決戦、交流会
恵の幼馴染のお名前は?
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芙蓉は幾分回復した呪力を駆使し、自身の足元に術式で発現させた壁の上を走っていく事にした。その壁は緩やかに空へと続き、文字通り、芙蓉は空を駆けていく。
この使い方は五条が空を歩いているのを見かけた時に思い付いたものだ。
他にどんな呪霊や呪詛師がいるかわからない以上、姿が丸見えになる空を走る事に多少のリスクはあるものの、少しでも早く帳から出る事を優先すべきと判断した。当然ながら地上を走るよりも周りが良く見えるし、行く手を遮るような物もない。宙を走りながら、芙蓉は先程別れた西宮から聞いた話を思い出していたー今降ろされている帳は問題なく出入りが出来るという。高専の一部とはいえ、森を覆う程の巨大な帳に舌を巻きながらも、漸く見えてきた帳の縁に芙蓉は安堵しながら走る道を少しずつ地上に近付けていく。
「っえ、パンダ先輩…?」
地上からはまだ距離があるものの、芙蓉はそこそこの速さで移動する白と黒の物体を見つけた。付かず離れずの距離を保ちながら目を凝らすと、パンダは両肩に何か担いでいるようで。芙蓉が少し高度を下げれば、それが人だという事がはっきり見えた。
「恵⁉︎真希さん⁉︎」
「んぁ?」
悲鳴に似た芙蓉の声、間延びしたパンダの声。
「おう芙蓉、無事だったか。硝子んトコに行くとこだ」
「あの、2人は…」
「…生きてる」
「…大丈夫だ」
真希と伏黒が芙蓉に答える。2人とも意識はあるようだが出血があり、真希は傷が酷く、伏黒は呪力を使い切っているような状況だった。
「あの、応急処置、くらいなら、私が、」
「馬鹿言え、芙蓉だってヘロヘロだろぉ?俺が担いでってやりたいくらいだぜ」
そんなんでよく走っていられるな、とパンダの言葉を受けながらも芙蓉は走り続ける。
「あんまり、そんな事、言わないで下さいよ、結構、必死なんですから」
実際のところ芙蓉の走るペースは落ちていた。帳の縁を見つけ、パンダと合流出来て気が抜けたのだろう、急激に身体が重く感じられ、パンダに着いていくのもやっとの状況だった。大きなケガはしていないが、術式を使い続けていた負担が蓄積していた。
「仕方ねぇなぁ」
「大、丈夫、」
「なワケねーだろー?」
パンダが気を遣って芙蓉のペースに合わせて走っていたが、更に速度が落ちている。パンダは軽々と芙蓉の身体を担ぎ上げた。
「ぐ…」
「アッ、悪ぃ真希」
「…パンダ先輩、降ろして、ください、…少し休めば、私、大丈夫、ですから」
「うーん…じゃ、帳出たらな」
そーれパンダーッシュ、などと言いながらパンダは力強く走る。真希と一緒に担がれた状態の芙蓉は残っている呪力を振り絞るようにして反転術式を彼女に施した。
「…おい。無理、すんなよ」
「…私、何にも、役に立ってない、から」
「んな事ねぇよ」
「芙蓉はもっと、自分の事、大事に、しろ」
真希と伏黒に言われ、芙蓉は滲んできた涙を拭った。自分は周りの人に助けられ、大きなケガもせずに済んでいるーそれがなんだかすごく申し訳なくて。
「ケガしてりゃ良いってモンじゃねぇんだ。現に芙蓉は今私の事、少し治してくれただろ?十分過ぎる気遣いだよ。…それに、芙蓉はモノじゃねぇんだから、役に立つとかそんな事考えんなよ」
「あー、真希泣かせた〜」
パンダの言葉に苛立った真希がパンダの後頭部を軽く殴りつける頃、3人と1匹は帳を通過した。
「パンダ先輩、降ろしてください。…私はホント、大丈夫ですから」
芙蓉の言葉にパンダは立ち止まり、約束通り彼女を降ろす。心配そうに見つめるパンダの視線を振り払い、早く家入のところへ向かうように促した。
「2人を硝子んトコに送り届けたら迎えに来るぜ」
そう残してパンダは高専の建物へ向かった。とりあえず帳から出たという安心感もあり、芙蓉はその場に座り込んだ。浅くなっている呼吸を整え、ゆっくり大きく息を吸い込んで気持ちを落ち着かせる。少しずつ、ゆっくりと呪力を練り始めたその時。目の前の帳がバツン、と一瞬にして弾け、短い悲鳴と共に芙蓉は飛び上がった。
「っ、な、に…?」
先程の呪霊の気配を遠くに感じながらも、それよりももっと大きな気配を感じて空を見上げると、何かが浮かんでいるのが見えた。ハッキリ見えるわけではないが、人の形のように見えるそれが五条という事に気が付いた。数回瞬きをしている間にその姿は消えていたが、彼が来たならもう大丈夫と大きく息を吐き、芙蓉はパンダが来てくれるまでここで待つ事にしてしまおうと、思い切ってごろりと横に、大の字になった。
あぁもう動きたくないーあっという間に眠気に襲われ、瞼がだんだん重くなってくる。
「うぉーい、こんなトコで寝るなよぉ」
聞こえた声にうっすらと目を開けばパンダがいた。パンダ急便でぇす、などと言っていたが、それに応えられる気力も出ず、芙蓉は曖昧に笑って見せた。
「今年の1年はホントがんばるねぇ」
パンダは軽々と、完全に眠ってしまった芙蓉を担ぎ上げ、来た道を戻って行く。
「…あっちも派手にやってるねぇ」
とんでもなく強力で増幅された呪力の塊が轟音と共に大地と木々を削り取ったのと同時に、伏黒達を襲った特級呪霊の気配も消え去っていた。
この使い方は五条が空を歩いているのを見かけた時に思い付いたものだ。
他にどんな呪霊や呪詛師がいるかわからない以上、姿が丸見えになる空を走る事に多少のリスクはあるものの、少しでも早く帳から出る事を優先すべきと判断した。当然ながら地上を走るよりも周りが良く見えるし、行く手を遮るような物もない。宙を走りながら、芙蓉は先程別れた西宮から聞いた話を思い出していたー今降ろされている帳は問題なく出入りが出来るという。高専の一部とはいえ、森を覆う程の巨大な帳に舌を巻きながらも、漸く見えてきた帳の縁に芙蓉は安堵しながら走る道を少しずつ地上に近付けていく。
「っえ、パンダ先輩…?」
地上からはまだ距離があるものの、芙蓉はそこそこの速さで移動する白と黒の物体を見つけた。付かず離れずの距離を保ちながら目を凝らすと、パンダは両肩に何か担いでいるようで。芙蓉が少し高度を下げれば、それが人だという事がはっきり見えた。
「恵⁉︎真希さん⁉︎」
「んぁ?」
悲鳴に似た芙蓉の声、間延びしたパンダの声。
「おう芙蓉、無事だったか。硝子んトコに行くとこだ」
「あの、2人は…」
「…生きてる」
「…大丈夫だ」
真希と伏黒が芙蓉に答える。2人とも意識はあるようだが出血があり、真希は傷が酷く、伏黒は呪力を使い切っているような状況だった。
「あの、応急処置、くらいなら、私が、」
「馬鹿言え、芙蓉だってヘロヘロだろぉ?俺が担いでってやりたいくらいだぜ」
そんなんでよく走っていられるな、とパンダの言葉を受けながらも芙蓉は走り続ける。
「あんまり、そんな事、言わないで下さいよ、結構、必死なんですから」
実際のところ芙蓉の走るペースは落ちていた。帳の縁を見つけ、パンダと合流出来て気が抜けたのだろう、急激に身体が重く感じられ、パンダに着いていくのもやっとの状況だった。大きなケガはしていないが、術式を使い続けていた負担が蓄積していた。
「仕方ねぇなぁ」
「大、丈夫、」
「なワケねーだろー?」
パンダが気を遣って芙蓉のペースに合わせて走っていたが、更に速度が落ちている。パンダは軽々と芙蓉の身体を担ぎ上げた。
「ぐ…」
「アッ、悪ぃ真希」
「…パンダ先輩、降ろして、ください、…少し休めば、私、大丈夫、ですから」
「うーん…じゃ、帳出たらな」
そーれパンダーッシュ、などと言いながらパンダは力強く走る。真希と一緒に担がれた状態の芙蓉は残っている呪力を振り絞るようにして反転術式を彼女に施した。
「…おい。無理、すんなよ」
「…私、何にも、役に立ってない、から」
「んな事ねぇよ」
「芙蓉はもっと、自分の事、大事に、しろ」
真希と伏黒に言われ、芙蓉は滲んできた涙を拭った。自分は周りの人に助けられ、大きなケガもせずに済んでいるーそれがなんだかすごく申し訳なくて。
「ケガしてりゃ良いってモンじゃねぇんだ。現に芙蓉は今私の事、少し治してくれただろ?十分過ぎる気遣いだよ。…それに、芙蓉はモノじゃねぇんだから、役に立つとかそんな事考えんなよ」
「あー、真希泣かせた〜」
パンダの言葉に苛立った真希がパンダの後頭部を軽く殴りつける頃、3人と1匹は帳を通過した。
「パンダ先輩、降ろしてください。…私はホント、大丈夫ですから」
芙蓉の言葉にパンダは立ち止まり、約束通り彼女を降ろす。心配そうに見つめるパンダの視線を振り払い、早く家入のところへ向かうように促した。
「2人を硝子んトコに送り届けたら迎えに来るぜ」
そう残してパンダは高専の建物へ向かった。とりあえず帳から出たという安心感もあり、芙蓉はその場に座り込んだ。浅くなっている呼吸を整え、ゆっくり大きく息を吸い込んで気持ちを落ち着かせる。少しずつ、ゆっくりと呪力を練り始めたその時。目の前の帳がバツン、と一瞬にして弾け、短い悲鳴と共に芙蓉は飛び上がった。
「っ、な、に…?」
先程の呪霊の気配を遠くに感じながらも、それよりももっと大きな気配を感じて空を見上げると、何かが浮かんでいるのが見えた。ハッキリ見えるわけではないが、人の形のように見えるそれが五条という事に気が付いた。数回瞬きをしている間にその姿は消えていたが、彼が来たならもう大丈夫と大きく息を吐き、芙蓉はパンダが来てくれるまでここで待つ事にしてしまおうと、思い切ってごろりと横に、大の字になった。
あぁもう動きたくないーあっという間に眠気に襲われ、瞼がだんだん重くなってくる。
「うぉーい、こんなトコで寝るなよぉ」
聞こえた声にうっすらと目を開けばパンダがいた。パンダ急便でぇす、などと言っていたが、それに応えられる気力も出ず、芙蓉は曖昧に笑って見せた。
「今年の1年はホントがんばるねぇ」
パンダは軽々と、完全に眠ってしまった芙蓉を担ぎ上げ、来た道を戻って行く。
「…あっちも派手にやってるねぇ」
とんでもなく強力で増幅された呪力の塊が轟音と共に大地と木々を削り取ったのと同時に、伏黒達を襲った特級呪霊の気配も消え去っていた。