豆まきガチ勢
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節分とは「鬼は外、福は内」と声を出しながら豆を撒き、年齢の数だけ豆を食べるという厄除けの行事である。
平安時代より行われていた鬼を追い払う儀式が今日の「節分」という形で定着したのだという。
本物の鬼と対峙する鬼殺隊にとっても節分はとても大事な行事とか何とか……
「やっぱり、節分は凄いんですかね? 煉獄家では……?」
葉子と千寿郎と隠の山下は、3人で昼餉に
ずるずると蕎麦をすすりながら、穏やかな午後の時間を過ごしている。
「そりゃあねぇ……命をかけて鬼と戦ってますから。鬼殺隊は」
山下は明後日の方向を見ながら思い出していた。初めて煉獄家の手伝いに来たあの年の節分を……
・・・
「あ、俺が鬼役やりますよ。お面は……あ、これですかね」
山下が手にしたのは般若の面で、思ったよりも本格的に鬼のように見えるかもしれないと感じた。
さすが代々炎柱を輩出する煉獄家は節分も本格的なのだなと感心をしていた。
「悪い気は玄関から入ってくるからな! 玄関から始めて、後は自由に家の中を逃げ回れば良い! 俺達が豆を撒く」
杏寿郎が簡単な説明をしている横で、千寿郎が升に豆を入れ、それを3つ用意していた。槇寿郎と杏寿郎と千寿郎の分の3つ。
「お手柔らかに頼みますよ。ははは……」
最初は普通の豆まきだと思っていた。ただの豆まきだと。
それが山下が般若の面を顔に付けた途端、空気が冷やりと緊迫したのを感じた。
何だかおかしいなと思いつつも言われた通りに玄関に向かう。
すると、いつの間に先回りをしていたのか槇寿郎が立っていた。
「来たな……鬼! 我が家の敷居を踏みにじり、生きて帰れると思うなよ」
「え?」
槇寿郎は手にしていた豆を山下に投げると、豆は恐ろしい程に高速で脇腹を掠めて行った。
ある程度の鬼からの攻撃を耐えられる鬼殺隊の隊服はじゅうという音を立て破けていた。
「え、ちょっと! え? 何? 危ないですよ?」
山下は混乱しながらも命の危険を感じ、咄嗟に逃げた。
(何だよあれ!? 聞いてねぇよ! ヤバいじゃんよ! 殺しにかかってるじゃん!)
とりあえず危険な槇寿郎から遠ざかる為に、先程いた庭まで逃げて来るとそこには杏寿郎と千寿郎がいた。
「きょ……杏寿郎さん! 炎柱様がご乱心……」
「来たな! 鬼! 鬼殺隊の名にかけて貴様を断じて許すわけにはいかん!」
杏寿郎も様子がおかしかった。山下は絶望した。
杏寿郎は手にした豆を手のひらいっぱいに握ると、口からしゅうという音を吐きながら力いっぱいに山下に投げつけた。
「ぎゃああああ!」
豆は弾丸のように隊服をかすめ、隠の頭巾は貫通し、山下の顔をかすった豆で頬からは流血をしている。
どさくさに紛れて千寿郎が体に豆を普通に投げてくるのがまた悲しさと惨めさを誘う。
山下は己の命を守る為に全力で家の中を逃げ回り、ふと「般若の面を外せば良いのでは?」と顔につけていた面を投げ捨てると、豆まきはぴたりと止んだ。
それ以降、煉獄家の豆まきにはいろいろな理由をつけて断固として参加しないことに決めている。