Welcome to dream
ドレスに着替えて
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ノアという人間に出会うまでの菅原は人間を、弱く儚い生き物と認識していた。それは決して間違っていないだろうしその考えを変えるつもりはない。しかし、ふと思った。本当にそうなのか?人間は弱いだけの生き物なのか?
目の前の少女は弱さを見せようとせずただ気丈に振る舞い、あまつさえ妖怪を助けるとまで言い出したのだ。そう思うのも無理はないだろう。
「ごめんね、ノアちゃん。
それはどうしても教えてあげられないんだ」
「 .....、 」
「悪鬼は鬼の種族の中で最も位が高い一族。
その彼等を理由はどうであれ此処に放っておけない」
「 、 」
ノアの瞳が揺れる。例え気丈に振舞ったとしても人間は妖怪に対して非力だ。昔も今もそれは変わらない。陰陽師ならいざ知れず。
彼女は妖怪が見えるだけの人間、我々からすれば餌に過ぎないのだ。
最初は面白いと思っていた。
入学式のあの時に出会ったのは正に運命で、長く終わりの見えない時間に飽き飽きしていた自分に、見えぬ神からの贈り物かとそう考えるほど彼女は面白い人間だった。
その日の内に澤村から招集が掛かり、彼女から悪鬼の匂いがした事、そして恐らく妖怪の姿が見える事が話された。まさかと誰もが疑うが澤村は嘘をつかない。信じられずとも、信じるには十分な信頼だ。そして一つの提案が出され、それは静かに実行される事となった。
悪鬼の存在を確認する為であり、彼女の危険性を把握する為でもあるその提案。
学校にいる時の彼女は極めて大人しく、同学年の生徒の言い方を借りれば正しく"お百合様"である。間違いなく気品に溢れた、最早高校1年生とは思えない立ち振る舞いだ。
家に帰れば、多少砕けた口調で"悪鬼"と会話をして3人分の夕食を作り一家団欒を見せる。風呂に入り、風呂に入らせ、母親の仏壇に手を合わせ、少しばかりテレビを観てから就寝。普通の女の子としての姿である。
しかし、そこには確実に愛が存在していた。母親に対する愛。父親に対する愛。そして双子に対する愛。双子もまた愛情深く寄り添うのだ。
「 そうですか 」
菅原達には決して向けられない愛情。
人間が、妖怪に愛情を持つとは誰が考えようか。誰も予想し得ないだろう。それは名の通り奇跡なのだ。
「呉々も家から出ないように。
烏を近くに置いておくから。大丈夫、心配はいらない。
悪鬼の双子は俺達が見つけて"家"に帰す。
いいね?約束だ」
澤村が言い終わると同時に妖怪の気配が家から消え、ノアは重く口を開いた。誰にも聞こえない叫び。
_____大丈夫、迎えに行くよ