後章─幾星霜を越え、錆びついた時は動き出す

 そのバケモノは見上げるほど巨大な体を持っていた。熊のような、獅子ししのような、竜のような、何とも形容し難い気味の悪い見た目をしている。

「……偉そうなこと……言っといて、結局このザマか」

 あっさりとバケモノの爪は胸を貫き、ぶら下がる体を容赦ようしゃなく地に叩きつける。雨に濡れて冷えていく体と流れる血。何度も仲間の死を見送ってきた。だからもう助からないことくらいは考えなくても理解できる。

 水溜りはあっという間に血で真紅に染まり、灰色の世界に花を咲かせる。
 曇天どんてんの空から落ちる無慈悲な雨に打たれていた。まるでもう泣けない自分の代わりに涙を流してくれているようだった。

「悪い……な、……弱……を許せ──


後章0話 後悔  終
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