もしも、明日死ぬなら
恵の幼馴染のお名前は?
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八十八橋での任務から一夜明け、翌日。
地方出張から戻ってきた五条が久しぶりに教壇に立った。芙蓉を除く3人がそれぞれ顔に絆創膏を貼り付けているのに五条が意に介する様子は微塵もない。
「久しぶりのおっはよー!うん、みんな元気そうだね。この後、芙蓉以外の3人は学長が呼んでるから行って来てね。それじゃ解散!」
五条は教室を出て行きー虎杖、伏黒、釘崎の3人は暗い顔を見合わせた。新田が上に報告せずとも、家入に治療を受けた以上、ケガの経緯から状況まで記録として残される。術師のケガに関しては高専の事務方へも情報共有されているというのもあり、学長からの呼び出しはどうあっても免れられないだろう。
「…行くか」
「仕方ないわね」
「っし、気張ってこーぜ」
「あ…、がんばって、ね…」
3人を見送り、1人残された芙蓉。予想外の状況に戸惑っていると、程なくして2年の2人と1匹が現れ、体術の鍛錬だと彼らに外へ連れ出された。
基本的な体力アップの為のトレーニングをウォームアップとした後、虎杖と釘崎が外のグラウンドへ、疲れた様子で姿を見せた。
「お〜悪ガキが来たな〜」
パンダが揶揄って言えば、もっと悪ガキがいるわよ、と釘崎がやつれた顔で言い返す。
「…恵か。聞いた話、結構ムキになってたらしいな」
「あんま言わないでやってよ。津美紀の姉ちゃんが心配だったみたいだから」
虎杖と釘崎は疲れた、とグラウンド側の芝生へ座り込んだ。芙蓉は今回の任務についての概要を思い返すー現場は八十八橋、そして虎杖の口から出た津美紀の名。少しだけ嫌な感じを覚えた。今日の授業が終わったら伊地知に任務の詳細を聞きに行こうと決めた。
昼時、伏黒が漸く3人と合流した。本当に誇張なく、今の今まで学長にアホほどお叱りを受けていたそうで、先に食堂で昼食をとっていた3人のところにやって来た彼は虎杖や釘崎以上にぐったりと疲れた様子だった。
その日の放課後、芙蓉は事務室の伊地知の下を訪れ、昨日の八十八橋での任務の概要を知りたいと告げた。伊地知は嫌な顔する事なく、高専から個人へ貸し出している、芙蓉のパソコンへデータを送りますよ、という親切な提案をした。芙蓉は感謝を述べ、事務室を出る。
早速部屋に戻ってメールを確認すれば、伊地知から任務の概要を添付したメールが届いていた。芙蓉は早速それに目を通し、昨夜、移動中に聞いたの新田の話と3人の話を総合して繋ぎ合わせていく。
と、ドアを叩く音が聞こえて芙蓉の思考は中断された。ドアを開けて来ないという事は釘崎や真希ではないー短く返事をしてドアを開ける。
「、恵」
「少し良いか」
芙蓉はドアを大きく開けて伏黒を招き入れた。相変わらず疲れの見える顔に、芙蓉は伏黒にはブラックコーヒーを、自身にはミルクを入れたコーヒーを淹れた。
「…悪いな」
「いいよ、私も何か飲もうと思ってたから」
テーブルを挟んで座り、それぞれ飲み物を口にした。用があって来たはずの伏黒、なかなか口を開く様子が見えない。何処となく落ち着かない様にも見える。
「何でも言ってよ。…私は、大丈夫だから」
「…今度の休み、津美紀の見舞いに行こうと思ってる」
「…!」
「…学長に、1人で勝手な行動をするんじゃない、単独行動は慎むように散々言われて」
「…それで私と、って事?」
「いや、…まぁ…その、…、」
なんとも申し訳なさそうな顔で伏黒はコーヒーを口にする。芙蓉は困ったような顔をして見せた。ややあって、伏黒はハッキリした口調で話を始める。
「…、昨日の任務、もしかしたら津美紀にかけられた呪いと関係があるかもしれなかったんだ」
「さっき、伊地知さんから任務の概要を送ってもらって読んでたの。それから八十八橋に向かう時、新田さんが聞かせてくれた話と、みんなの話をまとめてて、」
「…そうか」
伏黒はコーヒーを飲んだ。カップを見つめている。
「…正直言って、今回の呪いを祓えば津美紀の呪いが解けると思ってたんだ」
伏黒のその目は虚空を写していた。
「…けど、病院からは何の連絡もない。…津美紀の呪いは解けなかった」
「……」
彼の顔には絆創膏が貼られ、痣がいくつも出来ている。ただ、今は目の前に座る伏黒が無事である事を喜びたいのに、当の本人は自身の事には無関心である様にも見えー芙蓉は伏黒にかける言葉が見つからなかった。
「… 芙蓉、」
テーブルの上で組まれていた伏黒の手に、芙蓉は黙って自身の手を優しく添えた。
「…お願い。恵は、自分の事も、もっと大事にして」
重ね合わせた手が、芙蓉の手が震えていた。
そこで伏黒は、自身の行動が芙蓉に大きな不安と恐怖を感じさせていたのだとやっと気が付いた。
「…術師として、やらなきゃいけない事があるってわかってる。それこそ本当に、命懸けで挑まなきゃいけない事もあるっていうのもわかってる。…けど今は、とにかく恵が無事で良かった、今はそれしか考えられないの」
「…悪かった」
伏黒は泣き出しそうな芙蓉を抱き締めー声を押し殺してすすり泣く彼女の背を労わるように撫で続けた。
地方出張から戻ってきた五条が久しぶりに教壇に立った。芙蓉を除く3人がそれぞれ顔に絆創膏を貼り付けているのに五条が意に介する様子は微塵もない。
「久しぶりのおっはよー!うん、みんな元気そうだね。この後、芙蓉以外の3人は学長が呼んでるから行って来てね。それじゃ解散!」
五条は教室を出て行きー虎杖、伏黒、釘崎の3人は暗い顔を見合わせた。新田が上に報告せずとも、家入に治療を受けた以上、ケガの経緯から状況まで記録として残される。術師のケガに関しては高専の事務方へも情報共有されているというのもあり、学長からの呼び出しはどうあっても免れられないだろう。
「…行くか」
「仕方ないわね」
「っし、気張ってこーぜ」
「あ…、がんばって、ね…」
3人を見送り、1人残された芙蓉。予想外の状況に戸惑っていると、程なくして2年の2人と1匹が現れ、体術の鍛錬だと彼らに外へ連れ出された。
基本的な体力アップの為のトレーニングをウォームアップとした後、虎杖と釘崎が外のグラウンドへ、疲れた様子で姿を見せた。
「お〜悪ガキが来たな〜」
パンダが揶揄って言えば、もっと悪ガキがいるわよ、と釘崎がやつれた顔で言い返す。
「…恵か。聞いた話、結構ムキになってたらしいな」
「あんま言わないでやってよ。津美紀の姉ちゃんが心配だったみたいだから」
虎杖と釘崎は疲れた、とグラウンド側の芝生へ座り込んだ。芙蓉は今回の任務についての概要を思い返すー現場は八十八橋、そして虎杖の口から出た津美紀の名。少しだけ嫌な感じを覚えた。今日の授業が終わったら伊地知に任務の詳細を聞きに行こうと決めた。
昼時、伏黒が漸く3人と合流した。本当に誇張なく、今の今まで学長にアホほどお叱りを受けていたそうで、先に食堂で昼食をとっていた3人のところにやって来た彼は虎杖や釘崎以上にぐったりと疲れた様子だった。
その日の放課後、芙蓉は事務室の伊地知の下を訪れ、昨日の八十八橋での任務の概要を知りたいと告げた。伊地知は嫌な顔する事なく、高専から個人へ貸し出している、芙蓉のパソコンへデータを送りますよ、という親切な提案をした。芙蓉は感謝を述べ、事務室を出る。
早速部屋に戻ってメールを確認すれば、伊地知から任務の概要を添付したメールが届いていた。芙蓉は早速それに目を通し、昨夜、移動中に聞いたの新田の話と3人の話を総合して繋ぎ合わせていく。
と、ドアを叩く音が聞こえて芙蓉の思考は中断された。ドアを開けて来ないという事は釘崎や真希ではないー短く返事をしてドアを開ける。
「、恵」
「少し良いか」
芙蓉はドアを大きく開けて伏黒を招き入れた。相変わらず疲れの見える顔に、芙蓉は伏黒にはブラックコーヒーを、自身にはミルクを入れたコーヒーを淹れた。
「…悪いな」
「いいよ、私も何か飲もうと思ってたから」
テーブルを挟んで座り、それぞれ飲み物を口にした。用があって来たはずの伏黒、なかなか口を開く様子が見えない。何処となく落ち着かない様にも見える。
「何でも言ってよ。…私は、大丈夫だから」
「…今度の休み、津美紀の見舞いに行こうと思ってる」
「…!」
「…学長に、1人で勝手な行動をするんじゃない、単独行動は慎むように散々言われて」
「…それで私と、って事?」
「いや、…まぁ…その、…、」
なんとも申し訳なさそうな顔で伏黒はコーヒーを口にする。芙蓉は困ったような顔をして見せた。ややあって、伏黒はハッキリした口調で話を始める。
「…、昨日の任務、もしかしたら津美紀にかけられた呪いと関係があるかもしれなかったんだ」
「さっき、伊地知さんから任務の概要を送ってもらって読んでたの。それから八十八橋に向かう時、新田さんが聞かせてくれた話と、みんなの話をまとめてて、」
「…そうか」
伏黒はコーヒーを飲んだ。カップを見つめている。
「…正直言って、今回の呪いを祓えば津美紀の呪いが解けると思ってたんだ」
伏黒のその目は虚空を写していた。
「…けど、病院からは何の連絡もない。…津美紀の呪いは解けなかった」
「……」
彼の顔には絆創膏が貼られ、痣がいくつも出来ている。ただ、今は目の前に座る伏黒が無事である事を喜びたいのに、当の本人は自身の事には無関心である様にも見えー芙蓉は伏黒にかける言葉が見つからなかった。
「… 芙蓉、」
テーブルの上で組まれていた伏黒の手に、芙蓉は黙って自身の手を優しく添えた。
「…お願い。恵は、自分の事も、もっと大事にして」
重ね合わせた手が、芙蓉の手が震えていた。
そこで伏黒は、自身の行動が芙蓉に大きな不安と恐怖を感じさせていたのだとやっと気が付いた。
「…術師として、やらなきゃいけない事があるってわかってる。それこそ本当に、命懸けで挑まなきゃいけない事もあるっていうのもわかってる。…けど今は、とにかく恵が無事で良かった、今はそれしか考えられないの」
「…悪かった」
伏黒は泣き出しそうな芙蓉を抱き締めー声を押し殺してすすり泣く彼女の背を労わるように撫で続けた。