愛を語る
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野菜を刻む小気味よい音が響く。
食堂のおばちゃんがご実家に帰られているからお昼は焼き飯にしようと大量の野菜を刻んでいたところ、大木先生がひょっこりやって来てそのまま手伝っていただいている。
「全くやんなっちゃいますよ!なんであんなに嫌味が言えるんですかね、安藤先生は?!あのツヤッツヤの頰が、も~憎たらしい~」
「野村はキザ野村はキザ野村はキザ!いいか、野村の傍にいるとキザが移るぞ?!」
口も手も盛大に動かす。
「この間なんて『おやぁ?また一年は組は補習ですかぁ?一年は組には補習のチケットがあるという噂は本当だったのですね』ですって!意味分かんない!あぁぁ腹立つぅぅ!」
「野村はわしに負けるのを恐れて最近は杭瀬村に来ない!だからこうして来てやったのだ!なのに奴は校外授業だと?やはりわしから逃げておるのだ!」
大木先生は野村先生について。
私は安藤先生について。
それぞれの不満をぶつけながら野菜を刻む。
野菜達はそれはそれは細かく刻まれていったのだが、同時に私達の手は止まり、顔を見合わせた。
同じ事を思ったのかもしれない。
「野菜に失礼だな。わしは野菜には感謝しながら切っとったが」
「私だって感謝しながら切ってましたけど」
無言で頷き合い、そして再び、野菜を刻んだ。
「ラッキョウは素晴らしい。うまい!長持ち!元気が出る!」
「半助さんはカッコいい…可愛い…素敵」
不思議なことに切る音さえ変わった気がするし、刻まれていく野菜達の色艶さえ違っている気がする。
「杭瀬村はいいぞ。ラビちゃんもケロちゃんも待っている。また来い!」
「今度、一年は組の農業体験の時に行く予定ですから」
「おう、おう、待っとる。その時はわしの育てた野菜をまた食え!」
「待ってください。農作業する半助さんが見られるんですか?ラビちゃんとケロちゃんと戯れる半助さんも……あはは、それは楽しみかも」
「お前は動機が不純すぎる!」
大木先生は包丁を置いて勢いよく私に指差してきた。
「土井先生も大変な奴に好かれたもんじゃ」
「そう思います」
そしてお昼時にやってきた半助さんの顔は心なしか引き攣っていた。
考えられるのは二つ。
大木先生がチクったか。
半助さんがあの場にいたのか。
「ありがとう。いただくよ…」
「召し上がれ………」
カウンターを挟んだ私達には微妙な空気が漂っていた。