memo
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2025/07/06 02:16※勇は福島県の出身で、大阪に来たばかりです。
※勇は仕事では後輩です。
昼。寮の廊下、知久の部屋の前にて。
勇、知久の部屋のチャイムを押す。
勇「(声を張り上げて)桐生さん、こんにちは、いらっしゃいますか」
部屋の中から足音。
玄関のドアが開き、知久が顔を出す。知久の髪は寝癖で爆発している。目も眠そう。
知久「何?」
勇「もしかしてお休みのところ邪魔してしまいましたかね?」
知久「そういうことになるな。昼寝しててん」
勇「それは失礼しました。でも桐生さんに聞いてもらわないといけないことがありまして」
知久「俺に? 相良さんが?」
勇「ちょっと発声練習しますね。(両手を腹に置いて、音階を上げていく)あーあーあーあーあー♪ あーあーあーあーあー♪」
知久「ホンマに何なん!?」
勇「うん、今日も良い声。ではいきますね」
勇、足を肩幅に開き、手を後ろに組む。
勇「(腹から声を出して)六甲颪に 颯爽と 蒼天翔ける 日輪の♪」
知久「ストップ、待って、いきなりどないしたん?」
勇「だって今日が評価の日なんでしょ?」
知久「評価? 何のこと? 俺、何も知らへんで」
勇「丹羽さんから聞きましたよ。僕の人事評価は桐生さんがやっていて、それは阪神タイガースに対する忠誠心で計る、と」
知久「そんなわけないやろ。いちいち昴に騙されんなや」
勇「(不満そうな様子で)それ、僕が悪いんですかね? 騙す丹羽さんが悪いんじゃないんですかね?」
知久「騙されるから揶揄われんねん」
勇「桐生さんは詐欺事件が起こったときに、詐欺師よりも被害者が悪いと考えるんですか? もちろん詐欺師が悪いですよね?」
知久「それは当たり前に詐欺師が悪いけど、騙されんように自衛するんも大事やろ。まだ昴に騙されてる内はええけど、そんなんやったらいつかホンマに詐欺師に騙されんで」
勇「失礼な。むしろ僕は騙されそうなおばあさんを助けて、警察から表彰されたことがあるんですよ」
知久「(苦笑して)ほな、何で昴に騙されんねん」
勇「丹羽さんは詐欺師さえも上回っています」
知久「それはない、絶対にない。とりあえず帰って。人事評価の話は嘘やから」
勇「待ってください、せっかく六甲おろしを覚えたんです。僕の努力を無駄にしないでくださいよ」
知久、玄関のドアを閉める。
勇「仕方ない、ここで歌うか…」
勇、再び歌う姿勢を整えて、
勇「(寮に響き渡る声量で)六甲颪に 颯爽と♪」
知久、玄関のドアを開ける。
知久「わかった。最後まで聞くから、せめて声量を下げてくれへん?」
勇「はい。よかった、これで僕の熱意をお届けすることができますね。では3番まで歌いますね」
知久「1番だけで大丈夫やから」
※勇は仕事では後輩です。
昼。寮の廊下、知久の部屋の前にて。
勇、知久の部屋のチャイムを押す。
勇「(声を張り上げて)桐生さん、こんにちは、いらっしゃいますか」
部屋の中から足音。
玄関のドアが開き、知久が顔を出す。知久の髪は寝癖で爆発している。目も眠そう。
知久「何?」
勇「もしかしてお休みのところ邪魔してしまいましたかね?」
知久「そういうことになるな。昼寝しててん」
勇「それは失礼しました。でも桐生さんに聞いてもらわないといけないことがありまして」
知久「俺に? 相良さんが?」
勇「ちょっと発声練習しますね。(両手を腹に置いて、音階を上げていく)あーあーあーあーあー♪ あーあーあーあーあー♪」
知久「ホンマに何なん!?」
勇「うん、今日も良い声。ではいきますね」
勇、足を肩幅に開き、手を後ろに組む。
勇「(腹から声を出して)六甲颪に 颯爽と 蒼天翔ける 日輪の♪」
知久「ストップ、待って、いきなりどないしたん?」
勇「だって今日が評価の日なんでしょ?」
知久「評価? 何のこと? 俺、何も知らへんで」
勇「丹羽さんから聞きましたよ。僕の人事評価は桐生さんがやっていて、それは阪神タイガースに対する忠誠心で計る、と」
知久「そんなわけないやろ。いちいち昴に騙されんなや」
勇「(不満そうな様子で)それ、僕が悪いんですかね? 騙す丹羽さんが悪いんじゃないんですかね?」
知久「騙されるから揶揄われんねん」
勇「桐生さんは詐欺事件が起こったときに、詐欺師よりも被害者が悪いと考えるんですか? もちろん詐欺師が悪いですよね?」
知久「それは当たり前に詐欺師が悪いけど、騙されんように自衛するんも大事やろ。まだ昴に騙されてる内はええけど、そんなんやったらいつかホンマに詐欺師に騙されんで」
勇「失礼な。むしろ僕は騙されそうなおばあさんを助けて、警察から表彰されたことがあるんですよ」
知久「(苦笑して)ほな、何で昴に騙されんねん」
勇「丹羽さんは詐欺師さえも上回っています」
知久「それはない、絶対にない。とりあえず帰って。人事評価の話は嘘やから」
勇「待ってください、せっかく六甲おろしを覚えたんです。僕の努力を無駄にしないでくださいよ」
知久、玄関のドアを閉める。
勇「仕方ない、ここで歌うか…」
勇、再び歌う姿勢を整えて、
勇「(寮に響き渡る声量で)六甲颪に 颯爽と♪」
知久、玄関のドアを開ける。
知久「わかった。最後まで聞くから、せめて声量を下げてくれへん?」
勇「はい。よかった、これで僕の熱意をお届けすることができますね。では3番まで歌いますね」
知久「1番だけで大丈夫やから」