今日だけは。
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「し…失礼しまぁ~す…」
「何をそんなに緊張している」
本棚に囲まれているのに、狭さを感じない、シンプルかつ綺麗な部屋に恐る恐る足を踏み入れる。
広々としているが、逆を言えば生活感を感じさせない。冷たい部屋…。
辺りを見回すと、部屋の奥に空洞があった。
ただ、その先は真っ暗でなにも見えない。
「あの奥に、俺の書斎がある。いつもは勝手に入れないようにしているんだが…今日は、特別だ」
そう言うと、つかつかとほの暗い空洞の中に進んでいく。
私も慌てて、そのあとを追いかけた。
「…どうして書斎を隠してるの?」
少し歩いてから、ふと疑問が湧く。
ルシファーは振り向かず、「ああ」と言い、
「バカなコソ泥対策だ」
と答えると、少し肩を竦めてみせた。
一瞬分からなかったが、ある一人の男の顔がすぐさま過る。
「…マモンか…」
「ご名答」
くくっとルシファーは楽しそうに笑った。
「ここだ」
突然止まったので、ビックリして様子を伺うと、ルシファーが顎で先を促す。
恐る恐る前に出てみると、そこには広々としたまさに「大人」の落ち着いた雰囲気の部屋があった。
クラシックで品よく統一された調度品や、装飾…眠くなりそうな暖かな揺らぎの暖炉、そして座り心地が良さそうなふかふかなソファ。
「お…お洒落…」
「おきに召してもらったか?」
つい零れた言葉に、ルシファーは口元を緩ませると、私の背中を優しく押してソファにかけるよう勧めてくれた。
「お、お邪魔します…」
ほかの兄弟の部屋とは違って、なんだか緊張する…。
飲み頃になったホットミルクを一口のみ、コトン、と目の前のテーブルに置いた。
ルシファーもコップをテーブルに置くと、私の隣にさも当然かのように座った。
…ルシファーと体が密接していて、余計に落ち着かない…。
「あ、あの!ソファ、もっと空いてるけど…狭くない?」
心臓の音が聞こえてしまいそうで、声で誤魔化そうと発するも、少し上ずってしまう。
…今ので絶対緊張してるの、バレた…。
「なんだ、俺の隣は嫌なのか?」
ルシファーが自然と顔を近付けてくる。
赤くなった顔を見られたくなくて、ぐるんと顔を背ける。
「い、いやいや!そ、そんなんじゃないけど!!」
そして、話題を変えようと部屋を慌てて見渡したとき、パッと年季の入っていそうなボトルが目につく。
見た目はまるで、人間界のワインボトルみたいだ。
「そ、そういえば、ルシファーって、お酒とかよく嗜むの?」
連想したものから、適当に思い付いたことを喋ると、私の視線の先に気付いたのか、またも「ああ」と曖昧な返事をすると、急に立ち上がった。
「…ほっ…」
やっと体が離れ、ガチガチに緊張した体が少しほぐれる。
でも、なんだかもったいないような、寂しいような…自分でも感じたことのない感覚も入り交じる。
「~って、私なに考えてるの…!!」
気付いてしまうと、また恥ずかしさが込み上げてしまい、頭を抱える。
コトンコトンコトン、とガラスが何かにぶつかるような音がした。
「どうした?具合でも悪いか?」
ハッと顔を上げると、ルビーのような輝きを放つ瞳が、心配そうにこちらを見つめていた。
「ふぇ?!あ、ご、ごめん!!大丈夫!!」
慌てて両手を顔の前で振り、元気そうに振る舞う。
「そうか。なら良かった」
その様子に優しく微笑んでくれた後、慣れた手つきでボトルを開栓し、いつの間にか用意された細長いお洒落なグラスに注いでいく。
暖炉の炎に照らされているせいか、ボトルから注がれる液体は、血のように生々しく、少し恐ろしさを感じた。
…本当に、何かの血だったら、どうしよう…。
「アスモに聞いたぞ?お酒、強いそうだな」
注ぎ終えたグラスを私に差し出し、にやりと不敵に笑う。
「今夜は俺とお前、どちらが強いか、勝負しよう」
「何をそんなに緊張している」
本棚に囲まれているのに、狭さを感じない、シンプルかつ綺麗な部屋に恐る恐る足を踏み入れる。
広々としているが、逆を言えば生活感を感じさせない。冷たい部屋…。
辺りを見回すと、部屋の奥に空洞があった。
ただ、その先は真っ暗でなにも見えない。
「あの奥に、俺の書斎がある。いつもは勝手に入れないようにしているんだが…今日は、特別だ」
そう言うと、つかつかとほの暗い空洞の中に進んでいく。
私も慌てて、そのあとを追いかけた。
「…どうして書斎を隠してるの?」
少し歩いてから、ふと疑問が湧く。
ルシファーは振り向かず、「ああ」と言い、
「バカなコソ泥対策だ」
と答えると、少し肩を竦めてみせた。
一瞬分からなかったが、ある一人の男の顔がすぐさま過る。
「…マモンか…」
「ご名答」
くくっとルシファーは楽しそうに笑った。
「ここだ」
突然止まったので、ビックリして様子を伺うと、ルシファーが顎で先を促す。
恐る恐る前に出てみると、そこには広々としたまさに「大人」の落ち着いた雰囲気の部屋があった。
クラシックで品よく統一された調度品や、装飾…眠くなりそうな暖かな揺らぎの暖炉、そして座り心地が良さそうなふかふかなソファ。
「お…お洒落…」
「おきに召してもらったか?」
つい零れた言葉に、ルシファーは口元を緩ませると、私の背中を優しく押してソファにかけるよう勧めてくれた。
「お、お邪魔します…」
ほかの兄弟の部屋とは違って、なんだか緊張する…。
飲み頃になったホットミルクを一口のみ、コトン、と目の前のテーブルに置いた。
ルシファーもコップをテーブルに置くと、私の隣にさも当然かのように座った。
…ルシファーと体が密接していて、余計に落ち着かない…。
「あ、あの!ソファ、もっと空いてるけど…狭くない?」
心臓の音が聞こえてしまいそうで、声で誤魔化そうと発するも、少し上ずってしまう。
…今ので絶対緊張してるの、バレた…。
「なんだ、俺の隣は嫌なのか?」
ルシファーが自然と顔を近付けてくる。
赤くなった顔を見られたくなくて、ぐるんと顔を背ける。
「い、いやいや!そ、そんなんじゃないけど!!」
そして、話題を変えようと部屋を慌てて見渡したとき、パッと年季の入っていそうなボトルが目につく。
見た目はまるで、人間界のワインボトルみたいだ。
「そ、そういえば、ルシファーって、お酒とかよく嗜むの?」
連想したものから、適当に思い付いたことを喋ると、私の視線の先に気付いたのか、またも「ああ」と曖昧な返事をすると、急に立ち上がった。
「…ほっ…」
やっと体が離れ、ガチガチに緊張した体が少しほぐれる。
でも、なんだかもったいないような、寂しいような…自分でも感じたことのない感覚も入り交じる。
「~って、私なに考えてるの…!!」
気付いてしまうと、また恥ずかしさが込み上げてしまい、頭を抱える。
コトンコトンコトン、とガラスが何かにぶつかるような音がした。
「どうした?具合でも悪いか?」
ハッと顔を上げると、ルビーのような輝きを放つ瞳が、心配そうにこちらを見つめていた。
「ふぇ?!あ、ご、ごめん!!大丈夫!!」
慌てて両手を顔の前で振り、元気そうに振る舞う。
「そうか。なら良かった」
その様子に優しく微笑んでくれた後、慣れた手つきでボトルを開栓し、いつの間にか用意された細長いお洒落なグラスに注いでいく。
暖炉の炎に照らされているせいか、ボトルから注がれる液体は、血のように生々しく、少し恐ろしさを感じた。
…本当に、何かの血だったら、どうしよう…。
「アスモに聞いたぞ?お酒、強いそうだな」
注ぎ終えたグラスを私に差し出し、にやりと不敵に笑う。
「今夜は俺とお前、どちらが強いか、勝負しよう」
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