったが和真は千浪を快く迎え入れ、彼女を尊重しとても大事にした。芙蓉が生まれた時には泣いて喜び、時間を見つけてはよく芙蓉の面倒を見、とても良い夫であり父親であった。
ー呪術師の家系から逃れられない自分たちが言えた事じゃないが、芙蓉には自分の進む道は自分で決めて欲しいな。もしも、芙蓉が呪術師になるとしても、それは自分の意志で決めて欲しいー
和真が口癖のように言っていた言葉。千浪は小さく息を吐いた。和馬が行方不明になって7年になる。きっともう、戻って来ないだろう事は覚悟している。それと同時に、芙蓉を何処に出しても恥ずかしくない人間に育てると決めた。
和真の望み通り、芙蓉の人生は芙蓉に決めさせようー千浪はしっかりと前を見据えた。