本編
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路地裏はひんやりとした空気に満たされている。
夜ということもあり、少し寒いくらいだった。
角で死体を見つけた。
しかしこれまでの全身を噛みちぎられたものとは違い、比較的綺麗な状態で息絶えていた。
胸ポケットに何かが入っている。
「これは・・・」
内容は、この人物が書いたであろう日記。
どうやら町を調査するうちに希望を失い、自らの命を絶ったようだ。
少し気になるところがあった。
文章の最後に「死体が動き出さないことを願って」とあるが、死体の状態からして結構な日数が経っているはずだが、不自然な腐敗は見受けられない。
「死人が無条件に動き出すわけじゃないのか?」
あのゾンビ達は死後ではなく、その直前・・・死にながらゾンビと化しているとでもいうのだろうか。
だとすると恐らく何らかのウィルス、もしくは生物兵器か。
少しずつ、事の真相が見えてきた気がした。
何にせよ、生存者の保護兼情報収集が今の僕に出来ることだ。
ふと、目の端に何かを捉える。
音こそ聞こえなかったが、確かに何かが凄い速さで壁を這っていった。
背筋に冷たいものが流れる。
嫌なものを感じた僕は駆け足で路地を抜けた。
駐車場だろうか、車やバスが大破している。そして、異常なほどの血溜まりの数。
恐らく、車から降りて逃げ出したところを―――
「これに襲われた、か・・・」
ゾンビ化して頬や腹の肉が腐り落ちたドーベルマンが3匹、僕を取り囲むようにして周りをぐるぐると回っている。
警察署でも出会ったが、腐敗しても衰えない俊敏さと鋭い牙、そして確実に命を奪う為に首に食いつこうとする本能はゾンビ達よりかなりたちが悪い。
正面に一匹、後ろに二匹。僕は静かにハンドガンを抜く。
そして大きく息を吸い、叫んだ。
「来ぉいっ!」
今までの経験で、発砲するか声をあげるかの動作をしないと襲い掛かってこないということが分かっていた。
恐らく、この犬達は音に反応する。
案の定、犬達が一斉に飛び掛かってきた。
慎重に狙いを定める。
「(まず敵を一方に集めるべきだな)」
正面の犬に1発当て、怯ませる。
そのまま素早く身を低くすると、背後にいた二匹が頭上を飛び越えた。
「動くなよ」
そう言って僕が取り出したのは、鈍い銀色の長い銃身。
ベネリM3Sというショットガンだ。
弾が広範囲に拡散、破裂するという面の破壊に長けた銃。
続けざまに三回、発砲とリロードを繰り返す。
ポンプアクション式の為に連射性能は低いものの、散弾はゾンビ犬に反撃を与える暇を与えずその息の根を止めた。
小さなため息をついた僕の耳に聞こえたのは、間隔の短い銃声。
「まさか」
急いで銃声のした方へ向かったが、人影は無い。
そしてまた銃声。
僕は導かれるようにしてその後を追う。
***
「・・・ここからはダウンタウンか」
壁に貼ってある地図を破り取った。
銃声を追い続け、いつの間にか随分進んできてしまったようだ。
工事中だったのだろうか、あちこちに鉄パイプや木材が置いてある。
そして、無数の切り傷のある死体。喉元には穴のような刺し傷があった。
「・・・?」
死体があるのは既に当たり前だったがこの死体、傷口自体は多いがどう見ても一番大きな傷―――穴の開いた首からの出血が異常に少ない。
詳しい調査をしようとしたが、蛍光灯が今にも消えそうに点滅していた。薄暗くてよく見えない。
―――音がする。
かさかさと乾いた音だ。落ち葉が擦れ合うような、小さな虫が這うような音が少しずつ近付いてきている。
音が止まると同時に、奇妙な物体が姿を現した。
「うわっ!」
虫だった。
かなりの大きさ・・・恐らく、人間より少し大きいくらいだろう。
6本の足を動かし、僕の方へゆっくり向かってくる。
あまり敵意は感じないが、近付かれていい気はしない。
僕はあまり刺激しないようにそっと横を摺り抜けようとした。
「あ」
足の爪先を、鉄パイプにぶつけた。
その衝撃で積み上げられていたパイプが轟音を立てて崩れていく。
「・・・ごめん」
虫は何を思ったか、突然二本の足で立ち上がった。
「ひぃ!?」
甲高い咆哮を上げながら、こちらに向かって走り寄り、僕の体を押さえつけた。上の二本の足は肩に、真ん中の二本の足は腰にがっちりと固定する。
キイキイと鳴きながら、細長い管のような口を突き立てようとしているようだった。
出血の少ない死体、細長い管のような口。
「―――吸血鬼ってとこか!!」
僕は咄嗟に足元の鉄パイプを足で掬い上げ、頭と思われる部分に突き刺した。
緑色の体液が吹き出し、耳をつんざくような鳴き声をあげる。
後ろにひっくり返り、ビクビクと痙攣する虫の腹に散弾を撃ち込んだ。
「一体・・・どうなってるんだ」
何度言ったか分からない台詞。
僕が真実を知るには、この町から生きて脱出しなくてはならない。
一縷の希望を、間隔の短い銃声の主に託した。
***
僕は引き続き銃声を追う。
距離は確実に縮まっているようで、先程一瞬だけ姿が見えた。
「待ってください!」
しかし、何度叫んでも答えが返ってくることは無かった。
[Boill13]
銃声は途絶えてしまい、姿も無い。合流を諦めつつあった僕はこのレストランにたどり着いた。
店内はやわらかな色の照明と暖かい空気に包まれていて、久々に一息つける雰囲気だ。
腰を落ち着けて一休みしたいところだが、そんな暇はない。僕は店内の調査を開始した。
珍しいことに死体は無い。少なくとも新たな敵はいないようだ。
地下室、というより貯蔵室のようなものへの道を発見した。
重い金属の蓋のような扉を開け、中を覗く。
結構な高さがあった。梯子が降りていて、床は水で満たされているようだ。
「やっぱり降りないと駄目かな」
梯子に足をかけ、下に降りようとしたその時。
背後に何かの気配を感じた僕は梯子から飛びのき、素早くハンドガンを構える。
「待てって!俺は敵じゃねぇよ!」
驚いたような声で青年が言う。
短い茶髪に、緑色の制服に包んだ均整の取れた体つき。
そして何より、手に持っている軍用の自動小銃。
「貴方は・・・カルロスさん?」
「その通り。って何で知ってんだ?」
「ああ、それは―――」
空気が震える。
聞き覚えのある咆哮。
何かが重い足音をたててこちらへ走ってくる。
僕の脳裏に過ぎるのはただ一人。
「もしかしてあの子じゃ!」
警察署で待っていてくれと頼んだはずなのに。
敵が増えてきたのか、それとも僕が処理しきれていなかったのか。
それに耐え切れずに僕を追ってきてしまったのだろうか。
音がする方へ向かおうとした僕の肩をカルロスが掴んだ。
「おい!何やってんだ逃げるぞ!」
「え?何で?」
「死にたいのか!」
「いやだってあの子は・・・」
「いいから降りろ!」
カルロスの気迫に押され、僕は梯子を降りた。
水に足首を搦め捕られうまく歩けない。
そして、やはり角に死体がある。あまり古くは無い様子だ。
しかしそんな事より気になる事があった僕は、遅れて降りてきたカルロスに問い掛けた。
「何で逃げたの?」
「何でって・・・お前も聞いたろ!あの雄叫び、新手の化け物だ」
「化け物なんて・・・あの子はそんな―――わぁ!?」
突然上から物凄い量の水が流れ込んできた。
老朽化した水道管が破裂したようで、物凄い勢いで水位が上がってくる。
「話は後だ!」
僕を押し退けて先へ進むカルロス。彼のこの行動力が惨事を生き抜いた秘訣なのだろう。
僕はカルロスに内緒で梯子の下に行き、上を見上げた。
そこには警察署で出会ったあの子が、こちらを覗きこんでいる姿があった。体格の大きさから見るに、どうも入れないらしい。
「おーい、こっから出られそうだ!」
奥でカルロスが呼んでいる。
僕は「ごめん」というジェスチャーをして、その場を離れた。
***
通風孔から外に脱出した僕たち。最初に口を開いたのはカルロスだった。
「俺はカルロス・オリヴェイラ。アンブレラのバイオハザード対策部隊のカルロス伍長だ」
「アンブレラ!?」
思わぬところから思わぬ言葉が飛び出したものだ。
「聞いた事あるだろ?俺はそのアンブレラに命令されて君達市民を助けに来たんだ」
「何で?」
「何でって、俺は雇われの身なんだから詳しくは分からん。何だってそんな事聞きたがる?」
「僕はアンブレラの調査をしにこの町に来たんだ」
「調査って・・・」
「僕は如月聖、S.T.A.R.S.の一員。洋館事件を追ってる最中なんだけど、今は生存者の保護を優先してる」
カルロスはあーあー、と頷きながら言った。
「洋館事件、知ってるぜ。洋館にゾンビが溢れかえってたんだろ?この町みたいに」
「・・・そうなの?」
「知らないのかよ、調査してんのに」
「そうなんだよなー、どうもそれに関するデータが根こそぎ削除だか隠蔽だかされてるみたいなんだ」
「ふーん、まあ俺の飼い主の話なんてどうでもいいけどよ。とりあえず保護って目的は同じなんだ、一緒に行動した方が安全だな。さて、どっから行くか・・・」
「だったら新聞社がいいと思うんだ。この町の情報を知っておきたい」
「あいよ、了解」
結構重要な話をしたと思ったのに軽く流されたことは少々寂しかったが、飄々とした彼の雰囲気は楽しかった。
その後一言二言交わして、僕たちは目的地へ向かう。
「・・・ごめんね・・・」
僕はそうぽつりと呟く。
僕を見下ろすあの子の淋しげな顔が、どうしても頭から離れなかった。
夜ということもあり、少し寒いくらいだった。
角で死体を見つけた。
しかしこれまでの全身を噛みちぎられたものとは違い、比較的綺麗な状態で息絶えていた。
胸ポケットに何かが入っている。
「これは・・・」
内容は、この人物が書いたであろう日記。
どうやら町を調査するうちに希望を失い、自らの命を絶ったようだ。
少し気になるところがあった。
文章の最後に「死体が動き出さないことを願って」とあるが、死体の状態からして結構な日数が経っているはずだが、不自然な腐敗は見受けられない。
「死人が無条件に動き出すわけじゃないのか?」
あのゾンビ達は死後ではなく、その直前・・・死にながらゾンビと化しているとでもいうのだろうか。
だとすると恐らく何らかのウィルス、もしくは生物兵器か。
少しずつ、事の真相が見えてきた気がした。
何にせよ、生存者の保護兼情報収集が今の僕に出来ることだ。
ふと、目の端に何かを捉える。
音こそ聞こえなかったが、確かに何かが凄い速さで壁を這っていった。
背筋に冷たいものが流れる。
嫌なものを感じた僕は駆け足で路地を抜けた。
駐車場だろうか、車やバスが大破している。そして、異常なほどの血溜まりの数。
恐らく、車から降りて逃げ出したところを―――
「これに襲われた、か・・・」
ゾンビ化して頬や腹の肉が腐り落ちたドーベルマンが3匹、僕を取り囲むようにして周りをぐるぐると回っている。
警察署でも出会ったが、腐敗しても衰えない俊敏さと鋭い牙、そして確実に命を奪う為に首に食いつこうとする本能はゾンビ達よりかなりたちが悪い。
正面に一匹、後ろに二匹。僕は静かにハンドガンを抜く。
そして大きく息を吸い、叫んだ。
「来ぉいっ!」
今までの経験で、発砲するか声をあげるかの動作をしないと襲い掛かってこないということが分かっていた。
恐らく、この犬達は音に反応する。
案の定、犬達が一斉に飛び掛かってきた。
慎重に狙いを定める。
「(まず敵を一方に集めるべきだな)」
正面の犬に1発当て、怯ませる。
そのまま素早く身を低くすると、背後にいた二匹が頭上を飛び越えた。
「動くなよ」
そう言って僕が取り出したのは、鈍い銀色の長い銃身。
ベネリM3Sというショットガンだ。
弾が広範囲に拡散、破裂するという面の破壊に長けた銃。
続けざまに三回、発砲とリロードを繰り返す。
ポンプアクション式の為に連射性能は低いものの、散弾はゾンビ犬に反撃を与える暇を与えずその息の根を止めた。
小さなため息をついた僕の耳に聞こえたのは、間隔の短い銃声。
「まさか」
急いで銃声のした方へ向かったが、人影は無い。
そしてまた銃声。
僕は導かれるようにしてその後を追う。
***
「・・・ここからはダウンタウンか」
壁に貼ってある地図を破り取った。
銃声を追い続け、いつの間にか随分進んできてしまったようだ。
工事中だったのだろうか、あちこちに鉄パイプや木材が置いてある。
そして、無数の切り傷のある死体。喉元には穴のような刺し傷があった。
「・・・?」
死体があるのは既に当たり前だったがこの死体、傷口自体は多いがどう見ても一番大きな傷―――穴の開いた首からの出血が異常に少ない。
詳しい調査をしようとしたが、蛍光灯が今にも消えそうに点滅していた。薄暗くてよく見えない。
―――音がする。
かさかさと乾いた音だ。落ち葉が擦れ合うような、小さな虫が這うような音が少しずつ近付いてきている。
音が止まると同時に、奇妙な物体が姿を現した。
「うわっ!」
虫だった。
かなりの大きさ・・・恐らく、人間より少し大きいくらいだろう。
6本の足を動かし、僕の方へゆっくり向かってくる。
あまり敵意は感じないが、近付かれていい気はしない。
僕はあまり刺激しないようにそっと横を摺り抜けようとした。
「あ」
足の爪先を、鉄パイプにぶつけた。
その衝撃で積み上げられていたパイプが轟音を立てて崩れていく。
「・・・ごめん」
虫は何を思ったか、突然二本の足で立ち上がった。
「ひぃ!?」
甲高い咆哮を上げながら、こちらに向かって走り寄り、僕の体を押さえつけた。上の二本の足は肩に、真ん中の二本の足は腰にがっちりと固定する。
キイキイと鳴きながら、細長い管のような口を突き立てようとしているようだった。
出血の少ない死体、細長い管のような口。
「―――吸血鬼ってとこか!!」
僕は咄嗟に足元の鉄パイプを足で掬い上げ、頭と思われる部分に突き刺した。
緑色の体液が吹き出し、耳をつんざくような鳴き声をあげる。
後ろにひっくり返り、ビクビクと痙攣する虫の腹に散弾を撃ち込んだ。
「一体・・・どうなってるんだ」
何度言ったか分からない台詞。
僕が真実を知るには、この町から生きて脱出しなくてはならない。
一縷の希望を、間隔の短い銃声の主に託した。
***
僕は引き続き銃声を追う。
距離は確実に縮まっているようで、先程一瞬だけ姿が見えた。
「待ってください!」
しかし、何度叫んでも答えが返ってくることは無かった。
[Boill13]
銃声は途絶えてしまい、姿も無い。合流を諦めつつあった僕はこのレストランにたどり着いた。
店内はやわらかな色の照明と暖かい空気に包まれていて、久々に一息つける雰囲気だ。
腰を落ち着けて一休みしたいところだが、そんな暇はない。僕は店内の調査を開始した。
珍しいことに死体は無い。少なくとも新たな敵はいないようだ。
地下室、というより貯蔵室のようなものへの道を発見した。
重い金属の蓋のような扉を開け、中を覗く。
結構な高さがあった。梯子が降りていて、床は水で満たされているようだ。
「やっぱり降りないと駄目かな」
梯子に足をかけ、下に降りようとしたその時。
背後に何かの気配を感じた僕は梯子から飛びのき、素早くハンドガンを構える。
「待てって!俺は敵じゃねぇよ!」
驚いたような声で青年が言う。
短い茶髪に、緑色の制服に包んだ均整の取れた体つき。
そして何より、手に持っている軍用の自動小銃。
「貴方は・・・カルロスさん?」
「その通り。って何で知ってんだ?」
「ああ、それは―――」
空気が震える。
聞き覚えのある咆哮。
何かが重い足音をたててこちらへ走ってくる。
僕の脳裏に過ぎるのはただ一人。
「もしかしてあの子じゃ!」
警察署で待っていてくれと頼んだはずなのに。
敵が増えてきたのか、それとも僕が処理しきれていなかったのか。
それに耐え切れずに僕を追ってきてしまったのだろうか。
音がする方へ向かおうとした僕の肩をカルロスが掴んだ。
「おい!何やってんだ逃げるぞ!」
「え?何で?」
「死にたいのか!」
「いやだってあの子は・・・」
「いいから降りろ!」
カルロスの気迫に押され、僕は梯子を降りた。
水に足首を搦め捕られうまく歩けない。
そして、やはり角に死体がある。あまり古くは無い様子だ。
しかしそんな事より気になる事があった僕は、遅れて降りてきたカルロスに問い掛けた。
「何で逃げたの?」
「何でって・・・お前も聞いたろ!あの雄叫び、新手の化け物だ」
「化け物なんて・・・あの子はそんな―――わぁ!?」
突然上から物凄い量の水が流れ込んできた。
老朽化した水道管が破裂したようで、物凄い勢いで水位が上がってくる。
「話は後だ!」
僕を押し退けて先へ進むカルロス。彼のこの行動力が惨事を生き抜いた秘訣なのだろう。
僕はカルロスに内緒で梯子の下に行き、上を見上げた。
そこには警察署で出会ったあの子が、こちらを覗きこんでいる姿があった。体格の大きさから見るに、どうも入れないらしい。
「おーい、こっから出られそうだ!」
奥でカルロスが呼んでいる。
僕は「ごめん」というジェスチャーをして、その場を離れた。
***
通風孔から外に脱出した僕たち。最初に口を開いたのはカルロスだった。
「俺はカルロス・オリヴェイラ。アンブレラのバイオハザード対策部隊のカルロス伍長だ」
「アンブレラ!?」
思わぬところから思わぬ言葉が飛び出したものだ。
「聞いた事あるだろ?俺はそのアンブレラに命令されて君達市民を助けに来たんだ」
「何で?」
「何でって、俺は雇われの身なんだから詳しくは分からん。何だってそんな事聞きたがる?」
「僕はアンブレラの調査をしにこの町に来たんだ」
「調査って・・・」
「僕は如月聖、S.T.A.R.S.の一員。洋館事件を追ってる最中なんだけど、今は生存者の保護を優先してる」
カルロスはあーあー、と頷きながら言った。
「洋館事件、知ってるぜ。洋館にゾンビが溢れかえってたんだろ?この町みたいに」
「・・・そうなの?」
「知らないのかよ、調査してんのに」
「そうなんだよなー、どうもそれに関するデータが根こそぎ削除だか隠蔽だかされてるみたいなんだ」
「ふーん、まあ俺の飼い主の話なんてどうでもいいけどよ。とりあえず保護って目的は同じなんだ、一緒に行動した方が安全だな。さて、どっから行くか・・・」
「だったら新聞社がいいと思うんだ。この町の情報を知っておきたい」
「あいよ、了解」
結構重要な話をしたと思ったのに軽く流されたことは少々寂しかったが、飄々とした彼の雰囲気は楽しかった。
その後一言二言交わして、僕たちは目的地へ向かう。
「・・・ごめんね・・・」
僕はそうぽつりと呟く。
僕を見下ろすあの子の淋しげな顔が、どうしても頭から離れなかった。