Welcome to dream
ドレスに着替えて
What's your name?
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
手を離して欲しい。ノアはそう思うが彼からの痛い視線に言い出すことが出来ない。視線で火傷しそうとは正にこの事だ。
「ははは、そう怯えないでいいべ」
嫌に細められた意味ありげな目から逃れる様にノアはその男から目を離した。あぁダメだ。これ以上ここにいれば、きっと気付かれてしまう。それだけは何をしても阻止したい。しかし繋がれた手は離されそうに無いのだから困った。
クソ、と喉から出そうになる言葉を飲み込む。
「ねぇ君さ、バレーとか興味無い?」
は?とノアは思わず聞き返した。それがあまりに素っ頓狂な質問だったからだ。
彼は恐らく気付いている。ノアが"特殊な人間"だという事を。けれどそれを聞くでもなく、問いただすでもなく平然とそう聞いのだ。興味はあるかと。
「 バレー... 」
「そ、バレーボール!」
「 興味は無い、です 」
「じゃー部活とか入る予定は?」
「 それも無いですけど 」
そっかぁと男は顎に手を当てて何かをもう一度考える。嫌な予感だ。とてつもなく嫌な予感がノアの背中を奔る。早く立ち去らなければ何かが起こる。こういう時の嫌な予感が的中するという事はよく知っていた。経験談ともいうが、何はともあれひとつも良くない。
「君を男子バレーボール部に勧誘するよ!ところで君の名前は?」
「 美澄ノアです 」
「ノアちゃんか。
俺は三年の菅原孝支です。よろしくね」
そんなこんなで、菅原孝支と名乗る三年からバレーボール部へ勧誘されたノア。手は繋いだまま、彼は爽やかな笑顔を見せている。
「とりあえずまた勧誘しに行くね。
これから入学式、頑張ってノアちゃん」
「 失礼します 」
「あーあらら、逃げちゃった」
「入学式早々、新入生に何してんのよ。スガ」
「おー、おはよー大地」
漸く離された手を素早く引っ込め、一目散に逃げて行くノアの後ろ姿を見送る菅原の元に、大地と呼ばれた男が歩み寄る。いやさーと楽しそうに話を始める菅原の頭にはノアの焦った顔が浮かんだ。
「面白い子を見つけちゃってね」
「あぁ、さっきの子か」
「なんだよ大地。見てたんじゃん」
「スガが来ないから見に来たんだよ、全く」
こうして見れば普通の男子高校生。そんな彼らの正体を知る者は彼らと同類かノアの他に誰がいるだろうか。
「ま、隠しているんだろうが」
「あの目、久しぶりにゾクゾクしたべ俺」
「こらスガ。誰が聞いてるか分からないんだぞ」
大地は菅原を窘めながら遠くから見えた新入生の目を思い出した。まじないか封印か分からなかったが何かによって上手く隠されているものの、眼が良い鴉には違和感としてむしろ目立ったあの瞳。喰いたいとさえ思う美しい目。
そうか、噂は本当だったのか。
大地はニコニコと笑う菅原を一瞥し、小さく息を吐いた。少しは周りに目を配って置かなければきっと厄介な事になると。
今年の新入生には若い"鴉"が多い。血気盛んな若鳥には我慢できないであろう格好の餌。まさかあちらから来てくれるとは。
「どうしたもんかな」
空は青いまま。