呼応
恵の幼馴染のお名前は?
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五条からの密命を受け、庵と共に行動した日の翌日。
放課後に芙蓉は1人、事務室を訪れていた。幸いにして探していた五条はすぐに捕まった。
「ぅん?どったの芙蓉?」
「…昨日の、昇級の話なんだけど、」
五条は頷くと事務室隣の応接室へ移動し、芙蓉と向かい合って腰を下ろした。
「…で?昇級に何か問題?」
「うん…、なんで私も、って」
「あれ?昨日言わなかったっけ?交流会で、」
「だから、なんで、って。…私は、みんなみたいに、何かやったわけでもないし…」
役に立っていないし、という言葉が喉元まで出掛かったのを飲み込んだー真希の言葉を思い出し、膝の上で握りしめた拳に力が入る。
「1級術師になる以前に、術師にも適正があるんだよ」
「…素質と、素材の話…?」
「さっすが芙蓉、よく覚えてるね。前にも話したと思うけど、術師になるには呪いと対峙し、それを殺す事が出来る強いメンタル、強靭なフィジカル、呪いを祓う術式の運用、この3つが不可欠。…稀に例外もあるけどね」
五条の言葉と自身の理解に相違が無いか擦り合わせる。
「それは最低限の話で、昇級にはまたいろいろあるんだけど…、交流会での芙蓉の動きはとても良いものだったよ。…特級を目の前にしても物怖じする事なく、棘のフォローをしながら上手く立ち回ってたし、状況判断も的確で、現場で自分の能力と役割を理解して他の術師を助けたし、自分だけが生き延びるんじゃなくて自分達が生き延びる事も考えて行動出来ていた。自分の術式の応用もいい感じに出来てるしー何より、芙蓉には伸び代が大いにある。…悠仁が1回死んだ時、僕言ったよね?芙蓉は弱い、弱ければ死ぬ、って。だけど芙蓉は今生きてる。あの状況下で芙蓉は最善を尽くして可能性を探して生き残ったんだ。能力が無ければとっくに死んでるはずだよ。つまり、それだけ成長してるって事」
予想もしなかった五条の言葉に、芙蓉はそんな評価がされている事に驚き戸惑いー五条を見据える。
「…それって誰の見解?悟くんの見解じゃないよね?」
「…もしかして僕、信用されてない?」
「そういうワケじゃなくて…、少なくとも悟くんから、誰かと協力した行動とか…、違和感あるっていうか」
芙蓉の言葉に五条は吹き出した。
「成長したね、芙蓉。芙蓉はもっともっと良い術師になれるよ。…お父さんに負けないくらいにね」
「え…」
五条は立ち上がり、これから会議があるからと芙蓉を残して行ってしまった。五条の後ろ姿を見つめながら、芙蓉は先程の言葉を噛み締める。
漸く立ち上がると、寮へ向けて歩き出した。
寮棟へ入り、2階への階段のすぐ側の共有スペースを覗くも、この日は誰も居なかった。
芙蓉は部屋に戻ろうとしてーやめた。代わりに1階の、伏黒の部屋のドアを叩く。
「…おう」
さして驚く様子もなく、寧ろやはり来たか、というような顔で伏黒は芙蓉を部屋へ招き入れた。
「…ココアで良いか?」
「あ、うん…、…ありがとう」
伏黒が芙蓉の分のココアを淹れている間、芙蓉はベッドの上に開かれた本が裏返しになって置かれているのを見た。伏黒はいつも通りに自身の時間を過ごしているようでー芙蓉は小さく息を吐いた。
「…また考え事か?」
ほかほかと湯気の立つカップをテーブルに置くと、伏黒は芙蓉の隣に座る。優しく香ばしい香りを芙蓉は胸いっぱいに吸い込んだ。
「…昇級についてってトコか」
「…わかる…?」
「当たり前だ。…何年一緒に過ごしてると思ってんだ」
伏黒の言う事に間違いは無いのだが、改めて言われるとその年月の重みというか、互いへの深い理解に、何とも言えないくすぐったさに似た想いを覚える。隣に座る伏黒を見れば、テーブルに頬杖をつきながらも優しい眼差しで芙蓉を見ていた。パチリと目が合い、突然の気恥ずかしさを覚えた芙蓉はココアのカップに手を伸ばす。
「…俺は受けるつもりだ。…もっと、強くならなきゃいけない。津美紀の呪いについて知らなきゃいけない事もある…、その為にはもっと力が必要だ」
芙蓉は熱いココアに息を吹きかけながら、目標や目的もなく昇級の推薦を受けて良いのだろうかと、部屋の本棚に並ぶ本を眺めながらぼんやりと思った。
「…弱けりゃ芙蓉を守るどころか、何があっても生き抜くって約束も果たせないからな。…1級になって箔つけて、少しくらいカッコつけても良いだろ」
自分は何よりも大切な事を忘れていたと、芙蓉は伏黒の言葉を聞いてハッとした。昇級の理由や目的は自分の目の前にあるー。
「ありがとう、恵」
いつも隣に寄り添ってくれる、大切な存在。芙蓉は伏黒の肩口に頬を寄せた。
「…俺は何もしてねぇぞ」
笑いを含んだ声が、頭によく響いてくる。
「恵が居てくれるから、私は頑張れるの」
伏黒の腕が優しく芙蓉を包み込む。幸せなあたたかさに芙蓉はそっと目を閉じる。
自分の想いと覚悟は決まった。
あとはもう、やれる事を精一杯やるだけだ。
放課後に芙蓉は1人、事務室を訪れていた。幸いにして探していた五条はすぐに捕まった。
「ぅん?どったの芙蓉?」
「…昨日の、昇級の話なんだけど、」
五条は頷くと事務室隣の応接室へ移動し、芙蓉と向かい合って腰を下ろした。
「…で?昇級に何か問題?」
「うん…、なんで私も、って」
「あれ?昨日言わなかったっけ?交流会で、」
「だから、なんで、って。…私は、みんなみたいに、何かやったわけでもないし…」
役に立っていないし、という言葉が喉元まで出掛かったのを飲み込んだー真希の言葉を思い出し、膝の上で握りしめた拳に力が入る。
「1級術師になる以前に、術師にも適正があるんだよ」
「…素質と、素材の話…?」
「さっすが芙蓉、よく覚えてるね。前にも話したと思うけど、術師になるには呪いと対峙し、それを殺す事が出来る強いメンタル、強靭なフィジカル、呪いを祓う術式の運用、この3つが不可欠。…稀に例外もあるけどね」
五条の言葉と自身の理解に相違が無いか擦り合わせる。
「それは最低限の話で、昇級にはまたいろいろあるんだけど…、交流会での芙蓉の動きはとても良いものだったよ。…特級を目の前にしても物怖じする事なく、棘のフォローをしながら上手く立ち回ってたし、状況判断も的確で、現場で自分の能力と役割を理解して他の術師を助けたし、自分だけが生き延びるんじゃなくて自分達が生き延びる事も考えて行動出来ていた。自分の術式の応用もいい感じに出来てるしー何より、芙蓉には伸び代が大いにある。…悠仁が1回死んだ時、僕言ったよね?芙蓉は弱い、弱ければ死ぬ、って。だけど芙蓉は今生きてる。あの状況下で芙蓉は最善を尽くして可能性を探して生き残ったんだ。能力が無ければとっくに死んでるはずだよ。つまり、それだけ成長してるって事」
予想もしなかった五条の言葉に、芙蓉はそんな評価がされている事に驚き戸惑いー五条を見据える。
「…それって誰の見解?悟くんの見解じゃないよね?」
「…もしかして僕、信用されてない?」
「そういうワケじゃなくて…、少なくとも悟くんから、誰かと協力した行動とか…、違和感あるっていうか」
芙蓉の言葉に五条は吹き出した。
「成長したね、芙蓉。芙蓉はもっともっと良い術師になれるよ。…お父さんに負けないくらいにね」
「え…」
五条は立ち上がり、これから会議があるからと芙蓉を残して行ってしまった。五条の後ろ姿を見つめながら、芙蓉は先程の言葉を噛み締める。
漸く立ち上がると、寮へ向けて歩き出した。
寮棟へ入り、2階への階段のすぐ側の共有スペースを覗くも、この日は誰も居なかった。
芙蓉は部屋に戻ろうとしてーやめた。代わりに1階の、伏黒の部屋のドアを叩く。
「…おう」
さして驚く様子もなく、寧ろやはり来たか、というような顔で伏黒は芙蓉を部屋へ招き入れた。
「…ココアで良いか?」
「あ、うん…、…ありがとう」
伏黒が芙蓉の分のココアを淹れている間、芙蓉はベッドの上に開かれた本が裏返しになって置かれているのを見た。伏黒はいつも通りに自身の時間を過ごしているようでー芙蓉は小さく息を吐いた。
「…また考え事か?」
ほかほかと湯気の立つカップをテーブルに置くと、伏黒は芙蓉の隣に座る。優しく香ばしい香りを芙蓉は胸いっぱいに吸い込んだ。
「…昇級についてってトコか」
「…わかる…?」
「当たり前だ。…何年一緒に過ごしてると思ってんだ」
伏黒の言う事に間違いは無いのだが、改めて言われるとその年月の重みというか、互いへの深い理解に、何とも言えないくすぐったさに似た想いを覚える。隣に座る伏黒を見れば、テーブルに頬杖をつきながらも優しい眼差しで芙蓉を見ていた。パチリと目が合い、突然の気恥ずかしさを覚えた芙蓉はココアのカップに手を伸ばす。
「…俺は受けるつもりだ。…もっと、強くならなきゃいけない。津美紀の呪いについて知らなきゃいけない事もある…、その為にはもっと力が必要だ」
芙蓉は熱いココアに息を吹きかけながら、目標や目的もなく昇級の推薦を受けて良いのだろうかと、部屋の本棚に並ぶ本を眺めながらぼんやりと思った。
「…弱けりゃ芙蓉を守るどころか、何があっても生き抜くって約束も果たせないからな。…1級になって箔つけて、少しくらいカッコつけても良いだろ」
自分は何よりも大切な事を忘れていたと、芙蓉は伏黒の言葉を聞いてハッとした。昇級の理由や目的は自分の目の前にあるー。
「ありがとう、恵」
いつも隣に寄り添ってくれる、大切な存在。芙蓉は伏黒の肩口に頬を寄せた。
「…俺は何もしてねぇぞ」
笑いを含んだ声が、頭によく響いてくる。
「恵が居てくれるから、私は頑張れるの」
伏黒の腕が優しく芙蓉を包み込む。幸せなあたたかさに芙蓉はそっと目を閉じる。
自分の想いと覚悟は決まった。
あとはもう、やれる事を精一杯やるだけだ。