生者の墓標、死者の街

【その7:牙灰遭遇 ―デアイ―】

「ファイズギア、か。久々に見るぜ」
「……今になって使うとは、俺も思ってなかった」
 銀色のベルトと、それに合致する形の携帯電話を見つめつつ、海堂と巧はそれぞれに呟く。
 真理は、これを出すまでにかなり渋っていたが、結局は巧の勢いにおされ、ファイズギアのみを彼に手渡した。
「それにしてもよぉ、何なんだろうな『ウルフェン族』って」
「知るか」
 海堂の大きな独り言に端的に答え、巧は小さく溜息を吐く。
 彼の疑問は、もっともだ。実際、巧も気になっている。
 ……だが、疑問に思った所で解決する訳でもない事だとも、思っていた。
 それに、出会ったあの異形。オルフェノク以外にも人間を襲う異形がいた事にも驚いたし、何より襲われた人間の最期の様子が、あまりにも奇妙だった。
 ガラス細工のように透明になり、やがて粉々に砕け散る人間。
 オルフェノクに襲われ、灰化していく様を始めて見た時も、現実味のなさに驚いたが、今回はそれ以上に現実味がない。
「じゃあ俺、あっちだからよ」
 唐突に声をかけられ、巧の意識はこちらに引き戻される。
 視線を海堂に向けた時には、既に彼はひらひらと手を振りながら人混みの中へ紛れていく所であった。
 その後姿を見送り、巧も家路に着こうとした、その刹那。
 彼の視界を、何かが横切った。……黒っぽい、メタリックな「何か」が。
 その不思議な存在を、思わず追いかけてしまう。
 理由はない。だが、本能的にその存在を追いかけずにはいられなかった。
 大きさは人の頭くらい。ひらひらと言うよりは、バサバサと宙を舞い、何となく蝙蝠をイメージさせる。だが、あからさまに蝙蝠ではない。
 蝙蝠は顔が小さいし毛だって生えている。だが「それ」は違う。顔と胴が一体化したような丸っこい「本体」に羽根の形をした何かが付いていると言った感じだ。
「おい……ちょっと待て!」
 言いながら、巧は思わずその黒い蝙蝠もどきを捕まえる。
 赤い目をこちらに向け、その蝙蝠に似た何かはしばし巧の手の中で羽根をばたつかせていたが、すぐにそれを止め……
「何だ、貴様?」
「……喋った!?」
「喋る事が気に食わんのか?」
 怪訝そうに蝙蝠はそう言うと、落ち着いた様子で巧を見つめ返す。
 その一方で、巧はすっかり混乱していた。
 「これ」は一体なんなのだろうか。てっきりロボットの類だと思ったのに、掴んだ感じでは体温のような温かさを感じる。それに、これ程流暢に話すロボットは、今の所見た事がない。スマートブレインが開発したメカですら、喋る事はなかった。
 という事は、これは生物なのだろうか。人語を解する、蝙蝠に似た「何か」。だが、金属的な体を持ち、触った感触も金属のような、そうでないような……
「聞いているのか?」
「あ……ああ」
「とにかく離せ。逃げはしない」
「本当か?」
「嘘を吐いて、私に何か得でもあるのか?」
 気分を害したのか、声に若干不満そうな色を滲ませつつ、蝙蝠もどきは堂々とした態度でそう言い放つ。
 本当に逃げる気はなさそうだと判断し、巧はそっとその蝙蝠もどきから手を離す。言葉通り、逃げるような事はせず、そいつは近くの木の枝に止まった。
「しかし、この私を捕まえられる人間がいるとはな」
「普通、不思議に思うだろうが」
「そうではない。私の飛行スピードについてこられた事がおかしいと言っているのだ。貴様をただの人間とは思わん。ありがたく思え」
「何をだよ。普通にけなしてるだろ、それ」
 「ただの人間とは思わない」という言葉に、少しだけどきりとしながら、巧はそれを隠すように目の前にいる黒い蝙蝠に反論する。
「何を言う。誉めてやっているのだ。この私の、人間に対する最大の賛辞だぞ」
 心外と言わんばかりの口調で、蝙蝠はバサバサとその翼を羽ばたかせ、巧に向かって高慢に言い放つ。
 偉そうな物言いが若干ムカつくが、こんな小動物にいちいちキレていても仕方ないと思い、そこはグッと堪える。
「それで? 何故私を捕まえた?」
「だから、お前が何なのかよくわかんなかったからだよ。好奇心だ。目の前をお前みたいな蝙蝠もどきが飛んでたら、誰だって不思議に思うだろ」
「蝙蝠もどきではない。キバットバット二世。キバット族の中でも、由緒正しいキバットバット家の者だ」
 黒蝙蝠……キバットバット二世と名乗ったそいつは、冷ややかな視線を巧に向けながらそう言うと、すとんと彼の肩の上に降り立つ。
「良いだろう。お前はなかなか面白い。太牙に会うまで、お前についていてやる」
「……はあ?」
「ありがたく思え」
――思えるかよ――
 そう突っ込みたかったが、どうやらこの高慢な蝙蝠には通じなさそうだ。
 そもそも、こいつは誰かと待ち合わせをしているらしい。その待ち人と出会えるまでは、巧の肩に止まり続ける気らしい。
――厄介な奴、掴んじまったなぁ――
 思いつつも、巧は肩に止まるそいつの方に向き直り……
「で? どこへ行くんだ?」
「森林公園だ。そこで太牙と待ち合わせている」
「……はいはい」
 どうせ帰り道の途中だ、と。そう思って、巧はその蝙蝠……キバットバット二世と共に、森林公園へと歩いていった。

「仮面ライダー、か。驚いたよ、まさかそんな者達がいたなんて」
 森林公園のベンチに腰掛けながら、太牙はにこやかな笑顔で隣に座る良太郎に向かってそう言った。
 あの後、結局「お茶会」となってしまい、キバットバット二世と待ち合わせていた太牙と、買い物帰りだった良太郎だけ、先に抜けてきたのである。
「僕も驚きました。太牙さんも『キバ』だって事とか、渡さんのお兄さんだって事とか……」
「僕が、ファンガイアだと言う事も?」
「正直、ちょっとだけ。でも、こうやって分かり合えるって事は、悪い人じゃないって事ですから」
「……君は面白いな。初対面でそんな風に言ってくれた人間は、初めてかもしれない」
 太牙がファンガイアである事は、話の流れでつい漏らしてしまった。
 思えば、太牙自身も、気分が高揚していたのかもしれないと、今なら思う。普段なら、絶対にそんな事は口にしないのに。
 真司と蓮は驚いていたが、一真には何となく分かっていたらしく、聞いた時に「やっぱりな」と呟いていたのを聞いている。
 最初こそ良太郎も驚いた物の、イマジン達と仲良くやっている身としては、そう言う存在がいてもおかしくないだろうなと思った。
「こうやって、人間とファンガイアが分かり合えたら……」
「分かり合えますよ。こうやって、僕達は分かり合えたんですから」
 にっこりと、人の良い笑顔を太牙に向ける良太郎。
 心の底から、出来ると信じた者の顔。
 未だに人間を襲い続けるファンガイアがいるという報告は受けている。
 彼らにとって、ライフエナジーは食料であり、人間はそのための家畜であると言う考えが根強く残っているのだろう。
 その報告を聞く度に、太牙は絶望的な気分になる。何故、待っていられないのか。
 人よりも遥かに長命な自分達が、どうして我慢できないのか。飢えている訳ではないのに、遊びのように人々を狩るファンガイア達に、憤りすら感じる。
 しかし……良太郎の笑顔は、そんな憤りすらも忘れさせるような、不思議な力を持っていた。
「そう……だね。その通りだ」
 吹っ切ったように言って、太牙はひょいと立ち上がり、伸びをする。
 悩んでいても仕方がない。
 そんな暇があるなら、ライフエナジーに代わる、新しいエネルギーを見つけなければ。
 後ろ向きにならない事が、きっと何より大事なのだと。
「それにしても、遅いな、キバットは」
「キバットって?」
「僕が『闇のキバ』に変身するために手助けをしてくれる存在さ」
「闇のキバ……?」
「ああ。渡の持つ鎧を『黄金のキバ』と呼ぶのに対して、僕の持つキバの鎧は『闇のキバ』と呼ばれているんだ」
 不思議そうに問いかける良太郎に、優しい笑顔を向けながら説明する太牙。
 どことなく、良太郎は渡と似ている気がしたのだ。弱々しい雰囲気を持っているのに、やたらと芯が強い所や、人と、そうでない者に対して、全く偏見がない所等が、特に。
 渡も、きっと彼を弟のように思っているんだろうな……そんな風に思った瞬間。
 良太郎の背後に、オレンジを基調としたファンガイアがそこに立っていた。
「良太郎!」
「へ?」
 突然の太牙の呼びかけに、きょとんとした表情を返す良太郎。次の瞬間、太牙に腕を引かれ、その場から数歩前へとよろけ……
 ザクリ、という音が、背後から聞こえた。
 恐る恐る振り返ってみると、今まで自分のいた場所に、二本の、牙のようなものが大地に突き刺さっていた。
「え……ええええええ!?」
 思わず悲鳴にも似た驚きの声を挙げ、良太郎はそのまま視線を立っていたファンガイアに移す。
 どことなくジャガーに似た、それでいて鷲も同時に髣髴とさせるそのファンガイアが襲ってきたのだと理解するのに、一瞬の間を必要とした。
「……お前は……なぜ、まだ人間を襲う? 襲うなと、命令があったはずだ」
 低く、怒りを押し殺したような声で言う太牙に、ジャガーファンガイアと呼ぶべき相手はくっくと喉の奥で笑い声を上げ……
「人間は俺達の食料、家畜だ。それすらも分からんのか?」
「違う。人間とファンガイアは、手を取り合って生きていける」
「我らに飢えて死ねと?」
「そうならない様に、ライフエナジーに代わるエネルギーを開発している最中なんだろう!」
 その言葉を聞いた途端、とうとう堪えきれなくなったのか、相手は大声で笑い声をあげ……
「馬鹿か、貴様? そんな物に頼らずとも、食料はその辺にいるだろう。人間なんて、放っといたって勝手に増える。ゴキブリ以上にしぶとい生物じゃないか」
 言い終わると同時に、再びげらげらと笑い出すファンガイア。
 ……その言葉に、太牙の堪忍袋の緒は完全に切れた。
「貴様……」
「……許せないよ」
 言葉を継いだのは……良太郎。その表情は、怒りで彩られている。
「人間とファンガイアの共存を実現させようと努力してる太牙さんを、馬鹿にしたのは許せない」
 言うが早いか、良太郎はベルトを腰に巻きつけた……瞬間。
「まあ、そいつが許せないってのは、同感だな」
 唐突に。
 ファンガイアの後ろから、男の声が聞こえた。

 巧が森林公園に着いた時、彼の視界に、間一髪で宙を舞う「何か」から逃れた青年の姿が入った。
「ファンガイアだな」
 肩に止まっていたキバットバット二世が呟く。
「ファンガイア?」
「腕を引いて助けたのは太牙だ。助けられた方は知らん」
 見てみると、助かった方の青年とは別に、左手に手袋をした青年もいる。
 ファンガイアと言うのは、あのオレンジ色の異形の事だろうか。
 彼らはこちらに気付いていないらしい。
「逃げないのか?」
「逃げて、どうなるもんでもないだろ」
 小声で言いながら、巧はそっと彼らに近寄っていく。
「人間なんて、放っといたって勝手に増える。ゴキブリ以上にしぶといじゃないか」
 ある程度まで来た時、異形が、そんな言葉を放った。
 ……何を、言っているのだろうか。
 それはまるで、かつてのオルフェノクの言い分のようにも聞こえ、巧の全身の血が一気に沸いた気がした。
「貴様……」
「……許せないよ。人間とファンガイアの共存を実現させようと努力してる太牙さんを、馬鹿にしたのは許せない」
 手袋の青年の言葉を継ぐように、守られていた方の青年が言い放つ。その声に、怒気を孕んで。
 二人とも、あからさまに怒っている。
 そして……巧もまた、このファンガイアと呼ばれた異形に対して、怒りを感じている。
「まあ、そいつが許せないってのは、同感だな」
 自分の存在に気付いていなかったらしく、慌てたように振り向くファンガイア。
 同時に、宙を舞う「何か」が巧を襲う。それは先日見た、「ステンドグラスのようになって散った敵」と同じ物だ。と言う事は、先日の相手もファンガイアと言う存在なのだろう。
 思いながらも、巧は飛んできたそれを左手で掴むと、相手をギロリと睨みつけ……
「あー……何か、久々に頭に来た」
 言って、ぽいとその「何か」を投げ返し……唐突に、ベルトを腰に装着した。
「ベルト……?」
 助けられてた方の青年が、不思議そうに呟く。よく見れば彼も、見た事のない銀色のベルトを着けている。
 だが、今はそれを気に留めている場合ではない。巧は携帯電話……ファイズフォンを構え、コードを入力する。
 入力コードは「555」。その後にエンターキーを押し……
『Standing By』
「変身」
 言い放つと同時に、ファイズフォンをベルトにセットし、それを左へ倒す。
『Complete』
 電子音が再び響き、巧の体を、瞬時にスーツが包む。
 赤色の、フォトンブラッドと呼ばれるエネルギーがスーツを巡り、黄色い目にギリシャ文字のΦを思わせる面。
 ……ファイズ。そう呼ばれる姿に変身した。
「ほう。面白いな」
「黙ってろ、蝙蝠」
 自分の周囲を飛び回るキバットに言いながら、ファイズ……巧は軽く右手首をスナップさせる。
「何者だ、貴様?」
「さあな」
 端的にそう答えると、彼はファイズフォンを外し、コード「106」を入力する。
『Burst Mode』
 電子音と共に、ファイズフォンから三連の光弾が放たれる。
 三発全てがファンガイアに命中し、当てられた方は思わずよろめく。
「ちぃぃっ!」
「……悪党って、大抵反応が同じだな」
 どこか呆れたように言いながら、襲い掛かってくるファンガイアを軽くいなし、逆に攻撃を加える。
 余裕綽綽と言った感じで、今にも止めをさせる……そう思った瞬間。
「ファイズ……ファイズ、ファイズ、ファイズゥゥゥゥゥッ!」
 唐突に上がった声に、巧に一瞬の隙が生まれた。そこを、ファンガイアは見逃さなかった。
 巧の腹部に蹴りを入れ、青年達の方へ向かって蹴り飛ばす。
「痛ってぇ……何なんだよ、今の声……」
 声の上がった方を振り返ると……そこには、一人のオルフェノクの姿があった。

 唐突に現れた青年が、変身し、ジャガーファンガイアを圧倒しているのを見て、良太郎と太牙はその場に立ち尽くしていた。
 ファンガイアに対する怒りを忘れている訳ではないが、それ以上に、変身した彼の登場に対する衝撃の方が大きかったのだ。
 彼も、仮面ライダーなのだろうか。ぼんやりと、そう思った瞬間。
 こちらをずっと眺めていたサラリーマン風の男性が、戦士を睨みつけているのに、良太郎が気付いた。
「あの人、何で……」
 呟いた瞬間。その男が、変貌した。
 ファンガイアとは違う、白に近い灰色の体。イメージとしては蟷螂だろうか。
「ファイズ……ファイズ、ファイズ、ファイズゥゥゥゥゥッ!」
 唐突に上がった声に、戦士に一瞬の隙が生まれた。そこを、ファンガイアは見逃さず、彼の腹部に蹴りを入れ、良太郎達の方へ向かって蹴り飛ばす。
「痛ってぇ……何なんだよ、今の声……」
 抗議の声を挙げ、戦士が視線を灰色の異形の方に向け……再び止まった。
「オルフェノクかよ!」
「ファイズ、オルフェノクの敵……裏切り者ぉぉぉっ!」
 叫ぶと同時に、オルフェノクと呼ばれた異形が、ファイズと呼ばれた戦士に向かって突進する。
 後ろからは、ファンガイアがここぞとばかりに狙っている。その事実に気付くと、太牙は視界の端に待ち人ならぬ待ちモンスターがいる事に気付き……
「キバット、来い」
「良いだろう。絶滅タイムだ」
 キバットバット二世を呼ぶと、太牙は彼に右手を差し出し……
「ガブリ」
 その手を、キバットが噛み付いた。
 同時に太牙の顔にファンガイアの模様が浮き上がり、腰には鎖を模したベルトが巻きつく。
「変身」
 言うと同時に、腰のベルトにキバットを止まらせる。
 音楽なのか、ハウリング音なのか、よく分からない音が鳴り響き、太牙の姿が変わっていった。
 黒と赤を基調としたその姿は、まさに「闇のキバ」。胸には三つ、緑色の石のような物があり、同じ色の目に、マントをたなびかせるその姿に、良太郎は吸血鬼を連想した。
「その、姿……まさか貴様、いや、貴方は……!?」
 変身した太牙を見て、ジャガーファンガイアは明らかにうろたえる。
 自らの犯した「過ち」に、今更のように気付いて。
「……王の判決を言い渡す。……死だ!」
 言うが早いか、太牙はジャガーファンガイアを吹き飛ばす。
 直後、太牙の発した、緑色のキバの紋章を模したエネルギーが、ジャガーファンガイアを捕らえ、拘束し、波動によって攻撃を開始する。
 傍から見ていると、魔術のように見える。それが実際「魔術」であると分るのは、彼らファンガイアくらいの物だろうが。
「あいつ……一体何者なんだ……?」
「そんな事より、前!」
 変身した太牙を見つめ、呆然と呟く巧に、良太郎が警告するように叫ぶ。
 オルフェノクが、すぐ側まで来ているのだ。
「……ああ、そうだったな」
 そう呟くと、巧は自分の右足に手をやる。
 正確には、そこにあるファイズポインターに。
 ミッションメモリーをセットし、ファイズフォンのエンターキーを押す。
 同時に、太牙の方も腰にあるフエッスルをキバットにセットした。
 警笛にも似た音が二回、周囲に響く。
『Exceed Charge』
 電子音が響き、巧はジャンプしながらの前方一回転で、オルフェノクに向かって足を向ける。
 刹那、ファイズポインターから、拘束とロックオンの機能を兼ね備えた円錐状の光が、オルフェノクを捕らえた。
「ウェイクアップ、ツー!」
 キバットの宣言と共に、太牙が高々と飛び上がる。エネルギー波動で、ファンガイアを拘束したまま、彼は足をファンガイアに向けた。
「やめろ……やめろ!」
「う……うあああっ!」
 それが、どちらの悲鳴なのか、良太郎には分からない。しかし、オルフェノクもファンガイアも、共に動けぬまま次に来る攻撃に恐怖しているのは分かる。
 ……この一撃で決まる。そう、感じた次の瞬間。
 ポインターで拘束したオルフェノクに向かって、巧がキックを繰り出したのと。
 上空から、太牙がファンガイアに向かってキックを繰り出したのは、ほぼ同時。
『があああぁぁぁぁぁぁっ!』
 異なる種の異形が、全く同じ悲鳴を上げ、共にキックの衝撃に耐えかねて、派手な爆音を轟かせる。
 ……後に残ったのは、キバの紋章を受けたファンガイアの欠片と、赤いΦのマークを残したオルフェノクの灰。
「……お前、何者だ?」
「君こそ、一体何者なんだ?」
 共に変身を解き、訝しげに問う巧と太牙。
 その間を、オロオロとした表情で良太郎が見ていた。
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