呼応
恵の幼馴染のお名前は?
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津美紀の見舞いに埼玉へ行っていた伏黒と芙蓉の2人が都内へ戻って来たのは、すっかり日が暮れてからだった。更に夕食を済ませて来たのもあってバスの運行時間も過ぎており、高専までの暗い道を歩いていく。
「ねぇ、恵」
「…ん?」
「もし、ね?…変な話するけど…、もし、明日死んじゃうとしたら、恵はどうする?」
「何だよ急に。芙蓉らしくねぇな」
芙蓉が高専に入学して、入学祝いを買いに街へ出、その帰り際の時の事を伏黒は思い出す。真っ暗な道に怯えていた芙蓉。彼女は術師としての経験を積み、あの日よりもずっと強い術師になった。
「…。恵が、任務で死ぬかと思った、って言ったから、さ。…術師になった以上、“そういう事”が絶対にないとは言い切れないじゃない?勿論、誰だって…死ぬ、つもりはないだろうけど、それがいつなのかとか、そんなの誰にもわからないし。だからせめて、そうなりそうな時…っていうのもおかしな話だけど…、もし、自分が死んじゃうとしたら、どうするかな、って」
並んで歩く2人。芙蓉が暗い夜道に怯える事はなくなったようだが、互いの手は確りと繋ぎ合わせている。
「…。そうだな…、…、まずは…、津美紀に謝りたいな。…謝って、感謝を伝えたい。…俺がガキだったせいで…、…冷たい態度とったりしても、なんだかんだ見捨てないで居てくれたしな。…勿論芙蓉にも感謝してる」
「…私?」
「当たり前だ。…芙蓉が居てくれたから、芙蓉がずっと俺の事を支えてくれたから、俺はこうして術師を続けられてる。…それに、約束したしな」
「え…?」
「…五条家で鍛錬した時」
伏黒がぶっきらぼうに言い捨てる時は、大抵照れている時ー芙蓉は記憶を辿る。
小学生時代、五条家の地下。鍛錬場に向かう時に怯えた芙蓉は散々泣きじゃくって伏黒を困らせた。その時に伏黒がかけてくれた言葉ー忘れた事はなかった。
「…う、そ…」
「…何がだよ」
「…あの時の、私を落ち着かせる為に、言ってくれたんだって…、思ってて…、」
伏黒を見上げれば、芙蓉の視線から逃れるように真っ直ぐ前を見ていた。
「…。…ガキの頃からずっと、…芙蓉の事が好きだ」
伏黒は芙蓉の手を握る自身の手に力を込めた。こうして自身の気持ちをはっきりと言葉にして伝えたのは初めてだった。照れ臭さが先立ち、そして自身の気持ちはもうわかってくれているだろうと、ある意味芙蓉に甘えていたわけだ。もしも明日、死ぬなんて事になっても後悔なんてしない様にー死ぬつもりはないが、自分の口で伝えなくてはいけないと、死線を越えた伏黒はそう思った。
「こんな世界で生き残る為なのは勿論だが…、芙蓉を守る為にも、強くなる。…前向いて生きてりゃ未来もあるしな。…こんな世界を呪いたくもなるけど、芙蓉も一緒にいる、それだけでも十分だろ」
伏黒が漸く隣の芙蓉を見下ろせば、彼女は恥ずかしそうに俯きながらも、伏黒に同調するように頷いていた。
「…、自分でこんな事言うの、恥ずかしいんだけど、」
芙蓉はそう前置いて、ひと呼吸置いて口を開く。
「…もし恵が、この先、辛い事があって、全部投げ出したくなっちゃった時は、私の事、思い出して欲しいな」
今度は芙蓉が伏黒の視線から逃れるように、真っ直ぐ前を見つめていた。秋めいた心地良い風が吹き抜け、恥ずかしがる芙蓉の言葉を覆うように辺りの草木がさらさらと音を立てる。
「恵はいつも、私に優しいから…、私の事、思い出してくれれば、恵も自分に優しく出来るかなって…」
俯きがちに言葉を紡ぐ芙蓉が愛らしく思え、伏黒は彼女の手の甲を親指でするりと撫でた。
「…約束する。…芙蓉にも、同じように思って欲しい」
伏黒がそう口にすれば、芙蓉は伏黒を見上げて驚いた表情を見せながらも嬉しそうに笑った。
「…私も、辛くなったら恵の事思い出すね、約束だよ」
高専まで、あと半分くらいの地点を通過した。2人で過ごすのはそれ程久しぶりではないはずなのに、高専に着いてしまうのが惜しいと思うくらいの時間で、2人の歩みはとてもゆっくりだった。
「…じゃあ、もし死ぬと思ってたのが、明日生き残ったら芙蓉はどうする?」
今度は伏黒が芙蓉に問いかけた。伏黒からそのような事を言われると想像もしていなかったようで、芙蓉は小さく唸った。ややあって、口を開く。
「…それってすごくラッキーでハッピーな事だよね。うーん…、好きな事ばっかりしてみたいな。好きな音楽聴いて、好きな色の服を着て出掛けて、好きなもの食べるとか…、あ!毎日誕生日みたいに暮らしていくとかどうかな?…死んじゃうかもって思ってたのが生きてたなら、それくらいの事思うかもしれないじゃない?」
屈託のない笑顔で嬉しそうに想いを口にする芙蓉。伏黒は彼女につられるように、彼女の想いに同調するように口元を緩めた。
「いい考えだな」
「でしょ?」
「…もし、お互いに何かがあっても、その想いは忘れないように乗り越えていきたいな」
「もし、じゃなくて」
不意に芙蓉は伏黒の手を抜け出し、彼に向き直った。
「この先、何があっても、絶対に生き抜くの」
真剣な眼差しに、伏黒は八十八橋での1件が、芙蓉に与えた想いが如何程だったかを改めて思い知った。
「…約束だよ」
毅然とした言葉を紡いだ口が、いつの間にか湿り気を帯びていて。伏黒は思わず芙蓉を抱き締めた。ぐす、と呟くように涙を吐き出す芙蓉を力強く抱き寄せると、伏黒はゆっくりと身体を離し、小指を立てて見せた。
「…約束」
芙蓉は目を見開き、驚いた顔を見せる。そしておずおずと、自身の小指を伏黒の小指へと絡ませる。
「…絶対に生きる。…何があっても」
伏黒の力強い言葉。芙蓉は涙目のまま、しっかりと頷いた。そんな彼女の様子に満足した伏黒は芙蓉の頬に手を添え、目元の涙を拭うとそっと口付けた。
「…俺は芙蓉の事を泣かせてばっかりだな」
伏黒が苦笑いした。2人は再び手を繋いで歩き出す。
感情表現の豊かな芙蓉。楽しい事や嬉しい事があれば本当によく笑い、嫌な事があれば子供の様に頬を膨らませる。辛い事や悲しい事があればその思いを吐き出すように泣くし、誰かの気持ちを想っても泣く。表情を見ているだけでも飽きる事はない。
彼女のそんなところは勿論、全てを受け止めて包み込む優しさと思い遣りがあり、自分に無いものをたくさん持っていて。そして、その気持ちを惜しみ無く分け与えてくれる芙蓉に伏黒はずっと惹かれていて、守りたくて。
「…恵?」
黙り込んだ伏黒を気遣うように、芙蓉が彼を見上げている。芙蓉への想いを、伏黒は改めて自覚した。
「何でもねぇ。…やっぱり、芙蓉には笑っていて欲しい、そう思っただけだ」
高専の正門まで、あと少し。
「芙蓉、」
優しさを湛えた伏黒の視線が、見上げてくる芙蓉を捉える。呼べばすぐに笑顔で応えてくれる。
芙蓉がずっと笑顔で居られるようにー伏黒は正門の階段を登る前に、少しだけ、ともう一度芙蓉を抱き締めた。
「ねぇ、恵」
「…ん?」
「もし、ね?…変な話するけど…、もし、明日死んじゃうとしたら、恵はどうする?」
「何だよ急に。芙蓉らしくねぇな」
芙蓉が高専に入学して、入学祝いを買いに街へ出、その帰り際の時の事を伏黒は思い出す。真っ暗な道に怯えていた芙蓉。彼女は術師としての経験を積み、あの日よりもずっと強い術師になった。
「…。恵が、任務で死ぬかと思った、って言ったから、さ。…術師になった以上、“そういう事”が絶対にないとは言い切れないじゃない?勿論、誰だって…死ぬ、つもりはないだろうけど、それがいつなのかとか、そんなの誰にもわからないし。だからせめて、そうなりそうな時…っていうのもおかしな話だけど…、もし、自分が死んじゃうとしたら、どうするかな、って」
並んで歩く2人。芙蓉が暗い夜道に怯える事はなくなったようだが、互いの手は確りと繋ぎ合わせている。
「…。そうだな…、…、まずは…、津美紀に謝りたいな。…謝って、感謝を伝えたい。…俺がガキだったせいで…、…冷たい態度とったりしても、なんだかんだ見捨てないで居てくれたしな。…勿論芙蓉にも感謝してる」
「…私?」
「当たり前だ。…芙蓉が居てくれたから、芙蓉がずっと俺の事を支えてくれたから、俺はこうして術師を続けられてる。…それに、約束したしな」
「え…?」
「…五条家で鍛錬した時」
伏黒がぶっきらぼうに言い捨てる時は、大抵照れている時ー芙蓉は記憶を辿る。
小学生時代、五条家の地下。鍛錬場に向かう時に怯えた芙蓉は散々泣きじゃくって伏黒を困らせた。その時に伏黒がかけてくれた言葉ー忘れた事はなかった。
「…う、そ…」
「…何がだよ」
「…あの時の、私を落ち着かせる為に、言ってくれたんだって…、思ってて…、」
伏黒を見上げれば、芙蓉の視線から逃れるように真っ直ぐ前を見ていた。
「…。…ガキの頃からずっと、…芙蓉の事が好きだ」
伏黒は芙蓉の手を握る自身の手に力を込めた。こうして自身の気持ちをはっきりと言葉にして伝えたのは初めてだった。照れ臭さが先立ち、そして自身の気持ちはもうわかってくれているだろうと、ある意味芙蓉に甘えていたわけだ。もしも明日、死ぬなんて事になっても後悔なんてしない様にー死ぬつもりはないが、自分の口で伝えなくてはいけないと、死線を越えた伏黒はそう思った。
「こんな世界で生き残る為なのは勿論だが…、芙蓉を守る為にも、強くなる。…前向いて生きてりゃ未来もあるしな。…こんな世界を呪いたくもなるけど、芙蓉も一緒にいる、それだけでも十分だろ」
伏黒が漸く隣の芙蓉を見下ろせば、彼女は恥ずかしそうに俯きながらも、伏黒に同調するように頷いていた。
「…、自分でこんな事言うの、恥ずかしいんだけど、」
芙蓉はそう前置いて、ひと呼吸置いて口を開く。
「…もし恵が、この先、辛い事があって、全部投げ出したくなっちゃった時は、私の事、思い出して欲しいな」
今度は芙蓉が伏黒の視線から逃れるように、真っ直ぐ前を見つめていた。秋めいた心地良い風が吹き抜け、恥ずかしがる芙蓉の言葉を覆うように辺りの草木がさらさらと音を立てる。
「恵はいつも、私に優しいから…、私の事、思い出してくれれば、恵も自分に優しく出来るかなって…」
俯きがちに言葉を紡ぐ芙蓉が愛らしく思え、伏黒は彼女の手の甲を親指でするりと撫でた。
「…約束する。…芙蓉にも、同じように思って欲しい」
伏黒がそう口にすれば、芙蓉は伏黒を見上げて驚いた表情を見せながらも嬉しそうに笑った。
「…私も、辛くなったら恵の事思い出すね、約束だよ」
高専まで、あと半分くらいの地点を通過した。2人で過ごすのはそれ程久しぶりではないはずなのに、高専に着いてしまうのが惜しいと思うくらいの時間で、2人の歩みはとてもゆっくりだった。
「…じゃあ、もし死ぬと思ってたのが、明日生き残ったら芙蓉はどうする?」
今度は伏黒が芙蓉に問いかけた。伏黒からそのような事を言われると想像もしていなかったようで、芙蓉は小さく唸った。ややあって、口を開く。
「…それってすごくラッキーでハッピーな事だよね。うーん…、好きな事ばっかりしてみたいな。好きな音楽聴いて、好きな色の服を着て出掛けて、好きなもの食べるとか…、あ!毎日誕生日みたいに暮らしていくとかどうかな?…死んじゃうかもって思ってたのが生きてたなら、それくらいの事思うかもしれないじゃない?」
屈託のない笑顔で嬉しそうに想いを口にする芙蓉。伏黒は彼女につられるように、彼女の想いに同調するように口元を緩めた。
「いい考えだな」
「でしょ?」
「…もし、お互いに何かがあっても、その想いは忘れないように乗り越えていきたいな」
「もし、じゃなくて」
不意に芙蓉は伏黒の手を抜け出し、彼に向き直った。
「この先、何があっても、絶対に生き抜くの」
真剣な眼差しに、伏黒は八十八橋での1件が、芙蓉に与えた想いが如何程だったかを改めて思い知った。
「…約束だよ」
毅然とした言葉を紡いだ口が、いつの間にか湿り気を帯びていて。伏黒は思わず芙蓉を抱き締めた。ぐす、と呟くように涙を吐き出す芙蓉を力強く抱き寄せると、伏黒はゆっくりと身体を離し、小指を立てて見せた。
「…約束」
芙蓉は目を見開き、驚いた顔を見せる。そしておずおずと、自身の小指を伏黒の小指へと絡ませる。
「…絶対に生きる。…何があっても」
伏黒の力強い言葉。芙蓉は涙目のまま、しっかりと頷いた。そんな彼女の様子に満足した伏黒は芙蓉の頬に手を添え、目元の涙を拭うとそっと口付けた。
「…俺は芙蓉の事を泣かせてばっかりだな」
伏黒が苦笑いした。2人は再び手を繋いで歩き出す。
感情表現の豊かな芙蓉。楽しい事や嬉しい事があれば本当によく笑い、嫌な事があれば子供の様に頬を膨らませる。辛い事や悲しい事があればその思いを吐き出すように泣くし、誰かの気持ちを想っても泣く。表情を見ているだけでも飽きる事はない。
彼女のそんなところは勿論、全てを受け止めて包み込む優しさと思い遣りがあり、自分に無いものをたくさん持っていて。そして、その気持ちを惜しみ無く分け与えてくれる芙蓉に伏黒はずっと惹かれていて、守りたくて。
「…恵?」
黙り込んだ伏黒を気遣うように、芙蓉が彼を見上げている。芙蓉への想いを、伏黒は改めて自覚した。
「何でもねぇ。…やっぱり、芙蓉には笑っていて欲しい、そう思っただけだ」
高専の正門まで、あと少し。
「芙蓉、」
優しさを湛えた伏黒の視線が、見上げてくる芙蓉を捉える。呼べばすぐに笑顔で応えてくれる。
芙蓉がずっと笑顔で居られるようにー伏黒は正門の階段を登る前に、少しだけ、ともう一度芙蓉を抱き締めた。