出会い
恵の幼馴染のお名前は?
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窓からの日差しに暑さを感じ、伏黒は目を覚ました。時計を見れば既に11時を回っている。ヤバイ、寝過ぎたーのろのろと起き上がり、昨日よりは幾分軽くなった身体をうんと伸ばす。
五条家での鍛錬は寺院の修行僧かと言いたくなるくらいに過酷なスケジュールだった。
基本的には朝4時半くらいに起き、5時から呪力の運用についての鍛錬。7時頃から朝食。8時には術式の運用についての鍛錬が始まり、午前中いっぱい続く。昼食を済ませた後は少し休む時間を挟み、2時から武術の鍛錬。みっちり5時間ほどシゴかれた後に夕食。
夕食の後は基本自由に出来るのだが、学校からの宿題等を進めなくてはいけない。学年が下の頃は鍛錬に使われる時間がもっと短く、朝に少し早く起きれば宿題を進める事が出来たが、今はもう夜しか時間がない。
それなのに夜は呪霊が活発になるからと祓除に連れて行かれたり、日中外出したからといってその分の鍛錬を夜に実施する事もある。そんな日はもう祓除なり鍛錬なりが終わってから就寝準備となる為、早くて10時、遅くなると日付が変わるギリギリになって布団に潜り込む事になる。
そんな生活でストレスがかかっているのは間違いないが、最近は五条が不在である事が多く、それはそれでストレスが減って良い事だと伏黒が思っているのは誰も知らない。
タオルを引っ掴んで部屋を出て、洗面所で顔を洗う。冷たい水が心地よく伏黒の頭を覚醒させていく。と、腹の虫が騒ぎ始めた事に気付く。朝食も取らずにいれば当然かと、タオルを部屋に置いて食堂へ向かう。廊下を進むにつれ、空腹を刺激するようにいい匂いがする。今日のメニューは何だろうなどと思いながら食堂のドアを開ける。先客がいるー白い頭が見えて、伏黒はそっとドアを閉めーようとしただけで我慢した。というのも、芙蓉の顔が見えたからだ。
「あっ、恵!おはよ!」
散歩から戻った芙蓉は、昼食を食べていけばいいという提案を受け、それに応じて五条と共に食堂に来ていたのだった。
「…おう。…悪かったな、来てもらったのに寝てて」
「ううん、毎日大変なんでしょ?」
「…まぁ、な。…それより、今日はいるんですね」
言いながら伏黒は五条をちらりと見遣る。視線を受け、五条は満面の笑みを見せる。
「そりゃあ可愛い恵をほっとけないでしょ〜」
「…飯、取ってくる」
五条の言葉を無視するように伏黒は食堂の奥へ向かった。その様子を見て芙蓉は自身と五条の食事も取ってくるねと立ち上がる。
「あ、僕の分は大丈夫だよ。いつも最後だから」
「え?」
「ここでは僕の食事は最後なの」
気にしないで自分の分を取っておいでと芙蓉を促す。首を傾げながら伏黒の後を追う芙蓉を見ながら、芙蓉とは今まで五条家で一緒に食事をした事がなかったかもしれないという事に思い至った。
五条家の当主という立場になる手前、周りの人間は常に暗殺を警戒していた。幼い頃から食事はいつも最後。作られた食事に毒物が混入されているかもしれないだの、異常がないか確認してからだの、そんな理由でいつも食べるものは冷たくなっていた。が、誰かが毒に当たったとかなどという話は一度もなかった。
ぶっちゃけた話、五条家で出される食事より市販のインスタント食品の方が絶対的に安全だと思うし、何より美味しく食べられると思っていた五条は、自室にレンジやポットを持ち込んでは度々夜食と称して隠れるようにインスタント食品やスナック菓子を食べたりしていた。高専に入って反転術式を身につけてからは毒物に対してもさして問題はなくなったが、五条家の対応は相変わらずだった。
「わ、恵、そんなに食べるんだ」
「これくらい普通だろ」
食事の乗ったトレイを運んで来る2人を五条は頬杖をついて微笑ましく見守っている。2人は五条の向かいに並んで座った。
「悟くん、お茶は大丈夫?」
五条を気遣った芙蓉が湯呑みを差し出してきた。
「ありがとう、芙蓉は優しいね」
どういたしましてと、照れくさそうに笑う芙蓉。お先にいただきます、とも言い置いて食事を始めた。黙々と食事をかき込む伏黒と、時々日常の話を挟む芙蓉。食べながら話をしている2人の様子から、伏黒の“彼らしさ”をこんな間近で見るのは初めてかもしれないと、2人は本当にいい関係だな、と五条はお茶を啜った。この2人の関係性を守る為ー或いは前進させる為にも、芙蓉には少しでも身を守る術を教えておかなくては。お茶を飲み干し、五条は立ち上がる。
「ちょっと用事を済ませてくるね」
ゆっくり食べてねと残して食堂を出た。それからどこに向かうともなく、フラリと廊下を歩いていく。行き着いた先は庭がよく見える和室、中に入ると五条は携帯を取り出し通話を始めた。
五条家での鍛錬は寺院の修行僧かと言いたくなるくらいに過酷なスケジュールだった。
基本的には朝4時半くらいに起き、5時から呪力の運用についての鍛錬。7時頃から朝食。8時には術式の運用についての鍛錬が始まり、午前中いっぱい続く。昼食を済ませた後は少し休む時間を挟み、2時から武術の鍛錬。みっちり5時間ほどシゴかれた後に夕食。
夕食の後は基本自由に出来るのだが、学校からの宿題等を進めなくてはいけない。学年が下の頃は鍛錬に使われる時間がもっと短く、朝に少し早く起きれば宿題を進める事が出来たが、今はもう夜しか時間がない。
それなのに夜は呪霊が活発になるからと祓除に連れて行かれたり、日中外出したからといってその分の鍛錬を夜に実施する事もある。そんな日はもう祓除なり鍛錬なりが終わってから就寝準備となる為、早くて10時、遅くなると日付が変わるギリギリになって布団に潜り込む事になる。
そんな生活でストレスがかかっているのは間違いないが、最近は五条が不在である事が多く、それはそれでストレスが減って良い事だと伏黒が思っているのは誰も知らない。
タオルを引っ掴んで部屋を出て、洗面所で顔を洗う。冷たい水が心地よく伏黒の頭を覚醒させていく。と、腹の虫が騒ぎ始めた事に気付く。朝食も取らずにいれば当然かと、タオルを部屋に置いて食堂へ向かう。廊下を進むにつれ、空腹を刺激するようにいい匂いがする。今日のメニューは何だろうなどと思いながら食堂のドアを開ける。先客がいるー白い頭が見えて、伏黒はそっとドアを閉めーようとしただけで我慢した。というのも、芙蓉の顔が見えたからだ。
「あっ、恵!おはよ!」
散歩から戻った芙蓉は、昼食を食べていけばいいという提案を受け、それに応じて五条と共に食堂に来ていたのだった。
「…おう。…悪かったな、来てもらったのに寝てて」
「ううん、毎日大変なんでしょ?」
「…まぁ、な。…それより、今日はいるんですね」
言いながら伏黒は五条をちらりと見遣る。視線を受け、五条は満面の笑みを見せる。
「そりゃあ可愛い恵をほっとけないでしょ〜」
「…飯、取ってくる」
五条の言葉を無視するように伏黒は食堂の奥へ向かった。その様子を見て芙蓉は自身と五条の食事も取ってくるねと立ち上がる。
「あ、僕の分は大丈夫だよ。いつも最後だから」
「え?」
「ここでは僕の食事は最後なの」
気にしないで自分の分を取っておいでと芙蓉を促す。首を傾げながら伏黒の後を追う芙蓉を見ながら、芙蓉とは今まで五条家で一緒に食事をした事がなかったかもしれないという事に思い至った。
五条家の当主という立場になる手前、周りの人間は常に暗殺を警戒していた。幼い頃から食事はいつも最後。作られた食事に毒物が混入されているかもしれないだの、異常がないか確認してからだの、そんな理由でいつも食べるものは冷たくなっていた。が、誰かが毒に当たったとかなどという話は一度もなかった。
ぶっちゃけた話、五条家で出される食事より市販のインスタント食品の方が絶対的に安全だと思うし、何より美味しく食べられると思っていた五条は、自室にレンジやポットを持ち込んでは度々夜食と称して隠れるようにインスタント食品やスナック菓子を食べたりしていた。高専に入って反転術式を身につけてからは毒物に対してもさして問題はなくなったが、五条家の対応は相変わらずだった。
「わ、恵、そんなに食べるんだ」
「これくらい普通だろ」
食事の乗ったトレイを運んで来る2人を五条は頬杖をついて微笑ましく見守っている。2人は五条の向かいに並んで座った。
「悟くん、お茶は大丈夫?」
五条を気遣った芙蓉が湯呑みを差し出してきた。
「ありがとう、芙蓉は優しいね」
どういたしましてと、照れくさそうに笑う芙蓉。お先にいただきます、とも言い置いて食事を始めた。黙々と食事をかき込む伏黒と、時々日常の話を挟む芙蓉。食べながら話をしている2人の様子から、伏黒の“彼らしさ”をこんな間近で見るのは初めてかもしれないと、2人は本当にいい関係だな、と五条はお茶を啜った。この2人の関係性を守る為ー或いは前進させる為にも、芙蓉には少しでも身を守る術を教えておかなくては。お茶を飲み干し、五条は立ち上がる。
「ちょっと用事を済ませてくるね」
ゆっくり食べてねと残して食堂を出た。それからどこに向かうともなく、フラリと廊下を歩いていく。行き着いた先は庭がよく見える和室、中に入ると五条は携帯を取り出し通話を始めた。