前章

 宿を確保し、現地調達した水着へと着替えて宿の裏手から浜辺へと出た。
 燦々さんさんと降り注ぐ太陽に、青く澄み切った海の水面が煌めいている。平日ということもあり、人でごった返しているということもなく、場所を提案した者としてアイゼアは一安心していた。

 そしてこの果てしない海の青さに、カストルとポルッカも来ればよかったのにとアイゼアは思う。二人のことはもちろん誘ったのだが「学校は絶対休まない」「気にしないで一人で羽を伸ばしてきて」「とにかく行かないから」と取り付く島もなかった。

 普段であれば二つ返事でついてくるはずだ。二人のあまりにも頑な態度に何かあったのかと聞いてはみたが、決して口を割ろうとはしなかった。何かあることだけは一目瞭然いちもくりょうぜんなのだが。

「わぁー、すっごい綺麗な海!」

 少し遅れてやって来たフィロメナの感嘆の声に思考が遮られる。せっかく二人も送り出してくれたのだから、休暇として存分に楽しまなければ損というものだろう。

 フィロメナはずいぶんふりがなと露出度の高い水着を選んだらしく、自身の体形の良さをこれでもかと惜しげもなく晒している。それでいて健康的に見えるのは、水着が淡い爽やかな色だからだろうか。

 手を引かれてやって来るメリーは浮き輪に隠れていてよく見えないが、黒っぽいワンピースのような水着を着ている。

 メリーは立ち止まった瞬間空を見上げ、鬱陶うっとうしそうにため息をついた。雪国育ちの彼女にとって、この日差しや暑さは厳しく感じるのかもしれない。
 普通の人に比べて白く見える肌に、雪のように溶け出すのではないかと思うほどだった。

「それにしてもあんた、太陽の下で見ると、より肌が白く見えるのね。砂糖菓子のお人形みたい!」

 フィロメナがずいっとメリーへ顔を寄せると、メリーはたじろぎながら大きく一歩距離を取る。

「それは、雪国もやしだからですよ」

『雪国もやし』と復唱する声がフィロメナとエルヴェと重なった。

「病的だって言いたいんですよね? 極寒で日照不足の貧しい土地で家に引きこもって……それはそれは貧相に育ったんです。だから仕方ないんですよ」

 フィロメナの言葉は決してメリーをおとしめるものではなかった。にも関わらず、メリーにしては珍しく、かなり卑屈な発言だな、とアイゼアは違和感を覚える。

「あたし、病的とか貧相だなんて思ってないわよ? 砂糖菓子みたいに白くて繊細に見えるから、太陽に溶けちゃいそうって思っただけで」

 言葉を誤解されたと思ったフィロメナが首をかしげながら弁明する。

 話を聞いている間メリーの視線は、フィロメナとメリー自身を忙しなく行ったり来たりしていた。メリーの発言とその視線がどこへ注がれているのかを見れば、何を思っているのかは簡単に察しがつく。

 メリーはかたわらに浮き輪を置き無表情で顔を逸らすと、頭の高い位置でポニーテールを作り始める。
 うなじから背中にかけての肌もやはり白い。薄紅色の髪と合わせて見ると、フィロメナが例えた砂糖菓子の人形という表現は的確な感想だとアイゼアも思う。

 普段からあまり外に出ず、出かけてもフード付きのケープを羽織り、肌の露出はほとんどないことを思えば、そもそも日に焼ける機会というものがないのだろう。その白さをメリーは病的というが、客観的に見て透明感のある綺麗な白さの範囲だろう。

 チャコールグレーの水着は正面からみれば普通のワンピースのようだが、背中は水着らしく大きく開いている。メリーにしては意外と大胆な水着を選んだなとは思うが、そのふんわりとしたシルエットと大人っぽい色選びは良い選択のように思えた。

「肌が白く見えるのは水着の色のせいもあるんじゃないかな? メリーのいいところを引き立ててくれてるってことだし、よく似合ってると思うよ」

 胸元に差していた金属の細い棒で髪をくるくると巻き、器用に団子の形にしていた手が完成直前でピタリと止まる。

「それは、どうも……ありがとうございます」

 髪の団子を完成させながら、メリーはどうでも良さそうに素っ気なく言い切った。だがその口元が少しだけ照れたように緩んだのを見逃すほど、この目は甘くない。

 本音を素直に伝えただけだが、それが更に劣等感を煽るような結果にならずに済んだことに少しだけ安堵した。

「暑さに滅法弱いんで、倒れたら介抱よろしくお願いしますね」
「え、あんたどこ行くの?」
潮騒しおさいの青を探しに行きます。そのために来たんですから」

 メリーは浮き輪を片手に、さっさと一人で海へ行ってしまう。呆気にとられたフィロメナはメリーの背中を見つめて目をしばたたかせていた。

「ねぇ、あの水着ってメリーが自分で選んだのかい?」

 純粋に気になったのでフィロメナに尋ねると、ふるふると首を横に振る。

「メリーに選ばせてたら高確率であの全身スーツよ? 別の水着を勧める度に凍死するーって騒いでたくらいだもの」
「うん……何となくそんな気がしてたよ」

 アイゼアは店に吊り下がっていた全身を覆う型の水着を頭の中に思い描く。観光気分で来ただけだというのに、それはあまりにも本格的過ぎるだろう……という何とも言えない気持ちになった。まぁ、それはそれで絵面は面白そうでもあるが。

「だからあたしがペシェの助言を元にして選んだのよ。ペシェがきっとメリーは決められないかもって。似合いそうなのはどんなのかしらって聞いて覚えてきたのよ」

 ペシェと言われ、うぐいす色の髪の男性を思い出す。メリーとは学生時代からの友人で、男性でありながら女性と見紛みまがう容姿をし、化粧をして女性に扮していた。だがそれは単なる趣味による女装で中身は至って普通の男性らしい。

 あの水着がお洒落しゃれ造詣ぞうけいが深く、男性目線も持っているペシェの助言だというなら妙に納得できる。

「お前あの面倒くさい状況でよく何か言おうと思えたな」
「僕は思ったことを素直に伝えただけだよ」
「ほっとくのが刺激しなくて一番楽だろ。爆弾つつくような真似しやがって……」

 スイウの言う通り何も言わないのが一番無難な対応だということはわかりきっていた。劣等感を感じて卑屈になっているのなら、褒め言葉すら捻じ曲がって悪く作用してしまうことも多い。

 メリーはフィロメナに対して、体形に劣等感を感じていたのだろう。言葉選びや、視線が胸元や足ばかりに向けられていたことを思えば、探るまでもないほどわかりやすく言動に出ていた。

 そういったことを全く気にしない性格だと思っていただけに、少しねたような姿が微笑ましく、物珍しさを覚えた。
 だからこそ言葉にして伝えてみたくなったのだ。結果普段は絶対に見せないような可愛らしい表情を引き出せて、何となく得したような気分だ。

「ねぇ、あたしにもわかるように説明してちょうだいよ」

 眉間にシワを寄せているフィロメナに、あんなのもわからんのか、とスイウは嘆息していた。

「メリー様はきっとフィロメナ様のことが羨ましかったのですよ。よくお似合いですからね、フィロメナ様も」
「ありがとう、エルヴェ! メリーもすごく褒めてくれたし、この水着で間違ってなかったわね!」

 フィロメナは満面の笑みを浮かべ、パレオを摘んでひらひらとさせながら満足そうに眺めている。

「でもメリーも似合ってるのに、あたしのどこを羨むのかしら?」
「……さすがに僕もそこまではわからなかったかな」

 その質問に答えるつもりはないし、答える必要もない。スイウやエルヴェもそう考えているのか、それを口にすることはなかった。メリーとしてはきっとフィロメナには知られたくない話だろう。

「ま、何でもいいわよね。あたしが羨ましいなんて、可愛いとこあるじゃない〜」

 具体的なことはわかっていないようだが、フィロメナは羨ましがられたという事実だけでもとても上機嫌なようだ。

「おい、メリーに余計なこと言うなよ」
「わかってるわ、大丈夫よ! えへへ、メリーも素直じゃないんだから」
「そういうのを顔に出すなと俺は……」

 スイウの忠告もそこそこに、フィロメナはメリーを追いかけて走っていってしまい、行き場を失ったスイウの声が尻すぼみになって消えていく。

「もう俺は知らん」

 頭の花畑が焦土しょうどになるぞ、というスイウの呟きがため息と共に漏れ聞こえてくる。
 スイウはなんだかんだと世話を焼いてくれることが多いが、面倒になれば刀に憑依ひょういして逃げることもできる。必ず助けに入ってくれるという過信は禁物だ。

「俺は寝る。昼間は少し眠気があるからな」

 スイウは妖魔になってから少しだけ眠るようになっていた。元通り本領発揮できるのは夜であり、力の弱まる昼は眠くなったり、猫形態から自力で人には戻れなかったりする。スイウは近くにあるパラソルの下に入り、早速備え付けのビーチベッドに寝転がった。

「何か飲み物でも買ってこようか?」

 スイウは返事をしなかったが、無言を肯定と捉えることにする。エルヴェにも何か欲しいか聞いたが、必要がないのでと断られてしまった。




 アイゼアは両手に背の高いグラスを一つずつ手にし、二人のところへと戻る。口を開きかけるエルヴェに、人差し指を口に当てて声を出さないよう牽制けんせいした。ちょっとした悪戯いたずら心だ。

 グラスの片方を、眠っているスイウの頬にくっつけようと近づけたところで腕を掴まれる。

じ切られたいのか?」
「おっと、残念だなー」

 スイウに鋭くにらまれ、その視線をグラスを渡しながらかわす。

「すごく鮮やかな色の飲み物ですね。グラスの飾り付けも綺麗です」

 興味深そうにしているので、自分の分をエルヴェへと渡すと、くるくるとグラスを回しながら観察し始めた。

「先に言っておくけど、お酒だからね」
「へぇ」

 オレンジやパイナップル、花などで飾り付けられたグラスにカエルレウムの海を思わせる青い色のお酒が入っている。スイウは飾りのオレンジをさっさと取って食べ、お酒を一口含んだ瞬間、呆れたような表情へと変わる。

「俺を酔い潰したいのか?」
「あれ……もしかして結構お酒苦手?」
「別に。飲みやすい高そうな酒だと思っただけだ」

 アイゼアもエルヴェから受け取り、一口飲んでみる。見た目は青くて爽やかだが、口当たりは柔らかく女性にも好まれそうな味をしている。油断して飲み過ぎてしまいそうだと思い、スイウの言葉の意味を理解した。

 魔族は毒すら自力で治癒できるだけの力がある。アルコールも物ともしないとある程度踏んでの悪戯心ではあるが、妖魔となった今でもそうなのだろうか。更に続けて飲んでいるあたり、スイウは元からお酒に弱いというわけでもなさそうだが。

「スイウ様はどのくらいお酒が飲めるのですか?」
「今の体でってのはわからん。昔はクロミツよりは強かったってことだけはわかるが」

 何かを思い出したのか、スイウはふっと懐かしそうに微笑む。

「……クロミツに安酒で勝負を吹っかけられる度に返り討ちにしてやった。どこまでなら平気なのかって加減も知らんからクロミツが潰れて眠るまで延々飲み続けて……翌日は毎度最悪な気分だったな」
「あの、今更かもしれませんが、どうかお体は大切になさって下さい……」

 どうやら二日酔いは経験したことがあるらしく、特別懲りているわけでもないらしい。
 騎士仲間と飲みに行くと、どちらが飲めるか競いたがる者はいる。だがこういうとき大変なのは酔っ払いを介抱する方だ。

 アイゼアは自分を失くすような飲み方はしないせいで、よくその役目を押し付けられている。頼むから自力で帰れる程度に留めてくれと声を大にして言いたい。

 スイウはすでにグラスを半分空けており、飲むペース自体はかなり早い方だろう。

「今は魔族のときとは違って多少は酔えるかもしれんな」
「へぇ。スイウって酔うとどうなる?」

 酔う可能性があるというのなら、万が一に備えて聞いておいた方がいいだろう。もし手のつけられないほど荒れるのであればその前に止めなくてはならない。

「多少なら変わらん。かなり飲むと思考が鈍ってくる。あと、自覚はないが口数が減るらしい」

 スイウの過去に関しては簡単にだが話を聞いている。加減も知らずその体質なら、酒に逃げて気を紛らわせることもあったのかもしれない。

 しかし普段から口数が少ない性格だと気が緩んで饒舌じょうぜつになることが多いが、更に輪をかけて喋らなくなるとは思いもしなかった。

「安心しろ。思考が覚束なくなるまでは飲まん。お前も介抱が面倒なら闇雲に酒を勧めないことだ」
「ごもっともで」

 スイウはあっという間に飲み干すと、パイナップルをかじりながらサイドテーブルに空のグラスを置く。

「そんなことよりお前らも海に行ってきたらどうだ? 荷物番くらいはしててやる」

 今度こそ俺は寝るからな、と呟いてスイウは目を閉じた。
 アイゼアはグラスを傾けながら、目の前に広がる海を眺める。泳ぐつもりはなかったが、海を一切感じずに帰るのも少し勿体無い気がした。

「エルヴェ、せっかく来たんだし海を近くで見てみないかい?」
「……そうですね。せっかく長靴も買いましたし、近くまでなら行ってみたいです」
「よしよし、なら行こうか」

 エルヴェが長靴に履き替えるのを待ち、二人で波打ち際まで歩く。波が足にかからないギリギリのところでエルヴェは立ち止まった。

「もう少し前に出てみなよ。もし高い波が来たら僕が抱えてあげるから」

 エルヴェを促すと、波で砂の色が変わっているところまで進み出る。波音と共に海水が押し寄せ、やがて静かに引いていく。

「砂が波にさらわれていく感覚がわかります……! あ、綺麗な貝殻かいがらもたくさん落ちているのですね。青い小さな石もあります……これがメリー様のおっしゃっていた潮騒の青でしょうか?」

 宝物を掬い上げるように貝殻や石を拾い、新しい発見をした子供のようにエルヴェは目を輝かせてこちらを見上げる。その無垢な笑顔が世俗に塗れて疲れ切ったアイゼアの心を癒やす。

 エルヴェは貝殻を追いかけるようにして波打ち際を辿るように歩いていく。彼を海の近くまで誘って正解だったようだ。

 その背中を遠目から見守っていると「ねぇ、ちょっといい?」と、背後から突然声をかけられる。振り返ると、アイゼアと同年齢か少し下くらいに見える女性が二人立っていた。

「何かありましたか?」

 想像よりも近い距離感に少しだけ嫌な予感がし、アイゼアは気圧されて数歩後退あとずさる。

「ちょうどお昼だし、わたしたちと一緒にご飯食べに行きません?」

 アイゼアは瞬時にこれが俗に言う『逆ナン』というものであることを察し、返事をしてしまったことを心底後悔した。

「悪いけど、僕一緒に来てる人いるから……」
「えぇ〜? 奢ってあげるし、いいじゃない。ね、お昼だけなんだから」

 何となく昼食だけでは済まなさそうな気配を感じ取り、アイゼアは心がスッと冷えていくのを感じていた。二人から視線を逸らし、エルヴェの姿を探す。

「エルヴェ、あんまり遠くに行かないようにね!」

 これみよがしにエルヴェへと声をかけるが、女性たちは一歩も引く気配がなかった。
 それどころか、「あの子も一緒にどう?」と誘ってくる。押しが強い……自分が最も苦手としている手合いの女性たちだ。どう出れば諦めてくれるのか、この手の女性の思考が最もよくわからない。実際しくじってトラウマが一つできているせいか、より苦手意識が強くなっていた。

 あの経験から推測するなら、ここでとりあえずご飯に行けば気が済むだろうというのは下策中の下策だ。断固として断りきるという固い決意を胸に弱気になりかけた心を叱咤する。

「どうかなさいました?」

 様子が変だと感じたのかエルヴェがこちらへと戻ってきてくれた。巻き込んでしまった負い目を感じながらも、一人でないことに思わず安堵あんどしてしまう。

「あら、近くで見るとすっごくかわいいじゃない。お兄さんにわたしたちと一緒にご飯に行かないかって誘ってたの。あなたも一緒に行かない?」

 エルヴェはきょとんとした様子で女性たちを見つめている。彼の性格を思えば、気を使って承諾しかねない。

「いや、僕は行かないよ。それに恋人にも怒られちゃうから」

 この場を穏便に乗り切るなら嘘も辞さない。だがエルヴェの反応次第ではそれも無駄になる諸刃の剣だ。

「……なら、私も行きません」

 エルヴェは恋人がいるという嘘に言及することなく、行かないと強く断言した。彼の察しの良さには本当に感謝するしかない。

「こんな素敵なのに恋人に放ったらかしにされちゃってるの? かわいそー……」
「お兄さん、寂しいんじゃないの〜?」

 両腕を掴まれそうになり、避けながら後退する。うっかり掴まれ、それを無理に振り払えば、暴力を受けたと訴えられるかもしれない。できれば穏便に相手を傷つけることなく終わらせたい。
 自身の不誠実さで怒らせ、傷つけたであろう女性の姿が脳裏にチラついて離れてくれなかった。

 今ひとつ集中力に欠け、普段抱かないような恐怖心を抱き、喉が乾いて引きつれる。

「アイゼア様、顔色が良くないですよ」
「大丈夫、大丈夫……ちゃんと話せば納得してくれるはずだから」

 不安そうなエルヴェを安心させるように、できる限りの笑顔を作ってみせたが、それすらも引きつっているのが自分でもわかる。
 エルヴェをこれ以上巻き込まないためにも、今回こそ失敗するわけにはいかないというのに。

「僕は恋人を泣かせたくないし、友人たちのことも放置していけない。他の人を誘って行けばいいんじゃないかい?」
「お兄さんが放ったらかしで泣かされてるのに?」
「わたしは他の人じゃなくてお兄さんがいいんだけどな〜」

 どこまで強い拒絶の言葉が許されるだろうか。過去の記憶が足を引っ張り、言葉にきゅうする。

「あのっ、お言葉ですが……嫌がっている方を強引に誘うのはどうかと思います!」

 珍しく語気を強めて主張するエルヴェに、女性二人は少し馬鹿にしたようにクスクスと笑い始める。

「お子様には大人の事はわからないのよ」

 どうやら二人はこちらと駆け引きをしているつもりらしい。駆け引きと呼ぶにはかなり強引だが、それでも自分の都合の良いように丸め込めるのなら、それが駆け引きと呼べるものでなくとも勝ったも同然だろう。

 ならば勝負しなければいい。会話を放棄してひたすら諦めるまで無視するしかない、そう決め込んだときだった。

「そんなところで何してるんですか?」

 常夏の海には似つかわしくないほど凍てついた、真冬の北風のように冴え渡る声が聞こえた。そのよく知った声にアイゼアは酷く安堵あんどを覚え、一縷いちるの望みをかけて振り返った。


第7話 こんぺいとうの精の憂鬱  終
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