トレイ・クローバー
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今日はハーツラヴュル寮の何でもない日のパーティー。
すっかりお菓子作り担当が定着しているトレイ先輩は、そろそろケーキ作りを開始する頃だろう……
トレイ先輩と私の関係は、簡潔に言えばただの先輩と後輩である。
トレイ先輩は何かと世話を焼いてくれて、その度に迷惑をかけているけれど、関係は良好……だと思う。
お世話になりすぎて、内心面倒な後輩と思われている……という心配がないと言えば嘘になる。
出来の良くない私に丁寧に勉強を教えてくれたり、気さくに声を掛けてくれる優しい先輩に、もちろん私は好意しかない。
一般的なケーキ作りの知識は持っているつもりだ。
複雑で凝った工程のあるケーキは作った事はないけど……
足手まといにはならないはず!
私だってたまには先輩の役にたちたい。
よし!っと気合を入れ、調理場へ向かう。
そこには私の予想通り、エプロン姿のトレイ先輩がいた。
エプロンを忘れずに持って来た事を確認した私は、先輩に声をかけた。
「お疲れ様です、トレイ先輩!これからケーキ作りですか?私も手伝います!」
「手伝ってくれるのか、それは助かる。今日作るのはショートケーキだ。ケーキの中では一般的な部類に入るが、だからと言って簡単な訳じゃあないぞ」
先輩が簡単じゃないと言うだけあって、私が考えていたものより難しかった。
スポンジケーキを作った事は何度かあるけれど、今までまあまあの出来だと満足していた事が恥ずかしい。
知識はあっても技術が伴っていないと痛感した私は、これじゃあお手伝いになってないじゃないかと内心挫けそうである。
スポンジを焼き冷ますという作業の間に休憩を挟んで……
そして今度はクリームに取り掛かる。
8分立てとはどれくらいなのか曖昧だったのだが、そこもトレイ先輩にしっかり教えてもらった。
「本当はスポンジは1日寝かしてからの方が扱いやすいんだが、今日はこのまま仕上げていくぞ」
今度は充分に冷めたスポンジにクリームやイチゴをデコレーションしていく。
基本的にはトレイ先輩がメインで作業したが、まさに手取り足取り教えてもらいながら私も作業させてもらった。
手取り足取りだなんて、通常ならテンションが上がっているところだけど…
先輩の役に立ちたいという目的がある今の私には、単純に喜べはしない状況だった。
なかなかいい手際だと先輩に励まされながら、クリームを絞り終えてひと段落。
作業を中断しひと息付いていると、先輩と目が合った。
「名前、ほっぺにクリームついてるぞ」
緊張感のある作業で滲んだ汗を腕で拭った時にでも付いたのだろう。
トレイ先輩はクスッと笑いながら、私の頬に付いたホイップクリームを親指で掬い自分の口へ運んだ。
それ食べちゃいます?
私の頬に付いてたクリーム……
こんな恥ずかしい行為を素でやってしまうなんて。
しかも、嫌な感じが全くせずスマートで爽やかだ。
しかもしかも!ほっぺって!ほっぺって、可愛いんですけど!
イチャついているようにも思えるこのベタな展開に混乱しつつ私は当然赤面してしまう。
「ぁ、あ、あのっ……」
「妹や弟と一緒にケーキを作った時の事を思い出すな」
そりゃそうですよねー!
妹や弟……
テンション下がる私。
「ん?どうかしたか?」
「いえ、何でもないです」
ドキドキからの急降下。なるべく平静を装い答えた私。
「それならいいが……さて、あと少しで完成だ。集中していこうな」
そんなこんなでイチゴのショートケーキが完成した。
私は表面上喜んで見せたが、内心は満足感も達成感もなかった。
……トレイ先輩ひとりで作業した方がスムーズだったのではないか。
結局、私は先輩の役には立てなかった……
「ありがとう。名前が手伝ってくれたお陰で助かった。また次も手伝ってくれると助かる。それと、ほっぺにクリームを付けるなんて隙は、他の奴には見せない事だな」
「へ?あ、はい……」
「それじゃあ、また後で。おつかれ」
そう言うとトレイ先輩は行ってしまった。
トレイ先輩は助かったと言ってくれたけど……本当に私は役に立てたのだろうか……?
それに、トレイ先輩が去り際に言ったあの言葉。
その意味を考えて、ひとり悶々と悩んでしまうのだった。
すっかりお菓子作り担当が定着しているトレイ先輩は、そろそろケーキ作りを開始する頃だろう……
トレイ先輩と私の関係は、簡潔に言えばただの先輩と後輩である。
トレイ先輩は何かと世話を焼いてくれて、その度に迷惑をかけているけれど、関係は良好……だと思う。
お世話になりすぎて、内心面倒な後輩と思われている……という心配がないと言えば嘘になる。
出来の良くない私に丁寧に勉強を教えてくれたり、気さくに声を掛けてくれる優しい先輩に、もちろん私は好意しかない。
一般的なケーキ作りの知識は持っているつもりだ。
複雑で凝った工程のあるケーキは作った事はないけど……
足手まといにはならないはず!
私だってたまには先輩の役にたちたい。
よし!っと気合を入れ、調理場へ向かう。
そこには私の予想通り、エプロン姿のトレイ先輩がいた。
エプロンを忘れずに持って来た事を確認した私は、先輩に声をかけた。
「お疲れ様です、トレイ先輩!これからケーキ作りですか?私も手伝います!」
「手伝ってくれるのか、それは助かる。今日作るのはショートケーキだ。ケーキの中では一般的な部類に入るが、だからと言って簡単な訳じゃあないぞ」
先輩が簡単じゃないと言うだけあって、私が考えていたものより難しかった。
スポンジケーキを作った事は何度かあるけれど、今までまあまあの出来だと満足していた事が恥ずかしい。
知識はあっても技術が伴っていないと痛感した私は、これじゃあお手伝いになってないじゃないかと内心挫けそうである。
スポンジを焼き冷ますという作業の間に休憩を挟んで……
そして今度はクリームに取り掛かる。
8分立てとはどれくらいなのか曖昧だったのだが、そこもトレイ先輩にしっかり教えてもらった。
「本当はスポンジは1日寝かしてからの方が扱いやすいんだが、今日はこのまま仕上げていくぞ」
今度は充分に冷めたスポンジにクリームやイチゴをデコレーションしていく。
基本的にはトレイ先輩がメインで作業したが、まさに手取り足取り教えてもらいながら私も作業させてもらった。
手取り足取りだなんて、通常ならテンションが上がっているところだけど…
先輩の役に立ちたいという目的がある今の私には、単純に喜べはしない状況だった。
なかなかいい手際だと先輩に励まされながら、クリームを絞り終えてひと段落。
作業を中断しひと息付いていると、先輩と目が合った。
「名前、ほっぺにクリームついてるぞ」
緊張感のある作業で滲んだ汗を腕で拭った時にでも付いたのだろう。
トレイ先輩はクスッと笑いながら、私の頬に付いたホイップクリームを親指で掬い自分の口へ運んだ。
それ食べちゃいます?
私の頬に付いてたクリーム……
こんな恥ずかしい行為を素でやってしまうなんて。
しかも、嫌な感じが全くせずスマートで爽やかだ。
しかもしかも!ほっぺって!ほっぺって、可愛いんですけど!
イチャついているようにも思えるこのベタな展開に混乱しつつ私は当然赤面してしまう。
「ぁ、あ、あのっ……」
「妹や弟と一緒にケーキを作った時の事を思い出すな」
そりゃそうですよねー!
妹や弟……
テンション下がる私。
「ん?どうかしたか?」
「いえ、何でもないです」
ドキドキからの急降下。なるべく平静を装い答えた私。
「それならいいが……さて、あと少しで完成だ。集中していこうな」
そんなこんなでイチゴのショートケーキが完成した。
私は表面上喜んで見せたが、内心は満足感も達成感もなかった。
……トレイ先輩ひとりで作業した方がスムーズだったのではないか。
結局、私は先輩の役には立てなかった……
「ありがとう。名前が手伝ってくれたお陰で助かった。また次も手伝ってくれると助かる。それと、ほっぺにクリームを付けるなんて隙は、他の奴には見せない事だな」
「へ?あ、はい……」
「それじゃあ、また後で。おつかれ」
そう言うとトレイ先輩は行ってしまった。
トレイ先輩は助かったと言ってくれたけど……本当に私は役に立てたのだろうか……?
それに、トレイ先輩が去り際に言ったあの言葉。
その意味を考えて、ひとり悶々と悩んでしまうのだった。