鬼の手短編
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聖なる夜を目指して
鵺野先生……。
今度のクリスマス。一緒に過ごしませんか?
これじゃあ下心バレバレだ。
クリスマスの予定、空いてますよね?
嫌味だ。ならば、予定はありますか?とかだろうか。
そんな風に、お誘いの言葉をどう飾ろうか私は口の中で何度も練り直すうちに、もう22日の金曜日の放課後だ。
まもなく終業式だから、多くの先生も職員室に残り、通信簿の記入や、書類の整理に追われている。
これじゃあ鵺野先生に声をかけられない。
というか鵺野先生も鬼の形相で苦手なPCと向かい合っているから、声を掛けられる雰囲気ではない。
私はといえば、先程のような悩みを抱えながら、自分の席から鵺野先生に声を掛ける機会を伺っていたから………全く進んでいない。
これでは鵺野先生をお誘いするどころではない。23日もクリスマスイヴも出勤だ。それは避けたい。
「お疲れ様でーす」
「お先に失礼しますね」
そう言って同じ学年の先生達が帰り始め……
「お疲れ様です。鵺野先生もほどほどに」
「………………お疲れ、様で………す…」
鵺野先生の隣の律子先生も帰り支度を始める。
涙目で返事をする鵺野先生から進捗は芳しくないと見えた。
そうして気がつけば………
「………」
「………」
二人きりだった。
二人きりと気がつけば、心臓はどくどくと激しく脈打つ。
どうしよう。
声を掛けるなら今ではないか。
とはいえやる事は山積みだ。
「道明ぜんぜえ…………」
「………!?」
声がすぐ近くに聞こえたから、顔を上げれば向かいの席から前のめりで私を見るげっそりとした鵺野先生がいた。
私は驚きのあまり声も上げられず、ビクリと体が跳ねてしまった。
「ああ、すみません!驚かせるつもりは!!」
「いえ……私こそ大げさに驚いちゃって」
「珍しいですね、こんなに遅くまで残業だなんて」
「あ……えと、そう………ですね」
そこで鵺野先生は、ふっと表情を和らげ、微笑んできた。
私の胸はその優しい眼差しに胸が締め付けられて、上手く頭が回らない。
「終わりそうですか?」
「うーん……微妙なところですね」
「いやあ〜俺もそうなんですよ!」
二人して乾いた笑い声を上げてしまった。
「もう、今日はさっさと帰って土日で片付けちまおうかなって」
「そう…ですか………」
鵺野先生はもう帰ってしまう。
土日は出勤するらしい。
だから、もう先生をお誘いする意味はもう無い。
心が冷えていく。
でもお誘いしたところで、先生は断ることだって充分ある。
「………道明先生?」
何も言わない私に鵺野先生は心配そうに見つめてきた。
いけない。何か言わなくては。
「ああ、いえ。私もそうしようかなーって」
とっさに鵺野先生に合わせてしまった。
本当は土日まで引っ張りたくなかったから、鵺野先生をお誘いするしないに関わらず、何が何でも今日で終わらせるつもりだったのに。
鵺野先生はといえば、枕元に置かれたクリスマスプレゼントを発見した子どものように、表情が明るくなった。
それはもう眩しいくらい。
「本当ですか?!良かった!」
「良かった………?」
私の声にはっとして、鵺野先生は何かを取り繕うように「えー」とか「あー」とか言いながら困り果てた表情を浮かべていたが、やがて観念した様子で伏し目がちに笑う。
「えっと………道明先生とクリスマスイヴに会えないかなと………思ってまして」
「え?」
「半分諦めてたんですが………あ。嬉しくて涙が」
私は呆然と鵺野先生を見つめるしかできなかった。
「もし、もしも………明日で仕事を終わらせられたら………」
「今日で終わらせません?」
私の言葉に鵺野先生は顎が外れたかのように大口を開ける。
「えぇぇぇ!!!」
「だって、今日で終わらせたら明日も明後日もデートできるわけですよね?!」
「デ、デデデデェェトォォ!!」
しまった。
私は口を塞ぐ。
なんか、私だけ一歩進んだ発言をしてしまった。
でも言ってしまったのなら、もう退けない。
先生だって真っ赤になって、どこか嬉しそうだ。
「………デートじゃ、ないんですか?」
「デートです!!!デートしたいです!」
「じゃあ、今日で終わらせましょう!?」
「はい!!!」
「明日も明後日も、イルミネーションを見て、ランチもディナーも………お金がかかるので、私の家でケーキ食べませんか!?」
「見たいです!食べたいです!」
私達は何をしているのだろう。
顔が熱い。
真っ赤な顔をした大人二人が大声で週末の予定を約束している。
「って、道明先生の家でぇぇぇ!?」
「は、………はい」
つまりそういうことです。
あぁ、蚊の泣くような声ってこういう声なんだなぁと思いながら私は呟いた。
俯きながらぽりぽりと頭を掻く鵺野先生は、やがて顔を上げて私を見た。
すごく爽やかな笑みだ。
「さっさと終わらせましょう!」
足取り軽く、鵺野先生は自席へと戻っていく。
明日は何を着よう。
はやる胸を抑えて、私はキーボードを打ち続けた。
鵺野先生……。
今度のクリスマス。一緒に過ごしませんか?
これじゃあ下心バレバレだ。
クリスマスの予定、空いてますよね?
嫌味だ。ならば、予定はありますか?とかだろうか。
そんな風に、お誘いの言葉をどう飾ろうか私は口の中で何度も練り直すうちに、もう22日の金曜日の放課後だ。
まもなく終業式だから、多くの先生も職員室に残り、通信簿の記入や、書類の整理に追われている。
これじゃあ鵺野先生に声をかけられない。
というか鵺野先生も鬼の形相で苦手なPCと向かい合っているから、声を掛けられる雰囲気ではない。
私はといえば、先程のような悩みを抱えながら、自分の席から鵺野先生に声を掛ける機会を伺っていたから………全く進んでいない。
これでは鵺野先生をお誘いするどころではない。23日もクリスマスイヴも出勤だ。それは避けたい。
「お疲れ様でーす」
「お先に失礼しますね」
そう言って同じ学年の先生達が帰り始め……
「お疲れ様です。鵺野先生もほどほどに」
「………………お疲れ、様で………す…」
鵺野先生の隣の律子先生も帰り支度を始める。
涙目で返事をする鵺野先生から進捗は芳しくないと見えた。
そうして気がつけば………
「………」
「………」
二人きりだった。
二人きりと気がつけば、心臓はどくどくと激しく脈打つ。
どうしよう。
声を掛けるなら今ではないか。
とはいえやる事は山積みだ。
「道明ぜんぜえ…………」
「………!?」
声がすぐ近くに聞こえたから、顔を上げれば向かいの席から前のめりで私を見るげっそりとした鵺野先生がいた。
私は驚きのあまり声も上げられず、ビクリと体が跳ねてしまった。
「ああ、すみません!驚かせるつもりは!!」
「いえ……私こそ大げさに驚いちゃって」
「珍しいですね、こんなに遅くまで残業だなんて」
「あ……えと、そう………ですね」
そこで鵺野先生は、ふっと表情を和らげ、微笑んできた。
私の胸はその優しい眼差しに胸が締め付けられて、上手く頭が回らない。
「終わりそうですか?」
「うーん……微妙なところですね」
「いやあ〜俺もそうなんですよ!」
二人して乾いた笑い声を上げてしまった。
「もう、今日はさっさと帰って土日で片付けちまおうかなって」
「そう…ですか………」
鵺野先生はもう帰ってしまう。
土日は出勤するらしい。
だから、もう先生をお誘いする意味はもう無い。
心が冷えていく。
でもお誘いしたところで、先生は断ることだって充分ある。
「………道明先生?」
何も言わない私に鵺野先生は心配そうに見つめてきた。
いけない。何か言わなくては。
「ああ、いえ。私もそうしようかなーって」
とっさに鵺野先生に合わせてしまった。
本当は土日まで引っ張りたくなかったから、鵺野先生をお誘いするしないに関わらず、何が何でも今日で終わらせるつもりだったのに。
鵺野先生はといえば、枕元に置かれたクリスマスプレゼントを発見した子どものように、表情が明るくなった。
それはもう眩しいくらい。
「本当ですか?!良かった!」
「良かった………?」
私の声にはっとして、鵺野先生は何かを取り繕うように「えー」とか「あー」とか言いながら困り果てた表情を浮かべていたが、やがて観念した様子で伏し目がちに笑う。
「えっと………道明先生とクリスマスイヴに会えないかなと………思ってまして」
「え?」
「半分諦めてたんですが………あ。嬉しくて涙が」
私は呆然と鵺野先生を見つめるしかできなかった。
「もし、もしも………明日で仕事を終わらせられたら………」
「今日で終わらせません?」
私の言葉に鵺野先生は顎が外れたかのように大口を開ける。
「えぇぇぇ!!!」
「だって、今日で終わらせたら明日も明後日もデートできるわけですよね?!」
「デ、デデデデェェトォォ!!」
しまった。
私は口を塞ぐ。
なんか、私だけ一歩進んだ発言をしてしまった。
でも言ってしまったのなら、もう退けない。
先生だって真っ赤になって、どこか嬉しそうだ。
「………デートじゃ、ないんですか?」
「デートです!!!デートしたいです!」
「じゃあ、今日で終わらせましょう!?」
「はい!!!」
「明日も明後日も、イルミネーションを見て、ランチもディナーも………お金がかかるので、私の家でケーキ食べませんか!?」
「見たいです!食べたいです!」
私達は何をしているのだろう。
顔が熱い。
真っ赤な顔をした大人二人が大声で週末の予定を約束している。
「って、道明先生の家でぇぇぇ!?」
「は、………はい」
つまりそういうことです。
あぁ、蚊の泣くような声ってこういう声なんだなぁと思いながら私は呟いた。
俯きながらぽりぽりと頭を掻く鵺野先生は、やがて顔を上げて私を見た。
すごく爽やかな笑みだ。
「さっさと終わらせましょう!」
足取り軽く、鵺野先生は自席へと戻っていく。
明日は何を着よう。
はやる胸を抑えて、私はキーボードを打ち続けた。