七話 雲隠月虎





心臓がドクン、と跳ねる。息を切らしながらすぐさま布団から出て日輪刀を用意し、駆け出す。無惨、奴が現れたのだ。
すると、何かの楽器のような無情な音がベン、と耳の奥まで響いた。


「は」


突然地面が割れたのだ!身体は急降下し、何処かに連れて行かれている。抗おうとするも、身体は泥の底が抜けたように落ち続けている。


(突然何が起きたんだ?)


一面に明るい間取りが広がっているではないか。しかも方向関係なく、自由に煩雑に配置されている。意味の分からない設計の建造物内に、心陽は放り込まれたのだ。ふと、五月蝿い悲鳴のようなものが聞こえてきた。


「因幡ァァァァァァ!!避けろォォォォォォ!!」


景が真上から頭を下に向けて落っこちていたのだ。心陽は落ちながらも彼を両腕で抱き留めた。仲間が危ないところを避けられるはずなんて無い。


「悪ィッ、っつーかこのままだと落下死しちまう!!安全な場所見つけて、ンで……着地だァ!」


無理やり景は心陽の両腕を引き剥がすと、離れ小島のような場所めがけて落ちて行った。彼は大声で、生きてまた会おうな!必ずだぜ!!と目を見開いて叫んでいた。
心陽も適当な場所に目星をつけ、


────炎の呼吸 肆ノ型 盛炎のうねり


受け身を取ることで無事着地に成功した。


(ここは一体どうなっているんだ?)


頸を撥ねることに造作もない鬼たちが蔓延っている魔窟のようだった。大型の鬼から人型の鬼まで種類は豊富である。他の場所も見る限り同じような雰囲気で、しかも鬼殺隊士が数多く集結している。あちらこちらから降ってきているし、鬼と戦ってもいる。
ああ、もしかしたら鬼の棲む要塞なのかもしれない。そう思っていると、またあの琵琶によく似た弦楽器が響いて、部屋が反転した。今度は一角の天井から落とされているようだ。


「っ……!」


(まずい、このままだと真下の二人に……!)


黒髪の上裸の男がこちらを仰ぎ見る。そしてすぐ近くにはその指に脳を突き刺された女性がいる。牙が視えた。男の方は鬼だと確信した。日輪刀をすぐさま抜刀し、切っ先を男に向け壁を跳ねて降り立つ。


「ああ。通りで間抜けな顔をしていると思ったら、貴様だったのか」


癖のある黒髪。猫のような瞳孔の真紅の瞳。不愉快そうな口元。女性の頭を容赦なく貫く鋭い爪。



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