今日だけは。
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そこには、湯上りした様子のルシファーが立っていた。
「ルシファー…」
「ふぇえ?!る、ルシファー?!い、いつの間に?!」
恥ずかしさがどんどん増してきて、顔に血が上るのを感じる。
ベールはルシファーに気付くも、むしろ抱きしめる力を強めた。
「べ、ベール…?」
「おや。お前たちはそんな関係だったのか。では、お邪魔虫は帰ろうとするかな」
口元を歪め、愉快そうに喋るも、どこかその声色に棘を感じた。
「ルシファー…?」
「ああ。風呂上りだろうから、キッチンで水でも飲んできたらどうだ?」
「そうだな。お前に言われなくても、そうするつもりだ」
数秒、ルシファーとベールの間に重苦しい空気が流れる。
私はこの格好のせいもあり、なんだか言葉を発するのを躊躇ってしまった。
ルシファーは一度も私に目をくれることもなく、そのままキッチンへと向かっていった。
ルシファーが去ると、ベールは抱きしめるのをやめ、心配そうに私の顔を覗き込んだ。
「すまない。痛くなかったか?」
その声に、私は首を左右に振った。
「ううん、大丈夫…」
なんでベールは抱きしめたのか。そして、ルシファーが声を掛けた途端、なぜ力を強めたのか。
疑問が残る一方だが、今のこの空気で聞くにはあまりにも重すぎた。
「立ち話が長くなってしまったな。湯冷めしてしまうだろうから、なにか温かいものでも飲むといい」
ベールの瞳が一瞬揺らいだが、すぐさま笑顔で私の頭に大きな掌を乗せた。
「あ、う、うん…そうするね!ベールも私の話に付き合ってくれてありがとう!」
「そんなのお互い様だ。ああ、そうだ。また美味しそうな店を見つけたから、今度の放課後、食べに行かないか?」
いつもの調子に戻り、よだれを垂らすベール。
私はホッと安堵し、普段の調子で返した。
「うん!すっごく楽しみにしてる!」
ベールも微笑みながら、手を左右に振り、私に背を向けて部屋へと戻っていった。
「…キッチン…か…」
言われてきたものの、少し歩いているうちに頭が回ってきたのか、ルシファーもキッチンに向かっていったことを思い出した。
「…いや、でも、あれだよね、外国のドラマとかだと、挨拶にハグをするなんて普通みたいだし…あれも悪魔流のなにか…なんだよね…」
あの時のことを思い出し、なぜか胸が高鳴るような、背徳のような謎の感覚に襲われ、言い訳のような独り言が止まらなくなってくる。
「べ、別にベールが私に特別な感情があるとかではなくて、ベールは素直だからスキンシップも素直っていうか…。アスモなんか普通に抱き着いてくるわけだし…」
「なにぶつぶつ言ってるんだ?」
俯いて歩く私の額に、熱い何かが当たる。
「あっつう?!」
「下を向いて独り言とは。一瞬レヴィかと思ったぞ?」
反射的に顔を上げると、そこには口元を微かに歪めたルシファーの姿があった。
両手には湯気の立つコップがあり、私の額にあたったのは、どうやらそれのようだ。
「い、いきなりびっくりするじゃない!いるなら声をかけてくれればいいのに!」
「お前が前も見ず、独りで会話してる方が悪い。正直、悪魔の俺でも怖かったぞ」
と、顔を左右に振りながら困り顔で溜息を吐いた。
とはいいつつも、絶対からかってる…。
「な、なによう。そんな日があってもいいじゃない」
「そんな日に出くわした俺が可哀そうだな。それはそうと、これを取りに来たんだろう?」
冗談めかして言った後、ルシファーが右手に持つコップを私の目の前に差し出した。
嗅いだことのある、懐かしい良い香りが、私の鼻孔をくすぐる。
「良い匂い…。牛乳みたいな匂いする…」
「まさしくそうだが?」
ルシファーからコップを受け取った後、びっくりしてルシファーを見る。
「…へ?」
その様子を楽しそうに眺め、ルシファーが左手のコップを少し上げた。
「お前からこの間、人間界の「牛乳」というものを温めたものが安眠効果にいいという話を聞いただろう?大掃除を始める前に、少し人間界に立ち寄り、物珍しいものを探していたとき、たまたま視界に入ってな」
言いながらも、香りを楽しむ。
「…どうだ。時間があるなら、俺の部屋で少し温まらないか。寝るまでにまだ少しばかり暇だろう」
その艶めかしい薔薇のような深紅の瞳とは裏腹に、優しい声色を向けられ、私は素直にこくんとうなずいた。
「ルシファー…」
「ふぇえ?!る、ルシファー?!い、いつの間に?!」
恥ずかしさがどんどん増してきて、顔に血が上るのを感じる。
ベールはルシファーに気付くも、むしろ抱きしめる力を強めた。
「べ、ベール…?」
「おや。お前たちはそんな関係だったのか。では、お邪魔虫は帰ろうとするかな」
口元を歪め、愉快そうに喋るも、どこかその声色に棘を感じた。
「ルシファー…?」
「ああ。風呂上りだろうから、キッチンで水でも飲んできたらどうだ?」
「そうだな。お前に言われなくても、そうするつもりだ」
数秒、ルシファーとベールの間に重苦しい空気が流れる。
私はこの格好のせいもあり、なんだか言葉を発するのを躊躇ってしまった。
ルシファーは一度も私に目をくれることもなく、そのままキッチンへと向かっていった。
ルシファーが去ると、ベールは抱きしめるのをやめ、心配そうに私の顔を覗き込んだ。
「すまない。痛くなかったか?」
その声に、私は首を左右に振った。
「ううん、大丈夫…」
なんでベールは抱きしめたのか。そして、ルシファーが声を掛けた途端、なぜ力を強めたのか。
疑問が残る一方だが、今のこの空気で聞くにはあまりにも重すぎた。
「立ち話が長くなってしまったな。湯冷めしてしまうだろうから、なにか温かいものでも飲むといい」
ベールの瞳が一瞬揺らいだが、すぐさま笑顔で私の頭に大きな掌を乗せた。
「あ、う、うん…そうするね!ベールも私の話に付き合ってくれてありがとう!」
「そんなのお互い様だ。ああ、そうだ。また美味しそうな店を見つけたから、今度の放課後、食べに行かないか?」
いつもの調子に戻り、よだれを垂らすベール。
私はホッと安堵し、普段の調子で返した。
「うん!すっごく楽しみにしてる!」
ベールも微笑みながら、手を左右に振り、私に背を向けて部屋へと戻っていった。
「…キッチン…か…」
言われてきたものの、少し歩いているうちに頭が回ってきたのか、ルシファーもキッチンに向かっていったことを思い出した。
「…いや、でも、あれだよね、外国のドラマとかだと、挨拶にハグをするなんて普通みたいだし…あれも悪魔流のなにか…なんだよね…」
あの時のことを思い出し、なぜか胸が高鳴るような、背徳のような謎の感覚に襲われ、言い訳のような独り言が止まらなくなってくる。
「べ、別にベールが私に特別な感情があるとかではなくて、ベールは素直だからスキンシップも素直っていうか…。アスモなんか普通に抱き着いてくるわけだし…」
「なにぶつぶつ言ってるんだ?」
俯いて歩く私の額に、熱い何かが当たる。
「あっつう?!」
「下を向いて独り言とは。一瞬レヴィかと思ったぞ?」
反射的に顔を上げると、そこには口元を微かに歪めたルシファーの姿があった。
両手には湯気の立つコップがあり、私の額にあたったのは、どうやらそれのようだ。
「い、いきなりびっくりするじゃない!いるなら声をかけてくれればいいのに!」
「お前が前も見ず、独りで会話してる方が悪い。正直、悪魔の俺でも怖かったぞ」
と、顔を左右に振りながら困り顔で溜息を吐いた。
とはいいつつも、絶対からかってる…。
「な、なによう。そんな日があってもいいじゃない」
「そんな日に出くわした俺が可哀そうだな。それはそうと、これを取りに来たんだろう?」
冗談めかして言った後、ルシファーが右手に持つコップを私の目の前に差し出した。
嗅いだことのある、懐かしい良い香りが、私の鼻孔をくすぐる。
「良い匂い…。牛乳みたいな匂いする…」
「まさしくそうだが?」
ルシファーからコップを受け取った後、びっくりしてルシファーを見る。
「…へ?」
その様子を楽しそうに眺め、ルシファーが左手のコップを少し上げた。
「お前からこの間、人間界の「牛乳」というものを温めたものが安眠効果にいいという話を聞いただろう?大掃除を始める前に、少し人間界に立ち寄り、物珍しいものを探していたとき、たまたま視界に入ってな」
言いながらも、香りを楽しむ。
「…どうだ。時間があるなら、俺の部屋で少し温まらないか。寝るまでにまだ少しばかり暇だろう」
その艶めかしい薔薇のような深紅の瞳とは裏腹に、優しい声色を向けられ、私は素直にこくんとうなずいた。