Welcome to dream
ドレスに着替えて
What's your name?
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
一年五組は他クラスよりも大きな賑わいを見せていた。今日からこの高校に通う新入生達の目は、総じて一人の生徒へと向かれている。
窓際一番後ろの席に座る女子生徒。自分達と同じ真新しい制服に身を包んでいるが、どこか自分達とは一線を引く圧倒的は存在感。広がる空を見る瞳はどこか憂いを帯び、美しいとの一言に尽きる横顔に誰もがほうと息を吐いた。
一方、クラスメイトの視線を一心に浴びる人物、ノアの心中は穏やかではない。
ノアが勧誘された男子バレー部。そこに菅原が所属しているとなれば、その部活は彼と同じ妖の巣窟である可能性が高い。もしも勧誘した目的がノアの餌としての有効性ならば危険だ。しかし、勧誘を無下に断る事も出来ない。自我を持ち人の形を取れる妖は一等危険である。自分の誘いを無下にされたとなればその反動は大きい。ノアはその事をその身を持って知っていた。
「 どうしたものかな 」
吐き出された胸の内を聞くものはいない。騒めくクラスも己の未来も見ぬ振りをして、ノアは未だ空を見上げる。あぁ、明日は雨になりそうだ。
「大地さん、大地さん聞きました?」
「なんだ田中。そんな気持ち悪い顔して」
「気持ち悪いって大地さん。そりゃ酷でェっすよ」
入学式が終わり二、三年の一部男子の手により体育館はいつもの風景に戻りつつある中。澤村大地の後輩、田中龍之介が声を掛ける。
「そんな事より入学式で一際目立つ人間が居たじゃないっすか」
「あぁ、あの新入生の子か」
「そうっす、その新入生。
さっき縁下から聞いたんですけど、そいつから"匂い"がしたらしいんすよね」
「匂い?」
澤村の脳裏に浮かぶのは今朝、菅原が話をしていた女子生徒の姿。焦った様に走り去る姿は背中を向けられていたとしても恐ろしい存在感を発していた。そしてあの瞳。十中八九自分たちにとっては格好の餌となるそんな彼女から"匂い"がしたと、田中は嬉々として話をする。
「はい。"悪鬼"の匂いが」
「なんだって?」
「"悪鬼"っすよ!俺たちと同類の、あの悪鬼」
妖怪悪鬼。その名を知らない妖などこの世に存在しない。妖の始まりの一つとされる鬼族。そんな鬼族の中で最も強い力を持ち、現代最も数が減った妖だ。今は確か妖界の奥で小さな村を造り、固まって生活していると聞いているが、そんなまさか。澤村は無意識に唾を飲み込む。悪鬼の匂いがあの生徒からしたという事は、長く生きてきた中でもかなり異常なのだと。
「...その話は後でしよう。
今は誰が聞いてるか分からん」
「うっす」
「それから、"みんな"を集めてくれ」
澤村の目が静かに光る。
「今日入学式した奴らも、他校の奴らも。
俺らと繋がる奴らは全員」
「了解っす」
悪鬼の匂いがする少女。しかし、その新入生は妖怪ではないがしかし普通の人間でもない。あの瞳は妖怪の本能を掻き立てる色を持っていた。ゾクリと背を撫でられる様な、それでもそれを拒む事が出来ない奇妙な色。
「嫌な予感が的中ってわけか」
暗雲が立ち込める。