長編「今度はあなたを」
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リノリウムの床が夕陽によって眩く光る金色の空気の中で、落ちていた彼のハンカチ。
震える手で少女はそれを拾い、「これ…」と蚊の鳴くような声と共に彼に渡した。
そんな黄昏の記憶。
彼はポカンとしていた。
やがて自分はハンカチを落とし、少女が拾って手渡してくれたと気づいて、「ありがとう」と微笑んだ。
少女は、痛みを堪えるような笑みを浮かべると、踵を返して金色の廊下を走っていった。
少女は走り去る刹那、視界の端に移った少年の寂しげな瞳がいつまでも胸の奥に残っていた。