もしも、明日死ぬなら
恵の幼馴染のお名前は?
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家入と芙蓉が同期会で一泊、翌日高専に戻って来たのは日が落ちてからだった。辺りはもう暗くなっている。
「呼び出しがなかったのが良かったですね」
「ん、伊地知に呼ぶなって伝えておいたからな」
「……」
「なんだ、私にだってたまには休みがあっても良いだろう?基本ケガ人が出たら休みどころじゃないんだ」
タクシーを降りて事務室に戻る道すがら、家入は大きく伸びをした。そしてこんなに長い時間外に出たのは久しぶりだと笑った。
「高峰、今回はありがとうな」
「いえっ、お礼を言うのは私の方ですよ!」
「…お前は気が優しいからな。今回の事は1つの経験と思ってくれれば十分だ。あんまり深く考えず、自分の気持ちを大事にな」
いつも休みなくケガ人の処置に追われる家入のサポートをするべきではないかと思っていたのを読まれた気がして、芙蓉は頭を下げた。
「お疲れ、ゆっくり休んでくれ」
「はい、ありがとうございました」
事務室で帰校の報告を済ませ、芙蓉は寮へ戻る途中、補助監督の新田とすれ違った。
「お疲れ様ッス」
「お疲れ様です」
任務に出た1年3人の引率は新田だったはずだ。彼女がいるという事は、3人はもう任務を終えて戻って来ているのだろうと、芙蓉は少しだけ歩くペースを上げた。浮つく気持ちを抑えて寮棟に入るも、共有スペースには誰もいない。部屋で各々寛いでいるのだろうかと思いながら階段を上るも、人の気配が感じられない。芙蓉は自分の部屋に戻るよりも先に釘崎の部屋を訪ねた。
「野薔薇ー?」
ドアを叩くも応答がない。基本的に在室時は解錠してあるドアを開けようとしたが開かないー不在。
先程、すれ違った新田を思い浮かべた。彼女の表情は仕事を終えたような雰囲気だった。3人で食事にでも行ったのだろうかーそんな時は誰かしらが決まってメッセージを送ってくれて、黙って行く事は無いはずだ。芙蓉は思わず走り出していた。
「新田さん!」
「え、あぁ高峰さん。どーしたッスか?」
「あの、今日の任務は、」
「あぁ、もう終わったッスよ。任務の等級が上がって、他の術師に引き継がれる事になってー」
「居ないんです。野薔薇も、恵も、虎杖くんも」
「っえぇ?」
2人は小走りで寮へ戻る。入り口からほど近い虎杖の部屋を訪ねれば、施錠し忘れたのか鍵は空いていた。
「マジで…いねぇッス…」
「電話も繋がらないですね…」
「…どこ行ったァガキ共ォ‼︎」
豹変した新田に怯えながらも、芙蓉は彼女が運転する助手席で3人の呪力を追う事に専念した。
「…に、新田さん…、運転怖い、です…」
「あぁん⁉︎」
高専の補助監督とは思えないくらいの乱暴な運転に芙蓉は車酔いを感じ始めていた。速度超過で警察に捕まるんじゃないか、新田に殴られるのではないかとヒヤヒヤ怯えながら芙蓉は姿勢をキープする事に必死だった。
芙蓉が呪力を辿らずとも、新田は3人の行き先を知っているようで、迷う事なく道路を進んでいく。
「…そーいや高峰さん、伏黒くんと中学同じだったッスよね?」
唐突な質問に戸惑いながらも芙蓉は返事をする。新田が普段通りになった様子に芙蓉は内心安堵した。
「今回の任務先は鯉ノ口峡谷、八十八橋なんスよ」
「…そうなってもおかしくない場所ですもんね。…新田さん、さっき任務の等級が上がったって…⁉︎」
芙蓉の言葉に新田は大きく息を吐いた。
「そうッス。こっちの話を無視されてるわけッスよ…」
再び新田の怒りが膨らむ。車はもう埼玉に入っていて、八十八橋まであと30分くらいだろう。任務の場所、等級の上昇ー芙蓉の不安は掻き立てられるばかりで、ただひたすらに3人の無事を願い続けていた。
新田の運転する車は無事に八十八橋近くに到着、芙蓉は急いでシートベルトを外して車を降りた。ここに来るのはいつ振りだろうかと思いながら、橋に向かって走り出した新田を追った。着替えて来れば良かったと芙蓉は走りにくい服装に悪態をついた。先に橋に辿り着いた新田が橋の欄干から身を乗り出している。頼りない月明かりの中、橋の上から見えるのだろうかと思っていると。
「クラァッ‼︎オマエらぁ‼︎」
芙蓉は驚き飛び上がった。そして少し気を集中させると3人の呪力が橋の下から感じられる事に気付き、芙蓉も新田に倣って下を覗く。
「っ!みんな大丈夫⁉︎」
傷だらけ血だらけの3人に芙蓉は声を上げ、今行くから、と術式で足場を作って駆け降りた。
「どこでも垂直移動が出来るのは便利ね」
3人の元へたどり着いた芙蓉は3人のケガの程度を確認ー俺は平気、大丈夫、と虎杖の自己申告。釘崎には応急処置で手首の傷を反転で癒す。伏黒は酷い呪力の消耗で、とりあえずと頭のケガを治療した。3人の無事に芙蓉がひと息つく。
「そろそろ行かなきゃね、新田さんキレてて怖いのよ」
芙蓉は再び術足場を作ると3人に先立って歩き出す。
「…なんか変な感じだけどスゲ〜!」
「…ごめん、虎杖くん、ちょっとペース上げてもらって良い…?」
最後をついて来た虎杖は空中散歩に感心しきりで辺りを見回しながら歩いていた。
「今俺たち3人分の重さが全部芙蓉にのしかかってる。足場を維持するには呪力を捻出しっぱなしにしなくちゃならないんだ、急ぐぞ」
「マジ⁉︎ごめん高峰早く言ってよ!」
虎杖は跳ぶように全員を追い越して橋の欄干へ辿り着く。続いて釘崎、伏黒が欄干を伝って行き、最後に芙蓉が橋に到着した。
「…今回の件はさすがに報告させてもらうッスよ」
新田の剣幕に誰も反論出来なかった。
「呼び出しがなかったのが良かったですね」
「ん、伊地知に呼ぶなって伝えておいたからな」
「……」
「なんだ、私にだってたまには休みがあっても良いだろう?基本ケガ人が出たら休みどころじゃないんだ」
タクシーを降りて事務室に戻る道すがら、家入は大きく伸びをした。そしてこんなに長い時間外に出たのは久しぶりだと笑った。
「高峰、今回はありがとうな」
「いえっ、お礼を言うのは私の方ですよ!」
「…お前は気が優しいからな。今回の事は1つの経験と思ってくれれば十分だ。あんまり深く考えず、自分の気持ちを大事にな」
いつも休みなくケガ人の処置に追われる家入のサポートをするべきではないかと思っていたのを読まれた気がして、芙蓉は頭を下げた。
「お疲れ、ゆっくり休んでくれ」
「はい、ありがとうございました」
事務室で帰校の報告を済ませ、芙蓉は寮へ戻る途中、補助監督の新田とすれ違った。
「お疲れ様ッス」
「お疲れ様です」
任務に出た1年3人の引率は新田だったはずだ。彼女がいるという事は、3人はもう任務を終えて戻って来ているのだろうと、芙蓉は少しだけ歩くペースを上げた。浮つく気持ちを抑えて寮棟に入るも、共有スペースには誰もいない。部屋で各々寛いでいるのだろうかと思いながら階段を上るも、人の気配が感じられない。芙蓉は自分の部屋に戻るよりも先に釘崎の部屋を訪ねた。
「野薔薇ー?」
ドアを叩くも応答がない。基本的に在室時は解錠してあるドアを開けようとしたが開かないー不在。
先程、すれ違った新田を思い浮かべた。彼女の表情は仕事を終えたような雰囲気だった。3人で食事にでも行ったのだろうかーそんな時は誰かしらが決まってメッセージを送ってくれて、黙って行く事は無いはずだ。芙蓉は思わず走り出していた。
「新田さん!」
「え、あぁ高峰さん。どーしたッスか?」
「あの、今日の任務は、」
「あぁ、もう終わったッスよ。任務の等級が上がって、他の術師に引き継がれる事になってー」
「居ないんです。野薔薇も、恵も、虎杖くんも」
「っえぇ?」
2人は小走りで寮へ戻る。入り口からほど近い虎杖の部屋を訪ねれば、施錠し忘れたのか鍵は空いていた。
「マジで…いねぇッス…」
「電話も繋がらないですね…」
「…どこ行ったァガキ共ォ‼︎」
豹変した新田に怯えながらも、芙蓉は彼女が運転する助手席で3人の呪力を追う事に専念した。
「…に、新田さん…、運転怖い、です…」
「あぁん⁉︎」
高専の補助監督とは思えないくらいの乱暴な運転に芙蓉は車酔いを感じ始めていた。速度超過で警察に捕まるんじゃないか、新田に殴られるのではないかとヒヤヒヤ怯えながら芙蓉は姿勢をキープする事に必死だった。
芙蓉が呪力を辿らずとも、新田は3人の行き先を知っているようで、迷う事なく道路を進んでいく。
「…そーいや高峰さん、伏黒くんと中学同じだったッスよね?」
唐突な質問に戸惑いながらも芙蓉は返事をする。新田が普段通りになった様子に芙蓉は内心安堵した。
「今回の任務先は鯉ノ口峡谷、八十八橋なんスよ」
「…そうなってもおかしくない場所ですもんね。…新田さん、さっき任務の等級が上がったって…⁉︎」
芙蓉の言葉に新田は大きく息を吐いた。
「そうッス。こっちの話を無視されてるわけッスよ…」
再び新田の怒りが膨らむ。車はもう埼玉に入っていて、八十八橋まであと30分くらいだろう。任務の場所、等級の上昇ー芙蓉の不安は掻き立てられるばかりで、ただひたすらに3人の無事を願い続けていた。
新田の運転する車は無事に八十八橋近くに到着、芙蓉は急いでシートベルトを外して車を降りた。ここに来るのはいつ振りだろうかと思いながら、橋に向かって走り出した新田を追った。着替えて来れば良かったと芙蓉は走りにくい服装に悪態をついた。先に橋に辿り着いた新田が橋の欄干から身を乗り出している。頼りない月明かりの中、橋の上から見えるのだろうかと思っていると。
「クラァッ‼︎オマエらぁ‼︎」
芙蓉は驚き飛び上がった。そして少し気を集中させると3人の呪力が橋の下から感じられる事に気付き、芙蓉も新田に倣って下を覗く。
「っ!みんな大丈夫⁉︎」
傷だらけ血だらけの3人に芙蓉は声を上げ、今行くから、と術式で足場を作って駆け降りた。
「どこでも垂直移動が出来るのは便利ね」
3人の元へたどり着いた芙蓉は3人のケガの程度を確認ー俺は平気、大丈夫、と虎杖の自己申告。釘崎には応急処置で手首の傷を反転で癒す。伏黒は酷い呪力の消耗で、とりあえずと頭のケガを治療した。3人の無事に芙蓉がひと息つく。
「そろそろ行かなきゃね、新田さんキレてて怖いのよ」
芙蓉は再び術足場を作ると3人に先立って歩き出す。
「…なんか変な感じだけどスゲ〜!」
「…ごめん、虎杖くん、ちょっとペース上げてもらって良い…?」
最後をついて来た虎杖は空中散歩に感心しきりで辺りを見回しながら歩いていた。
「今俺たち3人分の重さが全部芙蓉にのしかかってる。足場を維持するには呪力を捻出しっぱなしにしなくちゃならないんだ、急ぐぞ」
「マジ⁉︎ごめん高峰早く言ってよ!」
虎杖は跳ぶように全員を追い越して橋の欄干へ辿り着く。続いて釘崎、伏黒が欄干を伝って行き、最後に芙蓉が橋に到着した。
「…今回の件はさすがに報告させてもらうッスよ」
新田の剣幕に誰も反論出来なかった。