もしも、明日死ぬなら
恵の幼馴染のお名前は?
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1週間後、家入の同期会へ参加する日の朝。
芙蓉は準備の為に少しだけ早起きをして身支度を始める。服装はともかく、問題はメイク。普段からメイクをする習慣のない芙蓉にとっては最難関。釘崎から指摘されたポイントに注意しながら手を動かす。30分程時間をかけて仕上げ、改めて全体のバランスを確認する。
「…過去イチじゃない?」
満足気に独り言ち、続いて髪のセット、最後に仕立ててもらったスーツに袖を通す。歩きやすいローヒールのパンプスを履けば完成。約束の時間には少し早いが遅れるよりはマシ、芙蓉は前日に準備しておいた一泊分の荷物を詰めた小さなトランクにメイク道具を入れる。最後に忘れ物がないか確認をしてトランクを手に、部屋を出る時の習慣ーネックレスをひと撫でして部屋を出た。
「あっ」
「おっ」
共有スペースに差し掛かれば、任務組の3人もちょうど揃ったところらしかった。
「おはよう」
「早いな、もう出るのか」
「スゲ〜、今日の高峰、雰囲気違うな〜」
「やっぱ芙蓉、普段からメイクしなさいよ、何もしないなんて勿体ないわよ」
「よーし撮るよー」
本来ならここで耳にするはずのない声が聞こえ、4人は声の方を振り返った。カシャ、というスマホカメラのシャッター音ースマホを手にしていたのは五条だった。
「五条先生!」
「え、どうして…?」
「ん〜、今日芙蓉は硝子の同期会についてくんでしょ?せっかくだからさ、いつもと違う芙蓉のスーツ姿を収めておこうと思って来ちゃった」
「うわ、変態かよ…」
驚く虎杖、戸惑う芙蓉、ドン引きの釘崎、呆れる伏黒。そんな彼らに構わず、そんじゃ今日はがんばってね〜と言い残して五条はさっさとその場を後にした。
「え、五条先生マジでこれだけの為に来たの⁉︎」
「そんな、写真に残すとか…」
「大丈夫よ芙蓉、きっと伏黒に高く売りつけるのに使うだけだと思うから」
「変な事に俺を巻き込むんじゃねぇ」
なんだかおかしな空気になりつつあったものの、どうにか4人は寮を出る。芙蓉は事務室へ、任務組は正門へ。
「それじゃあみんな、気を付けてね」
「応!」
「芙蓉も気を付けて行けよ」
「帰ったらまたみんなで話しましょ」
芙蓉は3人を見送ると、事務室へ向かう。
家入と高専最寄りの駅へ向かい、そこからは会場となるホテルからのバスに乗る予定だ。事務室に入ろうとすればちょうど家入が顔を出した。
「おはようございます」
「おう、早いな」
そうは言っても、高専を出るまで30分もない時間だ。が、家入は白衣を着ていたー恐らく先程までケガ人の処置をしていたのだろう。着替えて来るから待ってな、と彼女は職員用の更衣室へ姿を消した。
15分程経ってから家入は戻って来た。普段よりも細やかにメイクを施し、普段下ろしている髪を結い上げている。服装は颯爽としたパンツスーツ。
「硝子さん素敵ですね」
「ん?褒めても何も出ないぞ」
満更でもない様子で口元に笑みを浮かべて家入は事務室で荷物を纏めると、じゃあ行くか、と先立って歩き始める。芙蓉も送れないよう後を追う。正門に出れば家入が頼んでいたタクシーが待っていた。
行き先を告げればタクシーは静かに動き出す。
「…今日は1年揃っての任務だったらしいな」
「あ…、はい」
「お前が半泣きになってたと伊地知から聞いた」
「……」
「断っても良かったんだぞ?」
「…みんなに話したら、硝子さんと同じ事言われたんです。可能性を広げられる、大当たりがあるかもって」
「そうか。…それならアイツらに礼を言わなくてはな」
その後タクシーは滞りなく駅へ到着し、ホテルから出ているバスに乗り込んだ。
停車ポイントを通過する度に乗り込む人が少しずつ増えて来る。その中に家入の同期も居るようで、声を掛けられる事が増えた。その度に芙蓉は落ち着かない気持ちになりながら会釈をする。
「今からそんな調子じゃ持たないぞ」
「そう言われましても…」
「いいか、今日の高峰は19か20歳の学生だ。能ある鷹は爪を隠す。沈黙は金、雄弁は銀…、わかるな?」
「…聞き上手に、って事ですね?」
「さすが高峰、上出来だ」
その調子で頼むぞ、という家入に、芙蓉は覚悟を決めた。自己暗示のように自分は19歳、医療に興味のある学生だと言い聞かせ、ホテルに到着したバスを降りた。
会場に足を踏み入れた芙蓉は、集まった人数に驚いた。
「…意外と大規模なんですね…」
「今回は一泊の同期会、それなりに集まったようだな」
言いながら家入は会場内に配置されたイスに腰を下ろす。彼女に倣って芙蓉も家入の隣に座った。
「…年齢層バラバラですね」
「そりゃそうだ、大学で浪人してる奴もいるだろうし、医師免許を取るのに時間のかかった奴もいる」
この場にいる自分以外の全員が医者だと思うと、なんだか不思議な気分だな、と芙蓉はトランクから筆記用具を取り出す。そしてスーツのポケットに入れて置いたスマホのマナーモード設定を確認した。
「おっ、家入、秘書なんか連れてんの?」
「バカ言え、ウチの学生だ」
「あ、そーいやお前、学校医なんだったな」
突然のやり取りに驚いたものの、芙蓉は静かに会釈した。見たところ30代くらいの男性。何処となく人を食ったように見えるのは気のせいだろうかと、芙蓉は何とも言えない不快感を覚えたと同時に、家入の微かな苛立ちも感じられた。と、芙蓉はある事に気付く。
「…あの…、顔に何か付いてますよ?」
「あ?」
「…その、…鼻の辺りに」
芙蓉の言葉に家入の視線が動き、彼女は吹き出した。
「顔洗って出直して来い。鼻毛が出てるぞ」
家入の言葉に周辺からくすくす笑い声が漣のように広がっていく。男は顔を赤くして立ち去って行った。
「ナイス高峰」
家入の言葉にどう返事をしたものかー芙蓉は戸惑いながらも曖昧に笑った。
芙蓉は準備の為に少しだけ早起きをして身支度を始める。服装はともかく、問題はメイク。普段からメイクをする習慣のない芙蓉にとっては最難関。釘崎から指摘されたポイントに注意しながら手を動かす。30分程時間をかけて仕上げ、改めて全体のバランスを確認する。
「…過去イチじゃない?」
満足気に独り言ち、続いて髪のセット、最後に仕立ててもらったスーツに袖を通す。歩きやすいローヒールのパンプスを履けば完成。約束の時間には少し早いが遅れるよりはマシ、芙蓉は前日に準備しておいた一泊分の荷物を詰めた小さなトランクにメイク道具を入れる。最後に忘れ物がないか確認をしてトランクを手に、部屋を出る時の習慣ーネックレスをひと撫でして部屋を出た。
「あっ」
「おっ」
共有スペースに差し掛かれば、任務組の3人もちょうど揃ったところらしかった。
「おはよう」
「早いな、もう出るのか」
「スゲ〜、今日の高峰、雰囲気違うな〜」
「やっぱ芙蓉、普段からメイクしなさいよ、何もしないなんて勿体ないわよ」
「よーし撮るよー」
本来ならここで耳にするはずのない声が聞こえ、4人は声の方を振り返った。カシャ、というスマホカメラのシャッター音ースマホを手にしていたのは五条だった。
「五条先生!」
「え、どうして…?」
「ん〜、今日芙蓉は硝子の同期会についてくんでしょ?せっかくだからさ、いつもと違う芙蓉のスーツ姿を収めておこうと思って来ちゃった」
「うわ、変態かよ…」
驚く虎杖、戸惑う芙蓉、ドン引きの釘崎、呆れる伏黒。そんな彼らに構わず、そんじゃ今日はがんばってね〜と言い残して五条はさっさとその場を後にした。
「え、五条先生マジでこれだけの為に来たの⁉︎」
「そんな、写真に残すとか…」
「大丈夫よ芙蓉、きっと伏黒に高く売りつけるのに使うだけだと思うから」
「変な事に俺を巻き込むんじゃねぇ」
なんだかおかしな空気になりつつあったものの、どうにか4人は寮を出る。芙蓉は事務室へ、任務組は正門へ。
「それじゃあみんな、気を付けてね」
「応!」
「芙蓉も気を付けて行けよ」
「帰ったらまたみんなで話しましょ」
芙蓉は3人を見送ると、事務室へ向かう。
家入と高専最寄りの駅へ向かい、そこからは会場となるホテルからのバスに乗る予定だ。事務室に入ろうとすればちょうど家入が顔を出した。
「おはようございます」
「おう、早いな」
そうは言っても、高専を出るまで30分もない時間だ。が、家入は白衣を着ていたー恐らく先程までケガ人の処置をしていたのだろう。着替えて来るから待ってな、と彼女は職員用の更衣室へ姿を消した。
15分程経ってから家入は戻って来た。普段よりも細やかにメイクを施し、普段下ろしている髪を結い上げている。服装は颯爽としたパンツスーツ。
「硝子さん素敵ですね」
「ん?褒めても何も出ないぞ」
満更でもない様子で口元に笑みを浮かべて家入は事務室で荷物を纏めると、じゃあ行くか、と先立って歩き始める。芙蓉も送れないよう後を追う。正門に出れば家入が頼んでいたタクシーが待っていた。
行き先を告げればタクシーは静かに動き出す。
「…今日は1年揃っての任務だったらしいな」
「あ…、はい」
「お前が半泣きになってたと伊地知から聞いた」
「……」
「断っても良かったんだぞ?」
「…みんなに話したら、硝子さんと同じ事言われたんです。可能性を広げられる、大当たりがあるかもって」
「そうか。…それならアイツらに礼を言わなくてはな」
その後タクシーは滞りなく駅へ到着し、ホテルから出ているバスに乗り込んだ。
停車ポイントを通過する度に乗り込む人が少しずつ増えて来る。その中に家入の同期も居るようで、声を掛けられる事が増えた。その度に芙蓉は落ち着かない気持ちになりながら会釈をする。
「今からそんな調子じゃ持たないぞ」
「そう言われましても…」
「いいか、今日の高峰は19か20歳の学生だ。能ある鷹は爪を隠す。沈黙は金、雄弁は銀…、わかるな?」
「…聞き上手に、って事ですね?」
「さすが高峰、上出来だ」
その調子で頼むぞ、という家入に、芙蓉は覚悟を決めた。自己暗示のように自分は19歳、医療に興味のある学生だと言い聞かせ、ホテルに到着したバスを降りた。
会場に足を踏み入れた芙蓉は、集まった人数に驚いた。
「…意外と大規模なんですね…」
「今回は一泊の同期会、それなりに集まったようだな」
言いながら家入は会場内に配置されたイスに腰を下ろす。彼女に倣って芙蓉も家入の隣に座った。
「…年齢層バラバラですね」
「そりゃそうだ、大学で浪人してる奴もいるだろうし、医師免許を取るのに時間のかかった奴もいる」
この場にいる自分以外の全員が医者だと思うと、なんだか不思議な気分だな、と芙蓉はトランクから筆記用具を取り出す。そしてスーツのポケットに入れて置いたスマホのマナーモード設定を確認した。
「おっ、家入、秘書なんか連れてんの?」
「バカ言え、ウチの学生だ」
「あ、そーいやお前、学校医なんだったな」
突然のやり取りに驚いたものの、芙蓉は静かに会釈した。見たところ30代くらいの男性。何処となく人を食ったように見えるのは気のせいだろうかと、芙蓉は何とも言えない不快感を覚えたと同時に、家入の微かな苛立ちも感じられた。と、芙蓉はある事に気付く。
「…あの…、顔に何か付いてますよ?」
「あ?」
「…その、…鼻の辺りに」
芙蓉の言葉に家入の視線が動き、彼女は吹き出した。
「顔洗って出直して来い。鼻毛が出てるぞ」
家入の言葉に周辺からくすくす笑い声が漣のように広がっていく。男は顔を赤くして立ち去って行った。
「ナイス高峰」
家入の言葉にどう返事をしたものかー芙蓉は戸惑いながらも曖昧に笑った。