Welcome to dream
ドレスに着替えて
What's your name?
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「どう思う?」
「あ?」
「ほら、さっきの視る眼を持つあの子」
空を飛びながら思い出すのは、澤村を見つめる目に憤りと哀しみがチラついていた人間の事。念を押されるように言葉を掛けられ、走り出したい足を止める少女は確かに人間だ。弱く脆い生き物。
及川は隣で風を受ける幼馴染に目を向けた。
「俺には理解出来ねぇな」
「んー?」
「人間はすぐに壊れちまう弱い奴らだ。
そんな人間が、何の為に妖怪なんかと居んのか。
俺には分からん」
岩泉という男は堅物である。漢の中の漢という言葉が良く似合う正義感の強い男だ。生まれた時から人間を嫌うこと無く、むしろ弱く守る物だと思っている。心底人間が好きなのだろう。しかし、弱いからこそきちんと線引きをする。自分たちがどれだけ手加減しようと人間はその力に耐えられないから。この手で壊さないように、ある程度の距離を保っているのだ。昔からずっと。
だからだろうか。岩泉には双子の生き方もノアの考え方も理解できなかった。人間は弱い、触れればすぐに崩れてしまう。愛情があるのなら壊してしまわないように普通は距離を取るはずだ。自分がそうであるように。
「人間も妖怪も分け隔てなく。
全ての者に対してそうじゃなくてもあの子はきっと、双子には人間と同じ様な愛情を持っているんだろうね」
「...やっぱり、俺には分からねぇ」
前を飛ぶ澤村と菅原が高度を下げていく。そろそろ目的地の様だ。地上が迫ってくる程、鬼の匂いは強くなり同時に血の匂いも濃くなる。
鬼が鬼を狩る。昔話の様な光景。
双子が悪鬼だからか。人間と戯れた粛正なのか。それともあの少女を誘き寄せる為なのか。真意は何処に。これから明らかにしよう。
「松川達はもう来てるみたいだな」
「ホントだ。マッキーもいるね、あそこ。
ていうか...大所帯過ぎない?」
「鬼相手にすんだから当然だ」
「そうだけどさぁ...これ、山一つ飛ぶよ?」
「そこら辺は"錫色"がどうにかすんだろ」
烏羽の着物、翡翠の着物、錆浅葱の着物、江戸紫の着物、赤丹の着物、藤黄の着物、錫色の着物、芥子と青碧の着物。こうして上から見れば似たり寄ったりのけれど色とりどりの着物の集団。唯一見える違いの無い色は薄桜色の帯だけ。
妖に知らぬ者はいない。薄桜の美しい色は身に付ける者に意味を与える。生き様に道を与える。
「...人間を愛そうとすること」
愛することが出来なくても、愛そうとさえすれば消える時にはきっと愛しているだろうから。愛しなさい。弱く脆く、けれど強くあろうとする人間を愛しなさい。近い距離にいなくてもいい。遠くで見守るだけでいい。ただ、愛しなさい。人間も妖も変わらない生き物なのだから。
そう言った"人"が愛していた色。
それが薄桜の帯に纏わっている。
古い古い話である。
「さて、行こうか岩ちゃん」
「うるせぇ及川」
「え?!なんで!?」
*
*
*
*
烏羽=烏野(鴉)
翡翠=青葉城西(鴉)
錆浅葱=伊達工(濡鴉)
江戸紫=白鳥沢(鴉天狗)
赤丹=音駒(猫又)
藤黄=梟谷(鴆)
錫色=稲荷崎(狐)
芥子と青碧=戸美(蛇)
全員が出てくるわけではありません。
ごめんなさい。
時と場合によりその色のメンバーが出演します。
上から順に出てくる確率が高くなると思います。