二話 穢れの大地
蝶屋敷の門前。1人の緑髪の子供が立っていた。
「よォ、遅いじゃねーか因幡」
「遅くありません。ぴったりです」
「待ってやったんだから感謝しろよな」
……薄々気づいていたが、関わりたくない相手と絡んでしまったようだ。
まだ精神も成熟していないし、性格まで悪いとこちらも対応しにくい。
「んっと、鬼の住処は廃墟の集落。
「穢山……」
「聞いたこともねえ場所だ。」
心陽も初めて聞いた地名だった。むしろ、知っている地名のほうが少ないのだが。帝都がどのくらい広いのかすらも分からない。
「アンタ、飯食ったか?」
「まだです。」
「んじゃ、飯にしよーぜ。おれ起きてから何も食ってねェんだ。師匠とよく行く店に連れて行ってやるよ。」
饂飩と書かれた看板が大きく掲げられた店。内装は古く、店主も老爺だ。所謂「老舗」というものなのだろう。心陽も様々な「老舗」の店の話は煉獄から聞いていた。
「じいちゃん、いつもの」
出てきた食べ物は饂飩とおはぎ。見るからにどちらも普通のものだ。
「お饂飩が好きなの?」
「師匠、おはぎ大好物なんだ」
そう言って饂飩を勢いよくすする景は子供らしく見えた。美味しそうに食べる姿を見て、心陽も微笑ましくなる。
(風柱様っておはぎ好きなんだ…あの見た目で…)
ふと、景がじっと自分の様子を伺っていることに気がついた。
「た、食べづらいんですけど」
「気にしねェで食え」
食べている様子を観察されるのは緊張する。どんな顔で食べればいいのか分からなくなってしまう。とりあえず、饂飩から手を付ける。
「うめぇだろ」
「うん」
「師匠のお墨付きだからな!!おはぎもすっごくうまくてさ……」
風柱の師弟は本当に仲がいいと話を聞いて思った。まるで、不死川が景を本物の兄弟のように扱っていることを知り、意外に感じた。どうやら景は悪い子供ではないらしい。そう感じる。
「ごちそーさん。んじゃ行こうぜ、穢山村」
「穢山村……?と言ったかい、学生さんや」
「おう。じいちゃんどうした?」
饂飩屋の店主が厨房から顔を覗かせる。
「気にせんでお行き。」
「おう!行ってくる!」
……。名の知れた村なのだろうか、老爺が知っているということは。あまり悪い方向へは考えたくはない。だから、良い方へばかり考えた。
「う゛、うぇ、異臭がする。おれこんな臭ェの嗅いだこと無い」
「……」
明らかに何かが腐食した臭いだ。熊が喰い残した残骸と同じような臭い。
「手分けしようぜ。このままじゃすぐに夜が更けちまう。」
「私は西に向かうから、貴方は東に向かって」
「言われねぇでも分かってるっての」
西側は廃墟の村が広がっていて、東側は雑木林が広がっている。まだ子供の景を1人で廃墟を探索させる訳には行かない。そう心陽は思っていた。
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