本編
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新聞社のドアを開けた瞬間、熱の篭った空気が体を包む。
「何だよこの暑さは・・・」
カルロスが苦しそうに呻く。
僕は入り口付近に消防車が止まっていたのを思い出した。
「火事になってるんじゃないかな」
「まぁ、だろうな」
重い防火シャッターがぎしぎしと音を立てて上がる。
その奥には思った通り、燃え盛る火の海が広がっていた。
「行けるか?」
「行くよ」
僕は先頭を切って炎の中に飛び込んだ。
***
2階のオフィスは火の手が薄く、あまり息苦しくは無かった。
しかし新聞社という場所が場所だけに、紙が大量にある。火の粉が爆ぜているのを見ると、ここもそう長くはないことが伺えた。
僕はその大量の紙や本が積まれた中に小さな手帳を見つけ、適当なページを開いた。乱雑な走り書きの文字が延々と並べられている。
内容は「人食い病」・・・恐らく、ゾンビ化の事についてだろう。僕は最初から読み通すことにした。
ところどころに赤黒い血が付着していて、ページをめくる度にぺりぺりと音がする。
読み進めていくと、どうやら軍隊に町を閉鎖され生存者の確認すらおぼつかなくなったこの記者は自分の職業を全うすべく最期まで真実を追い求め、そして一つの答えを導き出した。
「空気感染ではない・・・直接的な何か、か」
僕は初めてこの町に来たときのことを思い出した。
全身に食いちぎられた跡のあるゾンビが襲い掛かってきて・・・そう、恐らくはその「食いちぎられた」が「直接的な」感染経路なのだろう。
ぞっとする反面、空気感染ではないということが分かり少し安心した。
「おい、これ見ろよ」
カルロスが言う。
差し出されたのは一枚の写真だった。
「これは・・・警官隊だ」
見覚えのある制服の隊員が、血に塗れて倒れている。
「・・・俺の部隊も同じようにされちまった」
「この町に自分達以外に生存者はいない」という考えが、物凄い速度で確信へと姿を変える。
「・・・戻ろう、ここも直に火が回る」
「そうだな」
僕達はオフィスを後にした。
***
カルロスを先頭に階段を下りていく時だった。
階段の踊り場に、小さなガラスの窓のついたドアが一つ。
ふと嫌な予感がして、僕はカルロスの襟首を思いっきり引っ張った。
「危ない!!」
「ぐぅっ!?」
カルロスはその場に尻餅をついた。
首を擦りながら立ち上がり、僕を睨み付ける。
「て、てめぇ何を」
「え、えっと」
しかめっ面で咳き込むカルロスの背後で、ドアのガラスが小さな音を立てて割れる。
「・・・これが危ないってか?」
「何となく進んじゃいけない気がして」
「じゃあ待てとか止まれとか、口で―――うおっ!?」
呆れた様子で先に進もうとしたカルロスの眼前で、ドアが爆音と共に吹き飛んだ。
「うわぁ!!」
僕とカルロスは顔を腕で覆い隠した。
そろりと顔を上げると、粉々になったドアと今まで閉ざされていた部屋から燃え上る火炎が確認できた。
「・・・バックドラフト」
「な、なんだそりゃぁ」
火災現場に見られる現象。
密閉した空間で不完全燃焼の火災が起こると大量の一酸化炭素が発生し、そこに酸素を急激に送り込むと爆発を引き起こす。
恐らくは人の体など、一瞬で木っ端微塵になる。
そう説明すると、カルロスは青い顔で、
「・・・俺が悪かった」
「いえいえ」
僕は肩をすくめて苦笑する。
急いで新聞社を出た。
「何だよこの暑さは・・・」
カルロスが苦しそうに呻く。
僕は入り口付近に消防車が止まっていたのを思い出した。
「火事になってるんじゃないかな」
「まぁ、だろうな」
重い防火シャッターがぎしぎしと音を立てて上がる。
その奥には思った通り、燃え盛る火の海が広がっていた。
「行けるか?」
「行くよ」
僕は先頭を切って炎の中に飛び込んだ。
***
2階のオフィスは火の手が薄く、あまり息苦しくは無かった。
しかし新聞社という場所が場所だけに、紙が大量にある。火の粉が爆ぜているのを見ると、ここもそう長くはないことが伺えた。
僕はその大量の紙や本が積まれた中に小さな手帳を見つけ、適当なページを開いた。乱雑な走り書きの文字が延々と並べられている。
内容は「人食い病」・・・恐らく、ゾンビ化の事についてだろう。僕は最初から読み通すことにした。
ところどころに赤黒い血が付着していて、ページをめくる度にぺりぺりと音がする。
読み進めていくと、どうやら軍隊に町を閉鎖され生存者の確認すらおぼつかなくなったこの記者は自分の職業を全うすべく最期まで真実を追い求め、そして一つの答えを導き出した。
「空気感染ではない・・・直接的な何か、か」
僕は初めてこの町に来たときのことを思い出した。
全身に食いちぎられた跡のあるゾンビが襲い掛かってきて・・・そう、恐らくはその「食いちぎられた」が「直接的な」感染経路なのだろう。
ぞっとする反面、空気感染ではないということが分かり少し安心した。
「おい、これ見ろよ」
カルロスが言う。
差し出されたのは一枚の写真だった。
「これは・・・警官隊だ」
見覚えのある制服の隊員が、血に塗れて倒れている。
「・・・俺の部隊も同じようにされちまった」
「この町に自分達以外に生存者はいない」という考えが、物凄い速度で確信へと姿を変える。
「・・・戻ろう、ここも直に火が回る」
「そうだな」
僕達はオフィスを後にした。
***
カルロスを先頭に階段を下りていく時だった。
階段の踊り場に、小さなガラスの窓のついたドアが一つ。
ふと嫌な予感がして、僕はカルロスの襟首を思いっきり引っ張った。
「危ない!!」
「ぐぅっ!?」
カルロスはその場に尻餅をついた。
首を擦りながら立ち上がり、僕を睨み付ける。
「て、てめぇ何を」
「え、えっと」
しかめっ面で咳き込むカルロスの背後で、ドアのガラスが小さな音を立てて割れる。
「・・・これが危ないってか?」
「何となく進んじゃいけない気がして」
「じゃあ待てとか止まれとか、口で―――うおっ!?」
呆れた様子で先に進もうとしたカルロスの眼前で、ドアが爆音と共に吹き飛んだ。
「うわぁ!!」
僕とカルロスは顔を腕で覆い隠した。
そろりと顔を上げると、粉々になったドアと今まで閉ざされていた部屋から燃え上る火炎が確認できた。
「・・・バックドラフト」
「な、なんだそりゃぁ」
火災現場に見られる現象。
密閉した空間で不完全燃焼の火災が起こると大量の一酸化炭素が発生し、そこに酸素を急激に送り込むと爆発を引き起こす。
恐らくは人の体など、一瞬で木っ端微塵になる。
そう説明すると、カルロスは青い顔で、
「・・・俺が悪かった」
「いえいえ」
僕は肩をすくめて苦笑する。
急いで新聞社を出た。