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シャンクスの落ち着いた声に乗せられた言葉を目を閉じて聞くノアの脳裏には、久しく会っていない古き友人と会えない場所へと旅立った友人の笑い声が響いている。
そうか。もうそんな頃なのか。
過去の海賊王、ゴール・D・ロジャーの忘れ形見。その存在を知らない訳では無いがそれに会った事は無い。私が手を出さずとも運命は忘れ形見を居るべき場所へと導くのである。
その結果が何を生んでしまうのだろうと。
「 ...私に加担しろ、と? 」
1度話を切ったシャンクスにノアは静かに問いた。彼女の持つ鋭い眼光は世界の四皇、その一山である赤髪でさえ狼狽えてしまう程の恐ろしさがある。背中に伝う冷や汗にゴクリと喉が鳴った。
シャンクスだって彼女が〝誰かの味方〟をするのを嫌っている事は重々理解している。しかし今、この世界の未来が掛かった襲い来る戦争に躊躇などしていられない。何が何でも彼女に加担して貰わなければ正直、勝機は厳しいのだ。同じ四皇であり今回の根源である男の親、白ひげだってもう歳である。現役とはいえ全盛期とまではいかない。
彼女さえいれば恐らく.....。
そんな甘い考えにシャンクスは抗えなかった。抗う事が出来るはずもなかった。
「 ...アレはロジャーの忘れ形見だ。だが、私にとってはたったそれだけの事よ。私が知るのはロジャーであって忘れ形見では無い。私が加担する理由も意味も無い。分かるだろう?
それに、固定した誰かの味方は遠慮願おう 」
残酷に冷たく突き返された答えにしかし、と眉を顰める。彼女はどちらかと言えば海賊側の人間だと思っていた。白ひげやロジャー船長と仲睦まじく酒を交わし合う姿をよく目にしていたからである。政府側ならばそんな真似をすることは無い。だからこそシャンクスは甘えだと分かっていても此処に赴いたのだ。
「俺との制約があるだろう」
「 誓約書の内容を覚えていないのかい?あれには書かれていたはずだ。誰の味方もしないと。それを無かった事には出来ない。違うかい? 」
「...俺の対価を掛けても、か?」
ノアはシャンクスの問い掛けに一切の動揺を見せなかった。分かっていたかの様に1度目を伏せ、暫くして溜息と共に言葉を吐き出す。
何故、忘れ形見1人にそこまでする、と。
シャンクスは考えるように空を見上げ一言、ノアに言った。
「忘れ形見だからだ」
自分の若かりしを捧げたロジャー船長の。
そしてその男が愛した女が最期まで守り抜いた男だからこそ俺は全てを掛けると。シャンクスは目を細めるノアにそう告げた。どうか、どうか頼むと、信じぬ神に祈るほど願いを込めて。
「 ポートガス・D・エース、か 」
「...!」
「 いいだろう。お前の対価を頂戴する代わりに忘れ形見を父の元へ返す。
ただし覚えておけ。私が行くまでに忘れ形見が死にゆくのなら制約はそこで意味を成さず消える。お前は対価を払わず、私は何もしない。いいな 」
ノアはもう1度己の脳裏に過去の海賊王の姿を思い浮かべる。強く大きな背中だったと、懐かしみに触れ、それから深く息を吐いた。
「 制約と誓約がここに成された 」
シャンクスは胸を撫で下ろし、それからこの戦争が終わる前に船のクルーへ伝えるべき事を伝えなければと思うのであった。俺は制約の対価として命を差し出すのだ。後悔はしていない。全てが終わればロジャー船長とゆっくり世界を、ルフィーを見届けよう。結局、麦わら帽子は返して貰う事が出来なかったなぁとシャンクスは笑みを零した。
その様子を静かに見るノアはさて、どうしたものか...と1人考えるのである。