Welcome to dream
ドレスに着替えて
What's your name?
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※烏野を街名としています
此処、烏野の山間には多くの妖が生きているがその中でも〝烏〟に纏わる妖怪が多く存在し、妖界ではこの街を〈からしき〉と呼んでいる。
晴天。本日は日本晴れも日本晴れである。美しい自然の中の青。絵の具では表現しきれない透明感と圧倒的な存在感。これを果たして青という言葉1つで表す事が出来るのだろうか。
家から程近くにある烏野高校は入学式という事もあり、新入生で大いに賑わいを見せている。学校に来るまでの道にも、真新しい制服に身を包んだ新一年生が多勢いた。勿論、ノアもその中の一人である。
____あぁ、此処は彼らの巣なのか
煌びやかな雰囲気漂う一方、ノアは覚えのある"匂い"に鼻を擽られていた。彼らに纏わる独特な匂い。古びたイ草の様な、例えが難しいので割愛するが簡単に言えば古い畳に似た匂いである。
桜や梅の花の香りに紛れ込むなんとも言えないその匂いは彼らが此処を己の縄張りだと示している、所謂マーキングだ。
まぁ、人間にとっては例えノアの様に嗅ぎ分ける事が出来たとしても関係の無いことだけれど。
「 5組か〜 」
昇降口に大々的に貼られているクラス分けの大紙。上から順に文字を追っていき自分の名前を見つけると、教室に向かうために踵を返した。
ドンッと正面から何かとぶつかりノアはその場に尻餅をついた。痛たたと尻を擦りながら顔を上げてそして目を見張り、後悔した。
「あ、ごめんね?大丈夫?」
左目の下にある黒子が特徴的な爽やかな好青年。何も見えず何も知らない普通の人間であればそう思っただろう。もしかしたらこれを運命と錯覚するかもしれない。もしかしたら一目惚れをするかもしれない。何も見えず何も知らない普通の人間であればそう思っただろう。思えただろう。
「 あ、いえ、大丈夫です 」
彼から微かに漏れ出る人間とは違う色、背中に生える大きな濡れ羽色の翼。それは正しく"鴉"であった。
差し出された手を素直に取り、引っ張り上げられるままに立ち上がる。見た目に反して思ったより力は強い。妖だから当然だが矢張りどこか見た目とチグハグな腕力にパチリと瞬きをひとつ落とす。
「怪我はしてない?」
「 大丈夫です 」
「そっかそっか!それなら良かったよ。
入学式の日に怪我させたらどうしようかと...」
鴉は鼻よりも眼が利く。高い高い上空から地に落ちたビー玉を見つけるのなんて容易い程に眼がいい。だからこそ、鼻が利くよりも厄介なのだ。匂いは紛らわせても姿を隠すのは難しい。どれだけの注意をはらっても見破られてしまう。これらの眼は特殊なのだから。
_____早めに退散しないと...
そう思うが、立ち上がる際に取ったこの手は未だ緩められる気配は無かった。