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困ったことに今朝は布団から出られない。
尋常じゃない寒さに私はただただ布団の中で身を縮め、夜のような暗い朝のなか、一人震えていた。
おかしい。
高校生の時はこんなことは無かった。
半助さんと早朝ランニングをしたではないか。
その年は暖冬だったに違いない。
きっとそうだ。
難なく起き上がれたのは、気候のせい。
さて、早く起きて支度をしなければ。
「……半助さん、起こしに来てくれないかな」
「呼んだかい?」
音もなく枕元に降り立つ半助さんに、私は無言で布団から跳ね起きた。
外気に晒された体は忽ち冷たくなっていく。
「ううっ」
私はたまらず掛け布団に包まり震えた。
「どうした。朱美にしては珍しい」
正座してニコニコと微笑む半助さんの格好は、網シャツに忍び装束。
夏と変わらない。
見ているだけで寒くなる。
「寒くないんですか?!」
「朱美が寒がりすぎるんだ」
愉快そうに笑う半助さんは、なんと布団を剥がそうと手を掛けた。
「ほら、早く着替えよう」
「やめてください!」
「こういうのは勢いだよ」
力で敵うはずがなく、包まった布団は開かれてしまった。
そしてそのまま、掛け布団の上に二人して倒れ込む。
私は半助さんの下敷きに。
半助さんは私に覆いかぶさり、忽ち唇を奪いにかかった。
事故では無く、半助さんの故意だ。
「朝っぱらから」
と呆れる私だが、口端はどうしてもつり上がってしまい、呆れるフリをしているのだとバレてしまう。
半助さんもそんな私を揶揄うことなく、柔らかな笑みを返してくれた。
「勢いで、つい、ね」
囁きと共に抱き締められ、半助さんの温もりが伝わる。
「ほら、もう起きないと」
半助さんはそう言って起き上がり、手を差し出してきた。
束の間の温もりが、私に起きる勇気を与えてくれたのだった。