観月はじめ
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「……そろそろ卒業だな」
赤澤がポツリと呟いた。
校舎内の図書室にて個人的な作業中の僕の隣で暇そうにしている彼。
何もする事がないならどこかへ行けばいいのに。
それとも何もする事がないからここに居るのか、独り言のような彼の呟きは、静かな図書室内では嫌でも耳に入ってきた。
テニス部メンバーはほとんどバラバラの高校へ進学する。
「何しんみりしちゃってるんですか。一生の別れでもあるまいし」
「それはその通りだが毎日顔を合わせてたんだからよ……やっぱり寂しいだろ」
この男はこういう事を平気で言う。
僕にもそういう気持ちがある事にはあるが、そんな感傷はこれから始まる目まぐるしい新生活の中で、どうせすぐに忘れてしまうだろう。
それはこの男だって例外ではない筈だ。
「観月、苗字とはどうなんだよ?お前にあんなに親身になってくれる女の子、他にいないだろ」
は?何故いきなり苗字さんの名が。
「ど、どうって、どういう意味です?」
「お前ら喧嘩ばっかしてるけど、そのくせ仲いいだろ。好きになったりしてないのか?」
僕が苗字さんを好き……?
「け、喧嘩ばかりの相手ですよ⁉︎そんな相手……好きになんて……!」
「そんな大声出すなよ、ここ図書室だぞ?苗字、普通に可愛いし、観月の本音はどうなのかって思っただけだ」
赤澤の本音は、苗字さんは可愛いという事か。
「もし仮に好きなら喧嘩なんてしません」
赤澤にはそう答えたが……
本音ねぇ…… 苗字さんに対する僕の本音はどうなのだろう……
赤澤と図書室でそんな話をしてから、あっという間だった。
3年間お世話になった寮から僕が退寮する日は今日だ。
退寮の為に卒業生の多くが忙しそうにしている。
そんな慌ただしさが漂っているが、僕の退寮の準備はだいたい片付いている。
僕は大きな荷物を抱え、約3年生活し慣れ親しんだ寮を外でぼんやりと眺めていた。
もうこれで最後だと、赤澤に物申しておきながら不覚にも感傷に浸りかけていたのかもしれない。
そうしていると、女子寮の方から僕の名を呼ぶ声が聞こえ、すぐに苗字さんだとわかった。
「間に合って良かった……これで最後ってわけじゃないけど……挨拶に……」
息を切らせている彼女は、僕の姿を見かけてわざわざ走って来てくれたのかもしれない。
「口喧嘩もたくさんしたけど、楽しかったよ。勉強教えてくれたり、ありがとね」
彼女らしくない素直な言葉に、少々調子が狂ってしまう。
「……まあ、勉強に関しては結構お世話してあげました。……私もあなたにはお世話になったと思っています。これからもお元気で……」
数日前に赤澤から言われた事を思い出す。
だが、何も言えなかった。
右手を差し出し、彼女に握手を求めた。
……もう、本当に会う事なんてないかもしれない。
僕と彼女は握手を交わし、本当に最後の別れ際、
「またね!」
と言う彼女に軽く手を振り、お互い背を向け別れた。
赤澤がポツリと呟いた。
校舎内の図書室にて個人的な作業中の僕の隣で暇そうにしている彼。
何もする事がないならどこかへ行けばいいのに。
それとも何もする事がないからここに居るのか、独り言のような彼の呟きは、静かな図書室内では嫌でも耳に入ってきた。
テニス部メンバーはほとんどバラバラの高校へ進学する。
「何しんみりしちゃってるんですか。一生の別れでもあるまいし」
「それはその通りだが毎日顔を合わせてたんだからよ……やっぱり寂しいだろ」
この男はこういう事を平気で言う。
僕にもそういう気持ちがある事にはあるが、そんな感傷はこれから始まる目まぐるしい新生活の中で、どうせすぐに忘れてしまうだろう。
それはこの男だって例外ではない筈だ。
「観月、苗字とはどうなんだよ?お前にあんなに親身になってくれる女の子、他にいないだろ」
は?何故いきなり苗字さんの名が。
「ど、どうって、どういう意味です?」
「お前ら喧嘩ばっかしてるけど、そのくせ仲いいだろ。好きになったりしてないのか?」
僕が苗字さんを好き……?
「け、喧嘩ばかりの相手ですよ⁉︎そんな相手……好きになんて……!」
「そんな大声出すなよ、ここ図書室だぞ?苗字、普通に可愛いし、観月の本音はどうなのかって思っただけだ」
赤澤の本音は、苗字さんは可愛いという事か。
「もし仮に好きなら喧嘩なんてしません」
赤澤にはそう答えたが……
本音ねぇ…… 苗字さんに対する僕の本音はどうなのだろう……
赤澤と図書室でそんな話をしてから、あっという間だった。
3年間お世話になった寮から僕が退寮する日は今日だ。
退寮の為に卒業生の多くが忙しそうにしている。
そんな慌ただしさが漂っているが、僕の退寮の準備はだいたい片付いている。
僕は大きな荷物を抱え、約3年生活し慣れ親しんだ寮を外でぼんやりと眺めていた。
もうこれで最後だと、赤澤に物申しておきながら不覚にも感傷に浸りかけていたのかもしれない。
そうしていると、女子寮の方から僕の名を呼ぶ声が聞こえ、すぐに苗字さんだとわかった。
「間に合って良かった……これで最後ってわけじゃないけど……挨拶に……」
息を切らせている彼女は、僕の姿を見かけてわざわざ走って来てくれたのかもしれない。
「口喧嘩もたくさんしたけど、楽しかったよ。勉強教えてくれたり、ありがとね」
彼女らしくない素直な言葉に、少々調子が狂ってしまう。
「……まあ、勉強に関しては結構お世話してあげました。……私もあなたにはお世話になったと思っています。これからもお元気で……」
数日前に赤澤から言われた事を思い出す。
だが、何も言えなかった。
右手を差し出し、彼女に握手を求めた。
……もう、本当に会う事なんてないかもしれない。
僕と彼女は握手を交わし、本当に最後の別れ際、
「またね!」
と言う彼女に軽く手を振り、お互い背を向け別れた。
