Welcome to dream
ドレスに着替えて
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「まさかこんなに集まるとは思ってなかったな」
「鬼って言われりゃこうなるわ」
「そうは言っても普段は中々集まらない奴らまで。
ありがとな、黒尾」
「あー...別に俺は何もしてねぇよ」
「いや、お前が居なかったら蛇は来てなかっただろうから」
「ま、気にすんな。
木兎も"蛇"を連れ出すのに一役買ってくれたし」
「そうか。感謝するよ」
夕陽が落ち、空は次第に黒くなる。
妖怪が動き出す時間だ。爪を立て牙を剥き夜の街を駆け巡る。闇は妖怪の領分なのだから。
「澤村」
「...おう、北。お前らまで遥々こんな所に悪い」
「気にせんでええよ。
そないな事よりも相手方が鬼っていうのはほんまか?」
「あぁ、本当だ。人間の少女を狙っているらしいが、いま奴らの手の内にいるのは悪鬼の双子とみている。まだ幼い子供だが...」
「悪鬼か。...子供でも厄介やな」
「相当血を流しているのは確実だろう。
気をつけて行かないと、俺等も食われるぞ」
夜も深けたばかり。闇が蔓延る時間はまだ長く体力勝負になるのは間違いないだろう。澤村の脳裏に過ぎった怒りを従えた少女の瞳。本当にこれで良かったのか不安に震える手を抑え込み、その場にいる仲間に声を掛けた。
先ずは双子を救う。
そして、願わくば首謀者の真意を探る。
けれど誰一人死んではいけない。決して気を緩めず互いに助け合い、反乱の鬼に静粛を。
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日が暮れ、月が昇る。空を見上げてから気づく今日は満月だったのかと。大きな月だ。この時期には珍しい大きくて明るい月。こういう日は妖怪がよく動きそして人間に牙を向ける。
満月の夜は闇の住人の力が増す。
きっと奴らは敢えてこの日を選んだのだろう。
正に鬼に金棒である。今日の奴らは無敵に近いのかもしれない。そう考えながら夜道を進む"光"を追うは人間の少女、ノアである。
月明かりに照らされている筈の山道は不自然な程ひっそりと静まり返っている。この道の向こうから明らかな妖怪の匂いと空気の騒めきが伝わるのに、何も聞こえない。自分の足音の一つさえも。
自宅を飛び出して小一時間。歩いて走って歩いて...体は疲弊しているのに足は止まらない。早く行かねば、あの小さな体を抱き締めてやらねば。ノアにはそれだけの感情しかなかった。恐ろしくて震えているかもしれない。迎えに来てと叫んでいるのかもしれない。痛いと泣いているのかもしれない。
もしかしたら既に...........。
_____あぁダメだ、ダメだ、考えてはいけない
考えたらきっと足を止めてしまう。
家に一人でいる事が大半のノアにとって、この三年は素晴らしく楽しい日々だった。朝起きればおはようと声が掛かり、慌ただしくも支度を整えて行ってきますと言えばいってらっしゃいと返事が来る。ただいまにはおかえりなさいと。どれもこれもノアが双子に教えた事だが、それもまた楽しかったのだ。
ハク以来に出来た妖怪の友達。
いや、双子の場合は友達では無く家族に近い。
失いたくない。
一度覚えてしまった一人ではない毎日を。
ただ失いたくないのだと、足を動かす。
道が開け、灯りが見えた。
「 アカツノ!アオツノ! 」
灯火の先に飛び出すノアが目にしたのは、月に照らされた鬼の姿と踠き苦しむ双子の姿。そして、宙を舞う漆黒の羽根。
「“あァん?
あー、やっと来てくれたのかァ人間ちゃんよォ”」
それは確かな悪意だった。
「 なにをしてるの 」
それは確かな殺意だった。
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