今日だけは。
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「はぁ~…気持ちよかった…」
シャワーでさっと流し、普段着に着替える。
魔界に来てから一番嬉しかったのは、人間界と同じくシャワーと浴室が付いていることだった。
嘆きの館がもともと人間界にあったこともあり、住み心地に抵抗はさほどなかった。
「…さて、食堂に行きますか」
まるで決戦に挑むがごとく、ごくりと喉を鳴らして戦場へと足を運ぶ。
食堂へと向かう途中、ベールが向かい側からやってきた。
「お、美香夜。さっき食堂にいなかったけど、大丈夫か?」
「あ、ベール!違うの。ルシファーと掃除してたら、全身汚れまみれになっちゃって…。ちょっと先にお風呂入ってたの」
「なるほど。だからお前から良い香りがするんだな。シャンプーの匂いとか、食べたくなる」
「…シャンプー食べたらお腹壊すから、絶対食べちゃだめよ…?」
よだれを垂らすベールに真剣に注意したところで、ふと思い出す。
「あ、そういやベールがここにいるってことは、もうみんな食事終えたの?」
「そうだ。だが、ルシファーと美香夜の姿が無くて、みんなで心配してたんだ。アスモからうっすら話は聞いてはいたがな」
ベールの表情から、本当に心配してくれていたのが伝わる。
感情表現をストレートに出せるところも、言葉の端端から心配してくれるのがわかるのも、ベールの素敵なところだと思う。
私は、そのベールの素直さに応えるべく、満面の笑みを向けた。
「心配してくれてありがとう!ルシファーは入浴前に分かれちゃったから、どこに行ったのかはわからないんだけど…」
自然とルシファーの部屋に目を向ける。
ここからだと、部屋にいるのかもわからない。
「あ、ところで、私の食事って残ってる?」
ベールに目線を戻すと、ベールが急に顔を曇らせる。
「…ごめん。つい、お腹が空いて」
「あー…そうだよね…。ううん、気にしないで!私が時間調節下手なせいだから!料理は美味しいうちに食べないと、作ったアスモに申し訳ないしね!」
「美香夜…。お前、いいやつだな」
一転、ベールの顔が霧が晴れたかのような晴れ晴れとした表情になった。
「はは、そうかな?ベールだから、素直になれるのかもしれないし」
「…ん?どういうことだ?」
「んー、なんていうか…。ベールが真っ直ぐに感情を伝えてくれるから、私も応じようと素直になれるっていうか…」
改めて、ベールの西日のような、心穏やかになる橙色の瞳を真っ直ぐ見つめる。
「ベールは太陽みたいだから、私も心がポカポカになるのです!」
「…」
ベールは私の表情を見たまま、固まってしまった。
「…え、ベール?あ、ご、ごめん…。悪魔に対して「太陽みたい」は禁句だったかな…」
「…ふふ」
焦って謝ると、ベールが硬直した表情からまた一転、今度は噴き出して笑った。
「え?!」
「あははは!いやなに、悪魔に対して「温かくなる」なんて、本当に面白いやつだな、と思って」
ベールがお腹を押さえて笑っている。
「お前はいつも笑わせてくれるな。人間にとって俺たちは、ただ「怖い」という感情しかないと思っていた。変わってるな、お前」
「そ、そんなに変わってるかな…。いや、私も最初、「怖い」としか感じなかったよ?でもここで過ごしているうちに、自分の気持ちは相手にも伝染するんだってことに気付いて、吹っ切れたというか…」
「伝染?」
「うん。怖いって感情で相手と接すると、それが相手にも伝わってそれ相応の感情で返ってくる。逆に、仲良くなりたいって思うと、相手も返してくれる」
なんとなく、ソロモンやシメオンの姿を思い出した。
「目は心の窓っていうけど、目だけじゃなくて、全身や声色にもそれは出てくると思うんだ。気配や、体の向き、息の吸い方とか…。ソロモンやシメオンは、私よりもこの世界に慣れてるのもあるんだろうけど、そういった負の感情が一切ない。むしろ、楽しんでるって感じ」
あの2人は、状況を楽しみ、俯瞰的な位置で物事を見てるようで、私にはないものを感じさせていた。
「そういうのを見てたら、私ももったいないって思って。帰してって嘆くんじゃなくて、折角のチャンスをここで使わなきゃ、いつ使うんだ!て気持ちになって」
ベールはうなずきながら、静かに私の話を聞いてくれている。
「そうしたら、自然と「私」になってた。借り物じゃなくて、自然体の私に。そうやって見方を変えたら、実はみんな優しいことに気付いてさ。それぞれ癖は強いけど、それは私もだし、それよりも良いところが上塗りしてるっていうか…うーん…なんていえばいいんだろう…」
私が悩んでいると、急に温かいものに包まれた。
「?!」
上を見上げると、ベールが私を抱きしめていた。
「…べ、べ、べ?!」
「…驚かせてすまない。だが、なんだか、こうしたくなった」
ベールが切なそうな顔をして、私の顔を覗き込む。
「あ、い、いや、その…た、確かにびっくりした…けど…」
恥ずかしすぎて、顔があげられない…。
「ふむ、お邪魔したかな?」
シャワーでさっと流し、普段着に着替える。
魔界に来てから一番嬉しかったのは、人間界と同じくシャワーと浴室が付いていることだった。
嘆きの館がもともと人間界にあったこともあり、住み心地に抵抗はさほどなかった。
「…さて、食堂に行きますか」
まるで決戦に挑むがごとく、ごくりと喉を鳴らして戦場へと足を運ぶ。
食堂へと向かう途中、ベールが向かい側からやってきた。
「お、美香夜。さっき食堂にいなかったけど、大丈夫か?」
「あ、ベール!違うの。ルシファーと掃除してたら、全身汚れまみれになっちゃって…。ちょっと先にお風呂入ってたの」
「なるほど。だからお前から良い香りがするんだな。シャンプーの匂いとか、食べたくなる」
「…シャンプー食べたらお腹壊すから、絶対食べちゃだめよ…?」
よだれを垂らすベールに真剣に注意したところで、ふと思い出す。
「あ、そういやベールがここにいるってことは、もうみんな食事終えたの?」
「そうだ。だが、ルシファーと美香夜の姿が無くて、みんなで心配してたんだ。アスモからうっすら話は聞いてはいたがな」
ベールの表情から、本当に心配してくれていたのが伝わる。
感情表現をストレートに出せるところも、言葉の端端から心配してくれるのがわかるのも、ベールの素敵なところだと思う。
私は、そのベールの素直さに応えるべく、満面の笑みを向けた。
「心配してくれてありがとう!ルシファーは入浴前に分かれちゃったから、どこに行ったのかはわからないんだけど…」
自然とルシファーの部屋に目を向ける。
ここからだと、部屋にいるのかもわからない。
「あ、ところで、私の食事って残ってる?」
ベールに目線を戻すと、ベールが急に顔を曇らせる。
「…ごめん。つい、お腹が空いて」
「あー…そうだよね…。ううん、気にしないで!私が時間調節下手なせいだから!料理は美味しいうちに食べないと、作ったアスモに申し訳ないしね!」
「美香夜…。お前、いいやつだな」
一転、ベールの顔が霧が晴れたかのような晴れ晴れとした表情になった。
「はは、そうかな?ベールだから、素直になれるのかもしれないし」
「…ん?どういうことだ?」
「んー、なんていうか…。ベールが真っ直ぐに感情を伝えてくれるから、私も応じようと素直になれるっていうか…」
改めて、ベールの西日のような、心穏やかになる橙色の瞳を真っ直ぐ見つめる。
「ベールは太陽みたいだから、私も心がポカポカになるのです!」
「…」
ベールは私の表情を見たまま、固まってしまった。
「…え、ベール?あ、ご、ごめん…。悪魔に対して「太陽みたい」は禁句だったかな…」
「…ふふ」
焦って謝ると、ベールが硬直した表情からまた一転、今度は噴き出して笑った。
「え?!」
「あははは!いやなに、悪魔に対して「温かくなる」なんて、本当に面白いやつだな、と思って」
ベールがお腹を押さえて笑っている。
「お前はいつも笑わせてくれるな。人間にとって俺たちは、ただ「怖い」という感情しかないと思っていた。変わってるな、お前」
「そ、そんなに変わってるかな…。いや、私も最初、「怖い」としか感じなかったよ?でもここで過ごしているうちに、自分の気持ちは相手にも伝染するんだってことに気付いて、吹っ切れたというか…」
「伝染?」
「うん。怖いって感情で相手と接すると、それが相手にも伝わってそれ相応の感情で返ってくる。逆に、仲良くなりたいって思うと、相手も返してくれる」
なんとなく、ソロモンやシメオンの姿を思い出した。
「目は心の窓っていうけど、目だけじゃなくて、全身や声色にもそれは出てくると思うんだ。気配や、体の向き、息の吸い方とか…。ソロモンやシメオンは、私よりもこの世界に慣れてるのもあるんだろうけど、そういった負の感情が一切ない。むしろ、楽しんでるって感じ」
あの2人は、状況を楽しみ、俯瞰的な位置で物事を見てるようで、私にはないものを感じさせていた。
「そういうのを見てたら、私ももったいないって思って。帰してって嘆くんじゃなくて、折角のチャンスをここで使わなきゃ、いつ使うんだ!て気持ちになって」
ベールはうなずきながら、静かに私の話を聞いてくれている。
「そうしたら、自然と「私」になってた。借り物じゃなくて、自然体の私に。そうやって見方を変えたら、実はみんな優しいことに気付いてさ。それぞれ癖は強いけど、それは私もだし、それよりも良いところが上塗りしてるっていうか…うーん…なんていえばいいんだろう…」
私が悩んでいると、急に温かいものに包まれた。
「?!」
上を見上げると、ベールが私を抱きしめていた。
「…べ、べ、べ?!」
「…驚かせてすまない。だが、なんだか、こうしたくなった」
ベールが切なそうな顔をして、私の顔を覗き込む。
「あ、い、いや、その…た、確かにびっくりした…けど…」
恥ずかしすぎて、顔があげられない…。
「ふむ、お邪魔したかな?」