七話 雲隠月虎




裾から覗く白い包帯だらけの胴が、呼吸で僅かに動いている。間近で見れば見るほど、もうまもなくの残りが見えてくるようだった。目の前の儚い命をもった者が口を開く。振り絞った声が波紋のようにじんわりと頭に響く。


「妹の咲希は……元気にしている、かな?」

「はい」

「心陽はあまり体調が、良くない……のだろう。無理を……させたね」

「そんなことありません……」


重苦しい空気が流れているのをひしひしと感じる。心陽が目を泳がせていると、耀哉の口元がやんわりと弧を描いて開く。


「私は君が、鬼殺隊に入隊すると、分かっていたんだよ……」

「え?」


心陽は目を少し見開いた。耀哉の口は微笑んでいるようで、困っているようだった。彼はああ、そうか。と小さく呟いた。


「我々産屋敷には……近い未来を視通せる、所謂先見の明を、持ってして産まれる者がいる…………」


少し噎せたのち、耀哉は弱々しい左手を心陽に向ける。それに気づきつつ、意味がよく分からないまま頷く。凛とした優しい風が心陽の右手をなぞった。


「心陽のご両親に、心当たりは、無い……かな」

「ありません。至って普通の家族ですから……」

「今は……そうだね。けれど、心陽たちのお父上は、私と同じ血を引く者、なんだ……」


渇いた空気を吸おうとして、思わず噎せてしまった。理解が追いつかないのだ。それはつまり……


「産屋敷の血が、君たちには…………流れているんだよ」


その声は今までで一番冷たく、芯を持っていた。それはありえません、と心陽は語気を強めて否定した。しかし、次にそれを耀哉は否定する。包帯の内側の瞳がこちらを見つめているようにすら思える。掠れた穏やかな声が数秒の沈黙を破る。


「君たちのご先祖様は……産屋敷一族から逃亡した者、だ。長い間、兄弟には……顔を合わせられなかったが、こうしてまた、巡り会えたのも一つのえにし……だね」

「お館様……は先程、未来が分かると仰っていましたよね?」

「うん、心陽の家が……鬼に襲われることも、知っていたよ」

「……ッ!」


その一言に思わず眉間に皺を寄せ、顔に血管が浮き出そうなほど怒りが湧いてきた。瞳を丸くし、口を真一文字に堅く結ぶ。耀哉の側にいるあまねにこの表情を気づかれまい、と面を下に向けた。膝の上の拳を更に強く握りしめて、震えが止まらない唇から犬歯を覗かせ言葉を探す。


「見殺しに、したんですか、私の家族を……!!」

「心陽様」

「あまね。大丈夫だ。……結論から言うと、君たちのご両親を死なせるつもりは、無かった。むしろ……助けようと、付近……と言っても青梅に、ちょうどいた杏寿郎を、赴かせたんだ…………」


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