鬼の手短編
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これはほんめい
「あ!道明先生ぇ?!き、ききき奇遇ですね!一緒に帰りませんか?!」
「はい」
教員用の昇降口には鵺野先生がいた。
彼は職員室をとっくに出ていたはずなのに、まだ帰っていなかったのは何故だろう。
一緒に帰りたいのであれば、一声掛けてくれれば良かったのに。
正門を出て、駅までの道のりを歩く。
鵺野先生は落ち着かない様子で、見慣れた道を物珍しそうにキョロキョロ見回していたり、ポケットに手を入れたり出したりしている。
「いやぁー、今日、飼育小屋でヒヨコを見ましてね!チョコチョコ、歩いててそれがもう可愛くて可愛くて。チョコ、チョコと…」
「それは可愛いですね」
「………」
私達の間に冷たい風が吹き抜けた。
「そういえば!副校長先生、今日はいらっしゃらないなと思ったら、研修会でチョッコー直帰だったんですね」
「そういえば、いらっしゃいませんでしたよね」
「………」
冬の空気は冷たいから、風が吹き付ければ頰も耳もビリビリ痛くなる。
「そういえば童守駅前にチョーコー層ビルの商業施設ができるとか」
よくもまあそれだけチョコに絡む言葉と話題を思いつくものだ。
「………鵺野先生」
「は、はい!!」
鵺野先生の顔は紅い。
「私にだって……心の準備というものがありまして」
そんなに急かされたら、今出さざるを得ない。
私はバックから目的のものを探るけれど、手も息も震え出す。
赤い正方形の包み紙を見つけ、私は足を止めて大きく深呼吸をした。
鵺野先生を見れば、大きな瞳で私を不安そうにじっと見つめていた。
「これを……先生に」
太い眉の下の吊り目気味の丸い瞳を見つめながら、私ははっきりと告げた。
「バレンタインのチョコです」
すると先生はみるみるうちに頰が真っ赤に染まり、口元が緩み始めた。
チョコを受け取る先生の手は震えていて、同じように私の手も震えていることなど気付いていないようだった。
「う………うううう」
突然、鵺野先生は腕を目元に押し付けて泣き始めてしまった。
「まさか……まさかの、俺宛のチョコレート……」
「本命ですよ」
「そう…!本命のチョコレート!!………ん?ほんめい………本命?!」
私は歩き始めた。
慌てて後を追いかける鵺野先生は、穴があくほどに私を見ている。
「えっと、今何て」
「透明ですよ、って言ったんです」
「え………あ……透明…………透明?え?!…」
「というのは嘘で」
ずっこける鵺野先生をよそに、私は目を合わせず、早足で歩く。
「聞こえたままの言葉で……合ってますよ」
「………え………え?………え?!」
いまいち受け入れきれていない鵺野先生に対して、私はこれ以上何も言わない。
あっという間に駅に着き、私はパスケースを取り出した。
今日はバレンタインデー。
色々なところでドラマがあるのだろう。
駅前では大学生らしきカップルが見つめ合い、甘い空気を醸し出していた。
「では………お疲れ様です」
返事が返ってこない。
鵺野先生は真っ赤な顔のまま、ぼーっと私を見て改札前で立ち尽くしていたが、はっと我に返った。
「あ!あの!」
ぐいと腕を掴まれた。
突然のことに頭が真っ白になる。
「ホワイトデー……期待しててください」
さっきまでの初心な反応はどこへやら。
にっと笑う鵺野先生に、私は何て返事をすればいいのか分からなかった。
「あ!道明先生ぇ?!き、ききき奇遇ですね!一緒に帰りませんか?!」
「はい」
教員用の昇降口には鵺野先生がいた。
彼は職員室をとっくに出ていたはずなのに、まだ帰っていなかったのは何故だろう。
一緒に帰りたいのであれば、一声掛けてくれれば良かったのに。
正門を出て、駅までの道のりを歩く。
鵺野先生は落ち着かない様子で、見慣れた道を物珍しそうにキョロキョロ見回していたり、ポケットに手を入れたり出したりしている。
「いやぁー、今日、飼育小屋でヒヨコを見ましてね!チョコチョコ、歩いててそれがもう可愛くて可愛くて。チョコ、チョコと…」
「それは可愛いですね」
「………」
私達の間に冷たい風が吹き抜けた。
「そういえば!副校長先生、今日はいらっしゃらないなと思ったら、研修会でチョッコー直帰だったんですね」
「そういえば、いらっしゃいませんでしたよね」
「………」
冬の空気は冷たいから、風が吹き付ければ頰も耳もビリビリ痛くなる。
「そういえば童守駅前にチョーコー層ビルの商業施設ができるとか」
よくもまあそれだけチョコに絡む言葉と話題を思いつくものだ。
「………鵺野先生」
「は、はい!!」
鵺野先生の顔は紅い。
「私にだって……心の準備というものがありまして」
そんなに急かされたら、今出さざるを得ない。
私はバックから目的のものを探るけれど、手も息も震え出す。
赤い正方形の包み紙を見つけ、私は足を止めて大きく深呼吸をした。
鵺野先生を見れば、大きな瞳で私を不安そうにじっと見つめていた。
「これを……先生に」
太い眉の下の吊り目気味の丸い瞳を見つめながら、私ははっきりと告げた。
「バレンタインのチョコです」
すると先生はみるみるうちに頰が真っ赤に染まり、口元が緩み始めた。
チョコを受け取る先生の手は震えていて、同じように私の手も震えていることなど気付いていないようだった。
「う………うううう」
突然、鵺野先生は腕を目元に押し付けて泣き始めてしまった。
「まさか……まさかの、俺宛のチョコレート……」
「本命ですよ」
「そう…!本命のチョコレート!!………ん?ほんめい………本命?!」
私は歩き始めた。
慌てて後を追いかける鵺野先生は、穴があくほどに私を見ている。
「えっと、今何て」
「透明ですよ、って言ったんです」
「え………あ……透明…………透明?え?!…」
「というのは嘘で」
ずっこける鵺野先生をよそに、私は目を合わせず、早足で歩く。
「聞こえたままの言葉で……合ってますよ」
「………え………え?………え?!」
いまいち受け入れきれていない鵺野先生に対して、私はこれ以上何も言わない。
あっという間に駅に着き、私はパスケースを取り出した。
今日はバレンタインデー。
色々なところでドラマがあるのだろう。
駅前では大学生らしきカップルが見つめ合い、甘い空気を醸し出していた。
「では………お疲れ様です」
返事が返ってこない。
鵺野先生は真っ赤な顔のまま、ぼーっと私を見て改札前で立ち尽くしていたが、はっと我に返った。
「あ!あの!」
ぐいと腕を掴まれた。
突然のことに頭が真っ白になる。
「ホワイトデー……期待しててください」
さっきまでの初心な反応はどこへやら。
にっと笑う鵺野先生に、私は何て返事をすればいいのか分からなかった。