チタン
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たびたび自宅へ訪ねてきてくれていた彼女だったが…最近ではもう1ヶ月は会っていなかった。
今までは週に1度は必ずといっていいほど顔を出してくれていただけに、忙しくて……という彼女の言葉をそのまま単純に受け取っていいものかわからなかった。
彼女が自宅に訪ねて来なくなった事で、当然ながら弟たちは寂しがっていた。
お姉ちゃんは学生でとても忙しいから仕方がないと説明すると、理解はしているも、寂しい気持ちまではどうにもできないようだった。
『弟たちが寂しがっているから、もし余裕ができたら顔を出してくれると嬉しい。忙しいのは承知でこんなメールを送るのは申し訳ないと思っている。返信は不要だ』
メールを送ってはみたものの、きっと彼女からの音沙汰はない気はしている。
弟たちが寂しがっているのは事実でも、きっと1番寂しがっているのはこのオレで……結果、弟を口実に使ってしまった自分が許せない。
わがまま言わないようにと弟たちに注意していたオレ自身が1番わがままではないか……
そんな悩みと自己嫌悪が頭の中でグルグルと渦を巻き、胸の中までも侵食されていくようだった。
折角の設備の整ったスタジオも、こんな調子では意味がない。
全く作曲に集中できない……
「もう何度目のため息だ?チタン。何かあったのか?」
ため息?オリオンに指摘されるまで、自分でも気が付かなかった。
声をかけられるまで誰かに相談するなんて発想すらなかったが、1人でモヤモヤしているより、信頼できる仲間に相談してみるのはいい考えかもしれない。
なぜ気づかなかったのだろう。
オレは名前との出会いから、どのような交流をしていたのか簡単に説明した。
最近めっきり会う機会がなくなり、その原因は自分にあるのではないかと…そうオリオンに相談した。
「オレが自覚なしに彼女の気に障る事でもしてしまったのかと……」
ビリヤードと筋トレに励んでいた2人も、オレの話が聞こえていたらしく、ピタっと動きを止め、一瞬スタジオの空気が止まった気がした。
……やはり、オレの過失なのだろうか……
「……まず聞くが、お前とその女性との関係は何なんだ?」
「だから、昔のバイト仲間で、家で弟たちの面倒も見てくれた事もあるし、親切な専門学生で……」
それぞれビリヤードと筋トレに勤しんでいたはずのセレンとアルゴンも話を聞きにやってきて、いつの間にか3人に取り囲まれる形になっているオレ。
「チタンにしては親しくしてる人なんじゃない?そんな間柄なのに、恋人じゃないの?」
「他に男でもできたのではないか?」
「おいおいチターン、お前がいつまでも男を見せないからじゃないのか?」
「男を見せる……?確かに、彼女には感謝していても何のお礼もできていないが……」
「そういう事じゃなくて、彼女が好きなら押し倒すくらい分かりやすく気持ちを伝えないとだぜー?」
「お、押し倒す?!」
「それじゃあ嫌われちゃう可能性もあるけど……チタンが全く牙を持たない狼だから、だから彼女は自分に気がないと思ったんじゃない?っていうのは、わからないでもないかな」
「それで彼女は次の恋を探しにお前の元を離れた……という事か」
「いや……気があるとかないとか、そんなの考えた事もなかったし……」
「「「はあぁぁ〜=3」」」
オレのどこがいけないのか……呆れて溜息をつかれているのはわかる。
改めるから、どこがどういけないのか教えてもらいたい。
「恋愛に関してはお子ちゃまなチタンにもわかるように、俺たちがディープなアドバイスを送ってやろう。刺激的に、情熱的にな」
「…………刺激的で情熱的?」
刺激的で情熱的とは?と、不安しかなかったが、3人とも親身になって考えてくれて、至極真面目なアドバイスをくれたと思う。
何だかんだと世話を焼いてくれるメンバーの見解に最初は戸惑ったが、自分なりに考えてみた。
オレは、彼女の事をどう思っているのか。
このまま何もせず諦めればそこで試合終了だと、どこかで聞いた事のある言葉で励ましてくれたメンバーに感謝して、
次会えたら整理した今のこの気持ちで、彼女との関係をハッキリさせようと心に決めた。
次というのがいつになるか、そこらへんの事はまだノープランだが……
そして数日後。
たまたまいつもと違う道を使って帰宅していた時だった。
今日の晩ご飯は何にしようかと、冷蔵庫の中身を思い出しながら歩いていた。
スーパーに寄るべきかどうするか……考えながら何気なくスーパーのある方向を向いた時、目線の先には見覚えのある後ろ姿。
考える間もなく、オレは後を追いかけていた。
やはり見間違いではない。
名前である事を確信したオレは、緊張で強張る体をリラックスさせるように、胸いっぱい空気を吸い込み深呼吸、覚悟を決めて声をかけた。
「名前!」
こんなところでオレに会うとは思っていなかったのか、彼女は驚いた顔をしていた。
いざ話をしようとすると、以前のようにスムーズに言葉を紡げない。
「ひ、久しぶりだな。元気そうでよかった……あの……実は話したい事が……いま時間は大丈夫か?」
すごく気まずい……そう感じているのは彼女も同じなようで、目を合わせてくれず返答はないが、コクリと頷いてくれた。
ギクシャクとしながらもオレは会話を続けた。
弟たちを口実に使った自分…… 名前に会えなくてオレも寂しかったんだと正直に言った。
オレは名前に既に嫌われてるかもしれないと思うと怖かったが、もう覚悟は決めたんだ。
次の言葉を発しようとした時、名前は
「ごめんなさい」
と小さく呟いた。
このタイミングでこの言葉。
今まで生きてきて辛い思いはあったが、こんな胸の苦しさは初めて感じるものだった。
「私、嘘をついてました……忙しいなんて嘘です……」
オレは静かに彼女の言葉に耳を傾ける。
「世間で活躍している有名人が一般人を相手にするわけないという、学生仲間の会話が聞こえてきたんです……私、その話に納得してしまって……ショックだったんです。有名人のチタンさんと一般人の私……好きだって、気づいたんです……チタンさんの事が」
そこから先の名前は早口だった。
「頼ってだなんて言っておいて、忙しいなんて嘘ついて、無責任だとは思いました。でも、チタンさんの顔を見ると辛くって、きっと皆さんの前で笑顔でいられないと……」
溢れるこの想いをすぐに伝えたくて。
言葉とはこんなに煩わしいものだっただろうか。
その小さな体を求めるままに力強く抱き寄せた。
感情で潤む瞳も強張る体から伝わる温もりも何もかも、今この瞬間はオレの為だけのきれいなものだと傲慢ながらに思った。
「……謝る必要なんてない。きっと、謝るならオレの方なんだ」
名前の両手がオレの背に添えられる。
少し遠回りしたけれど……
「君が好きだ。遅くなって悪かった」
名前はフルフルと首をふり、添えられた両手に力がこもる。
それに応えるように、オレはもう一度力強くその体を抱きしめた。
後日。
親身に話を聞いてくれた3人に、オレは現状を報告した。
「お前たちの恋愛事情は知らないが、とても心強かった。ありがとう」
「恋愛事情?」
「恋愛事情ねぇ?」
「経験なくてもアドバイスくらいできるでしょ?」
「え……?本当に?」
オレの事、お子ちゃまだと言っていたのはどこの誰だったか……
だが助かった。
良い仲間にも恵まれ……オレは幸せ者だと、改めて認識したのだった。
今までは週に1度は必ずといっていいほど顔を出してくれていただけに、忙しくて……という彼女の言葉をそのまま単純に受け取っていいものかわからなかった。
彼女が自宅に訪ねて来なくなった事で、当然ながら弟たちは寂しがっていた。
お姉ちゃんは学生でとても忙しいから仕方がないと説明すると、理解はしているも、寂しい気持ちまではどうにもできないようだった。
『弟たちが寂しがっているから、もし余裕ができたら顔を出してくれると嬉しい。忙しいのは承知でこんなメールを送るのは申し訳ないと思っている。返信は不要だ』
メールを送ってはみたものの、きっと彼女からの音沙汰はない気はしている。
弟たちが寂しがっているのは事実でも、きっと1番寂しがっているのはこのオレで……結果、弟を口実に使ってしまった自分が許せない。
わがまま言わないようにと弟たちに注意していたオレ自身が1番わがままではないか……
そんな悩みと自己嫌悪が頭の中でグルグルと渦を巻き、胸の中までも侵食されていくようだった。
折角の設備の整ったスタジオも、こんな調子では意味がない。
全く作曲に集中できない……
「もう何度目のため息だ?チタン。何かあったのか?」
ため息?オリオンに指摘されるまで、自分でも気が付かなかった。
声をかけられるまで誰かに相談するなんて発想すらなかったが、1人でモヤモヤしているより、信頼できる仲間に相談してみるのはいい考えかもしれない。
なぜ気づかなかったのだろう。
オレは名前との出会いから、どのような交流をしていたのか簡単に説明した。
最近めっきり会う機会がなくなり、その原因は自分にあるのではないかと…そうオリオンに相談した。
「オレが自覚なしに彼女の気に障る事でもしてしまったのかと……」
ビリヤードと筋トレに励んでいた2人も、オレの話が聞こえていたらしく、ピタっと動きを止め、一瞬スタジオの空気が止まった気がした。
……やはり、オレの過失なのだろうか……
「……まず聞くが、お前とその女性との関係は何なんだ?」
「だから、昔のバイト仲間で、家で弟たちの面倒も見てくれた事もあるし、親切な専門学生で……」
それぞれビリヤードと筋トレに勤しんでいたはずのセレンとアルゴンも話を聞きにやってきて、いつの間にか3人に取り囲まれる形になっているオレ。
「チタンにしては親しくしてる人なんじゃない?そんな間柄なのに、恋人じゃないの?」
「他に男でもできたのではないか?」
「おいおいチターン、お前がいつまでも男を見せないからじゃないのか?」
「男を見せる……?確かに、彼女には感謝していても何のお礼もできていないが……」
「そういう事じゃなくて、彼女が好きなら押し倒すくらい分かりやすく気持ちを伝えないとだぜー?」
「お、押し倒す?!」
「それじゃあ嫌われちゃう可能性もあるけど……チタンが全く牙を持たない狼だから、だから彼女は自分に気がないと思ったんじゃない?っていうのは、わからないでもないかな」
「それで彼女は次の恋を探しにお前の元を離れた……という事か」
「いや……気があるとかないとか、そんなの考えた事もなかったし……」
「「「はあぁぁ〜=3」」」
オレのどこがいけないのか……呆れて溜息をつかれているのはわかる。
改めるから、どこがどういけないのか教えてもらいたい。
「恋愛に関してはお子ちゃまなチタンにもわかるように、俺たちがディープなアドバイスを送ってやろう。刺激的に、情熱的にな」
「…………刺激的で情熱的?」
刺激的で情熱的とは?と、不安しかなかったが、3人とも親身になって考えてくれて、至極真面目なアドバイスをくれたと思う。
何だかんだと世話を焼いてくれるメンバーの見解に最初は戸惑ったが、自分なりに考えてみた。
オレは、彼女の事をどう思っているのか。
このまま何もせず諦めればそこで試合終了だと、どこかで聞いた事のある言葉で励ましてくれたメンバーに感謝して、
次会えたら整理した今のこの気持ちで、彼女との関係をハッキリさせようと心に決めた。
次というのがいつになるか、そこらへんの事はまだノープランだが……
そして数日後。
たまたまいつもと違う道を使って帰宅していた時だった。
今日の晩ご飯は何にしようかと、冷蔵庫の中身を思い出しながら歩いていた。
スーパーに寄るべきかどうするか……考えながら何気なくスーパーのある方向を向いた時、目線の先には見覚えのある後ろ姿。
考える間もなく、オレは後を追いかけていた。
やはり見間違いではない。
名前である事を確信したオレは、緊張で強張る体をリラックスさせるように、胸いっぱい空気を吸い込み深呼吸、覚悟を決めて声をかけた。
「名前!」
こんなところでオレに会うとは思っていなかったのか、彼女は驚いた顔をしていた。
いざ話をしようとすると、以前のようにスムーズに言葉を紡げない。
「ひ、久しぶりだな。元気そうでよかった……あの……実は話したい事が……いま時間は大丈夫か?」
すごく気まずい……そう感じているのは彼女も同じなようで、目を合わせてくれず返答はないが、コクリと頷いてくれた。
ギクシャクとしながらもオレは会話を続けた。
弟たちを口実に使った自分…… 名前に会えなくてオレも寂しかったんだと正直に言った。
オレは名前に既に嫌われてるかもしれないと思うと怖かったが、もう覚悟は決めたんだ。
次の言葉を発しようとした時、名前は
「ごめんなさい」
と小さく呟いた。
このタイミングでこの言葉。
今まで生きてきて辛い思いはあったが、こんな胸の苦しさは初めて感じるものだった。
「私、嘘をついてました……忙しいなんて嘘です……」
オレは静かに彼女の言葉に耳を傾ける。
「世間で活躍している有名人が一般人を相手にするわけないという、学生仲間の会話が聞こえてきたんです……私、その話に納得してしまって……ショックだったんです。有名人のチタンさんと一般人の私……好きだって、気づいたんです……チタンさんの事が」
そこから先の名前は早口だった。
「頼ってだなんて言っておいて、忙しいなんて嘘ついて、無責任だとは思いました。でも、チタンさんの顔を見ると辛くって、きっと皆さんの前で笑顔でいられないと……」
溢れるこの想いをすぐに伝えたくて。
言葉とはこんなに煩わしいものだっただろうか。
その小さな体を求めるままに力強く抱き寄せた。
感情で潤む瞳も強張る体から伝わる温もりも何もかも、今この瞬間はオレの為だけのきれいなものだと傲慢ながらに思った。
「……謝る必要なんてない。きっと、謝るならオレの方なんだ」
名前の両手がオレの背に添えられる。
少し遠回りしたけれど……
「君が好きだ。遅くなって悪かった」
名前はフルフルと首をふり、添えられた両手に力がこもる。
それに応えるように、オレはもう一度力強くその体を抱きしめた。
後日。
親身に話を聞いてくれた3人に、オレは現状を報告した。
「お前たちの恋愛事情は知らないが、とても心強かった。ありがとう」
「恋愛事情?」
「恋愛事情ねぇ?」
「経験なくてもアドバイスくらいできるでしょ?」
「え……?本当に?」
オレの事、お子ちゃまだと言っていたのはどこの誰だったか……
だが助かった。
良い仲間にも恵まれ……オレは幸せ者だと、改めて認識したのだった。