本編
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辺りに血溜まりを拡げ、ぐったりと倒れた化け物を見下ろす。
硬い靴底で足蹴にしてみても何の反応も無く、ただひたすら倒れ伏すのみ。
「・・・死ぬな、お前にはまだやることがある」
辛うじて聞こえるのは微かな呼吸音だけ、その言葉に化け物が答える筈もない。
―――しかし、この程度とは。
高度な思考能力と強靭な肉体を併せ持つ生物兵器、「NEMESIS」。
そうは聞いていたが実際には大振りな動きと単調な攻撃、そして何より任務遂行能力の低さが目立つ。
あの餓鬼一人処理出来ないとは何たる怠慢だろうか。
珍しく苛立ちを感じながら、私は処理ルームを出た。
***
化け物の体液がついたナイフをガーゼで覆い、ビニール製の袋に丁寧に包んだ。
それをサイドパックに入れながら部屋の隅に声を投げる。
「如月聖」
物陰に隠れていた人影がびくりと肩を跳ねさせた。どうも今の銃声を聞いて駆け付けたらしい。
手をベルトに差したハンドガンに添えたままゆらりと姿を表した如月の目には、様々な感情が映し出されていた。
恐怖、焦燥、不安、疑心。
視線を合わせたかと思うと直ぐに外す。頻りに唇を舐める。
何処を見ても完全な緊張状態だった。
「私の立場はもう分かっているようだな」
「ええ」
如月は俯くようにして私の目を直視しようとせず、以前より低いトーンで呟くように言う。
「それなら話が早い。お前に一つ、やってもらいたい事がある」
「・・・僕に何を―――」
聞き終わる前に動いた。
如月が反応する前に一気に間合いを詰め、その懐に飛び込む。
「っ!!」
しかし私の予想より随分と早い段階で如月は反応を見せた。
先程まで震えていたはずの腕が、ベレッタM92Fをベルトから引き抜く。
小さな銃口が、私を捉えた。
***
「ぐぅっ」
処理ルームに投げ込まれた如月が情けない声で鳴いた。そのまま痛みにうずくまり、浅い呼吸を繰り返す。
しかしこれ程までの戦闘能力の差を見せつけられても、鋭い眼光を未だにこちらに向けていた。
「・・・タイムリミットは4分だ」
重い音を響かせ、閉まる扉。それと同時に電子ロックがかかった事を扉の上の赤いランプが告げた。
踵を返し、無線を取り出す。
「こちらニコライ・・・ああ、成功した・・・了解、資料は後程・・・OVER・・・」
事務的な連絡を済ませ、一息つく。
如月がいなければカルロスも動こうとしないだろう。
あの男に友人を一人残して自分だけ助かる様な事が出来る筈もあるまい。
退屈な任務だった。
殺害する人間の量も、期間も、危険度も、何もかもが少な過ぎた。
如月、最後にもう一度だけ私を楽しませてはくれないだろうか。
このつまらない任務に少しでも抗ってはくれないだろうか。
もし、また楽しませてくれるというのならば。
もし、傷付いた獣と同じ檻に入って生き残れるというのならば。
「やってみろ、如月聖」
私はそれに期待しようじゃないか。
硬い靴底で足蹴にしてみても何の反応も無く、ただひたすら倒れ伏すのみ。
「・・・死ぬな、お前にはまだやることがある」
辛うじて聞こえるのは微かな呼吸音だけ、その言葉に化け物が答える筈もない。
―――しかし、この程度とは。
高度な思考能力と強靭な肉体を併せ持つ生物兵器、「NEMESIS」。
そうは聞いていたが実際には大振りな動きと単調な攻撃、そして何より任務遂行能力の低さが目立つ。
あの餓鬼一人処理出来ないとは何たる怠慢だろうか。
珍しく苛立ちを感じながら、私は処理ルームを出た。
***
化け物の体液がついたナイフをガーゼで覆い、ビニール製の袋に丁寧に包んだ。
それをサイドパックに入れながら部屋の隅に声を投げる。
「如月聖」
物陰に隠れていた人影がびくりと肩を跳ねさせた。どうも今の銃声を聞いて駆け付けたらしい。
手をベルトに差したハンドガンに添えたままゆらりと姿を表した如月の目には、様々な感情が映し出されていた。
恐怖、焦燥、不安、疑心。
視線を合わせたかと思うと直ぐに外す。頻りに唇を舐める。
何処を見ても完全な緊張状態だった。
「私の立場はもう分かっているようだな」
「ええ」
如月は俯くようにして私の目を直視しようとせず、以前より低いトーンで呟くように言う。
「それなら話が早い。お前に一つ、やってもらいたい事がある」
「・・・僕に何を―――」
聞き終わる前に動いた。
如月が反応する前に一気に間合いを詰め、その懐に飛び込む。
「っ!!」
しかし私の予想より随分と早い段階で如月は反応を見せた。
先程まで震えていたはずの腕が、ベレッタM92Fをベルトから引き抜く。
小さな銃口が、私を捉えた。
***
「ぐぅっ」
処理ルームに投げ込まれた如月が情けない声で鳴いた。そのまま痛みにうずくまり、浅い呼吸を繰り返す。
しかしこれ程までの戦闘能力の差を見せつけられても、鋭い眼光を未だにこちらに向けていた。
「・・・タイムリミットは4分だ」
重い音を響かせ、閉まる扉。それと同時に電子ロックがかかった事を扉の上の赤いランプが告げた。
踵を返し、無線を取り出す。
「こちらニコライ・・・ああ、成功した・・・了解、資料は後程・・・OVER・・・」
事務的な連絡を済ませ、一息つく。
如月がいなければカルロスも動こうとしないだろう。
あの男に友人を一人残して自分だけ助かる様な事が出来る筈もあるまい。
退屈な任務だった。
殺害する人間の量も、期間も、危険度も、何もかもが少な過ぎた。
如月、最後にもう一度だけ私を楽しませてはくれないだろうか。
このつまらない任務に少しでも抗ってはくれないだろうか。
もし、また楽しませてくれるというのならば。
もし、傷付いた獣と同じ檻に入って生き残れるというのならば。
「やってみろ、如月聖」
私はそれに期待しようじゃないか。