「母子」
動かない女を見下ろして、考えた。さてどうしてやったものかと。
穢い乞食を頭から食いたくはない。それに身体にまとわりつく振袖が、重くて重くて仕方がないのだ。これ以上、例えば土に塗れた垢なんかがまとわりつかれても困る。
『食えぬのなら、他所へやれ。』
だがどこへやったものか、それが問題だ。
すると赤ん坊が泣き喚く。身の危険でも悟ったか、喧しく泣く。子がいるならば、父がいたはずだ。それは果たしてどこへ行ったか。妻と子だけを放逐してそのままにするのだから、約束のない間柄でのことだったのかもしれぬ。不用意な歓楽、それにより生まれた命には同情した。可哀想だと思った。だが生まれなかったことにするのも出来ず、早く死なせてやるのも不憫なら、出来ることはもう少ない。
『してやろうと思うならなんでもしてしまえ。望みを叶えるためなのだ。』
心当たりはあった。乞食を嫌わず、必要があれば共に生活することも厭わない男。ちょうど、『近い世界』にいるのだ。一部を借りてくることにした。担保などないが、仕方ない。
『何、ゆくゆくは共に消えゆく身だ。構うまい。』
穢い乞食を頭から食いたくはない。それに身体にまとわりつく振袖が、重くて重くて仕方がないのだ。これ以上、例えば土に塗れた垢なんかがまとわりつかれても困る。
『食えぬのなら、他所へやれ。』
だがどこへやったものか、それが問題だ。
すると赤ん坊が泣き喚く。身の危険でも悟ったか、喧しく泣く。子がいるならば、父がいたはずだ。それは果たしてどこへ行ったか。妻と子だけを放逐してそのままにするのだから、約束のない間柄でのことだったのかもしれぬ。不用意な歓楽、それにより生まれた命には同情した。可哀想だと思った。だが生まれなかったことにするのも出来ず、早く死なせてやるのも不憫なら、出来ることはもう少ない。
『してやろうと思うならなんでもしてしまえ。望みを叶えるためなのだ。』
心当たりはあった。乞食を嫌わず、必要があれば共に生活することも厭わない男。ちょうど、『近い世界』にいるのだ。一部を借りてくることにした。担保などないが、仕方ない。
『何、ゆくゆくは共に消えゆく身だ。構うまい。』
